女性は20代後半くらいから、「どんなキャリアを目指していくか?」と問われることになります。
結婚や出産も気になる年頃で、近い将来ですらどうなるか分からないのに、「そんなこと聞かれても困る。」と感じる女性も多いのではないでしょうか。
気持ちはよく理解できますが、いつまでも曖昧にすることはできず、どこかのタイミングではキャリアを選択すべきときがやってきます。
女性のキャリアには、正社員を続ける、パートや派遣を選ぶ、転職や独立するといった様々な選択肢があります。
正社員に限って言えば、「管理職を目指すか、このまま専門性を磨いて専門職になるか。」の2つが主な選択肢になるでしょう。
どちらを選ぶべきかを迷ったら、両者のメリットデメリットを比較してみることが必要です。
そこで今回は、女性が正社員キャリアを選んだ場合に提示される管理職と専門職の道について、それぞれのメリットデメリットを紹介します。
女性が管理職か専門職の選択を迫られる理由
女性は男性に比べてさまざまなキャリアの選択肢があり、その中で「正社員として働き続けること」を選択した場合、主に管理職か専門職かの選択を迫られることになります。
ここで感じる疑問としては「管理職も専門職もどちらも目指さず、正社員として今の働き方をキープしたいけどそれではだめなのか?」ということ。
ここでは、女性が管理職と専門職の選択を迫られる理由を解説します。
年齢と共に給与が上がっている
管理職になる、高い専門性がある専門職になる、いずれも自身が会社に提供できる価値が上がっています。
どちらも目指さず現状維持を希望した場合、会社への貢献はそのままで、定期昇給などによって給与だけが上がっていくことになります。
現在の日本企業には年功序列型の評価制度が色濃く残っていますから、一般的には新人時代より給与が高くなる女性が多いでしょう。
年齢と共に給与が上がる分、提供できる価値も同時に増え続けていけばいいのですが、ある一定の年齢になると提供できる価値が頭打ちになります。
「昇給は望まないから今の仕事をしたい。」と思っても、会社の給与システムを勝手に変えることはできず、通常は望む望まないにかかわらず昇給していきます。
年齢と共に上がる給与をもらうためには、同時に企業への価値提供を増やし続けていかなくてはならないということなのです。
年齢と共に衰える部分もでてくる
年齢を重ねることで経験値が増え、冷静な判断力、経験から提案できる豊富なアイデアなどが磨かれていくでしょう。
一方で、年齢と共に衰える部分もでてきます。
新しい仕事を覚える記憶力、適応力、柔軟性、さらに女性はホルモンバランスの乱れなどで精神面への影響もでてきます。
経験値が増えることで発揮できる能力は、主に管理や指導的な立場でこそ役立つものであり、現場の一般社員としての能力は、若い人の方が有利になるでしょう。
年齢とともに増えるものと減るものがある以上、活躍ステージも同時に変え続けていく必要があるということです。
社員自身も成長を続けなくてはならないのが雇われるということ
現代は、大手企業でさえも厳しい競争を余儀なくされ、常に変化や成長を求められる時代です。
企業が自社の社員にも変化を受け入れてもらい、成長を求めるのは当然のことでしょう。
正社員は安定していると言われることがありますが、「一度入社すれば一生安泰」ではありません。
正社員として長く働き続けることは、「現状維持が許されない厳しさ」もあると知っておきましょう。
女性が管理職になるメリット
管理職か専門職の選択を迫られる理由がわかったところで、次に「どちらを選ぶべきか」を考える必要があります。
まずは、管理職を目指す場合を想定し、女性が管理職になったときのメリットを見ていきます。
仕事へのやりがいを感じられる
管理職になれば仕事の幅は広がり、責任ある仕事を任されるようになり、視野を広くもって仕事にも人にも接することになります。
管理職として部下を育てたり、自分のチームを作る喜びもあります。
一般社員でもやりがいある仕事はできますが、管理職ではまた違ったやりがいを感じることができるでしょう。
女性が管理職になって仕事が余計に面白くなったというのはよく聞かれる話で、仕事へのモチベーションを維持し続けることも可能になります。
ワークライフバランスのコントロールが可能になる
管理職になると自身に裁量権があるため、職場全体における仕事の進め方や時間管理を自分の工夫次第で変えることができます。
管理職になることの大きなメリットは、自分でコントロールできる立場になること。
もちろん中間管理職の場合は上からの制限を受けることにもなりますが、一般社員の比ではなく、職場内においては圧倒的な自由度があります。
女性が管理職になるとワークライフバランスが保てないと思う方は多く、実際に保てない人もいますが、保てる環境が得られることもまた事実。
最初の頃は大変かもしれませんが、次第に自分が望む働き方にシフトしやすくなっていきます。
女性管理職ならではのいいチームが作れる
女性管理職が作り上げたチームは、女性ならではの2つのメリットを活かしたチームになります。
それは、協調性と気配り力。
女性は立場問わず協調性を大切にする傾向にあり、女性が管理職だと、チーム内が協力しあう雰囲気のいいチームになります。
相手への細やかな気配りができ、社員同士が気持ちよく仕事ができるだけでなく、対顧客や消費者にとっても、かゆいところに手が届く商品やサービスの提供につながります。
女性目線で開発した商品が大ヒットした例は実に多くあり、女性たちが中心となって開発に携わっています。
社員が上司に相談しやすい職場になる
女性が管理職になることは、他の社員にとってのメリットもあります。
女性は元来持つ優しさや母性があるため、女性管理職に対しては悩みや不安を相談しやすいのです。
男性管理職の場合は、判断を仰ぐといった業務に直結する相談はできますが、論理的思考の男性管理職に対して漠然とした悩みや不安を口にすることは難しいというもの。
その点女性管理職は、いい意味で感情的視点を持ち合わせているため、形にならない悩みや不安への理解があるのです。
部下の性別問わず相談しやすいメリットがありますが、特に女性部下に関しては、体調不良や家庭の事情など、女性ならではの相談がしやすいのも魅力です。
女性が管理職になるデメリット
続いて、女性が管理職になることのデメリットを考えてみましょう。
「自分には無理。」「自信がない。」といった曖昧な理由で管理職になることを拒む女性は多いですが、具体的にイメージすることが大切ですよ。
管理職昇進のチャンスが少ない
管理職の枠は一般社員枠に比べて圧倒的に少なく、何十人といる部署の中で数人しか管理職になれません。
女性であることを理由に管理職登用に難色を示されるケースは減ってきてはいますが、もともと少ない枠を競い合うことに変わりはありません。
優秀で家庭内におけるサポートをしっかり受けられる男性社員たちと争うため、家庭内における役割も担う女性にとっては、時間的制約などのハンデもあるでしょう。
部下の失敗に責任を負うストレス
管理職になれば、部下の失敗に責任を負うことも仕事のうちですが、女性は他人の失敗どころか、自分自身の失敗に責任を負うことも嫌います。
それ自体は悪いことではなく、失敗を負いたくないから慎重に仕事をしたり、ミスのないように何回も見直しをするといった、女性ならではの完璧な仕事ぶりにつながっています。
ただし、自分の失敗を恐れる女性たちにとって、部下たちの失敗に責任を負うことは相当なストレスになるでしょう。
自分の仕事なら自分の工夫で何とかできたとしても、他人のことはうまくコントロールできないといもの。
管理職になったとしても、部下の細かいところに不満が募ることになり、ストレスを感じやすくなります。
やりたい仕事ができなくなる
現代女性は仕事に対して面白味を感じている方が多くいますよね。
現場職は、直接消費者や顧客の話が聞けたり、売上や契約件数など目に見える成果をだしやすいため、とにかく現場が好きという女性もいるでしょう。
せっかく面白くなってきた現場職を離れて管理職になると、自分のやりたい仕事ができないというデメリットがあります。
プライベートの時間がなくなる
一般社員の頃は、仕事終わりに遊びに行ったり定期的な習い事をする時間的・精神的な余裕があったかもしれません。
特に女性はプライベートを充実させることに喜びを感じる傾向にあるため、自分の時間があることが精神的安定につながります。
管理職になると定時過ぎに重要な接待が入ったり、トラブル時には最後まで職場に残る責任もあります。
多少早く帰れるときでも、仕事のことが気になって心が休まらないこともあるでしょう。
女性が管理職になると、プライベートの時間がなくなることをデメリットだと感じる方は多いです。
健康を害することがある
忙しい女性管理職は自宅でゆっくり自炊したり、夜早く寝ることが難しいことが増えてきます。
女性は比較的真面目で責任感が強い方が多いため、管理職になった責任感から手を抜くことができず、自分の健康を犠牲にしてでも仕事を頑張ってしまうケースが見受けられます。
管理職になった女性の話を聞くと、「外食やコンビニ弁当が増えた」「睡眠時間が減った」などで、健康的な生活ではないことを自覚している方が多いです。
結婚や出産をしない選択肢
結婚や出産をしない女性は大勢いますし、それ自体は単なる選択肢の1つに過ぎませんのでデメリットになるわけではありません。
ただし、女性自身が「管理職として働くために、私は結婚も出産も諦めた。」と思う人もいて、そうなると管理職になったことを後悔することにつながります。
結婚や出産を望む女性にとっては、管理職になることで、その望みが叶わない可能性もあるでしょう。
実際のところ、女性管理職の未婚率は男性に比べて高い傾向にあり、子供がいない管理職女性は本当に多いです。
男性管理職の場合は結婚や子供がいる方が一人前だと判断され、管理職登用にも有利になるのに対し、女性は真逆。
結婚も子供もおらず仕事だけに集中できる女性の方が有利になってしまうのが現状です。
女性が専門職になるメリット
ここからは、正社員女性が提示されるもう1つの選択肢、専門職になることを見ていきます。
女性が管理職ではなく専門職になるとどんなことが起きるのでしょうか。
まずは、女性が専門職になるメリットを紹介します。
好きな仕事にずっと携わることができる
専門職になれば、自分が好きで得意な分野の仕事に携わり続けることができます。
好きな仕事なので、専門性を磨くにしても向上心を持ち続けられるのもメリットです。
専門職の方は男女問わず、専門スキルを磨くことに積極的な傾向にあり、そのことからも、好きな分野で働くことで向上心を保ちやすいことが分かります。
即戦力として異動や転職でも有利
専門職になるとキャリアアップが難しいと言われることがありますが、異動や転職によってキャリアアップすることは可能です。
より高い専門性が問われる部署や企業に転職することにより、評価が受けやすくなり、やりがいや年収アップにもつながるでしょう。
異動や転職の場合は、専門職は分かりやすい強みがあるため、アピールがしやすく有利になります。
独立開業やフリーランスとして活躍できる
女性のキャリアには、出産や家族の事情でキャリアを一旦中断させる、遠方に引っ越すなどのあらゆる変化が起きる可能性があります。
専門職として専門性を磨いておくと、復帰や就職に有利なだけでなく、自分で独立開業やフリーランスになって稼ぐという選択肢を持つことができます。
女性が専門職になるデメリット
女性が専門職になることはデメリットもあります。
「管理職が嫌だから専門職になる。」と逃げの選択をすることには少し注意が必要ですよ。
女性が専門職になるデメリットはどんな点でしょうか。
視野が狭くなる
専門職は専門性を突き詰めていくため、1人のビジネスパーソンとして見たときには、視野が狭い人材になるリスクがあります。
専門職とはいえ、企業は他職種との連携や理解が必須ですから、視野が狭くなることにより他職種とのトラブルや軋轢が生じることもあるでしょう。
結局は会社貢献につながらない、自分のやりたい仕事ができなくなる可能性もでてきます。
企業内での専門領域がなくなることがある
吸収合併や事業縮小などによって、自身が関わる専門領域がなくなる可能性もあります。
そうなった場合に今の会社で働き続けるためには、新しい仕事を一から覚える必要がありますし、転職するにしても、専門職はピンポイントの募集を探さなくてはありません。
「この専門職がほしい!」という求人には有利は専門職ですが、そもそも求人が限定されるため少なかったり、幅広い仕事を担当してほしい求人に対しては、高い専門性が邪魔になることもあるのです。
専門性が高い割に賃金が上がらないことがある
企業によっては専門職への理解が低いケースがあります。
専門職は、営業や販売のように分かりやすい実績がない場合が多いため、いくら高い専門性を持っても評価や給与に反映させるのが難しいのです。
企業が人件費をかけたがるのは、重要ポストである管理職と、専門職の中でも業績の核となる部門。
たとえば、医療業界における医師や看護師といった高収入の専門職は分かりやすい例でしょう。
間接的に企業利益に貢献している専門職の場合、上層部が専門性を理解できておらず、社内における専門分野の確立がされていないとなると、賃金アップにつながりにくくなります。
女性が管理職か専門職か迷ったときの考え方
ここまで女性が管理職と専門職のいずれかを選んだ場合のメリットデメリットを紹介しましたが、それを自分の中に落とし込み、決断の判断材料としなくてはなりません。
女性が管理職か専門職かの選択を迫られたときはどんな風に考えていけばいいのでしょうか。
自分が望む働き方や仕事との向き合い方を整理しよう
まずは自分自身の考察をじっくりおこなうことが大切です。
周りや女性の先輩たちと同じ道を当たり前に行くのではなく、自分の望む働き方や仕事との向き合い方はどうなのか、自身の価値観を確かめてみることが必要でしょう。
頭の中であれこれと考えるだけでなく、紙に書きだして視覚化することで段々と整理されてきますよ。
結婚している場合は配偶者の意見も聞いてみる
すでに結婚している女性であれば、配偶者に相談してみることも必要です。
夫婦はよく仕事と家庭とのバランスや役割分担において衝突しますから、早い段階で夫婦の認識をすり合わせておくべきです。
特に女性が管理職を目指したいと考える場合は、夫の理解と協力は不可欠になります。
価値観とメリットデメリットを照らし合わせる
自身の価値観や配偶者の考えを把握できたら、今回紹介したメリットデメリットと照らし合わせてみましょう。
自分や家族にとっての大切な基準について、どちらの働き方をすれば満たすことができるでしょうか。
より分かりやすく判断したいなら、メリットデメリットごとに、自分が重視したいポイントに点数をつけてみるのもいいでしょう。
専門職を選ぶならその専門性の価値を調べてみる
管理職ではなく専門職としてやっていこうと思う場合、その専門性の将来的な価値について調べておくことも大切です。
最近は「10年後にはなくなる仕事」といったテーマで、人工知能にとって代わられる職種が紹介されたりしますが、そうした「将来的には何かで代替がきいてしまうのか。」を考えることも必要になります。
専門性を磨いて転職するにしても、転職市場でどのくらい評価の対象になる専門性かどうかもチェックしておくべき。
目指したい専門職の市場価値を判断したいなら、転職エージェントなどのプロにキャリア相談をしてみるのもおすすめです。
転職市場の状況を一番よく分かっているプロだからこそのアドバイスは役に立つでしょう。
最後に
いかがでしたか?
今回は、女性が正社員キャリアの中で管理職か専門職かのいずれかを選ぶ場合のメリットデメリットを紹介しました。
一般的に考えられるメリットデメリットだけでなく、自分にとってはどうなのかを考えてみることが大切です。
女性は待ったなしで選択を迫られることが必ず来ますから、ぜひ一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。