やっとの思いで手に入れた役職も、企業の人事制度によって一方的に奪い去られることがあります。
それが役職定年制度。
年齢によって一律に役職を外れることになり、年収激減、モチベーションの低下など、さまざまな苦労が待ち受けている制度です。
そこで今回は、役職定年を迎えて後悔しないために、役職定年の怖さと役職定年前にやるべき準備を紹介します。
目次
役職定年とは
役職定年とは、企業の人事制度のひとつであり、一定の年齢に達した人材が役職を外れることを指します。
たとえば部長職だった人が、就業規則にもとづき役職定年を迎えたら、次の日から平社員になるわけです。
企業の制度なので、年齢について法律上の決まりはありません。
一般的には55歳が多い傾向にありますが、56歳~59歳まで、あるいは55歳未満に設定している企業もあります。
役職定年の目的
役職定年は、組織の生まれ変わりを促す、50代の人件費を削減するなどの目的から設けられている制度です。
役職の椅子が限られているのに、役職者が変わらなければ、組織は停滞したままですし、若手のモチベーションも上がりません。
年齢が高く、さらに役職がついている人材の給与は高いため、若い役職者にした方が人件費を抑えることもできます。
役職定年の怖さ
役職定年は、これから役職を目指す世代や企業側にとってのメリットは大きいですが、役職定年になる本人にとっては、デメリットばかりが目に付くかもしれません。
役職定年にはどんな怖さがあるのでしょうか。
年収が減る
役職定年になると、高い確率で収入が下がります。
役職定年の目的から照らし合わせると、年収をキープすることはかなり難しいと言っていいでしょう。
役職時代に比べ、7~8割の年収になることも普通で、中には5割程度まで下がってしまうケースもあります。
年収が減る要因は、基本給の減額もありますが、役職手当がなくなることです。
特に、基本給はそれほど高くなくても、役職手当で高年収になっていた人は、減額幅が多いと感じることでしょう。
基本給と役職手当をもとに賞与が計算されていた場合、役職手当が消えることで賞与額にも大きく影響します。
もっともお金が必要な時期に困る
役職定年を迎える55歳前後は、人生の中でも特にお金が必要な時期です。
35歳で第一子が生まれたと考えると、55歳の役職定年の頃は、子供がまだ20歳前後なので、大学費用などで大金が必要です。
子供がいない家庭であっても、この頃には親が高齢になっており、介護費用の問題も考えられます。
もっともお金が必要な時期に、年収が激減する制度、それが役職定年なのです。
モチベーションが下がる
役職がついていることの責任感と、それにともなう報酬を得ることによって、役職者は高いモチベーションを持つことができます。
しかし、役職定年により、部下がいなくなり、責任感が下がりやすくなり、報酬も減ります。
これまで部下だった人の下で働くことにもなるため、屈辱的な気持ちにもなるでしょう。
場合によっては、全く畑違いの部署に異動になることもあります。
こうして、役職定年後のモチベーション維持は困難になります。
役職定年を迎える前にやっておくべき4つの準備
役職定年を迎えた後の人からは、後悔や苦痛の声が多く聞かれます。
企業に役職定年の制度が存在する以上、「自分は関係ない」と軽視することはできません。
役職定年を迎えて後悔しないように、何をしておくべきなのでしょうか。
1.年収激減に備えておく
真っ先に取り組んでおきたいのはお金の問題です。
年収が高いからと言って贅沢な暮らしをするのではなく、倹約に努めるのがひとつです。
特に子供の大学費用が必要なご家庭では、役職定年が死活問題ともなりかねません。
役職定年翌年の住民税も、年収が激減してはじめて、その負担を強く認識するものです。
役職手当がもらえるうちに、学費と税金だけでも用意しておくといいでしょう。
2.部下たちへの接し方
役職定年を迎えた後でも、生き生きと働ける人もいます。
役職を外れることで肩の荷が下り、これまでの経験を下の世代に教えながら、むしろ楽しく仕事をしているようにも見えます。
このような人は役職時代から権力に固執せず、部下ともフラットな目線で接するようにしています。
部下たちからすれば、上司でありながら気軽に相談できる、役職関係なく必要な存在です。
役職定年後も同じ会社で働き続けたいのなら、「今度は部下たちを支えてあげよう」くらいの達観した気持ちで、人への接し方を考えておくことも大切です。
3.起業の準備
組織にいる以上、どんなに優秀な人でも、年齢によって振るい分けされることがあります。
ならば、組織をでて独立開業することもひとつの方法です。
起業すれば年齢によって一方的に切られることはなく、自分の好きな仕事を長く続けることができます。
ただ、リスクが伴い、確実に成功するとは誰にも言えません。
大企業の役職者だったからと言って、会社の肩書が外れた後は本人の資質に左右されます。
資金の用意や資格、人脈作りなど、できるだけ早い段階から起業の準備をしておき、会社の肩書関係なくやっていけるのかを見極めることも大切です。
4.転職先を探しておく
役職定年後にも安定して年収をキープできる方法は転職です。
好待遇で迎えてくれる転職先と出会えるのであれば、年収が激減した後のお金の心配もなく、モチベーションを保って仕事を続けることができます。
管理職経験があれば、40代後半や50代での転職も不可能ではありません。
年収を保つためには、ハイキャリア向けやスカウト型の転職エージェントを利用するといいでしょう。
ただし、年齢的に転職活動が長引く可能性はあります。
転職が決まるまでに、時間がかかってもいいように、役職定年を迎える前の早い段階から動きだしておくことをおすすめします。
それまでに転職市場価値を高めておくことも大切です。
最後に
いかがでしたか?今回は役職定年の怖さや、役職定年前にやっておくべき準備について紹介しました。
現在、企業の定年は60歳が主流です。
役職定年が55歳だとすると、定年まであと5年はあります。
この5年は非常に長く、何の努力や工夫もなく会社にしがみつくことは難しい面もあります。
できれば役職定年を迎える前にできる限りの準備をしておき、後悔のないようにしておきたいところです。