介護業界への転職を考えている方におすすめしたいのが介護施設見学です。
求人内容や面接では知ることができない現場の様子や情報も、施設見学なら得ることが可能。
転職成功のためのコツとも言える活動なので、ぜひ申し出てみましょう。
そこで今回は、介護施設見学の必要性と施設見学でチェックすべきポイントを解説します。
目次
介護業界の転職で施設見学が必要な理由
まずは、「施設の見学なんて面倒。」「もっと効率良く転職活動したいから見学は省きたい。」と思う方向けに、施設見学の必要性をお伝えします。
介護業界の転職成功のために施設見学が必要なのはなぜなのでしょうか。
人手不足の介護業界は惑わされやすい求人も多いから
ご存じの通り介護業界は完全に人手不足です。
今後も高齢化が進むことを考えると、すぐに改善されることは考えにくい状況でしょう。
とにかく人手が欲しいため、求人をだす際は求職者の目を引きやすい内容に仕立てられている点に注意が必要です。
キャッチコピーを工夫したり、魅力を大々的にアピールすることは必要ですが、求人によってはかなり惑わされやすいものも存在します。
たとえば、「経験に応じて給与アップします!」「アットホームで働きやすい施設です。」などは比較的よく見かける文言ですよね。
実際どのくらいの経験があれば給与が上がるのか不明確ですし、働きやすいかどうかはいくらでも言えることです。
介護業界に限ったことではありませんが、求人内容だけで判断するのは危険ということ。
施設見学で実際の様子を判断する方が、より信ぴょう性が高い情報となります。
職場の雰囲気は肌で感じるのが一番だから
介護士の不満でよく聞かれるのは「職場の雰囲気が悪い」というものです。
「雰囲気」は曖昧な要素ではあるものの、労働者からすれば心理的な負担にかかわってくるためとても重要ですよね。
しかし、職場の雰囲気は求人内容や面接だけで判断することができず、実際に入社してみてからしか分からないのがデメリットです。
事前に職場の雰囲気を知ることができれば、転職失敗確率を大きく下げることができるでしょう。
介護施設の見学は、職場の雰囲気を肌で感じることができる数少ない方法です。
求人内容は良かったのに、実際に訪問してみると思っていたイメージと全く違うのはよくあること。
それだけ、肌で感じることの重要性は高いということです。
施設見学が難しいと人員不足やその他の理由が考えられるから
介護施設は利用希望者や家族向けの見学をおこなっていることもあり、求職者に対しても見学を歓迎してくれるところが多くあります。
特に優良施設の場合、「うちの施設は本当は働きやすくて魅力も大きいのに、介護業界というだけで敬遠される。」と残念に思っています。
自分たちの施設に自信を持っているからこそ、施設見学は喜んで対応し、より意欲的で優秀な人材を確保したいと感じるのです。
反対に、施設見学を希望したときに難色を示される場合は、その理由によっては少し注意も必要です。
たとえば、「案内できる人がいないから。」との理由であれば人手が足りなくてハードワークになる可能性、「我が社はそういうのやっていないから。」などよく分からない理由であれば、施設内情を見せたくない事情があるのかもしれません。
もちろん、利用者の個人情報を守るためといった理由で対応しないこともあります。
その場合でも、玄関や共有スペースなど可能な場所だけでも見学させてもらえないか聞いてみるといいでしょう。
介護士の辞めたい理由から施設見学で確認すべき点を探る
介護施設見学でチェックすべきポイントを知る前に、介護士にとって何が「不満」になるのかを振り返る作業が重要です。
多くの場合は「不満」が退職につながるため、自分にとっての不満要素が少ない施設かどうかを見極める必要があるからです。
介護士の辞めたい理由で多いものを中心に、施設見学でチェックすべきポイントを探っていきます。
職場の人間関係
職員同士の関係性は、実際に見ることでイメージすることは可能です。
職員同士の協力体制、声かけの状況、表情はどうかなどから、職員たちが人間関係に不満を持っていないかがある程度判断できるのです。
もちろん、人間関係には相性の問題や性格による違いもあるため完全に把握することはできませんが、あまりに悪い人間関係は見てとることも可能でしょう。
施設の方向性
介護士は離職率が高い職種と言われてはいますが、介護士としての仕事そのものへの満足度は高いものがあります。
やりがいや誇りを持って仕事に取り組んでおり、今の職場を離れてもまた介護職に就きたいと考える人は多くいます。
仕事自体への意識が高い分、所属施設の方向性や考え方の違いにギャップを感じる人も少なくありません。
自身のやりたい介護が叶う施設か、施設長や職員たちの考え方と一致しているのかも、施設見学によって判断することができます。
給与や待遇
施設見学のみで給与や待遇を確認することはできませんが、判断材料はあります。
たとえば、利用者の満足度が高ければ評判もよく、業績も良好である可能性は高いでしょう。
設備状況によっても、資金力の豊富さや長期的な展望がある経営者であるかどうかを判断することもできます。
反対に、安全面など重要な点にお金をかけず、人件費削減のために少ない人員数で運営している施設は危険です。
目先の利益しか見えておらずとにかくコストを抑えることしか考えていません。
従業員の給与や待遇も悪いと見ることができます。
労働環境
見学施設は転職後に実際に働く場所になることが多いため、労働環境を把握するのにも役立ちます。
特に介護士の辞めたい理由として挙げられる「人員数の少なさによる一人あたりの負担」も、施設見学で知ることができるでしょう。
利用者に対して人員がどれくらいいるかによって、働き始めた後の業務負担を把握することができます。
介護施設見学でチェックすべきポイント
ここからは、介護施設見学でチェックすべきポイントをお伝えします。
大きくわけて下記の4つの点を意識するようにしましょう。
- 1.施設としての意識レベル
- 2.職員の質
- 3.利用者の満足度
- 4.自身との相性
すべてをチェックすることは難しいかもしれませんが、限られた見学時間の中でできるだけ多くを確認できるよう、あらかじめチェックリストも作っておくといいですね。
次項からはそれぞれのチェックポイントについて詳細を解説します。
1.施設としての意識レベル
まずは、介護施設の体制や意識の問題を確認します。
具体的にどんな点がポイントとなるのでしょうか。
施設長の対応はどうか
施設見学でで対応してくれるのが施設長だった場合は、施設の資質を判断する大きなチャンスです。
施設長が丁寧に対応してくれるか、施設のいい点、改善点などをしっかり教えてくれるかを確認しましょう。
施設長の態度が悪かったり、自社の魅力を伝えることができない場合は少し注意が必要です。
その施設長の下で働いていけるのかをよく考えましょう。
施設全体に安全対策が施されているか
設備チェックをできるのは施設見学の大きなメリットです。
施設全体の設備をみわたし、安全対策が施されているか確認しましょう。
可能であれば入浴場所など危険が伴う場所も見せてもらうといいでしょう。
食堂の床が濡れていないかも安全対策として大切です。
トイレは綺麗に清掃されているか
もっとも汚れやすく清掃が億劫になりがちなトイレは、施設のレベルを判断するための大事なポイントとなります。
利用者も職員も気持ちよく過ごせるように清潔に保たれているでしょうか。
介護施設に限らずですが、トイレが汚い場所で施設レベルが高いことはありません。
床にごみは落ちてないか
床にごみが落ちていて誰も気づいていない様子だと危険信号です。
床にごみが落ちていると利用者が転倒する原因にもなり危険ですし、職員たちが細かいところに目が行き届いていない証拠だからです。
人手不足でバタバタして、周りが見えていないか、見てみぬフリをしている可能性もあります。
デスク周りは片付いているか
職員の事務所内を見学させてもらえる場合は、デスク周りの様子もチェックしましょう。
デスク周りがすっきりと片づけられているかによって、業務効率を考えた仕事ぶりがうかがえます。
デスクトップや書類の状態も確認したいポイントです。
作業中のデータをそのまま画面で見える状態で離席していないか、書類は裏返しになっていないかなどによって、個人情報保護が徹底されている施設かを判断することができます。
2.職員の質
続いては、施設で働く職員の質です。
介護士は職場の人間関係で辞めることが非常に多いため、一緒に働くであろう職員たちがどんな人か、介護職員としての資質はどうなのかを可能な限り判断しましょう。
すれ違ったときに挨拶してくれるか
職員とすれ違ったとき挨拶はしてくれるでしょうか。
無言で素通りするような職員が多いとあまりいい施設とは言えません。
利用者の家族が来たときも同じような対応をしている可能性があります。
挨拶は施設で指導されていることも多いですが、そうでなくても、社会人として職員一人一人が意識的に気持ちのいい挨拶をすることが基本です。
求職者とはいえ外部の人間が訪問した際に挨拶ができるかどうかで、職員の質がほぼ分かってしまいます。
利用者に対する職員の態度はどうか
利用者と実際に触れあっている職員がいれば、その様子も見せてもらいましょう。
利用者への言葉遣いはどうか、笑顔があるかなど。
施設によっては利用者にフランクに接することをモットーとしていたり、敬語をしっかり使うようにしていたりと特色が異なります。
実際に働く際に合わせていけるかも判断しましょう。
受付や電話対応もチェック
施設見学の際の受付や、事前連絡の際の電話対応もチェックしましょう。
感じのいい対応か、敬語やビジネスマナーはできているかは職員の質として基本的な点。
丁寧な対応ができない場合は教育が行き届いていないか、人材不足で誰でもいいから採用する傾向が見えます。
3.利用者の満足度
次に、利用者の満足度も見ていきましょう。
利用者の満足度を実際に判断することは難しいですが、表情や笑い声など実際に見学しなければ分からないこともあります。
利用者に笑顔が見られるか
利用者が笑顔で楽しそうにしているか、リラックスした表情をしているかによって、満足度を推測することができます。
レクリエーションが多いだけでなく、利用者が疲れてしまうほど頻繁にあり、負担になっていないかも大切です。
フロアに職員がどれくらいいるか
フロアに職員がほとんどおらず、利用者が一人でいることが多い施設だと、利用者一人あたりの人員数が足りていない可能性があります。
フォローが行き届かず、利用者にとっての満足度も下がってしまうでしょう。
人手不足はどの施設でもあり得ることですが、あまりに少ない場合は離職率の高さも考えられるため、少し注意が必要です。
4.自分自身との相性
最後に自分自身との相性を把握しましょう。
どんなにいい施設でも、自分がやりたい介護と方向性が違っていたり、性格や考え方に合わない場合だと長く働くことができません。
実際に働いたところをよくイメージするようにしましょう。
職員の年齢層
職員の年齢層はどうでしょうか。
若い人が多い方が必ずしもいいわけではなく、ベテランの人もいる施設の方が人材のバランスが取れています。
ただ、自分の年齢によっては若い人が多い方が楽しく働けたり、夜勤や重労働などの負担が分散されるというメリットもあります。
職員の動くスピード
職員の動くスピードによって施設の忙しさを判断することができます。
比較的緩やかなペースで一人一人にしっかりケアをしたい人から、忙しく動き回る方が合っている人までいます。
スピード感は慣れるまでが大変なので、場合によっては早期離職につながってしまいます。
ある程度自分のペースに合った施設を選ぶ方がいいでしょう。
職員の考え方
見学対応してくれた人が職員の場合は、面接に同席しない現場の人ということもあり得るため、具体的な仕事内容や取り組む姿勢を聞いてみてもいいでしょう。
施設長や人事担当者からは聞くことができない現場の生の声を聞くことができればイメージが沸きやすいです。
そのほか、研修制度の有無なども見学の際に聞いておくといいでしょう。
介護施設見学の素朴な疑問
施設見学が気になるけど不安も大きいという方も多いでしょう。
ここからは、介護施設見学にまつわる素朴な疑問を紹介します。
介護施設の見学はどうやって申し込むの?
介護施設の見学が可能かどうかについては、求人の募集要項に書いてある場合、施設HPに書いてある場合などさまざまです。
どこにも情報がない場合でも、人事担当者に聞いてみると快く対応してくれることも多いため、聞いてみるようにしましょう。
面接日当日に申し出ても受け入れてくれる施設もあります。
転職エージェントを使って転職活動している場合は、エージェントに施設見学の希望を伝えると交渉してくれたり、エージェントによっては施設見学に同行してくれることもあります。
施設見学を希望することは、施設への興味が高く、長く働く施設を探したい気持ちの表れでもあります。
対応可能かどうかは施設によりますが、聞いてマイナスになることはありませんので、積極的に申し出てみましょう。
介護施設の見学に行くときの服装は?
施設見学は面接ではないとはいえ、スーツで訪問するのが基本です。
ただ、介護施設は服装の許容範囲が比較的広めなので、スーツでないとダメということもありません。
スーツが用意できない場合は、ジャケットにパンツなど、きちんとした雰囲気を保ちつつ、ある程度動きやすい服装を意識しましょう。
靴を脱いで室内履きに履き替えることになるため、自分のスリッパなども持参しておくとしっかりした印象です。
靴下に穴が開いていないかもチェックしておきましょう。
施設見学は選考結果を左右する?
施設見学は面接ではありませんので、基本的には選考結果に大きな影響を与えることはありません。
ただし、敬語やマナーなど最低限のことができなければ、対応者の印象を悪くする可能性はありますので気を抜けません。
面接より前に施設見学をする場合は、施設見学で感じた良かった点などを志望動機やアピールにつなげることができるため、今後の活動を考えてもメリットが大きいと言えるでしょう。
最後に
いかがでしたか?今回は、介護業界への転職を考えている方が介護施設見学をするべき理由と、施設見学のチェックポイントを紹介しました。
介護業界はブラックが多いと言われることも多いですが、実際には利用者、従業員ともに満足度の高い優良施設も存在しています。
施設によってレベルの差が大きいため、実情を見極めるためにも施設見学を活用しましょう。