転職活動中の悩みとして「不採用になった企業に応募書類の返却をしてもらいたい。」「企業は不採用にした人の書類を返却する義務があるのでは?」という声は一定数聞かれます。

特に最近は個人情報の漏えいなどが問題視されることが多いですから、不安に感じる人がいても不思議ではありません。

しかし、採用活動の中で不採用者の応募書類を返却する企業は決して多くはなく、特に規模の大きい企業であれば返却しない傾向にあります。

では、企業は一体なぜ応募書類を返却しないのでしょうか?

また、応募書類の返却を希望する際にはどんなことに気を付ければ良いのでしょうか?

今回は、応募書類の返却という点にスポットを当ててお話していきます。

企業が応募書類を返却しない理由

応募書類を返却してほしいという応募者が多いわけですから、企業側としては返却すれば良いのでは?と思うかもしれません。

しかし、企業としても返却しない理由があるのです。

膨大な時間と手間がかかるから

企業規模や応募者数にもよりますが、企業の採用活動には膨大な時間と手間がかかっています。

人事担当は何ヶ月もかけて求人広告の内容を決定したり、募集部署の役職者と打ち合わせを重ねたり、新卒向けの学校訪問を行ったりしています。

人材というものを重要視している企業であれば当たり前のことです。

この一連の活動の中に中途採用の募集も含まれているわけですが、企業によっては一度の募集に何百通という応募書類が送られてくることもあります。

その中で不採用になった人たちすべてに応募書類の返却をしていれば、さらに時間と手間がかかるということは想像できることでしょう。

郵送代に人件費など費用がかかる

採用活動には時間と手間の他、人件費や交通費、広告費など費用がたくさんかかっています。

それに加えて応募書類を不採用者全員に返却するとなると、切手代に封筒代、作業者の人件費などがかかってきます。

特に個人情報を返却する際は書留郵便など追跡できる郵送手段を使う配慮が必要ですから、通常の郵送代では済まなくなります。

企業なのだからそれぐらい払えば良いのでは?と思うかもしれませんが、こういった小さなコストの積み重ねが膨大な運営コストにつながるのです。

特に今は大企業であっても安心できない時代ですから、コスト削減を意識している企業は多いのです。

再応募のデータとして利用する

不採用になった人の応募書類を返却せず保管する企業の中には、再応募時のデータとして利用しているケースがあります。

企業によっては不採用から一定期間は応募できないと定めている場合もあり、それが守られているかどうかを調べる資料として使っていることがあるのです。

また、あるケースでは応募して不採用になったことを恨みに感じ、企業活動を妨害してきたという人がいました。

そのケースでは人事担当者が顔を覚えており、過去の応募書類を確認して上司に相談し適切な対応をしました。

これは極端な例かもしれませんが、一定期間は応募者のデータを管理しておくということは、企業側が身を守るためにも使われているのです。

企業側に適切な管理をする義務はあるが返却の義務はない

そもそも企業側は応募書類の返却をする義務があるのか?という疑問についてですが、個人情報保護法では応募書類の返却についての規定がないことから、返却義務まではないとされています。

ただし、個人情報の取扱いは本人の同意がない限り制限されており、返却、破棄、削除などを確実に行うことが求められます。

また、事前に返却する旨を伝えてあれば返却義務が発生しますし、事前に何も示されていない場合に返却を依頼すれば、ほとんどの企業で返却には対応しています。

応募書類の返却は依頼すべきか

事前に返却しない旨を知らされていない場合、応募書類の返却を企業に依頼すべきかどうかはご自身の価値観で判断されるべき問題です。

企業側には個人情報を守る義務があり適切な保管、破棄方法を取っていますが、それでも心配だという方は依頼されれば良いでしょう。

ただし、返却を依頼するタイミングとしては当然不採用結果が出た後がベストです。

面接前や応募の段階で返却を依頼すれば、企業によっては「我が社を信頼していない人」「不採用されるのを前提で応募してきているのか?」などネガティブな印象を持たれることがあります。

使いまわしには注意も必要

個人情報の漏えい以外に、応募書類に使用した写真が勿体ないから使いまわししたいと思う人もいるでしょう。

確かに転職活動は交通費や写真撮影代など費用がかかります。

ただし、写真は上手に剥がさなければ糊に紙が貼りついて凹凸ができてしてしまい、次の応募先に使いまわしがバレることもあります。

さらに言うと、応募書類の写真は基本的に直近3ヶ月以内に撮影したものを使うので、転職活動が長引いている場合、写真の鮮度も気にかける必要があります。

勿体ないかもしれませんが、そこに注力するよりは、いかにして早く内定をもらうかを頑張って考えた方が良いとも言えます。

また、中には履歴書そのものを使いまわししたいと思う強者もいます。

しかし、当然ですが履歴書には志望動機などを書く欄があり、本来使いまわせる性質のものではありません。

どの企業にも使えるような志望動機を書いてあるという方は、そもそも人事担当者の心に響くような志望動機が書けておらず不採用になった可能性は大いにあります。

節約や使いまわすという考えそのものを否定するわけではありませんが、そこがばかりが気になるという方は、転職活動への集中力、応募時の工夫など、自分に足りない部分がないかどうかを考えるようにしましょう。

応募書類の返却有無は事前にしっかり確認を

企業側は募集広告内に応募書類を返却しない旨記載したり、面接時に説明しているようにしています。

絶対に返却してもらいたいと思うのであれば、事前にしっかりと確認し、返却してもらえる企業に応募する、転職エージェントに相談して個別に返却してもらえるよう事情を伝えてもらうなど、それなりの配慮が必要になります。

必ず返却してもらえる保証はありませんが、そこまでして返してほしい応募者であれば不要なトラブルを避けるためにも対応してもらえる場合があるでしょう。

返却を希望することは決して悪いことではありませんが、そこだけに固執して転職活動に集中できないことがないようにしていきましょう。