「営業職には体育会系が向いている」

いつの頃からか一般的な認識として広く知られるようになりました。

体育会系人材の中で営業職への転職を考えている方も多いでしょう。

実際のところ、体育会系は本当に営業に向いているのでしょうか。

実は向いていないとの考え方もあり、「営業=体育会系」と安易に結びつけるのは早計かもしれません。

今回は、体育会系が営業職に向いている理由、向いていない理由を紹介します。

体育会系が営業職に向いていると言われる理由

体育会系の人材は営業職に向いていると言われることが多々あります。

ポテンシャルを判断する新卒市場だけでなく、転職市場においても同じです。

企業の人事担当者の中には「やっぱり体育会系人材が欲しい。」と口にする人もいるほど。

一体なぜ体育会系人材は営業向きだと言われるのでしょうか。

徹底した縦社会を経験しているから

体育会系人材は、学生時代の部活動を通じ、完全な縦社会を経験している点が営業向きです。

学生時代の部活動では、一学年違えば、有無を言わさず先輩との上下関係が成立するでしょう。

監督やコーチに絶対服従というケースもあります。

文系部活でも厳しい縦社会のケースはありますが、圧倒的に体育会系に多い傾向と言えるでしょう。

縦社会は、組織化された企業の構造そのもの。

さらに営業職は職場内だけでなくクライアントとの上下関係もあるため、体育会系が適していると言われるのです。

採用側から見ると、体育会系人材には縦社会への適応能力が身についていると思います。

転職という環境の変化が起きても、適応能力は健在でしょう。

体力や肉体面で耐えられる

営業の仕事はクライアントの都合によって、長時間残業、深夜や休日出勤につながることがあります。

契約件数が給与に直結する歩合給の営業であれば、生きていくために働き続けるしかありません。

体力的負担が少ないデスクワークというわけにはいかず、新規開拓やクライアントとの打ち合わせのため、1日中歩き回ることばかりです。

いくら優秀でも、休みがちであったり、すぐに疲れてしまったりするようでは、本来の力が発揮しにくいと言えますよね。

この点、体育会系は体力があり肉体も丈夫な人が多いため、大変な営業の仕事を乗り切ることができると思われているのです。

精神的にタフである

スポーツの世界は精神の戦いでもあります。

辛い練習も、勝ちたいという強い意志とタフな精神力があれば乗り越え、結果に結びついていくでしょう。

営業の仕事は、クライアントからの理不尽な要求やクレームに耐え、気合いと根性で相手の要望に応えていくこともある仕事です。

スポーツで培った精神的なタフさは採用側から見ると魅力的で、ぜひ採用したいと考えるのです。

結果にこだわるから

結果が求められるスポーツと同様に、営業職も結果こそがすべての世界です。

結果をだすために顧客ニーズを把握し、効果的な売り込み方を考えてセールスをおこなう、これを上手くいくまで何度でも繰り返します。

勝つためのトレーニングをおこなうスポーツの過程とよく似ています。

体育会系の営業職は結果にこだわるからこそ、辛い過程にも耐えられ、結果をだすまで忍耐強く業務に取り組むことができるのです。

体育会系の営業は使い捨てされやすい?

ここまで紹介した内容を見ると、確かに体育会系は営業職への適性が高い人材と言えます。

採用側から見ても、体力があって忍耐強い体育会系営業は「使いやすい」人材のため、転職の場においても好まれるでしょう。

ただし、企業の質によっては、単なる駒として、いいように使われ、いずれ使い捨てされるリスクもはらんでいます。

必ずしも体育会系が営業向きとは言えない面もあるでしょう。

次項からは、体育会系が実は営業職には向かないと言われる理由を紹介します。

体育会系が営業職には実は向かない理由

営業職への適性は断然体育会系が高いと言われる一方で、実は向いていないと指摘する人もいます。

一体どういうことなのでしょうか。

頭を使わず突っ走るため年齢を重ねると失速するから

体育会系人材は、わき目もふらず目の前の仕事に取り組む集中力を持っていますが、何も考えずひたすら数をこなす人が一定数います。

若い頃は場数を踏むことも大切ですし、その中で自然と身につくこともあるため成長していくでしょう。

しかし、年齢を重ね、ポジションや求められるスキルが変わっていくと、成長が頭打ちに。

若い頃から頭を使って考えることをしてこなかったため、当時と全く変わらない中身で年齢だけを重ねることになります。

スポーツ能力を高めるためには、同じ動作を何度も繰り返し、体に覚えさせることもまた必要ですよね。

ここがビジネスの成長とは異なるポイント。

スポーツでは体を動かすことを優先させる必要がありますが、ビジネスでは周囲を上手く使ったり、効率のいい営業を考えることが求められるようになります。

ひたすら耐えるためストレスが溜まるから

体育会系は辛い練習や監督、先輩からの厳しい指導にひたすら耐えてきました。

そのため、ビジネスの場でも忍耐強さを発揮するのですが、もちろん際限がないわけではなく、どこかで限界がきます。

ビジネスにおけるストレスはスポーツのそれとは異なる要素も多く、チームの仲間がいる部活動とは環境も違います。

社会人になって、昔のようにとにかく耐えてしまうことでストレスが蓄積され、爆発してしまうことも。

早い段階でメンタルの不調を感じる人もでてくるのが体育会系営業です。

強い押しや勢いが敬遠されるから

体育会系営業に「元気がいい」「気持ちのいい挨拶ができる」「フットワークが軽い」といったイメージを持たれる方も多いでしょう。

爽やかな程度であれば好感度も高いのですが、やたらと声が大きかったり、売り込みの「押し」が強かったりする営業職もいます。

大抵が体育会系であることが多く、部活動で求められた挨拶の仕方をそのままビジネスの場に持ってきているのでしょう。

そこまでのレベルになると、クライアントの中には負担に感じる人もでてきます。

ガツガツ来られると敬遠し、心を閉ざしてしまうケースも。

「THE 営業」というスタイルは時代と共に求められにくくなっていると言えるでしょう。

クリエイティブ性や複雑さが求められる仕事の増加

インターネットの発達やAIの進化によって、誰でも簡単に調べものができ、単純作業が減るなどし、人間が携わる業務内容が大きく変わりつつあります。

機械にはできない、よりクリエイティブな仕事や、複雑さが求められる仕事が増えてきました。

昔は、コミュニケーションスキルあればある程度の成果を挙げられた営業職ですが、今は違います。

他職種と同様に、クリエイティブ性や複雑な業務に関わることもあるでしょう。

体育会系の苦手分野でもあるため、これからの営業には向かないというわけです。

営業の適性に体育会系かどうかは関係あるの?

ここからは、体育会系人材が営業に向いているかどうかは関係ないという考え方を紹介します。

多くの方が営業という職業を見るときに判断しがちな体育会系・文系のくくりですが、その境界線は薄れつつあります。

体育会系かどうかが関係ないのはなぜなのでしょうか。

人の話をじっくり聞ける文系営業も活躍している

「営業=体育会系」とのイメージが強いですが、実際問題として営業職のほとんどが体育会系なのでしょうか。

さまざまな業界で営業職に就く人を見てみると、文系営業も多いことに気づきます。

文系営業は体育会系営業のように声が大きくなかったり、一見元気がないようにも見えますが、しっかりと結果を残し活躍しています。

営業という仕事は、自社商品やサービスを一方的に売り込むのではなく、クライアントの話をじっくり聞き、ニーズに沿った提案をするもの。

文系営業は聞き上手で押しが強くないため、ごく自然に相手の懐に潜りこむことができます。

もちろん、体育会系営業の勢いを好むクライアントもいますが、どちらの形の営業がいいと一概には言えず、それぞれの強みを活かして結果を残すことができるのです。

インバウンド営業が主流になってきている

「アウトバンド営業」「インバウンド営業」という呼び方をご存じでしょうか。

アウトバンド営業とは、テレアポやDM、飛び込み営業といった従来の営業スタイルです。

自社商品サービスをとにかく売り込み、気に入ってくれる人を手当たり次第に探し出す方法ですね。

インバウンド営業とは、企業ホームページやSNSなどで情報を発信し、自社商品サービスに興味を持ってくれた人だけを対象としたセールス手法です。

もともと購買意欲が高い人のみを相手にするため、アウトバンド営業に比べて成約率も高く、営業にかける時間や労力を省くこともできるのが特徴。

企業が人材を育てる際、アウトバンド営業を経験させることで得られるものは多いですが、効率化の点ではインバウンド営業にメリットがあります。

そのため、近年多くの企業ではインバウンド営業にシフトしつつあります。

体育会系営業は勢いや元気のよさからアウトバンド営業を抵抗なくおこなえる人材ですが、インバウンド営業が主流になってきた今では、そのメリットが薄れてきているというわけです。

体育会系と文系で向いている営業が違う?

ここで、体育会系と文系で向いている営業分野が異なるという話をします。

これから営業の仕事に転職を考えている方は、自身が体育会系か文系かによって向く仕事が変わってくるということ。

長く続けるために適性は大切ですので、1つの見極めポイントとして参考にしてみてください。

たとえば、飛び込み営業や新規開拓をおこなう個人向け営業は、「数打てば当たる」作戦で体力とめげない根性も必要になります。

言えば体育会系向きの営業です。

前述したアウトバンド営業型はやはり体育会系が向いています。

一方、コンサルティング業界やIT業界、デザイン業界といった、論理的思考や創造性が求められる業界の営業は、文系人材に適性があるとの見方があります。

こちらから積極的に営業をかけるというより、ニーズがあれば相手側からコンタクトがあり、相談に乗るといった形で、法人営業が主流です。

インバウンド営業型をとっているケースが多く、Webコンサルティングの知識なども必要になります。

営業が苦手という方も多い文系人材ですが、こうした営業なら馴染みやすいため、毛嫌いする必要もありません。

自分に合った営業の仕事を見つけるにはプロの手を借りる

営業職とひとくちに言っても、企業によってさまざまなタイプの営業スタイルを採用しており、イメージしている営業とかけ離れていることも多くあります。

重要なのは、営業職をひとくくりにするのではなく、自分に合った営業の仕事を見つけることです。

どんな営業があるのか、自身の強みや経験を活かせる営業はあるのかなど、視野を広く持って考えてみましょう。

転職支援のプロである転職エージェントを頼れば、プロ目線でアドバイスをくれたり、転職の方向性を一緒に考えてくれたりします。

最後に

いかがでしたか?今回は、体育会系が営業に向く理由、向かない理由を紹介しました。

体育会系だから営業が向いているとは限りませんし、自身が体育会系でないことを理由に営業職への適性がないと思う必要もありません。

営業職という仕事も時代と共に大きく進化してきています。

企業の営業スタイルや方向性を把握し、自分にフィットした営業の仕事を見つけましょう。