需要の高さと人手不足から職場復帰が簡単だと言われる看護師という職種ですが、本当にそうでしょうか。

実は、看護師の職場復帰は思っているより簡単ではありません。

特に、ブランク期間や年齢によっては復帰や再就職活動が難航する可能性もあるのです。

そこで今回は、なぜ看護師の職場復帰が難しいのか、簡単に職場復帰するためにはどうすればいいのかを解説します。

看護師の職場復帰は簡単?難しい?

女性割合が圧倒的に多い看護師では、出産、育児で職場を離脱する方も多いでしょう。

勤務先の育休制度を利用する人だけでなく、一旦退職して子育てが落ち着くことを待つ看護師も大勢います。

では、看護師の職場復帰についてはどうでしょうか。

ここでは、看護師の職場復帰が簡単なのか難しいのかについて探っていきます。

看護師の職場復帰が簡単という声

人手不足の看護師は「看護師免許」という絶対的なものがあるため、職場復帰が比較的簡単だと言われることもあります。

確かに、専門性も特別なスキルも持たない職種に比べるとニーズが高く求人も多いため、すんなりと復帰できる人もいます。

勤務先の育休制度を利用する場合も、職場復帰のタイミングで職場長や人事部としっかり面談がおこなわれ、復帰後の働き方についても丁寧な説明があるでしょう。

医療機関にとっては、看護師人材が不足する中、すでに現場経験がある看護師の職場復帰は望ましいことなので、復帰後のことまで考えてくれることも多いです。

このように、看護師の職場復帰が簡単だと言われる理由は、人手不足と求人数の多さに起因することがほとんどです。

看護師の職場復帰が難しいという声

その一方で看護師の職場復帰は難しいとの声もあります。

特に、復帰時の年齢やブランク期間によって大きく左右されるとの指摘は数多く聞かれます。

復帰が難しい人の中には、別の職場に再就職する人、休職制度を利用して同じ職場に復帰する人を含みます。

再就職する場合、ブランク期間が1年程度であったり、20代や30代前半の看護師ならば比較的復帰がスムーズですが、そうでない場合には難航することもあります。

特に、30代後半で役職に就いていない看護師の場合は、正社員で戻ってくる人は多くなく、パートになる人も見られます。

また、医療現場では育休取得をしやすい環境が整備されているため3年間育休を取得する看護師もいますが、3年の育休取得後、同じ現場に戻ってこないケースも意外と多いのです。

看護師の職場復帰が難しい理由とは?

看護師の職場復帰が簡単だと思っている方にとっては、看護師の職場復帰が難しいと言われてもイメージが沸かないかもしれませんが、実際にその立場になってみると分かります。

一体なぜ看護師の職場復帰は難しいのでしょうか。

ここからは、看護師の職場復帰が難しい理由を解説します。

医療はめまぐるしく進化している

看護師は専門性が高い職種ですから、「手に職」の代表格として安定的な魅力があります。

しかし、職種としての安定性は、「専門性を保ち続けること」が大前提となります。

医療はめまぐるしく進化しており、第一線で活躍する看護師ですら、勉強の日々です。

ブランク期間が長くなってしまうと、復帰を考える頃には医療技術だけでなく、病院の体制が大きく変わっていることもあります。

若い看護師たちが最新技術を身につけ、新しい体制の中テキパキと動き回っているのに対し、自身は過去に手にしたスキルのみで戦わなければなりません。

もちろん、復帰後に現場経験を通じて手にすることは十分可能ですが、復帰当初の苦労は考えられます。

現場感覚を取り戻すのが大変

復帰後に苦労しないよう、休職中にも勉強を続けている看護師も大勢います。

医療の現状を把握したり、法制度の確認など知識的なことはカバーできますが、看護スキルは実際に働くことでしか保つことができません。

たとえば注射や点滴は看護師の定番業務ですが、数をこなすことで上達していくものなので、ブランク期間が長いと感覚を取り戻すまでに時間がかかります。

これまで家庭中心で生活していた看護師は心身ともに比較的緩やかな時間を過ごしていたかもしれませんので、医療現場のスピード感に慣れるのも大変です。

もちろん、家事育児はやることが多く時間効率を考えた動き方をしていたでしょうが、それでも、仕事と家庭との両立は、よりハードになることが多いです。

命を扱う業務へのプレッシャー

看護師の職場復帰が難しい理由には、本人の心理的問題もあります。

看護師は命を扱う責任の重たい仕事です。

一旦現場を離れることで、またあの強いプレッシャーの中働き続けることに自信を失ってしまうのです。

新人看護師の頃は、目の前の仕事だけに精一杯で、プレッシャーを感じる暇もなかったかもしれません。

若さゆえの度胸もあったでしょう。

しかし、復帰時には年齢も上がり、社会人経験を通じてさまざまな「怖さ」も知っているがゆえに、看護師という仕事の責任が重たくのしかかってくるのです。

心理的に負荷をかけながら仕事を続けていく自信がなく、復帰のタイミングで別職種への転職をする看護師もいます。

以前より体力が低下している

看護師は常に動き回っていますし、夜勤による不規則な勤務形態もきつい仕事です。

体力が必須の職種だと言えるでしょう。

復帰時にまだ20代や30代前半ならいいのですが、近年は出産時年齢が上がってきています。

子供が3歳になるまでは復帰しない人も多いため、場合によっては復帰を考えるタイミングで30代後半、40代になっていることもあるでしょう。

そうなると、体力の衰えは避けて通れません。

若い頃に比べて自分自身の体力が低下していることに加え、仕事と家事育児の両方があり、環境も変わっています。

結婚前に比べて体力が落ちているのに、全体的には体力が必要なことが多くなっているため、思っている以上に仕事がきつく感じます。

一旦復帰しても、想像以上に仕事がきつく、すぐに辞めてしまう看護師もいるのです。

昔のような意欲が持てないことも

看護師を志した理由は「人の役に立つ仕事がしたい。」「幼い頃に自身や家族が助けられて素晴らしい仕事だと思った。」などさまざまです。

多くの方は看護師の仕事内容や社会貢献度に魅力を感じ、高い意欲をもって看護師になっています。

新卒で看護師になり、患者さんの助けになるために精一杯走り続けてきたことでしょう。

しかし、長期のブランク期間ができてしまうと、モチベーションが途切れることも多くなります。

年齢的に優先させたいものが変わっており、若い頃のように看護師業に魅力を感じなくなる人もいます。

夜勤ができない看護師も多い

看護師が職場復帰を考えるタイミングとしては、子供が1歳、3歳、小学校入学時などです。

新生児を育てる頃よりは子育てがひと段落してはいるものの、当然ながら復帰後も子育ては続きます。

看護師が正社員として働く場合、夜勤や残業をすることが基本です。

特に病院の正社員で働く場合は避けて通れないでしょう。

小学校就学前の子供がいる場合、条件を満たせば夜勤免除の申請も可能ですが、育休を最大年数取得し、さらに夜勤免除の申請するのはためらわれる人も多いです。

また、実際問題として、子供がまだ小学生のうちは夜遅くに一人で留守番させることはできないでしょう。

特に、配偶者が夜勤のある仕事をしている場合や、自身や配偶者の両親から支援がない場合は難しいはずです。

こうした背景があり、やはり看護師を続けることは難しいと考える人が多いのです。

医療機関側の不安もある

最後の問題としては、勤務先である医療機関側の不安です。

医療機関は人手不足の看護師を歓迎しますが、ブランク期間が長かったり、復帰時の年齢が高かったりすると話は別です。

同時期に応募してきた看護師がいれば、やはりブランクがなく、活動的に動き回れる若い看護師を選ぶでしょう。

強い力を持つ看護師免許とはいえ、同じ看護師免許を持つライバルと比べてしまうと特筆すべきスキルや経験も必要になります。

同じ職場に復帰する場合も、育休期間を長めに取得していた看護師については、復帰職場について希望が聞き入れられないこともあります。

実は復帰が難しい看護師はどうすればいい?

ここまで、看護師の職場復帰には難しい側面があることをお伝えしてきました。

では、看護師は一体どうすればいいのでしょうか。

看護師が考えたい復帰前後のキャリアについて解説します。

看護師は育休制度利用で早めに復帰を

まず、結婚を理由に今の職場を辞めることは、配偶者の勤務先が遠方であるなどよほどの理由がない限りは辞めた方がいいです。

結婚を機に仕事量をセーブしたい場合は、パートになるなどして看護師職を続けておきましょう。

どうしても辞める場合は早めに次の就職先を見つけることが大切になりますが、結婚退職した看護師は近い将来妊娠の可能性が高いため、就職活動のハードルが高くなることは否めません。

現在結婚を理由に辞める人は減ってきており、あまりいい印象を与えないこともあります。

一番いいのは、結婚しても看護師を続け、妊娠したら今の職場で産休、育休を利用することです。

そして、できれば1年、保育園に入れない場合は1年半を目安に復帰しましょう。

3年以上取得すると復帰時には職場環境が大きく変わっており、新しい職場に転職するような感覚になってしまいます。

また、パートであっても要件を満たせば育休取得は可能です。

パートを辞めてしまう人も多いですが、新たに探すより同じ職場復帰の方がストレスが少ないため、まずは休職利用ができるかを総務課に相談してみましょう。

制度利用やパートが難しいなら夜勤&残業がない職場を早めに探す

女性が多い看護現場では育休取得しやすい環境であることがほとんどですが、職場環境によっては、申請しにくいこともあるでしょう。

職場長や職場の理解がない場合や、個人クリニックなど規模的に代替要員を雇うことが難しい場合もあります。

パートではなく正社員で働き続けたい場合も、今の職場では家庭との両立がどうしてもかなわないことも。

その場合は、転職に向けて早めに動きだしましょう。

ブランクは長くなるほど転職が難しくなります。

すでに妊娠中の場合は具体的な応募はできませんが、自己分析やキャリアの棚卸、企業研究などやっておけることは山ほどあります。

出産後のキャリアについてしっかり考えておくことも転職活動の1つですよ。

夜勤や残業がない職場や働き方にどんな選択肢があるのかリサーチしておき、ブランク期間をできるだけ作らない方向で考えておくことが大切です。

転職活動は転職エージェントを利用すべき

看護師が転職活動するなら、看護師求人に特化した転職エージェントの利用を検討しましょう。

復帰後のキャリアの方向性を一緒に考えてくれたり、忙しい本人に代わって適切な求人を探してきたりしてくれます。

書類作成アドバイスから面接対策まで幅広くサポートしてくれるため、復帰に不安がある方は利用するといいでしょう。

最後に

いかがでしたか?今回は、看護師の職場復帰が難しい理由を紹介しました。

復帰が簡単だと思われやすい看護師ですが、ブランクや年齢によっては厳しさを感じることがあります。

どんな場合でも復帰が簡単ではないとしっかり認識し、自身のキャリアについて深く考えておきましょう。