美術館や博物館で働いている人を見て、憧れの気持ちを抱いたことはないでしょうか。
芸術品や文化作品に興味がある人にとっては、「できるものなら働いてみたい。」と感じる場所かもしれませんね。
美術館や博物館で働くと言っても、何も特別な人たちだけが就けるわけではありませんので、転職先の選択肢に入れることも可能です。
気になる人は転職を考えてみてもいいのではないでしょうか。
今回は、美術館や博物館への転職に注目し、仕事内容や転職するメリット、デメリットを中心に紹介します。
美術館や博物館ではどんな仕事がある?
美術館や博物館に転職すると言っても、具体的にどんな仕事があるのか、よく分からない人が多いのではないでしょうか。
仕事内容の具体例を紹介します。
接客業務
接客業務は美術館や博物館で大切な仕事のひとつです。
受付や電話対応、館内の案内、施設概要説明、アナウンス、巡回、チケットや土産品の販売などがあります。
接客とひとくちに言っても、静かな美術館や博物館で働く場合は、どちらかと言えば落ち着きと品が求められることもあります。
一方で、子供向け展示物の紹介担当となれば、テーマパークのようなノリも必要になります。
接客スタイルはどんな美術館や博物館で働くのかによっても異なります。
運営、管理業務
展示物を監視管理するほか、広報物の制作、編集をする、ワークショップやイベントの立案や準備、補助業務など、美術館や博物館の運営そのものに幅広く関わります。
マネージャー職のように、企画、営業などの運営、管理業務全般を統括する立場として働く人もいます。
総務や経理などの事務業務
接客や運営は美術館や博物館特有のものですが、一般企業でよくある総務や経理などの事務職もあります。
利用者向けの業務ではなく、館内スタッフを支える業務と捉えると分かりやすいかもしれません。
美術館や博物館の仕事事情
美術館や博物館で働く人の雇用形態や勤務形態、資格などについて紹介します。
雇用形態とそれぞれの求人状況
雇用形態は正社員、契約社員、派遣、パート・アルバイトなど、さまざまな形態があります。
求人状況としては、正社員求人は少なめです。
正社員で募集がある場合は、はマネージャーのような管理職の求人か、後に述べる学芸員の募集が一般的です。
単純な受付や事務員でかつ正社員という求人は、欠員募集がメインになるため、数がかなり少ないか、あってもすぐに募集が終了する人気ぶりです。
他方、比較的よく見られる求人が契約社員とアルバイトです。
契約社員からの正社員登用を設けているケースもありますので、正社員での転職を考えている人でも、契約社員は入り口として考えられるひとつの方法となります。
アルバイトは、期間限定募集も多いです。
美術館や博物館は期間を区切って展示物を変えることも多いため、イベントにあわせてアルバイト人員を募集するからです。
勤務場所や勤務時間
勤務場所は自治体や民間が運営する美術館や博物館のほか、一般企業が自社製品やその歴史を知ってもらうために運営している展示場のような場所も多数あります。
勤務時間は館の営業時間によりますが、一般的には午前10時くらいから、午後7時くらいまでの間で勤務し、営業時間後に片づけや事務作業をして勤務終了となることが多いです。
営業時間が長い館では早番や遅番などの勤務体制もあります。
転職に学芸員資格は必要?
美術館や博物館の求人を探していると、しばしば目にするのが学芸員という資格名です。
学芸員とは博物館法に定められた専門的職員のことで、学芸員として働くためには必須の資格です。
資格は以下の方法で取得することができます。
- 大学で博物館に関する単位を取得する
- 大学に二年以上在籍して博物館に関するものを含む単位を62単位以上取得し、学芸員補として三年以上勤務する
- 学芸員認定試験や学芸員資格認定審査に合格する
学芸員資格の詳細は、文部科学省のHPなどで確認することができます。
※参照:文部科学省HP
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/main14_a1.htm
単に博物館や美術館に転職したい人であれば、受付や案内業務もありますし、転職で必ずしも学芸員資格が求められるケースばかりではありません。
ただし、利用者から質問を受けることは多々ありますので、知識が豊富であるに越したことはなく、求人によっては学芸員資格を必須としていることもあります。
学芸員資格をもっており、学芸員に転職したいと考えている場合でも、単に資格があれば転職できるというものでもありません。
より深い知識を持っている人が求められ、学生時代からのツテなどもある意味では必要となり、求人自体も少ないことなどが理由です。
美術館、博物館に転職するメリット
ここからは、美術館や博物館に転職するメリットを紹介します。
残業が少ない
一般的に残業が少ない傾向にあります。
博物館も美術館も閉館時間がしっかり決まっているため、特別な必要がない限りは定時で帰れることが多いのです。
特に接客業務を担当していると利用者対応がメインとなるため、営業時間にあわせた帰宅が可能です。
営業やマネージャーのように運営に関わる業務を担当していれば、一般企業と同じように残業することもあります。
空調のきいた静かな場所で仕事ができる
幅広い年齢層の利用者が快適に展示物を観ることができるように、館内は適度な空調がきいています。
場所柄、静かなことが多く、落ち着いた雰囲気の中で仕事をしやすいです。
自身が働く場所の雰囲気を転職前に確認できるのも利点でしょう。
語学力やコミュニケーションスキルを活かせる
語学力やコミュニケーションスキルを活かしたいと考えている人は、美術館や博物館はうってつけの転職先です。
接客業の中でも、単に感じがいいだけでなく、人に分かりやすく説明することも求められる仕事ですから、その意味での環境としては申し分ないと言えるでしょう。
芸術や文化への造詣が深くなる
美術館や博物館で働きたい人は、もともと芸術や文化に興味があるケースも多いでしょうが、実際に働くことでさらに造詣を深めることができます。
興味がある分野で働くことは楽しさややりがいにもつながりますので、長く働きやすいとも言えます。
非日常空間で働くことができる
美術館や博物館は日常とは別空間ですし、訪れる人たちの心も穏やかなので、一般企業で働く環境とは大きく異なります。
中には仕事に追われている感覚が少なく、とにかく楽しくて仕方がないと言う人もいます。
素晴らしい展示物を無料で観ることができ、仕事の中にも癒しを感じることもあるでしょう。
美術館、博物館に転職するデメリット
続いて、美術館や博物館に転職するデメリット、すなわち、どんなことが大変なのかを紹介します。
立ち仕事なので体力が必要
総務や経理などのバックオフィス系職種や受付専門でなければ、基本的に一日中立ち仕事です。
場所によっては動きやすいスニーカーは厳禁で、ヒールつきの革靴とスーツで館内を動き回ることもありますので、特に女性は体力的にきついと感じることもあるでしょう。
土日祝日勤務
美術館や博物館は土日祝日こそ混雑しますので、一般企業で働く家族や友人と休みをあわせることは難しいです。
サービス業ですので、接客や販売職と同じような感覚でいた方がいいでしょう。
土日祝日休みの受付業務が希望であれば、一般企業の受付などを狙う方が近道です。
給与相場が低い
給与相場は正社員や契約社員であっても15~19万円と、決して高くないのが実情です。
パートやアルバイトの場合は時給ですが、地域の最低賃金レベルであることも珍しくありません。
生活に余裕がある給与とまでは言えませんが、残業が少ないため、副業や掛け持ちをして乗り切る方法もあります。
給与が下がっても好きなことを仕事にしたい人であれば、楽しく前向きに仕事ができることもあるでしょう。
経営が不安定な一面も
利用者が少なく、閉館に追い込まれる美術館や博物館も少なくありません。
どんなに素晴らしい美術館や博物館であっても、現実問題としては運営費用が必要となりますので、先行きとしてはさほど安定的とは言えないでしょう。
安定や高収入を求める仕事というより、好きなことを仕事にできる点が魅力だと割り切ることも必要になります。
どんな人に向いている?
美術館や博物館の求人を見て、「芸術作品に全く興味がないけれど、何となく楽そうだから応募しようかな。」と考える人がいるかもしれません。
しかし、美術館や博物館への転職は向き不向きがありますので、自身の適性についてもよく考えておく必要があります。
ここでは、美術館や博物館への転職に向いている人の特徴を紹介します。
人前で話すことが好きな人
1対1の接客に限らず、大勢の人の前で館内の案内や展示物の説明をする機会も多い仕事なので、人前で話すことが好きな人が向いています。
といっても、話術に長けているというより、自分の好きな分野を徹底的に追及できるような人であれば、自然と言葉はでてくるものです。
業界で働く人で、「普段から話すことが苦手だけど、仕事では好きなことを説明するから不思議と苦にならない。」と言っていた人もいます。
人を楽しませる仕事に転職したい人
美術館や博物館に展示されている芸術作品には、もともと人を楽しませたり、感動させたりする力がありますが、館のスタッフの説明や案内、展示方法の工夫などによって、より館の魅力が高まります。
人を楽しませる仕事に転職したい人にとっては、やりがいの大きい仕事と言えるでしょう。
クリエイティブな発想がある人
展示イベントの開催や展示方法の工夫、より楽しんでもらうための説明など、企画力が問われる仕事でもあります。
芸術や文化作品を扱う仕事柄、クリエイティブな発想があることは、この仕事に転職するための前提条件と言ってもいいくらい必要なことです。
好奇心旺盛な人
人間、興味のないことを覚えることはそう簡単にはできないものです。
好奇心旺盛に、展示物や時代背景などを深く知りたい、関連分野にも知識を広げたいといった人が向いています。
美術館や博物館に勤務している人は、芸術分野に興味津々であることも多いです。
そのため利用者からは知識レベルが高いことを前提で質問される機会が多々あり、好奇心がある人とない人とでは、知識や接客対応レベルに差が生まれてしまいます。
美術館、博物館の求人を探す方法
美術館や博物館の求人は、以下の方法で探すことができます。
求人媒体で探す
ハローワーク、転職サイト、転職エージェントなど、さまざまな媒体で求人を探すことができますので、基本的には通常の転職活動方法と変わりはありません。
求人件数としては多くないため、転職エージェントに相談し、求人がでたタイミングで知らせてもらう方法もあります。
ポイントとしては、あまり焦らず、じっくり探すことです。
そのためには、今の仕事を続けながら求人をこまめに確認し、チャンスがあればすぐに動き出せるようにしておきましょう。
HPでチェックする
美術館や博物館では求人を一般公開せず、HP上で募集していることもあります。
そこで働きたい強い希望がある人はHPを常々チェックしており、全国からでも駆けつける人がいるため、知らない間に求人がでて、知らない間に受付終了してしまうことも考えられます。
特に気になる美術館や博物館があるなら、頻繁にチェックするようにしましょう。
知人のツテを頼る
友人や知人に関係者がいれば、ツテを頼ることもひとつです。
辞めにくくなるなどの理由で、通常はあまりおすすめできない方法ですが、美術館や博物館は大々的に募集していないことも多いため、どうしても転職したいなら利用するのも手です。
最後に
いかがでしたか?今回は、美術館や博物館への転職について紹介しました。
求人件数は決して多くありませんが、社会人になってからの転職可能性はある仕事です。
興味があり、ぜひ働いてみたいと感じている人であれば、挑戦する価値はあるのではないでしょうか。