医師はとにかくハードな職業ですから、女性医師たちが第一線で働き続けることは難しいと言われています。

苦労した医学部時代や研修医時代を経てやっと医師になったのに、辞めたくなってしまうこともあるでしょう。

女性医師が今の職場で働きにくいと感じたら、環境を変えることが必要となり、さまざまな選択肢があります。

今回はその中でもおすすめの「社医」という職種にフォーカスしてお伝えしていきます。

女性医師も辞めたくなることがある。辞めたい理由は?

医師不足が問題となり、医師の離職率を下げるための取り組みもおこなわれています。

特に女性医師の活用が叫ばれる中、女性医師たちはなぜ辞めたいと感じるのでしょうか。

まずは、女性医師の辞めたい理由を探ります。

医師の覚悟は強いから「辞めたい」と口にしない人が多い

どの職種の人でも一度は今の仕事を辞めたいと感じたことがあるでしょうが、医師の場合は辞めたいと口にしないどころか、辞めたいと感じたことがない人も多くいます。

社会的な貢献度が高く医師免許取得までに努力が必要なことなどからも、強い覚悟を持って仕事に取り組んでいる人が多いからです。

とはいえ、医師も環境によっては辞めざるを得ないことも。

特に女性医師のキャリアは外的要因に左右されやすく、辞めたいと感じることがあります。

仕事と家庭とのバランスが難しい

女性がバリバリ働くことが当たり前の今、結婚を機に仕事を辞める人は減ってきました。

結婚相手の勤務先が遠方でもない限り、結婚して専業主婦になる人は少数派になっています。

女性医師も例外ではなく、結婚して辞める人は少ないです。

ただし、子育てとなると別。

出産すれば当然休職はしなくてはいけないし、子供がまだ小さい場合は常勤医師としてバリバリ働き、夜勤に当直勤務までこなすのは難しいでしょう。

女性医師は配偶者も医療関係者というケースが多いので、夫婦二人で夜勤や当直の可能性がある状態で子育てするのは、周囲の徹底サポートがなければ大変なことです。

女性医師は早くに結婚、出産する人も多いため複数人の子持ちということも珍しくありませんが、「2人目の子供が生まれたことをきっかけに限界がきた。」などの理由で辞める人も多いです。

頼りにしていた親が年老いてくる

医師に限らず、仕事と家庭を両立するには周囲のサポートが不可欠です。

特に自身の親を頼りにしている人は多いでしょう。

子供の急な発熱時に仕事で抜けられないとき、残業で帰りが遅くなるとき、一番最初に親に連絡する人は少なくありません。

しかし、子供の成長とともに両親も年老いてきます。

場合によっては、親の介護が必要になることも。

一般的に子育ては子供が小さいうちが体力的には大変だと言われますが、子供が成長したらしたで新たな局面を迎えることになるのです。

頼りにしていた親が年老いてきたのをきっかけに、退職を考える女性医師もいます。

体力の限界

常勤医師は夜勤や当直、オンコールなどで忙しくしています。

医療の進化に伴って日々勉強を続ける必要もあるため、体力気力ともに高くないと難しい仕事と言えるでしょう。

女性医師は男性医師並みにバリバリ働く方も多いですが、やはり元来もつ体力は男性に劣る面もあり、体力の限界を理由に辞める人は少なくありません。

また、女性は40歳前後を目安として、更年期に入る方も多いです。

更年期になると、自分の努力や工夫とは別のところで、体調不良になってしまうこともあり、思うようにいかないこともあります。

更年期の中、ハードな仕事である医師業を続けることは大変で、退職を決める女性医師もいます。

女性医師におすすめの「社医」ってどんな仕事?

女性医師の辞めたい理由は主に「出産、育児との両立」「体力面への負担」の2つだと分かりました。

2つの理由で辞めたい女性医師におすすめの仕事として「社医」という働き方を聞いたことはないでしょうか。

ここからは、「社医」がなぜ女性医師におすすめできるのか、その魅力を探ります。

社医の仕事内容

生命保険への加入経験がある方ならお分かりでしょうが、加入時には健康状態や生活習慣のチェックをされますよね。

会社で受けた健康診断表の提出を求められるケースもあります。

健康状態のチェックは専門家しかできないため、契約の妥当性を判断する医師が必要となり、「社医」と呼ばれます。

健康診断表や個人の申告を元にチェックするだけの場合から、個人宅に訪問して健康チェックをおこなうなどさまざまなケースがあります。

近年は、主に大手生命保険会社や外資系保険会社で社医の募集があります。

社医の年収はいくら?

一般的な勤務医の年収は1,500万円前後が相場で、開業医となるとさらに高くなります。

一方、社医の年収は1,200万円~1,400万円が相場。

臨床医に比べると低くなりますが、臨床医のような仕事の責任の重さやハードワークがありません。

夜勤や当直手当がないのにこの年収だと考えると、かなり高年収だと言えるのではないでしょうか。

「割に合っている」という点では、社医たちの満足度も高いものとなっているようです。

社医になるためには何が必要?

社医は医師なら誰でもなれるわけではありません。

社医の募集条件は企業によって異なりますが、臨床医としての経験年数が3年以上が1つの目安となっています。

保険会社によっては産業医資格を求める場合もあるため、応募の際は必ず条件を確認する必要があるでしょう。

他職種と同様に年齢による制限を設けているケースもありますので、年齢によっては応募が難しい可能性もでてきます。

しかし、子育て世代の女性医師なら、臨床経験や年齢的な条件はクリアできることも多いため、応募できる可能性は比較的高いと言えるでしょう。

社医には高いコミュニケーション能力が求められる

社医になるには募集条件をクリアするだけでなく、他社員とのコミュニケーションや保険加入希望者への対応力なども求められます。

企業で働くことになるため、一般企業への転職と同じような準備が必要となります。

人材不足の臨床医に比べ、社医は少ない枠に人気が集中するため、医師免許や経験以外も重視される点は覚えておきましょう。

女性医師におすすめなのは家庭と両立しやすいから

社医の仕事は、当直や夜勤はもちろん、残業も少なめです。

オンコールもなく、一般企業の社員なので、基本的に土日休みで計画的に働きやすいのが特徴です。

医師免許を活かした働き方でありながら家庭との両立がしやすいため、女性医師におすすめの仕事と言えるでしょう。

女性医師が仕事と家庭とを両立するためには、眼科や皮膚科など、女性医師が働きやすい科への転科も考えられます。

しかし、転科は専門医取得や症例を経験するまでに年月がかかることがネックですし、かなり慎重さが求められるキャリアチェンジとなります。

その点、社医は臨床経験があれば転職もしやすく、転科に比べて仕事に馴染みやすいのが利点です。

社医求人の探し方

社医の求人は勤務医と比較すると圧倒的に少ないですが、一定数の求人を見つけることができます。

社医求人の探し方は、保険会社のHPにある採用ページで確認するか、求人媒体を使うかが基本です。

保険会社の採用ページで確認する方法は、直接応募が可能で希望の企業にピンポイントに応募できるメリットがある一方で、求人がでていなければ応募できないため、こまめにチェックする必要性があります。

忙しい女性医師にとってはなかなか骨の折れる作業となります。

求人媒体は、一般的なものを利用するより、医師専門の転職エージェントや転職サイトを利用する方が、医師転職に特化しているため見つけやすいと言えます。

転職エージェントを利用する場合は、あらかじめキャリア面談で希望をしっかり伝えておくことで、社医求人やその他の女性医師が働きやすい職場を探してきてくれます。

ほかにもある女性医師が働きやすい職場

女性医師が今の職場で仕事を続けるのが難しいと考えたとき、社医以外にも選択肢はあります。

ここからは、女性医師の働きやすい職場について紹介します。

院内保育整備の動きが広がっている

女性医師の離職は医療現場にとって大きな問題となるため、女性医師の離職を回避すべく、院内保育整備の動きが広がってきています。

臨床医として転職したい場合でも、24時間託児所などを設けている病院を探すという方法はあるのです。

とはいえ、院内保育が整備されている医療機関はまだまだ多いとは言えないのが現状なので、こまめに転職先を探しておくことが必要です。

医師専門の転職エージェントなどを利用すれば、求人情報がでた時点で教えてくれるためタイムリーな応募も可能です。

狭き門だが産業医も

産業医として転職するのも方法です。

産業医は事業所で働く労働者の健康管理に対して専門的な指導や助言をおこなう職種。

今はメンタルの不調で会社を休職したり退職する人が多い時代なので、産業医の重要性が指摘されています。

産業医専門で働く医師や、勤務医として病院で働きながら、アルバイトとして産業医をおこなう人もいます。

当直とオンコールがないのが大きな魅力の1つで、医師からの人気が高い職種となっています。

産業医になるには産業医免許が必要ですし、ライバルも多いため狭き門ではありますが、臨床医に比べて働きやすいため女性医師にもおすすめです。

非常勤になるのは1つ

仕事を辞めるという選択肢ではなく、もう少し仕事のペースを緩やかにしたいと考える女性医師なら、非常勤になるのも1つの選択肢です。

常勤医師のようなハードワークがないうえに、非常勤医師の時給は1万円~1万5千円が相場と高額なのが魅力。

たとえば、時給1万円で1日5時間、週3日のみの勤務でも、月60万円ほど稼ぐことができます。

緩やかなペースで働いても十分生活を保つことが可能なので、子育てが落ち着くまでは非常勤医師として働く女性医師も多いです。

最後に

いかがでしたか?今回は、女性医師におすすめの社医やその他の働きやすい環境について紹介しました。

医師の働く場所は病院やクリニックに限られず、活躍の場は広がっています。

多数の選択肢の中から、社医という仕事について目を向けてみてはいかがでしょうか。