看護師は夜勤や人手不足によるハードワーク、人命に関わる業務の特殊性により、体力的にも精神的にも負担が大きい職種です。
特に家庭を持つ看護師にとっては、仕事と家庭とのバランスを取るのが難しいと言えるでしょう。
正社員看護師としては心身共に限界がきて「パート看護師になろうかな?」と考えたことはないでしょうか。
今の場所でパートになれば、業務内容も人間関係も覚え直す必要がなく、ストレスなく仕事ができるとイメージするかもしれませんね。
パート看護師として働くことはメリットも大きいですが、デメリットもあります。
パートになるのは簡単ですが、正社員として働き続けることをぜひ慎重に考えてみてください。
今回は、パート看護師のメリット、デメリットを紹介します。
目次
パート看護師として働けばこんなメリットがある
まずは、看護師が正社員からパートになった場合のメリットを考えてみましょう。
これらのメリットの中に、「自分が絶対に譲れないポイント」があるなら、パート看護師になることも1つのいい選択肢。
どんなメリットがあるのでしょうか。
夜勤や残業がない
正社員であれば拒むことが難しい夜勤も、パートならやらなくていいケースが多いです。
パートが夜勤をできないことはありませんが、「パートは夜勤がなくて当たり前。」「敢えてパートを選ぶのに夜勤をやるのは不公平。」といった考え方が看護現場では広く持たれています。
残業に関しても同様で、契約時間ぴったりに気兼ねなく帰りやすい傾向にあります。
契約に沿った働き方が基本のパートは、残業が多いと労務管理上の指摘を人事部から受けることもあり、早めに帰らせるよう意識している職場長も多くなります。
その意味では、パートは守られた立場と言えるかもしれません。
カンファレンスや委員会など通常業務以外に時間を取られない
正社員看護師が長時間労働になりやすい要因の1つとして、カンファレンスや委員会など通常業務以外にやることが多いことがあります。
カンファレンスでは業務上大切な話し合いがなされることも多いため、せっかくの休日にカンファレンスなどが重なると自発的に出勤せざるを得ないことも。
そうなると、十分に休息を取れないことがあります。
病院などではさまざまな委員会があり、正社員はメンバーに選出される機会も増えて多忙になりますが、パートで委員会メンバーになることは稀です。
パート看護師も時間が合えばカンファレンスに出席することも多いですが、正社員のように「参加して当たり前。」といった雰囲気は少なめです。
パート看護師は担当患者さまを受けもつこともなく、雑務や正社員のフォロー的な役割を担うことが多くなるので、カンファレンスに出席しなくても、業務を滞りなくおこなうことができるからです。
契約時間内に通常業務のみをおこなえばいいため、家事育児の都合に合わせて計画的に働くことができます。
家族の休みに合わせて柔軟に出勤日を変えられる
看護師に限らずですが、パートの大きなメリットは勤務の柔軟性です。
希望が聞き入れられやすいかは職場の考え方にもよりますが、中にはとても自由に働けている看護師もいます。
たとえば、子供が夏休みの間、1ヶ月間まるまる勤務しないといったことも、職場長によっては許容しているようです。
パートは働いた分のみ給与が発生する時給制なので、配偶者がいて経済的に余裕がある家庭では、こうした働き方もできます。
ただし、あまりに自由に勤務日や時間を変えられてしまうと、給与処理や労務管理が煩雑になることから、契約通りの働き方を厳しく指導される職場もあります。
柔軟性の度合いは職場によって異なるという点は覚えておきたいところです。
責任が少ない
パートだろうと正社員だろうと看護師という職種に責任が伴うことに変わりはありませんが、正社員に比べると雑務やサポート業務が多くなり、1人あたりにかかる負担が少ないという意味では責任が少なくなります。
単純に労働時間が短くなるため、責任を負う時間も減るという考え方もあります。
また、自分自身の気持ちとして、正社員だと「しっかりしなくては!」と強く思うのに対し、パートになると気楽さを感じる人もいるようです。
責任感から解放された感覚になり、ストレスを感じにくくなることで、家庭と仕事とのバランスが取りやすくなることはあるでしょう。
人間関係の煩わしさがない
パート看護師は勤務日数や時間が正社員より少ない分、人間関係の煩わしさも減ります。
職場に嫌な人がいても、丸1日勤務しなければならないのと、数時間我慢すればいいのとでは、感じるストレスの度合いも変わってくるでしょう。
特に正社員看護師は夜勤や残業が多く自分の状態が「いっぱいいっぱい」になりやすいため、イライラしたり、少しのことが気になってしまったりして、人間関係をうまく保てないこともあります。
パートになれば労働時間が減ることで家庭との両立がしやすく、肉体的にも精神的にもゆとりがでてくるため、周りのことが気にならないといった要因もあります。
ブランク期間ができるよりパートでも続けた方がいい
女性が結婚や出産で一旦会社を辞めると職場復帰が難しいと言われる中、看護師は比較的容易に復帰できる職種です。
それだけ看護師は人手不足で求められていますし、看護師免許の威力は強力です。
とはいえ、やはり採用する施設からしてみれば、ブランク期間がある人材を雇うより、パートであっても第一線で働き続けてきた人材の方が安心感があります。
ブランク期間が長くなってしまうと、仕事の勘やスキルを保てているかといった不安がでてくるため、いくら看護師が欲しいと言っても、他にいい人材がいればそちらを採用するでしょう。
パート看護師ははブランク期間を作らず現場に触れ続けられるという意味でも、メリットのある働き方になります。
パート看護師になるのは簡単だけどデメリットも!
ここからは、看護師が正社員からパートになることのデメリットを解説します。
正社員経験がある看護師がパートになることはいたって簡単ですが、その先をじっくり考えてみましょう。
パート看護師として働くにはどんなデメリットがあるのでしょうか。
看護師免許を活かしきれない
一般的には、パート看護師に重たい業務を担当させることは少ないため、意欲的な看護師にとっては物足りなさを感じることになります。
せっかく看護師免許を取得したのに、本当に活かしきれているのか疑問に感じることもあるでしょう。
正社員として働いていた頃と比べて仕事への満足感が減る可能性もあります。
看護師は大変な仕事である分、そのやりがいに魅力を感じている人も多い職種です。
看護師という仕事のどんな点が好きなのか、今いちど振り返ってみてください。
自己分析をしっかりおこなうことによって、パート看護師になったときの自分をイメージし、納得できる働き方ができるのかが見えてきます。
看護師のパートは時給があまり高くない
看護師のパート求人を探してみると、地域や施設によって差があるものの、1,200~2,100円が相場です。
看護師は、特に女性にとってはかなり高収入職種のため、事務職や接客業などその他の職種に比べると高時給と言えるでしょう。
ただ、人の命や健康に関わる責任がある仕事の割に合っているかと言えば、疑問も残ります。
一見待遇がよさそうな大手病院などでは、パート看護師の時給は1,000円未満ということもありますよ。
他の医療系専門職と比べてみても、たとえば薬剤師のパート時給相場は2,000~3,000円となっており、看護師以上の高時給です。
看護師パートの時給は、事務や接客などに比べれば高いものの、他の専門職との比較や施設形態によってはあまり高くないと言えるのです。
これまで正社員でバリバリ稼いできた看護師にとっては、給与の落差に愕然とする可能性があるでしょう。
パートは福利厚生が適用されずうまみが少ないことも
医療機関で働く場合、勤務先によっては福利厚生に魅力があります。
代表的なものは医療費で、かかった医療費の還付を受けられることもあるのです。
これは医療機関ごとの独自制度や互助会等の運営によって賄われているものですが、パートは適用外ということも少なくありません。
住宅手当や扶養手当などの給与に関わる諸手当についても、パートは対象とならないことが多くなります。
正社員看護師時代は当たり前に利用できていた福利厚生が、パートになった途端、同じ施設で働いているのに受けられないことに、不公平感を持つ可能性があります。
賞与や退職金がない
パートは一般的に賞与や退職金がないことがほとんどです。
同じ勤務先の正社員看護師たちが賞与の時期になると賞与明細を受け取っているのを見て、うらやましく感じることがあるでしょう。
退職金については特に注意が必要で、正社員からパートになり、育児などが落ち着いたら正社員に復帰しようと思っても、退職金の計算期間がリセットされることが多くなります。
正社員からパートになった時点で退職金が精算されるため、再度同じ施設で正社員になっても次に支給される退職金は、そこからの期間で計算されることになります。
退職金は勤続年数が長いほど段階的に支給率が上がっていく仕組みが多く、一旦リセットしてしまうと将来的に思ったほどの退職金を受け取れない可能性があります。
もちろん、賞与や退職金制度は勤務先によって大きく異なるため一概に言えませんが、勤務先がどんな制度を採用しているのかよく確認しておく必要はあるでしょう。
正社員が多い看護師の世界で肩身の狭い思いをすることもある
サービス業のようにパートが多い業界と異なり、看護現場は圧倒的に正社員が多いです。
パート看護師は一定数いるものの、立場の違いが明確になっている職場もあります。
パートか正社員かは役職やポジションではないため、本来そこに上下関係はないのですが、職場によっては正社員が偉そうにしていたり、パートが肩身の狭い思いをしていたりといったことも起きています。
社会保険の適用範囲が変わっているから注意
パート看護師になったら配偶者の扶養内で働き、社会保険料の節約を目指そうと思っている方もいるでしょうが少し注意が必要です。
女性の労働力活用や労働者ごとの不公平感抑制等を目的として、近年大幅に改正がおこなわれています。
平成28年10月から、従業員501人以上の勤務先で働く場合は週20時間以上勤務などの条件が追加されており、平成29年4月からは労使合意によって従業員数500人以下の事業所でも適用可能になっています。※
看護師の場合、総合病院など従業員数501人以上の事業所で働く人は珍しくありません。
思ったよりすぐに自分自身が社会保険適用になるため、働き方によっては配偶者の扶養に入れなくなる可能性もあると思っておきましょう。
パートになって扶養内で働きたい場合は、勤務先の総務課などに相談することが大切です。
※参照:厚労省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/
一度パートになると正社員に戻るのが大変
今の勤務先で正社員からパートになるには、書類上の手続きだけで完了してしまうため簡単なことですが、「いざとなったらまた正社員に戻ろう。」と安易に考えてはいけません。
「同じ施設内で正社員に戻るなら実績があるから簡単では?」と思うかもしれませんね。
しかし、施設ごとに、正社員になるための試験や役員面接も実施されるため、戻りたいからすぐ戻れるわけではないのです。
転職も同様に簡単ではありません。
パート期間がある看護師と、正社員としてずっと働き続けてきた看護師では、後者の方が転職で有利になる可能性が高いからです。
ブランク期間がある看護師よりパートでも続けていた方がいいですが、ライバルが正社員となると話は別。
希望の施設に転職できないこともあると思っておきましょう。
保育園に入りにくくなる可能性
家庭との両立のためにパートになることを考えている場合、お住まいの自治体における保育園の基準も確認しておきましょう。
保育園の入園基準は自治体によって異なりますが、勤務日数や勤務時間を定めていることが一般的です。
正社員ならフルタイムなので日数も時間も余裕でクリアできますが、パートの場合は基準に満たない可能性もでてきます。
あまりにゆとりある働き方だと保育園に入れることができず、勤務日に預ける先に困ることもあるためパートになる前に確認しておきましょう。
看護師はパートになる前に正社員として転職を考えるべき
ここまでパート看護師のメリット、デメリットを紹介しました。
家庭の状況や仕事への価値観によって大きく異なるため、どちらがいいと決められるものではありません。
しかし、もし「正社員看護師として働き続けたいけど時間的に難しい!」と考えているなら、まずは正社員として転職することを検討すべきです。
夜勤や残業がない職場もある
看護師の働く場所は、病院やクリニックのほか、介護施設や保育園、一般企業などさまざまな選択肢があります。
夜勤や残業がなく看護師として働ける場所も豊富にあるため、正社員という雇用形態にこだわって探してみましょう。
ハードワークから、他職種への変更を考える看護師もいますが、転職できる職種が限られるためあまりおすすめしません。
どうしてもやりたい仕事があるなら別ですが、看護師免許を活かしつつ、自分にとっての働きやすい場所を見つける方がメリットが大きいと言えます。
今後のキャリアを考えると正社員であり続けるのはメリット
看護師として今後もキャリアを積んでいきたいと考えるなら、育児などで大変な時期を何とか乗り切り、正社員であり続けることは長い目で見るとメリットがあります。
転職が難しいなら、今の勤務先で短時間正社員制度はないでしょうか。
医療施設は看護師の離職を避けたいと考えているため、独自の時短制度を設けていることもあります。
お子さんがまだ小さいなら、育児・介護休業法による短時間制度も利用できますので、ぜひ慎重に、さまざまな選択肢を検討してみてください。
パートになるか迷ったら転職エージェントに相談してみよう
看護師が正社員からパートになるべきか迷ったら、決断は少し待ってプロに相談してみることがおすすめです。
転職支援のプロである転職エージェントなら、看護師キャリアの選択肢や、働きやすい職場の提案など、プロならではのアドバイスをくれるはずです。
相談した結果、やっぱりパートになるのがいいと決めたなら、それはそれで後悔のない正しい選択と言えるでしょう。
まずは一度、キャリア面談を受けてみるのはいい方法です。
最後に
いかがでしたか?今回は、看護師が正社員からパートになることのメリット、デメリットを紹介しました。
働き方の多様化が進む中、必ずしも正社員であり続けることが正解というわけではありません。
しかし、安易にパートを選ぶと長い目で見たデメリットもあるため、ぜひ慎重に考えてみてください。
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