「シューフィッター」という職業があるのをご存じですか?
足と靴の知識や専門スキルを兼ね備えた専門家として、近年注目が高まっている職業です。
日本は足の健康や靴については後進国だと言われている一方、健康志向は加速度的に高まっています。
今後は健康のために足や靴の専門知識を得たいと考える消費者が増える可能性が高く、職種としての将来的なニーズにも期待ができるでしょう。
そこで今回は、「シューフィッターが気になる!」「転職してシューフィッターになることはできるの?」といった疑問を持つ方向けに、シューフィッターの仕事内容や資格概要、転職事情を解説します。
目次
シューフィッターとは?仕事内容や資格概要を解説
シューフィッターの名前は聞いたことがあっても、具体的にどんな仕事をするのか、必要な資格はあるのかが気になりますよね。
まずは、シューフィッターの仕事内容と資格の概要を解説します。
シューフィッターの仕事内容は?
シューフィッターとは、足の疾病予防の観点から最適な靴を提案、販売をする靴の専門家です。
足と靴に関する専門知識と靴合わせの技能によって、足の病気を予防して快適な歩行につなげるための靴販売やアドバイスをおこないます。
具体的には、計測用具を用いて足の高さや形などを測定し、その足のタイプに合った靴の形を提案し、顧客の好みのデザインの中でもっとも適した靴を選ぶなどします。
そのほか、靴の製法や特徴、保管や手入れ方法、歩き方などのアドバイスもおこないます。
足へのフィット感を高めるための微調整を施したり、店舗やフィッティングで得た情報を製靴業者へのフィードバックすることで、靴の改良にもつなげるといった仕事もあります。
シューフィッター資格とは?
シューフィッターは「足と靴の健康協議会(FHA)」が養成・認定している資格です。
「プライマリー(初級)」「バチェラー(上級)」「マスター(修士)」の3つのグレードがあり、そのほかにも「幼児こども専門コース」「シニア専門コース」を受けることで専門性を深めることができます。
上級コースの受講資格として初級認定が必要になるため、まずは初級コースから受講することになります。
受講資格はありませんが、認定基準として実務経験3年以上が必要になるため、足と靴の関連業種や医療機関等で働きながら取得することが一般的です。
参照:一般社団法人 足と靴の健康協議会(FHA)
http://fha.gr.jp/
また、「日本フットウェア技術協会」が認定する資格として「スポーツシューフィッター」もあります。
こちらは主にスポーツ用品店や医療機関などでシューズのアドバイスやインソールの処方をおこなうことを想定しており、講義内容もスポーツシューズやインソールに関わる内容が多くなります。
「ベーシック」「アドバンス」「マスター」「ポドローグ」の4つのグレードがあり、ポドローグまで取得すると病院やクリニックなど医療施設への転職でアピールも可能になります。
参照:一般社団法人 日本フットウェア技術協会
http://www.jaft-foot.org/
シューフィッター資格を取得するのはこんな人
シューフィッター業務を専門的におこなう方はまだまだ少ないため、現状では何らかの職種として働きながらシューフィッターの知識や技能を活かす人が多くなります。
シューフィッター資格を取得する方には、下記のような職業の方たちがいます。
- 靴、アパレル販売員
- フィットネストレーナー
- フットケア、医療関係者
- 靴の製造、卸、資材関連企業の社員
- 靴修理業者
シューフィッターが必要とされる背景
シューフィッターは広く知られている職種ではありませんが、今後はニーズが高まることが予想されます。
シューフィッターが必要とされる背景にはどんなことが考えられるのでしょうか。
消費者の健康志向は高まる一方
まず第一に消費者の健康志向があります。
健康のために歩くことを意識されている方は多いですが、合わない靴で長時間歩くことによって、靴擦れや足の痛み、足の変形や腰痛などの体調不良にもつながります。
歩くには靴が必要で、自分の足にフィットした靴を履くことこそが健康への近道なのです。
しかし、自分に合う靴がどんなものなのかは、専門知識がない一般消費者には、感覚でしか判断できない側面がありますよね。
そこで求められるのが靴の専門家であるシューフィッターなのです。
健康寿命こそが大事な時代
日本の平均寿命は世界的に見て高い水準にありますが、実際問題としては、寝たきりで介護が必要であったり、医療費がかかるなどして、手放しで喜べない事情もあります。
最近では平均寿命よりも健康寿命を延ばすことこそが大切だと言われており、高齢になっても自立した生活をおこなうことが求められています。
年齢を重ねていくと、整形外科疾患や歩行障害になる方も増えてくるため、足に合った靴で適切な歩行をして体の基礎を整えることが重要でしょう。
シューフィッターは健康寿命を延ばすためにも一役買う職業なのです。
靴売り場や販売店からも必要とされている
シューフィッターは消費者のためだけでなく、靴売り場や販売店からも必要とされています。
シューフィッターがいることで店舗の信頼性がアップし、業績にもつながりやすくなるからです。
同じお金をだして靴を購入するとしても、靴の専門家がアドバイスしてくれる店舗と、在庫チェックやレジを担当するだけの販売員がいる店舗、どちらで購入したいと思いますか?
専門家が適切な靴を提案してくれる方が、安心して購買に踏み切ることができるはずです。
シューフィッターとしての転職先
シューフィッターはどんな場所で働いているのでしょうか。
シューフィッターを目指す方は転職先についても知っておきましょう。
百貨店の靴売り場、靴専門店
シューフィッターの活躍場所として多いのが、百貨店や靴専門店です。
百貨店の場合は靴売り場だけでなく、アパレルブランドの販売員として働き、自社商品の中で靴を求めるお客さまに対して知識を活かすことになります。
百貨店やアパレル販売員の中でも、特に男性向けの靴ついてはシューフィッター資格が活かしやすい傾向にあります。
男性顧客は女性に比べて機能性やフィット感、素材など、細かいところにこだわる傾向があり、販売員に専門知識があると喜ばれやすいからです。
靴専門店は靴購入を想定したお客さまばかりなので、シューフィッターとしての知識や技能をより活かすことができます。
お客さまも靴専門店の販売員に対しては専門的知識を求めるため、アドバイスや提案を受け入れられやすいと言えます。
スポーツ用品店
スポーツにおける靴の重要性は、スポーツ経験者は誰もが認識したことがあるはずです。
通常の歩行以上に足に負荷がかかるスポーツにおいては、いかに足にフィットして負担が少ない靴を選ぶかが重要で、ケガの防止や高いパフォーマンスにつながります。
スポーツ用品店にシューフィッターがいれば、利用者にとって非常に心強い存在となります。
フィットネスジム
フィットネスジムはトレーニングの際に履く靴を貸与、販売をしています。
トレーナーに靴の専門知識があれば、競技に適した靴のタイプやサイズについて最適なアドバイスができるでしょう。
シューフィッターとしての知識や技能を主に使った仕事とはいきませんが、トレーナーやジムの信頼性を高めることに一役買ってくれることになります。
医療機関
病院や整形クリニックなどの医療機関で働くには、シューフィッター以外の専門資格が必要不可欠です。
医療知識とシューフィッターとしての知識を併せ持つことで、より専門的知見から利用者へのアドバイスをおこなうことができます。
医療業界はニーズが高く将来性が高いのも魅力ですね。
製造業
シューフィッターは消費者に対して直接靴販売や提案をおこなう場だけでなく、靴の製造に関わる際にも役立ちます。
消費者の足の悩みを把握し、日本人の足に合う靴製造をおこなうことで、自社商品の認知度や人気を上げることにつながるでしょう。
シューフィッターの給与や勤務形態は?転職事情を解説
転職を考えている方にとっては、シューフィッターとしての求人がどの程度あるのか、給与相場や勤務形態も気になるところでしょう。
ここからは、シューフィッターの転職事情を紹介します。
シューフィッターの求人はどれくらいある?
シューフィッターを限定して募集されている求人は決して多くありませんが、靴、アパレルショップや整形クリニック等での求人を見つけることができます。
シューフィッターを募集していない場合でも、販売員や製造、企画などの職種に応募し、資格をアピールすることはできます。
シューフィッターとして転職するというより、シューフィッター資格が活かせるかという観点から探していくといいでしょう。
また、靴専門店や靴ブランドでは、シューフィッターの資格支援制度を設けている場合があります。
受講料金を補助してもらえたり、スクーリングの際に有休を申請しやすいといったメリットがあるため、そうした販売店を狙うのもいい方法です。
シューフィッターの給与相場はいくら?
シューフィッターとしての転職を考えている方が気になる給与ですが、シューフィッター業務に専念する人は多くないため、給与相場は勤務先の給与形態に沿う形となります。
大手靴メーカーや百貨店の総合職なら500~600万円ほど、アパレル業界の販売員であれば年収200~400万円が相場。
医療従事者は何の専門職かによって大きく異なり、看護師なら400~600万、リハビリ系専門職なら350~450万円、整体師は200~300万円といったところです。
シューフィッターになるなら不規則な勤務形態は覚悟して
シューフィッターが主に活躍するのは販売店や医療機関ですから、勤務形態が不規則になりがちです。
百貨店や靴専門店では、所属施設の営業時間に応じて早番遅番のシフト制を採用しているケースが多くなります。
土日は基本的に出勤になり、長期連休も取りにくく、年末年始やゴールデンウイークなどにも休みなく働くことになります。
シューフィッターを目指すなら、休みの少なさや不規則な勤務形態にはある程度の覚悟が必要です。
シューフィッター求人は転職エージェントで探そう
シューフィッターを限定した求人や、シューフィッター資格が活かせる職場を一人で探すのは容易ではありません。
転職支援のプロである転職エージェントを利用して、じっくり転職活動することをおすすめします。
あらかじめ希望の条件や活かせる資格を伝えておくことで、それに見合った求人を探して紹介してくれるからです。
今の職場で働きながら適切なタイミングで応募するには、もっとも効果的な方法と言えるでしょう。
シューフィッターに求められる資質
シューフィッター求人や、シューフィッター資格を活かせる職場に応募するには、どんな点をアピールすればいいのでしょうか。
ここからは、シューフィッターに求められる資質を解説します。
コミュニケーション能力
シューフィッターは主に接客業なので、接遇スキルとコミュニケーション能力が求められます。
測定した足の形だけでなく、歩き方のクセや普段どんな箇所に痛みを感じるかなど、うまく聞きださなくてはなりません。
いくら足と靴についての専門的アドバイスができても、笑顔がなく感じが悪い接客態度では、購入につながらないこともあるでしょう。
転職面接でもコミュニケーション能力は必ず見られるポイントと言えます。
流行への感度や探求心
靴にはファッション性を求める方も大勢いるため、単に足に合うだけでなく、お客さまの好みを把握し、お気に入りの一足としてもらう工夫も必要です。
靴には実にさまざまな種類があり、革靴一つ取ってみても、ローファー、パンプス、ブーツ、サンダルなど季節によっても履く靴が異なります。
流行があるため、今の流行に合ったデザインを知っておかなければ「痛くはないけど好きではないから履かない靴」を提案することになってしまうでしょう。
流行への感度が高く、どんな顧客が来ても対応できる幅広い知識を備えるための探求心が必要です。
足と靴に関する専門的知識と技能
当然ながら、シューフィッターは最適な靴を提案、販売する仕事ですから、足と靴に関する専門的な知識が必要です。
シューフィッター資格保持者の場合はすでに3年以上の実務経験を積んでいますから、専門的知識と経験を活かしたアドバイスが求められます。
転職面接ではシューフィッター資格を活かしてお客さまに喜ばれたエピソードや、売上などの実績を示すことが効果的です。
最後に
いかがでしたか?
今回はシューフィッターについて仕事内容や資格、転職事情に触れてきました。
健康志向の高まりから今後の需要増に期待できる注目の職種です。
足と靴を通じて心身の健康をサポートできる資格ですから、気になる方は挑戦してみてもいいでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。