「紹介予定派遣」という仕組みをご存知でしょうか?
非常に人気が高い働き方なので、友人知人の間で話題にのぼることがあるかもしれませんね。
正社員としての転職を目指す方にとって、「通常の転職方法より有利」と言われることもある仕組みですが、本当にそうなのでしょうか。
実態をよく知ってから利用しないと、後悔する可能性もあるため注意が必要ですよ。
そこで今回は、紹介予定派遣で働くメリット・デメリットを解説します。
よく聞く「紹介予定派遣」とは?
「正社員として転職したいのに派遣では安定した働き方ができないのでは?」と感じるかもしれませんね。
確かに、派遣は直接雇用ではなく契約期間が決まっているため、継続して働き続けられる雇用形態ではありません。
しかし、紹介予定派遣は通常の派遣とは仕組みが大きく異なります。
紹介予定派遣とは、派遣会社から企業に派遣され、一定期間働いたのちに、企業と労働者の合意があれば、直接雇用を目指せる仕組みです。
派遣でありながら、直接雇用を前提としているため、近い将来の安定を手にできる可能性が派遣よりも高いというわけです。
紹介予定派遣に多い職種は事務職
紹介予定派遣を利用される職種で圧倒的に多いのは事務職です。
一般事務、経理事務、営業事務など、種類は違えど事務系職種を求める場合に使われるケースが目立ちます。
そのほか、秘書や受付、オペレター、サポートデスクなどもあります。
事務系職種を探している方には利用する価値が高いと言えるでしょう。
事務系職種が多い理由としては、一般的に事務職は生産性のない職種に分類される点にあります。
営業職のように直接的な利益をもたらさず、技術職のように自社製品を作りだすことができない事務系職種には、できるだけ採用コストをかけたくないのが本音なのです。
派遣社員として雇っておき、よかったら直接雇用すればいい分、通常の募集に比べて広告費用や選考にかかる人件費を減らすことができますよね。
コストを極力抑えたい事務系職種の採用にメリットがあるため、求人傾向が偏りやすいのです。
紹介予定派遣のメリットとは?
紹介予定派遣は非常に人気が高い制度です。
通常の転職活動で正社員転職を目指すよりもメリットが大きいと考えられているからです。
紹介予定派遣にはどんなメリットがあるのかを見ていきましょう。
実際に働いてから職場を見極めることができる
紹介予定派遣の大きなメリットは、派遣という「お試し期間」を利用し、職場の雰囲気、人間関係、業務内容への適性などを、実際に働きながら見極めることができる点です。
一般的な転職活動では、企業研究や面接で質問した内容などを元に、転職先として適しているかを判断するしかありませんよね。
転職してから「こんなはずではなかった!」と後悔するケースも多々見られます。
紹介予定派遣は実体験を元に判断することができることから、転職後のギャップを回避でき、直接雇用後も長く働くことが可能になります。
経験が少なくても挑戦できる
通常企業が中途採用者を雇う際には、即戦力として活躍してくれる人材を求めます。
経験が少ない場合はなかなか内定をもらうことができない点がネックでしょう。
やる気があって、実際に働いてみると評価されやすい人であっても、書類や面接の時点で不採用になってしまうのは悔しいことですよね。
紹介予定派遣の場合、最初のお試し期間があるわけですから、その間にしっかり働くことで、実際の仕事ぶりを通じて企業にアピールすることができます。
経験が少ない方にとってはチャンスが増えることになるでしょう。
また、即戦力スキルは通常の正社員募集で獲得すればいいため、紹介予定派遣を利用する企業は、ポテンシャル採用の意欲が高い傾向にあります。
入社してから育てたいと感じる企業も多いと言えるでしょう。
派遣期間中は派遣会社がフォローに入ってくれる
直接雇用される前の数ヶ月間は派遣社員として勤務することになりますので、その間、派遣会社がフォローしてくれます。
契約と異なる点があった際も、直接勤務先に確認することなく、派遣会社に確認することができて安心です。
直接雇用に至る際も、雇用時のやり取りをサポートしてくれるため、契約内容に不安があったり、何をすればいいのか分からなかったりする場合でも相談することができます。
困ったときに頼れる人がいるというのは、正社員経験がない方や転職が初めてという方にとっては特に大きなメリットとなるでしょう。
転職活動の手間を減らすことができる
紹介予定派遣求人を探すには、まずは派遣会社に登録し、営業担当者からの紹介を受けるという流れになります。
一般的な転職活動のように、自分で求人を探したり、応募書類を送ったり面接の日程調整をおこなったりする必要はありません。
では、面接や選考自体がないのかといえば、企業によって異なっており、派遣就業前に面接、選考がおこなわれる企業もあります。
ただ、派遣会社が間に入ることで、ある程度信頼性のある人材を紹介している前提であり、面接に派遣会社スタッフが同席していい場合があるなど、一般的な面接、選考との違いもあります。
派遣会社が面接対策なども実施してくれるため、孤独な転職活動を強いられるわけではありません。
選考が完全にないわけではありませんが、通常の転職に比べると活動の手間がかからず、採用もされやすい傾向にあります。
派遣会社の教育制度を利用できる
経験が少ない人でもチャンスがある紹介予定派遣ですが、企業側に教育を丸投げというわけにはいきません。
求職者の経験値によっては、派遣会社が教育してくれる場合もあります。
派遣会社では、通常の派遣スタッフの質を高めるため、研修制度や資格取得支援などさまざまなバックアップ体制が整っています。
こうした体制を利用し、紹介予定派遣として働く前にある程度スキルを身につけておくことも可能になるわけです。
また、派遣就業期間中に、派遣先で求められるスキルレベルを把握し、必要なスキルや知識を身につけるべく努力することもできます。
何が必要とされるかが分かりにくい通常の転職に比べ、最短ルートで企業が求める人材を目指すことができます。
ハードルが高めの求人に応募できるチャンスも
紹介予定派遣を利用する企業は、大手から中小企業までさまざまです。
中には、通常の転職活動では転職が難しい人気の大手や上場企業の求人も。
通常の転職活動ではよほどの経歴がない限り、人気の大手や上場企業に転職することは難しいですよね。
応募条件すらクリアできないケースもあるでしょう。
紹介予定派遣を利用すればハードルが高めの求人に応募できる可能性がでてくることになります。
紹介予定派遣のデメリットとは?
多数のメリットがある紹介予定派遣を、今すぐにでも使いたいと考える方もいるかもしれません。
紹介予定派遣はメリットばかりばピックアップされがちですが、実はたくさんのデメリットも存在しています。
本当に紹介予定派遣を利用すべきかどうかは、ぜひ慎重に見極めるようにしましょう。
紹介予定派遣の求人は一般求人や派遣求人より少ない
まず、求人件数が圧倒的に少ないというデメリットがあります。
一般の求人だけでなく、派遣求人と比べても極端に少ないです。
紹介予定派遣の利用によってコスト削減や雇用後のギャップを避けられるなど、企業側にとってのメリットがあるため、企業からの注目度は高いです。
しかし、、一時的にはコストが大きくかかったり、派遣スタッフから不満がでやすいなどの理由から導入を躊躇する企業も多いため、実際の求人件数が少なくなっています。
また、事務系職種が多いことから、事務系職種以外で働きたい方にとっては、希望の求人を見つける確率が著しく下がってしまうとも言えます。
正社員雇用が確実ではない
紹介予定派遣は直接雇用を前提とした仕組みではあるものの、確実に正社員になれるわけではありません。
直接雇用はあくまでも企業と労働者が合意した場合に実施されるものだからです。
派遣期間中は、一般的な企業での試用期間のようなものですから、その働きぶりによっては企業側が不採用と判断するケースもあります。
反対に、労働者側が合わないと感じた場合には、直接雇用の打診があっても断ることができます。
また、直接雇用と言っても、必ずしも正社員での雇用ではなく、契約社員の場合もあります。
どの雇用形態で採用となるのかは、派遣就業前にしっかり確認しておく必要があるでしょう。
通常の転職活動をした方が早い場合もある
紹介予定派遣の派遣期間は、3ヶ月前後が一般的で、最長で6ヶ月となります。
6ヶ月以内の派遣就業期間中に勤務先での働きぶりが認められればいいのですが、逆を言えば、直接雇用されるまでに6ヶ月かかることがあるわけです。
つまり、正社員としての転職を目指すなら、通常の転職活動をした方がスピーディーな場合があるということ。
一般的な転職活動期間(応募~内定までの期間)は、早い人で数週間~1ヶ月、普通でも3ヶ月くらいが一つの目安となります。
6ヶ月以上かかってしまう人は、ゆっくり探している方か、経歴や年齢的に転職が厳しい人がメインになります。
少しでも早く正社員として雇用されたいなら、短期集中で転職活動をおこなう方がいいかもしれません。
今の職場で働きながら次を探すことができない
通常の転職活動では、失業した際に無収入になるリスクを避けるため、今の職場で働きながら活動することが一般的です。
内定をもらってはじめて職場に退職の意志を伝え、無職期間を作らず転職することがもっとも安全と言えるでしょう。
しかし、紹介予定派遣の場合、今の職場で働きながら利用するのは難しくなります。
派遣登録するだけならできても、実際に紹介予定派遣求人の紹介を受けるには、必ず派遣社員として働く期間が必要になるからです。
今の職場を退職→派遣登録→紹介予定派遣で働く、という流れが普通なので、無職期間を作らずに転職したい方にはデメリットとなります。
年齢が若くないと紹介が難しくなる
紹介予定派遣を利用できる年齢に制限があるわけではありませんが、一般的には若い方が有利になります。
そもそも紹介予定派遣は、企業が労働者のポテンシャルに着目した仕組みでもあり、将来的に長く活躍してくれる人材を見極めたいとの思惑が大きいからです。
成長性に期待できる若手人材の方が、コストや手間をかけてでも育てるメリットがあるでしょう。
また、紹介予定派遣を利用する企業は、いくつかの派遣会社を通じて募集をかけています。
派遣会社としては、他社との競争に勝って自社の派遣社員を紹介したいため、より若くて採用されやすそうな人材を優先的に紹介する裏事情もあります。
紹介予定派遣を利用して直接雇用を目指したい方でも、年齢によっては、希望の求人紹介を受けられない場合があるため注意が必要です。
派遣社員の方が給与がいい場合もある
派遣社員として3~6ヶ月程度勤務し、実際に直接雇用された場合、直接雇用後の方が給与が下がるケースもあります。
一般的に派遣社員は高時給で知られていますし、派遣会社は直接雇用成立時に多額の報酬を企業から得ることができるため、派遣期間中に上乗せして時給を払っても問題ないからです。
もちろん、派遣は短期での契約満了も多く、決して安定的とは言えない働き方ですが、人によっては派遣で高い給与をもらいたいと考える人もいます。
有休取得までの道のりが遠い
労働基準法上、企業が労働者に与える有休は、雇い入れ時から6ヶ月で最低でも10日付与すると定められています。(正社員の場合)
一度付与された有休は、1年6ヶ月、2年6ヶ月と、段階的に年度の付与日数が増えていき、最終的には6年6ヶ月以上勤務で20日の付与が認められています。
ここで問題になるのが、勤続年数のカウントです。
「雇入れ時」というのは、労働者を雇用する企業からの視点ですから、当然雇用主が変われば有休における勤続年数はリセットされることになります。
紹介予定派遣を利用して最初に派遣として働く間の雇用主は「派遣会社」、直接雇用された後の雇用主は「実際の勤務先」ですよね。
たとえば、6ヶ月の派遣期間を経て直接雇用される場合はどうでしょうか。
派遣会社からの有休が付与されるタイミングで雇用主が変わり、有休もリセットされます。
その勤務先で有休が付与されるのは、実際に働き始めてから1年後になってしまうこともあるということです。
他の派遣スタッフからやっかみの対象になることがある
紹介予定派遣を利用する企業では、通常の派遣スタッフも同時に働いているケースがあります。
労働者が派遣社員になる理由はそれぞれですが、人によっては直接雇用が叶わず、やむを得ず派遣になってしまっている方もいます。
そういう方にとって、勤務先での直接雇用は憧れであり、いつかは直接雇用をと夢見ています。
紹介予定派遣を利用して派遣として入ってきた人材が、何の苦労もなく(実際はそうではありませんが)直接雇用される姿を見て、うらやましく感じることがあります。
ひどい場合は陰口やイジメのターゲットとなってしまうケースもあり、派遣社員との関係性は難しいものがあります。
紹介予定派遣ではなく通常の転職活動を希望する方は
ここまで、紹介予定派遣のメリット・デメリットを見てきて、「やはり通常の転職活動の方がよさそうだ。」と感じた方も多いと思います。
通常の転職活動は一人で応募からスケジュール調整までおこなうため面倒だと思われがちですが、紹介予定派遣のようなサポートを受ける方法もあります。
それは、転職エージェントと呼ばれるキャリア支援のプロを利用する方法です。
求職者に代わって求人探しと紹介、書類添削や面接対策まで幅広くサポートしてくれるため、一人で転職活動するよりも内定確率がアップします。
転職エージェントで扱う求人は正社員をメインとして、多種多様な職種ですから、どんな仕事に転職したい方でも利用できますよ。
最後に
いかがでしたか?今回は、紹介予定派遣で働くメリット・デメリットを紹介しました。
紹介予定派遣は多数のメリットがあり、直接雇用を目指す人にとってはいい方法の1つですが、デメリットもあります。
人によっては通常の転職活動の方が適している場合もありますので、冷静に見極めましょう。