高い志を持って看護師として就職したものの、ハードワークや人間関係に悩み、看護師以外の職種に転職したいと考える方もいるでしょう。
「元看護師」の肩書を持ちながら現在の職場で活躍している方は大勢いるため、必ずしも看護師職に固執する必要はありません。
どんな職種への転職が可能なのか探ってみてもいいでしょう。
しかしながら、看護師が看護師以外の職種に転職するには高いハードルもあるため、慎重に考えてから動き出すことをおすすめします。
そこで今回は、看護師が看護師以外の職種を希望する場合の転職事情と、看護師以外の職種の選択肢を紹介します。
看護師以外への転職事情
看護師から看護師以外への転職を考えている方へ、看護師以外に転職するときに覚えておきたい「事情」があります。
収入ダウンは必至
看護師は自分か配偶者の給与明細しか見たことがないかもしれませんが、他職種に比べて高収入です。
女性の看護師の場合、配偶者は男性なので女性職種の年収という意味では参考になりません。
女性は男性に比べて収入が低いことが多いため、看護師は女性が就ける職種の中でもかなり高給取りの部類に入ります。
医師や法律家などその他の専門職に転職でもしない限りは、収入が大幅にダウンする可能性は覚悟しておきましょう。
看護師が看護師以外の職種に転職して収入を上げることは本当に難しいです。
社会常識を知らないと思い知らされる
看護師は医療分野における専門家ですが、医療分野以外の知識は疎いケースが多いです。
一般企業で働く人や事務職の人たちがごく当たり前に知っている社会常識やビジネスマナーも、看護師は分からないことは普通にあります。
期日を守って書類を提出する、電話やメールに返事をするといった最低限のマナーでさえも、医療現場で慌ただしく働いていることで「そんなことは大事ではない。」と思ってしまうこともあります。
確かに、医療現場では患者優先ですが、看護師以外の職種になるなら別です。
転職活動における人事担当者とのやり取りや面接の場で社会常識のなさを実感するか、それすらも気づかず不採用になってしまうことがあると覚悟しておきましょう。
人間関係の悩みはどこでもあると分かる
看護師を辞めたい理由として上位にあがる人間関係の悩みですが、看護師以外の職種に転職したからといってなくなるわけではありません。
確かに看護師は気を強く保たないとならない特殊な職種ですから、言い方がきつい、はっきりモノを言う看護師も少なくありません。
そうした人たちとの関係性に疲れてしまったなら、他職種に転職して周囲の人が穏やかで優しいと感じることはあるでしょう。
しかし、言い方がきつくないからいい人である保障はどこにもありません。
はっきりモノを言わない分、陰口を言ったり、無視やあからさまな態度で示したりする大人は残念ながらいるものです。
看護師はチームで動く仕事なので、仕事で困っていたら先輩や同僚が助けてくれたこともあるでしょう。
他職種では個人プレーも多いので、困っていても見てみぬフリをされることもあります。
人間関係の悩みだけは、業界や職種を問わずどこに行ってもあると、転職してから気づくかもしれませんよ。
厳しい転職活動を乗り越える必要がある
看護師としての転職を経験したことがある方は、そのときのように転職が容易でないことに愕然とするでしょう。
看護師は人手不足ですから、看護師免許があればよほどのことがなければ高い確率で内定を得ることができます。
しかし、他職種ではそうはいきません。
特に、医療介護業界から離れて全く別の業界に転職するときは、求人件数自体が看護師に比べると断然少ないのです。
求人があったとしても、内定確率はぐっと下がります。
看護師は看護師として転職するのはスムーズですが、看護師以外では「看護師以外に何ができるか?」との視点で判断されるからです。
どうしても看護師以外の職種に転職したいなら、諦めずに長い目で見た転職活動をおこなうことです。
「看護師以外の仕事は経験がないのだから不採用になっても当たり前。地道に努力しよう。」くらいの気持ちが必要です。
やりがいを感じられないことも
看護師は大変な仕事ですが、やりがいが大きいことが魅力です。
看護師でいるだけで患者さんの安心感につながり、いざとなれば命を救うこともできます。
社会貢献性が高く人から感謝され、忙しい中でも生き生きと働いている実感を持てるでしょう。
看護師から他職種に転職すると、しばらくはハードワークから解放された安堵感から「転職して良かった!」と感じる人が多いです。
しかし、仕事に慣れ実情を知ってくると、看護師のようにやりがいを感じられず、辞めたい気持ちがムクムクと湧き上がってくることもありますよ。
看護師にまた戻ってこればいいと思うのは安易かも
看護師は結婚や出産でブランク期間ができても再就職しやすい職種の1つです。
女性が多い職種の中では抜群の安定感を誇るでしょう。
ただし、結婚や出産、学校などの理由がなく、別職種に転職して数年経った後に看護師に戻るにはかなり厳しいものがあります。
書類選考すら通過できないこともありますし、面接にたどり着けても、そもそもなぜ看護師を辞めたのかは徹底的に追及されるでしょう。
お試し的に看護師以外の職種に転職するなら、タイムリミットを設けておくか、一旦バイトや派遣等で適性を探ってからにしても遅くありません。
看護師以外への転職先と転職可能性を解説
看護師の厳しい転職事情をお伝えしたところで、それでも看護師以外の職種に転職したい方のために、転職先の選択肢と転職可能性を紹介します。
看護師はどんな職種に転職しているのでしょうか。
多いのは接客販売業
看護師の転職先として多いのは接客販売業です。
アパレル販売員から飲食店の店員までさまざま。看護師は医療の専門家というだけでなく、患者さんや家族と接するサービス業でもあるため、対人スキルを活かしやすいと言えます。
接客販売業の求人は比較的簡単に見つけることができますし、人手不足の店舗も多いため、内定を獲得することも難しくないでしょう。
転職理由を明確にし、接客業に活かせるエピソードをしっかり用意しておけば書類通過率も高いはずです。
面接にまで行ってしまえば、笑顔と感じのよさを意識することで採用確率はぐっと上がるでしょう。
このように転職自体は難しくないものの、問題は収入面です。
接客販売業の手取りは月20万円に満たないことも多く、看護師という異業種からの転職となると最低ラインの給与になる可能性もあります。
看護師時代と同じ家賃や生活費を払えるのかどうかは、しっかりシュミレーションしておきましょう。
美容系でも看護師としての知識が活かせる
エステや美容サロン、ネイルサロンなど医療知識を活かせる仕事もあります。
医学的観点から安全な施術や商品サービスの説明をおこないます。
美容系の知識やスキルも必要になりますが、もともと趣味で美容に興味があった方なら知識やスキル習得も苦にならないでしょう。
看護師免許を持つ人員がいることはサロンの評判にもつながるため、うまくアピールすれば採用される可能性は高いと言えます。
美容系職種への転職でデメリットとなるのはハードワークです。
看護師のように夜勤や当直こそありませんが、立ち仕事で足腰に負担がかかりますし、サービス残業も比較的多い業界です。
大手サロンを中心に企業実情をしっかり調べてから転職するようにしましょう。
強いメンタルとプレゼン力を活かすなら営業も
看護師でも総合病院や大学病院等でバリバリ働いていた方なら営業職に転職するのもおすすめです。
総合病院の場合、院内発表会や勉強会、カンファレンス等で発言や提案をする機会が多いため、度胸があり場慣れしている看護師が多いのです。
強いメンタルも営業職としての適性があります。
営業は契約が取れなくていちいち落ち込んでいては成り立たない仕事なので、看護師で鍛えたメンタルが活きるでしょう。
営業はどの業界でも通年募集しているため興味のある業界を探すのも1つですが、医療介護に関連する商品サービスを扱っている業界だと、看護師経験をアピールすることができて採用につながりやすいでしょう。
医療機器の販売をおこなう企業で「フィールドナース」として働く方法もあります。
看護師からの指名率が高い事務職は難関と心得る
看護師は1日中動きっぱなしの仕事で夜勤もあるため、デスクワークで夜勤がない事務職への憧れを持つ方が多くいます。
事務職には看護師のような国家資格も特別な技能も必要ないため、比較的簡単に転職できるとイメージされやすいのも理由の1つです。
しかし、看護師から事務職への転職ははっきり言ってかなり難しいです。
事務職は女性を中心に大人気職種なので倍率は高め。
応募者には事務経験が豊富な即戦力たちも多数いるため、事務経験がない看護師には太刀打ちできません。
看護師のパソコンスキルは低いと思っておく
事務職といえばパソコン操作ができることが大前提ですが、看護師もパソコンを使う機会があるため、パソコンスキルをクリアしていると思いがちです。
看護師がおこなうパソコン操作はカルテ入力を始めとした比較的簡単なものですが、事務職ではそのレベルで到底やっていけません。
ワード、エクセルを使いこなすのは当たり前、グラフや分析データ、プレゼン資料を即座に作るよう指示されることもあるためスピードと精度も求められます。
患者さんから頼られていたならカウンセラーも
患者さんからよく話しかけられたり、相談を持ち掛けられることがあった方、その話を聞くのが好きだった方はカウンセラーも選択肢としてあります。
心の健康を保つためのサポートをおこなうという意味では、看護師と共通点があるでしょう。
カウンセラーは資格がなくてもなれる職種ですが、求人自体はかなり少なく、経験がモノを言う世界です。
看護師経験の中からカウンセラー業務との類似点を探すことでならアピールできるでしょう。
英語ができるなら転職可能性は広がる
看護師は英語が話せる人もいますから、英語力を活かせる職種へ転職することも1つです。
前述したフィールドナースやメディカルライター、医療通訳士など、医療知識と英語力をかけあわせた職種は存在します。
いずれも高度な専門性が求められるため簡単になれる仕事ではありませんが、向上心が高くバリバリ働きたい方におすすめです。
医療サイトの執筆
インターネットで情報収集することが一般的な現代では、医療サイトも多数存在しています。
人の健康に関わることなので専門家が執筆した信ぴょう性の高いサイトが求められていますので、看護師免許があると、知識を活かして執筆に関わることもできます。
執筆作業は場所や時間を問わずできるため、結婚や出産を機に看護師を辞めようと考えている方も、家庭との両立が叶いやすい職種と言えるでしょう。
新しい働き方として近年増えていますが、雇われではなく自営業やフリーランスになるため、安定性という点では他職種への転職に比べても劣ると考えていいでしょう。
看護師以外に転職する前に看護師として別の職場への転職を考えてみよう
看護師を辞めることは簡単ですが、看護師以外の職種に転職するにはデメリットもあるため、ぜひ慎重に考えてみてください。
本当に看護師職を手放したいと考えるならいいのですが、看護師の仕事にやりがいや誇りを持っているならいつか後悔する可能性もあるでしょう。
ハードワークでない看護師もいる
看護師として病院以外で働く道もあります。
もし、現在の職場のハードワークが辞めたい理由なら、まずは看護師の職は捨てず、職場を変えてみることを考えましょう。
個人医院、介護施設、美容クリニックなど、定時で帰れて看護師として働ける職場は多数ありますよ。
夜勤がある病院に比べて年収は下がるでしょうが、それでも看護師は他職種に比べると高収入ですから、プライベートを充実させたり、貯蓄にまわすことも十分可能です。
規則的で健康な生活と、精神的な安定も手にすることができれば、多少の年収ダウンは気にならないのではないでしょうか。
一旦仕事を辞めて充電期間にしても
看護師は高収入で社員寮に入っていて支出を抑えることができるため、1年くらいは余裕をもって生活できるだけの蓄えがある方も多くいます。
他職種だとブランク期間があると再就職のハードルが上がりますが、看護師なら1年ほどのブランクなら再就職も比較的容易にできます。
ただし、あまりに長い充電期間では就業意欲を疑われかねませんので、長くても1年以内にするといいでしょう。
心身の不調なら傷病手当金を受け取って休職する方法もある
看護師として頑張り過ぎて心身の不調に陥ってしまったなら、勤務先の健康保険からでる傷病手当金を受け取りながら休職する方法もあります。
医師の診断書等が必要になるため誰にでも使える方法ではありませんが、詳細を勤務先の総務課に聞きに行ってみましょう。
休職中はゆっくり休み、自分の好きなことだけに没頭する方がいいです。
考える時間が増えるためつい今後のキャリアのことを考えたくなりますが、まずは休むことから。
好きなことをやって自分を取り戻すと、自然とこれからの方向性が見えてきますよ。
今後のキャリアに悩んだらプロに相談してみよう
看護師が今後のキャリアに悩んだらプロに相談するのが一番です。
転職エージェントにはプロであるキャリアコンサルタントが在籍しており、キャリア面談を通じて今後の方向性を一緒に考えてくれます。
プロならではの視点でアドバイスをしてくれるため、曖昧だった考えが整理されてくるでしょう。
転職エージェントは必ず転職をしなければならないことはなく、「まずは話を聞いてみたい。」といった希望にも対応してくれます。
最後に
いかがでしたか?今回は、看護師が看護師以外の職種を希望する場合の転職事情と、看護師以外の職種を紹介しました。
数ある国家資格の中でも、看護師は非常に強力なライセンスの1つです。
まずはその資格を活かした職場で働くことを念頭におき、他職種への変更をする場合でも、自分らしく後悔のない働き方ができるようにしましょう。
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