介護業界はブラック施設が多いと言われていますが、本当にそうなのでしょうか。
高齢化により何かと注目を浴びやすい業界だからこそ批判もありますが、イメージだけが独り歩きしている印象もぬぐえません。
介護業界はブラックどころか、実はホワイトではないかとの声もあるため、実態を見極めることが大切です。
今回は、介護業界がブラックかホワイトかについて検証します。
介護業界への転職を考えている方は参考にしてみてください。
目次
介護業界がブラックと言われる理由と誤解
まずは、介護業界がブラックと言われる理由について紹介します。
介護業界はブラック要素が満載な気がする方も多いでしょうが、中には誤解もあるため冷静に判断すべきです。
どんなブラック要素と誤解があるのでしょうか。
低賃金
介護業界がブラックと言われる大きな要因は低賃金です。
介護業界の賃金は、他産業と比べても確かに恵まれていません。
仕事の大変さの「割に合うか」という点でも、はっきりと「割に合わない仕事」と言うことができます。
ただ、生活できないレベルと言える介護職員は、主に未経験や無資格で介護業界に転職してきた人たちで、経験を積み、介護福祉士やケアマネになればしっかり生活していくことは可能です。
介護業界は採用ハードルが低く他業界からの転職も比較的おこないやすくため、未経験や無資格者も多く働いています。
転職組で未経験、無資格者だと、年齢に見合った給与を受け取ることができず、新卒者と同じ水準になってしまうため、年収200万円に満たないようなワーキングプアも生まれてしまうのです。
介護業界だから低賃金というより、最初の数年の低賃金に耐えられず辞めてしまう人が多いのが問題とも言えます。
夜勤があってハードワークだから
介護の仕事は夜勤がありますし、業務自体が体全体を使う特性を持っています。
仕事が大変なことに間違いはないでしょう。
ハードワークだからブラックだと指摘されることもありますが、同じくハードワークの看護師はどうでしょうか。
仕事のきつさでは共通点が多い両者ですが、看護師は労働に見合った賃金を受け取っているため、ブラックと言われることは少ないです。
ハードワークかどうかは、そもそも介護職の業務に起因するものなので、施設がブラックということにはなりません。
夜勤は大変ですし、肉体労働の介護の仕事も大変、それは事前に分かることです。
ブラック企業と言うには、残業や深夜手当がでない、予定外の夜勤や休日出勤を強要される、といった要素も必要です。
介護施設がブラックかどうかは、仕事自体の大変さとは切り離して考えないといけませんね。
人間関係で辞める人が多いから
介護業界は人間関係が悪くて辞める人が多いとの指摘もあります。
介護業界は採用ハードルが低くいろいろなタイプの人が入ってくるため、中には人間性が疑われるような人もいるからといった声も。
女性割合が多いことで、女性特有の人間関係が発生するとも言われます。
女性の場合は噂話が好きなので、苦手な人は特に苦痛に感じるようです。
しかし、どの業界にも嫌な人はいるもので、人間関係はどこに行っても発生します。
介護業界だから特別人間関係が悪いと思ってしまうのは早計でしょう。
他業界に転職したとき、同じように人間関係で悩みを抱え、後悔する可能性もあります。
「介護業界は人間関係が悪い」は、事実でもある一方で、どの業界でも同じことが起こり得るため、誤解が大きいと言えます。
教育体制に問題があるから
介護業界で働く人の性格や資質がどうかより、教育体制に問題があり、ブラック要素を加速させています。
介護業界は完全に人手不足なので、教育をしっかりおこなう余裕がありません。
介護業界では中途採用者が多いため、「社会人経験があるんだから見て覚えてね。」との風潮が大きいのです。
中途採用者とはいえ、介護業界未経験者や施設が変わって仕事のやり方が分からない人にとっては、しっかり教えてもらえないのは辛いことでしょう。
自分が入社したときに教えてもらえなかったため、新しく人が入ってきても、「教え方が分からない。」「自分のときのように見て覚えてほしい。」「そもそも教える余裕がない。」といった負の連鎖が起こっています。
介護施設としては、せっかく入ってきた人材に辞めてほしくないなら、最初は大変でも丁寧に教える環境や教育体制を整備することが大切です。
理想を持って転職しても壁にぶち当たることが多いから
介護業界は、高い志を持って働く人と、どちらかと言えば「お金のため」「転職できる業界がなかった」など仕方なく働いている人とに分かれます。
後者が悪いわけではありませんが、2つの考えは衝突しやすいのは事実。
介護の仕事に理想を思い描いて転職してきても、経営者や周囲の職員の理念とかけ離れていると、ギャップを感じたり、「やっぱり介護業界はろくな人がいない!」と思ったりします。
こうして辞めて行った人たちが、介護業界ブラック説を主張するケースもあるのです。
利用者の罵倒や暴力があるから
利用者からの罵倒や暴力は労働者にとって非常に辛いことですが、これをもってブラックと言うには、施設側のフォロー体制がどの程度あるか、悩みや訴えを聞き入れてもらえる環境にあるかによって変わってきます。
こうしたケースは介護職の業務自体の辛さと言えるため、働く施設がブラックとは限らないからです。
介護業界が実はホワイトではないかとの声
ここからは、介護業界が実はホワイトではないかとの声を見ていきます。
ブラック説が広まっている介護業界ですが、よくよく考えるとホワイト要素もあります。
どんな点がホワイトと言われているのでしょうか。
年間休日は比較的多め
介護業界の平均的な年間休日は105~110日程度です。
多いとまでは言えませんが、比較的しっかり休めている印象。
たとえば、講師業をはじめとする教育業界だと年間休日90日台のケースが多いため、それと比較すると悪くないと言えます。
ただ、介護業界でも年間休日100日未満の施設もあります。
転職先を選ぶポイントの1つとして、「年間休日は105日以上」と思っておくといいでしょう。
残業がない
介護職の仕事は基本的にシフト制なので、次の担当者と交代して帰ることができます。
労働時間に自然と制限ができるということです。
シフト制ではない他業種の場合、誰かが代わりに来たから帰れるということはないため、長時間残業になりやすい側面があります。
もちろん、残業を強要される介護施設もあるため一概には言えませんが、残業なく帰れる施設も多い点は見逃せないポイントです。
転勤がない
「転勤=ブラック」ということにはなりませんが、転勤がないのは労働者にとってメリットも大きいですよね。
介護業界では転勤について、比較的考慮がされています。
全国に施設がある規模の大きな事業所でも、異動の場合は自宅から通える範囲の施設にさせてもらえることも多いです。
全国転勤が当たり前の業界に比べても、落ち着いて働くことができます。
失業リスクがない
人手不足の介護業界では、離職を引き止められることこそありますが、仕事がなくて解雇になるということは、よほどのことがない限り考えにくいです。
事業所自体が閉鎖になっても、他施設への転職はさほど難しくないでしょう。
将来的にも需要が増えることが予想されていますので、失業リスクや不安と戦いながら仕事をする必要はありません。
その意味では安定的に働けると言える業界です。
働きながら資格取得を目指せる
仕事をしながら何かの資格を取得するには、受講のために有休を取得したり、資格費用も実費だったりが基本です。
努力の末に取得した資格が、ほとんど評価の対象にならないことも多々あります。
介護業界では資格を段階的に取得していくキャリアパスが推奨されているため、業務との連動制が高く、給与や評価に反映されやすい資格の取得を、働きながら目指しやすい環境にあります。
介護職員が働きながらスクーリングしやすいように、昼間コースや夜間コースも充実しています。
施設によっては、取得費用を支援してくれたり、勉強のための有休取得に理解があったりします。
この点は他業界で資格取得するより恵まれていると言えるでしょう。
施設によって差が大きいから見極めが肝心
介護業界は低賃金、ハードワークですし、労働基準法を守らない悪質な施設も存在します。
ただ、労働環境がよく、大変ながらもやりがいを持って働ける優良施設もありますので、施設ごとの差が大きいとも言えます。
施設の見極めが非常に大切と言えるでしょう。
また、介護業界がブラックと言われる理由の中には、介護業務そのものの大変さが原因であることも多いため、「仕事そのもの」と「働く施設がどうか」は分けて考える必要があります。
大変な仕事でも耐えられている、仕事そのものにはやりがいを感じているという方は、法律を遵守しているかというシンプルな基準をもとに考えてみると、勤務先がブラックかホワイトかが見えてくるはずです。
転職して介護業界で働く場合も、施設ごとの違いや労働条件をしっかり確認し、ホワイト施設を探すようにしましょう。
介護業界でホワイト施設を探す方法
介護業界でホワイト施設を探し出すには、実際に働いてみないと分からない点が多く、難しいと感じるかもしれません。
ただ、だからと言ってやみくもに転職するにはリスクが高いため、事前に下調べを十分にしてから転職するようにしたいですね。
転職エージェントを利用すれば、施設情報を独自の情報網で調べてくれたり、施設見学に同行してくれたりと情報収集に役立ちます。
特に、介護職の転職に強いエージェントを選ぶことで、知らなかった業界事情や実態などの話も聞けるでしょう。
ブラック施設に転職して後悔しないためにも、エージェントを活用すべきです。
最後に
いかがでしたか?今回は、介護業界がブラックかホワイトかについて検証しました。
介護業界がブラックと言われる理由はさまざまあり、労働者や利用者のことを何も考えない悪質な施設もあります。
一方で、「介護=ブラック」とのイメージに苦労している優良施設もあるため、施設ごとに違いがあることを認識し、それぞれの調査をおこなうことが大切です。