内定をもらって具体的な手続きに入ると、転職先から「退職証明書」という書類の提出を求められることがあります。
転職が初めての人や事務職以外の仕事に携わっている人の場合、聞き慣れない書類かもしれませんね。
そこで今回は、退職証明書の基礎知識を紹介していきます。
転職先から退職証明書を求められる理由や申請方法などをよく理解し、提出依頼があっても慌てないようにしましょう。
目次
そもそも退職証明書ってどんな書類?
退職証明書は、退職したことを証明する書類で、労働者の請求によって企業に作成義務があるものです。
では、退職したことの証明とは一体どんなことなのでしょうか。
これについては、労働基準法で、下記の項目の証明を求められた場合は遅滞なく交付することが義務づけられています。
- 1.使用期間
- 2.業務の種類
- 3.その事業における地位
- 4.賃金
- 5.退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)
5つの項目についてすべて証明するわけではなく、「労働者が請求した項目について」証明することになっています。
たとえば、使用期間と業務の種類のみ請求されたのに、企業側の勝手な判断で賃金や退職理由まで記載してはならないということです。
転職先から退職証明書を依頼されるケース
では、転職先から退職証明書を求められるのはなぜなのでしょうか。
内定者に対して退職証明書を依頼する企業はそれほど多くありません。
基本的には内定者から提出された履歴書や、入社手続きの際に提出してもらう雇用保険被保険者証などで履歴が確認できるからです。
ただ、過去に内定者が経歴を詐称していたことがありトラブルを回避したい、給与交渉の際に提示された賃金に嘘がないか確かめたいなど、「念のため」依頼することはあります。
見ず知らずの応募者を雇う際のリスクヘッジとして、退職証明書で確認するということですね。
公的機関が発行する書類ではありませんが、前の会社の社印が押されているため、それなりに信憑性が高い書類になります。
退職証明書を発行してもらう方法
退職証明書は前の会社に作成を依頼するわけですが、実際に作成してくれるのは総務課など従業員の事務手続きをおこなう部署になります。
担当がよく分からないという場合は、退職時に手続きをした部署に聞いてみましょう。
依頼時には、記載してほしい項目(前述した5項目のうちいずれか)と、いつまでに作成してほしいかを必ず伝えるようにします。
記載してほしい項目については、転職先に確認するのが確実です。具体的に何を知りたいのか、こちらでは判断できないからです。
年度替わりの時期など事務課は繁忙期になるため、その場で作成してもらえないことも。
余裕をもって依頼するようにしましょう。
また、郵送してもらう場合は、切手つきの返信用封筒に住所を書いてから依頼するのが、最低限のマナーでしょう。
退職証明書についてよくある誤解
退職証明書は、退職時にもらうさまざまな書類と混同されたり、どんな項目でも自由に記載してもらえるのではないかなど誤解されやすいものでもあります。
ここからは、退職証明書についてよくある誤解を紹介します。
希望しなければ作成されない
まずは大前提として「労働者の請求によって」企業に作成義務が生じる書類です。
つまり、希望しなければ勝手には作成されないということ。
「退職書類の中にそんなもの入っていなかった!」とは思わないようにしましょう。
離職票とは別もの
退職時に会社からもらう書類はいろいろありますが、中でも離職票と混同されやすいものでもあります。
理由としては、失業手当の申請時に離職票が手元にない場合、退職証明書で代用可能なケースがあるからです。
離職票は企業が作成したあとハローワークに提出し、一旦企業に戻ってきてから退職者に送付という流れになります。
退職してから離職票が手元に届くには1~2週間ほどの期間が必要なため、早急に失業手当の手続きをしたい場合などに使われるのです。
ただし、離職票と退職証明書はあくまでも違う書類。
混同しないようにしましょう。
退職前に証明してもらうことはできない
内定がでて、まだ今の会社を辞めていないタイミングで「早急に退職証明書をもらってきてください。」と言われることがあります。
経歴詐称などがあれば、入社前に確認しておきたいという考えがあるのでしょう。
これは、転職先の担当者に知識がない場合などに起こり得ることですが、正しくは、「退職予定の書類」になります。
退職の事実が発生する前に退職を「証明」することなどできず、しっかりした会社ほど気にします。
起きていない事実を社印を使って証明することは、とても無責任な行為だからです。
「退職証明書」ではなく、「退職予定証明書」などの別名称でも構わないか転職先に聞いてみましょう。
細かい話のようですが、会社からスムーズに書類を作成してもらうためにも大切なことです。
永久に発行義務があるわけではない
退職してしばらく仕事を離れて再就職する場合など、かなり前に働いていた会社の退職証明書を依頼されることがあります。
ここでの注意点としては、企業側に発行義務があるのは退職から2年という点です。
2年経つと時効が成立しており証明してもらえないことがあります。
この場合、まずは退職した会社に確認してみましょう。
2年以上前に辞めた人であっても、親切に対応してくれる会社は多くあります。
時効を理由に作成してもらえない場合は、転職先にその旨説明しましょう。
前職に発行義務がない以上、わかってもらえることがほとんどです。
内定後の困りごとは転職エージェントに相談
無事に内定をもらった後でも、今回ご紹介したような退職証明書の発行依頼など、「この場合はどうすればいいの?」という困りごとが発生することがあります。
周囲に分かる人がいればいいのですが、いない場合はどこに聞けばいいのか悩んでしまいますよね。
転職エージェント経由で応募している場合、内定後に困ったことがあっても相談することができます。
転職エージェントは転職して働き始めるまでをサポートしてくれるサービスなので、内定後の相談にも乗ってくれます。
安心して働き始めることができるよう、気兼ねなく質問してみましょう。
最後に
いかがでしたか?今回は、退職証明書に関する基礎知識を紹介しました。
転職先から必ず求められる書類ではないからこそ、いざというときに慌ててしまうことがあります。
求められた書類をスムーズに提出できるよう、ぜひ覚えておきましょう。