転職先を選ぶ際に、残業時間が多いかどうかは気にする方が非常に多いポイントです。

そこで考えたいのが求人広告の残業時間に関する文言です。

求人広告を見て残業時間が少なそうだと判断して転職したけれど、実際には残業時間が前職以上に多い企業だった、なんて失敗もよく耳にします。

求人広告の残業時間に関する文言には気を付けたい点が多いので、その言葉を鵜呑みにせずに冷静に判断するようにしましょう。

今回は、求人広告の内容で注意すべき残業時間に関する文言についてお話していきます。

求人広告の「ほとんど」って何時間のこと?

求人広告を見てみると「残業はほとんどありません。」というアピール文句をときどき見かけます。

しかし、ほとんどないとは、一体何時間ぐらいのことなのは気になるという人もいるのではないでしょうか?

「ほとんど」という言葉の意味は、きわめて少ないということですが、その定義は曖昧です。

残業時間で言うと「20時間ぐらいならほとんどないと言える。」という人もいれば、「いやいや残業20時間は多いでしょ。」と言う人もいるでしょう。

ただし「ほとんどない」を使う際に、基準となるべきものの半分もあるのに「ほとんどない」とは言わないのが一般的な解釈ではないかと考えられます。

では残業時間の多さの基準とすべきものは何かと言うと、残業時間には「時間外労働の限度に関する基準」が定められており、この基準により例えば1か月45時間という限度時間が示されています。

これは「基準」なので罰則はありませんが、現在働き方改革実現のために議論が進んでおり、月60時間を目安として罰則ありの規定が設けられるべく調整が進んでいます。

基本的な限度時間は45時間、絶対にNGなラインが大体60時間、このあたりの状況から考えてみると、「ほとんどない」が20時間というのも疑問が残ります。

20時間と言えば限度基準の約半分ですから、ほとんどないという表現には適していないと言えるかもしれません。

となると「残業時間がほとんどない」は、10時間代未満であると考えるのが妥当ではないでしょうか?

似たような言い方には注意も必要

「ほとんどない」と同じような言い方として「ほぼない」「めったにない」などがあります。

言葉の細かい問題をそこまで気にする必要があるのか?と思うかもしれませんが、企業の求人担当者はこのあたりの細かいニュアンスを気にする人もかなり多いです。

何かトラブルが起きて求人広告の内容に虚偽があるなどと指摘された場合に逃げ道を作っておきたいと考え、慎重に言葉を選ぶからです。

例えば「ほとんどない」と「ほぼない」では、「ほぼない」の方がニュアンスとしては強めの印象を与えるため、残業時間は少ない傾向にあります。

また、「めったにない」という表現には少し注意が必要です。

「めったにない」は全体的な総量ではなく頻度の少なさを指していますから、「普段は残業ないけど、たまに長時間労働も発生する」という可能性も含んでいます。

年間を通じて繁忙期と閑散期の差が激しいような業種などは注意が必要と言えるでしょう。

メリハリがつけやすいとも言えますが、人によっては繁忙期の長時間労働に耐えられず辞めてしまうという人もいます。

もちろん、何の悪意もなくこれらの言葉を感覚的に使うという人も多く、この言葉のチョイスだけですべてを推測できるというわけではありません。

ただ、「この言い方がどこか引っかかる…」という観点で応募先を見てみると、実態を調べてから転職しようなど、慎重な行動につながるという意味で、気にすることのメリットはあります。

残業がないのか、残業代がないのか

求人広告と実態に大きな差があり転職してから後悔するという事例はよく見かけます。

求人広告の内容を鵜呑みにすることのリスクは重々承知されていることでしょう。

言葉の受け取り方が人それぞれ違うことをいいことに、誤解を招きやすい書き方をする企業というものも存在しています。

例えば「残業はありません」と書かれていたのに実際に働いてみるとサービス残業が横行している、終業時間になると全員がタイムカードを押してまた仕事に戻るなど。

これらは残業がないわけではなく、残業代が出ないということだったというケースです。

上司に問い詰めてみたところで「求人広告にはちゃんと残業がないと書いた。皆単に自主的に残っているだけだから残業ではない。」などと言い訳されるのがオチです。

もちろん求人広告の内容に嘘偽りの表現はあってはならないことで、紛らわしい言葉を使うことも避けるべきです。

しかしこれだけ求人広告の内容に騙されてしまう人が多い以上は、応募者自身が慎重になり、求人広告だけでなくあらゆる角度から調べていくということが大切になるのではないでしょうか?

曖昧な表現が多い求人には注意が必要

前述したように、企業側はある種の逃げ道を作るために求人内容に曖昧な表現を使うことがあります。

「それは捉え方の問題であって我々は虚偽の求人を作成してはいない」と言いたいということです。

ですから求人広告の内容で曖昧な表現を多用している場合は少し注意すべきです。

確かに月によって残業時間の差があるなど断定できないことがありますから、解釈の範囲が広い言葉を使うことはある程度仕方のないことです。

しかし、あまりに多用する場合は労務管理がきちんとされていない、場合によっては応募者を多く募るために悪意を持って使っていることもあります。

求人広告を見るときの一つの参考になるのがこの点で、「シンプルかつ分かりやすい内容の求人」が、やはり企業としてコンプライアンスへの意識の高さを感じられる良い求人であると言えます。

特に具体的な残業時間を断定して記載してある場合は、実態と異なった場合に逃げ道がないため、信憑性が高い情報だと言えます。

例えば「月の残業時間は10時間未満でサービス残業も一切ありません」といった具合です。

反対に曖昧で分かりにくい表現が多い場合は、求人広告だけでなく転職口コミサイトを見てみる、面接で聞いてみるなど複数の方法を使って応募先企業の実態を調べていくようにしましょう。

転職活動は転職エージェントの利用がおすすめ

求人広告に記載されている残業時間は鵜呑みにすべきではありませんが、面接で聞いてみるというのも、上手に質問ができる自信がないという人もいるでしょう。

その場合は、転職エージェントを利用した転職活動であれば、事前に応募先の人事担当者に聞いてくれます。

応募者からクレームが多くなるなどすれば企業審査が厳しくなり求人掲載のハードルが上がってしまうため、転職エージェントに対して実態とかけ離れた残業時間を教えるという人事担当者はそうはいません。

信憑性の高い情報が得られるという点で転職エージェントの利用はおすすめです。

最後に

いかがでしたか?今回は、求人広告に見られる残業時間に関する文言で気を付けたい点をご紹介しました。

気になる残業時間については求人広告だけで判断することは危険です。

慎重な姿勢で下調べをしてから応募に踏み切るようにしましょう。