退職理由として上位に挙がることに「経営者や上司との意見相違」というものがあります。

特にミドル層を中心に、仕事をする上での自分の考え方が確立されている人に多い傾向にあります。

この理由で退職した人は、少なくとも転職先では同じ理由で再度辞めるということだけは避けたいというのが本音でしょう。

では、経営者や上司との意見相違が原因で前職を退職した場合に、転職活動はどのように行っていくべきなのでしょうか?

退職理由として挙げないこと

まず経営者や上司との意見相違という退職理由を、応募先に正直に伝えるのかどうかという点を考えていきます。

退職理由は転職活動の面接で必ず聞かれる質問ですが、嘘をつきたくない、自分の意見を持っていると思われたいなどの理由で正直に答えてしまう人がいます。

しかしはっきり言って、経営者や上司との意見相違を含む人間関係はどこに行ってもあるというものです。

正直に答えたところで同じ理由で辞めてしまう可能性があると考えられるのがオチでしょう。

退職理由としては言わないようにしましょう。

経営者や上司のどんなところが合わなかったのかを深く掘り下げておこう

では嘘の退職理由を述べるのかというとそうではありません。

これは自己分析が必要なのですが、前職で起きた「経営者や上司との意見相違とは何か?」という点を深く掘り下げてみることが大切です。

単に「あいつは気にくわない」「理由はないけれど嫌い」ということではあまりに感情的ですし、大多数の方はそうではなく「何が」合わなかったのかということがあるはずです。

例えば「経営方針が自分とは合わない」とひとまとめにすることは多いですが、具体的にどんな方針が合わなかったのでしょうか?

経営方針の中でも「これは絶対に違うと思う」「これはまだ分かる」「この点に関しては同じ考えだ」というものがあるでしょう。

詳細に掘り下げていくことで、裏返してみると自分がどんな経営方針の企業で働きたいのかということが見えてきます。

これが退職理由を述べるときの土台になるもので、いわゆるポジティブな退職理由と呼ばれるものです。

<回答例>

「現場で多くのお客様と接している中で、お金をかけてでももっと細やかなサービスを受けたいと感じているお客さまのニーズに応えたいという気持ちが大きくなりました。

前職ではパッケージ化された低価格のサービスが売りだったため、一人一人のニーズに応えられる仕事をしたいと感じ退職を決意しました。」

上記は経営方針が自分と合わないという理由で退職した人の退職理由ですが、「自分がやりたい仕事があったから辞めた」という切り口で前向きな理由として伝えています。

「人間関係における困難なこと」という質問に対して

面接では「職場に自分とは相性の合わない人がいたらどうしますか?」「上司と意見が合わない場合にどうしますか?」など人間関係における困難なことを質問される場合があります。

この質問で面接官は応募者の、人間関係への耐性を確認しています。

このときの答え方のポイントとしては、相性や意見が合わない相手がいてもポジティブに捉えることができ、合わない相手に対してどんな工夫をするのかを具体的に述べるということです。

<回答例>

「少し苦手だという相手がいたら、一旦それが思い込みや他人の意見に惑わされていないのかと疑うようにしています。

その上でこちらから積極的に話しかけてみる、時間外には業務以外の話をふってみるなどするとその人に対する苦手意識が払拭されます。」

「上司と意見が食い違った場合は、上司の意見を頭ごなしに否定的に受け止めるのではなく、上司の主張にどんな意味があるのかを考えた上で、納得いくまで話し合うようにします。」

最終面接では否定的な意見を言わないこと

最終面接では企業の役員クラスや企業規模によっては経営者が面接官として登場します。

ここでは具体的なスキルなどの細かいことではなく、応募先への熱意や応募者が思い描くビジョン、考え方などに触れた質問が多くなります。

応募者の本音を引き出すためにざっくばらんな雑談形式の面接を取り入れていることがありますが、面接官の言ったことに対してぽろっと否定的なことを言わないように注意が必要です。

経営者や上司たち全員がイエスマンを求めているわけではありませんが、基本的には自分に盾突くタイプの人は敬遠されます。

しかもまだ面接の段階で何の成果も出していないわけですから、この時点で面接官の意見を否定するようなことを言えば「応募者の目指している方向性と我が社の方向性が異なる」という理由で不採用になる可能性が高まります。

また、面接官に意図があって言ったことを頭ごなしに否定する態度では「感情的」「あさはか」といったイメージを持たれることもあるでしょう。

最終面接は顔合わせの場だとして、ほぼ内定確実のように思っている人もいますが、しっかりと選考されていますので気を付けてください。

企業研究で経営者の考え方を把握しておこう

転職して再度「経営者や上司との意見相違」で辞めないためにも、応募先の企業の経営理念や経営者の考え方をしっかり調べておく必要があります。

企業研究の基本である企業HPや会社パンフレットだけでなく、経営者が受けたインタビュー記事があれば読んでおく、経営者がゲストとして講演会などに招かれている場合は参加してみても良いでしょう。

事前に経営者の考え方を調べておくことで、自身との考え方に大きなずれがないのかをある程度把握することができます。

面接の質問タイムでは積極的に質問を

面接の質問タイムを利用して経営理念や面接官の仕事に対する考え方に触れた質問をしてみるのも、経営者や上司の考え方を知ることができる一つの方法です。1

1次面接や2次面接では、直属の上司となる人が面接官として対応してくれるケースは多いです。

経営者と違ってなかなか考え方を知れる機会は少ないので、このチャンスを逃さないようにしましょう。

もし上司となるべき人が面接官でない場合は「実際に働く職場の上司の方に一度お話を聞いてみたいのですが…。」と、面談を申し出てみるのも一つです。

また、経営理念に関する質問では、企業HPに書いてある内容を聞いてしまうという初歩的なミスをしないようにしてください。

「HPにはこのように書いてありましたが、具体的には…」という風に、掘り下げて聞いていきたいという姿勢であれば良いでしょう。

転職エージェントを利用して情報収集を

経営者や上司との意見相違が起きやすいミドル層以上の転職活動では、転職エージェントを利用するという人も多いでしょう。

転職エージェントは求人紹介だけでなく、応募先の情報収集をサポートしてもらうという点でも有益なものです。

特に大手転職エージェントには特定の業界に強いキャリアコンサルタントが在籍しており、業界情報や企業との太いパイプを持っているというケースも珍しくありません。

経営者の特徴やその業界で採用されやすい人の傾向など、転職エージェントだからこそ持っている情報もありますので聞いてみると良いでしょう。

最後に

いかがでしたか?今回は、経営者や上司との意見相違で退職した場合に転職活動で気を付けたいことをご紹介しました。

同じ理由で辞めたくなるということがないよう、慎重に転職活動を行っていきましょう。