街中を歩いていると、ときどき目にする「便利屋」の看板。
どんな仕事なのか、転職先としてアリなのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
起業すれば稼げると言われることがあることからも、転職でも年収アップにつながるのでは?といった期待があるかもしれません。
便利屋とはいわゆる何でも屋のことで、依頼者の希望によって多岐にわたる仕事をおこないます。
今回は、転職先としての便利屋に着目し、現状と今後、仕事内容や求人事情などに迫っていきます。
目次
便利屋の仕事内容
便利屋は依頼主の希望に応じて多種多様な仕事をおこないます。
この記事ですべての仕事を紹介することはできませんが、よくある仕事としては以下のようなものがあります。
- 生活支援(買い物、身の周りの世話、ペットの散歩など)
- 水周りのトラブル対応、エアコンの設置
- ハウスクリーニング
- 人間関係代行(話し相手、デートの練習相手、SNSで友達のフリなど)
- 不要品片づけ、家具の組み立て
- 庭の手入れ、草むしり、掃除
- 蜂の巣、ねずみ駆除
- 遺品整理、お墓参り代行
一方で、便利屋とはいえできないこともあります。
たとえば、
- 法律に抵触すること
- 公序良俗に反すること
- 専門の資格や許可がなければできない仕事
- 社会通念上便利屋がおこなうべきではないと判断される仕事
などは便利屋がおこなうことはできません。
便利屋が成立する背景
便利屋への転職が気になっているけれど、怪しい仕事ではないのかといった不安がある方のために、便利屋がなぜ成立しているのか、その背景を探ってみます。
高齢化による需要増
超高齢化による需要増は便利屋が増えた大きな要因のひとつです。
重たい物を運べない、遠い場所へ訪れることができない、調べ方が分からないなど、高齢になって困ることは数多くあります。
電話一つで何でも代わりにやってくれる便利屋は本当に助かる存在です。
地元のお年寄りの手助けをして地域貢献にもなっています。
未婚率の高まり
ひと昔前であれば、何か困りごとがあれば家族の誰かがやってくれることが普通でしたが、未婚率の増加に伴い、単身世帯が増えています。
急なトラブルで遠く離れた家族や友人を呼ぶこともできず、お金を払えばすぐに対処してくれる便利屋は助かります。
女性の社会進出
女性の社会進出によって、家事育児、仕事にと、とにかく忙しく手一杯な人が増えました。
仕事のない週末にも用事が山積みで、庭の手入れを丁寧におこなったり、こまめに不要品を片付けたりといったことが難しく、高齢の親を手伝う時間が取れないこともしばしばです。
こうして放置され、大きくなってしまった困りごとも、便利屋なら対応してくれます。
現代人のひとつのテーマは「時間を有効活用すること」です。
便利屋を使って効率良く問題を解決し、自分たちの時間を無駄にしないことができます。
社会の人間関係が希薄になった
昔の日本は近所付き合いが濃密で、大変な作業は近所で助け合っておこなう関係性が構築されていました。
しかし現代は挨拶をする程度か、どんな人が住んでいるのか分からないケースも珍しくありません。
隣近所の人に助けを求めたり、何かを頼んだりすることがほとんどないため、困りごとを解決してくれる人がいません。
誰にも頼めず困る人が唯一頼めるのが便利屋だと言えるでしょう。
便利屋はなぜ利用者がいるのか
なぜわざわざ便利屋に依頼する人がいるのかが気になる方もいるでしょう。
便利屋よりも専門業者に頼む方が確実で安心ですし、お金を払わず家族や友人に頼む方法もあります。
便利屋を利用する利点とはどんなことなのでしょうか。
お金さえ払えばどんな面倒な依頼もしてもらえる
何か困りごとがあっても、知り合いに借りを作るのはあまりいい気がしないものです。
何かをしてもらったら、倍にして返さないといけないような気持ちにもなるでしょう。
家族や友人に頼むことでさえ気を使います。
かといってお金を渡そうにも「家族(友人)なんだからいらないよ」と言って受け取ってもらえないことがあります。
便利屋は仕事としておこなっていますので、お金を払って何度でも気兼ねなく依頼することができます。
割り切った使い方ができるのも便利屋の魅力です。
依頼内容ごとに業者を探す手間がない
水回りのトラブルは水道業者に、不要品の片づけは廃品業者にと、専門業者に頼むこともできますが、あれもこれも一気に片づけて欲しいときは別々の業者を探さなくてはなりません。
案件によっては、そもそもどの業者に頼めばいいのか分からないこともあるでしょう。
便利屋はほとんど何でも対応してくれるため、依頼内容ごとに業者を探す手間がなく、非常に楽なのです。
融通が利き価格交渉にも応じてもらえる
大手の専門業者に頼むと、価格設定がきちんとしている、マニュアル通りの対応をされる、決められた日時でしか対応してもらえないなど、一定の決まりごとがあることがほとんどです。
便利屋の場合は中小零細企業も多いため、小回りや融通が利き、価格交渉にも応じてくれることもあります。
便利屋になるには?求人事情はどうなの?
便利屋になるための資格や資質はあるのか、求人事情はどうなのか、便利屋への転職を考えている方向けに解説します。
便利屋になるための資格
便利屋に必須の資格はありませんので、特定の資格がなくても採用可能性は十分にあります。
反対に、「随分前に取得したこの資格、役に立つのだろうか?」というようなものでさえ、便利屋では役に立ってしまうことがあります。
必要な資格をしいて挙げるとすれば、運転免許はあった方がいいでしょう。
依頼主の元へ出向くときに使うのはもちろん、重たい機材や家具を運ぶ、誰かを送迎するなどは便利屋の定番とも言える仕事だからです。
もっとも、各種専門資格があれば便利屋としての仕事の幅が広がりますので、便利屋をしながら資格取得に取り組む方も多いです。
器用な人でないと転職できない?
どんなことでもこなせる器用さが必要かと言えば、必ずしもそうとは言えません。
便利屋に所属する社員やアルバイトはそれぞれに強みがありますので、オールマイティでなかったとしても、何か得意分野があれば重宝される可能性があるからです。
体力仕事ばかりとも限りませんので、体力に自信のない女性であっても、応募してみる価値はあります。
開業して自分一人で仕事を請け負うでもない限り、何か得意分野があればいいのです。
とはいえ、「これは絶対できません」「やったことのないことはやりません」などと仕事の選り好みが激しい人は、思うように仕事をもらえない可能性がでてしまいます。
便利屋に求められる資質
便利屋になるために求められる資質は、企業の方向性やどんな仕事を請け負っているのかにもよりますが、以下のような資質があれば採用される可能性は高くなるでしょう。
- 好奇心をもって何にでもチャレンジできる人
- 必要とあればスキルや知識を身につける努力ができる人
- フットワーク軽く動き回れる人
- コミュニケーションスキルがある人
- お客様への心遣いができる人
便利屋の性別は男女どちらが多い?
性別比については企業ごとに異なるため一概には言えませんが、傾向としては男性が多いです。
高齢者からのニーズが多いこともあり、体力を使う仕事、やや危険な仕事が頻繁に発生することなどが関係しています。
ただし、女性の便利屋だからこそできる仕事の依頼もあります。
たとえば、
- 女性へのプレゼントを選んでほしい
- 買い物や料理をしてほしい
- 恋愛の相談に乗ってほしい
- イベントの受付を女性に担当してほしい
などは、女性の便利屋がいればニーズに応えやすくなります。
そのほか、利用者が単身の女性であれば、女性の便利屋の方が安心できることもあるでしょう。
女性ならではのきめ細かいサービスを好む人もいるはずです。
女性スタッフのみで構成された便利屋もあり、こうしたニーズに対応しています。
求人件数は少なくない
便利屋の求人は転職サイト、転職エージェント、求人情報誌、ハローワークなど、さまざまな媒体で、比較的容易に見つけることができます。
募集理由として「業務拡大につき」と位置づけている企業が多いことからも、需要の高さ、業界としての成長度がうかがえます。
豊富に求人があるとまでは言えないものの、少し時間をかければそれほど苦労せず希望の求人にたどりつくことができるでしょう。
便利屋の雇用形態は?
便利屋の雇用形態には正社員やアルバイトがあります。
派遣形態ではないものの、実質的にはほとんど派遣のように、必要に応じて出動するアルバイト要員を設けているケースも見られます。
複数名の正社員と、比較的大人数のアルバイト要員を確保することで、多種多様な要望にも応えられるようにされていることが多いです。
正社員として働く場合は、正社員求人に応募するか、一旦アルバイトとして雇用されてからの正社員登用を目指すかの選択肢があります。
便利屋の給与相場
便利屋の給与相場は、時給800~1,200円ほど、日給8,000~1万3,000円、月給18~20万円ほどが目安です。
業績が振るわない小さな便利屋であれば賞与もありませんが、中には賞与がしっかりつき、福利厚生に恵まれている便利屋も存在します。
依頼内容によって仕事の大変さが変わってくる便利屋ですので、基本給プラスインセンティブがつくケースも多いです。
とはいえ、年収ベースで考えると200~300万円ほどで、それほど高収入とは言えない部類に入ります。
便利屋は一回使って終わりという人も多いため、安定的に仕事が見込めるわけではないからです。
特にアルバイトの場合はスポットでの仕事も多くなるため、他のアルバイトを掛け持ちするなどした方が稼ぎやすいでしょう。
便利屋に従業員として雇われるのではなく、独立開業してしまう人も多いです。
独立開業して成功すれば年収500万円ほど稼げることもありますが、休みなく働く人も多いため、仕事が好きでないと大変な面があります。
雇われ便利屋として高収入を得るには?
転職して便利屋に雇われたいと考えている人は、従業員として高収入を得るにはどうしたらいいのかを、あらかじめ知っておくことも大切です。
正社員であっても低賃金に悩まされ、仕事を覚える前に辞めてしまう人も一定数いるからです。
目的意識をもって仕事に取り組むことで、最初のうちは思うような給与が得られなくても、継続していくことができ、スキルレベルも上がっていくでしょう。
資格取得や得意分野を増やすことが近道
従業員として高収入を得たいのであれば、1日でも早く仕事を覚え、スキルや知識を磨き、企業に必要とされる人材になることです。
専門資格を持っていたり、得意分野が多数あったりすれば企業利益に貢献しやすくなりますので、給与が上がっていく可能性も高いです。
土日祝日に呼ばれることもあるため休日は安定しませんが、頑張り次第である程度の高収入も不可能ではありません。
業績好調の企業を選ぶこと
雇われの便利屋として安定した収入を手にするには、企業の業績も重要です。
業績が好調な企業であれば賞与もありますし、企業によっては珍しい手当をつけていることもあるため、基本給以外の収入にも期待できるでしょう。
これは、便利屋の経営者は固定観念を持たず、さまざまな仕事に取り組む好奇心旺盛な人が多いためだと考えることもできます。
「何か面白いことをやろう」「従業員には楽しく仕事をさせてあげよう」という考えから、珍しい手当やモチベーションが上がる仕組みを作っていることも多いものです。
便利屋の求人を探す方法
便利屋の求人を探そうと思っても、中小零細企業が多く、地元にどんな便利屋があるのかよく分からないと感じることもあるはずです。
街中を注意深く探してみると意外とある便利屋ですが、具体的に依頼するシーンにならなければ覚えていないものです。
便利屋の求人は、転職サイトや転職エージェント、求人誌など、ごく一般的な媒体で見つけることが可能です。
「便利屋 求人 〇〇(地域名)」などと検索すれば、それなりにヒットするでしょう。
また、「便利屋.com」という便利屋専用の店舗・求人・相談総合サイトもありますので、自宅から通える範囲内にどんな便利屋があるのかを知ることもできます。
サイトから求人検索もできますが、店舗数に比べて求人件数は少なめなので、あくまでも情報収集の一環として検索することをおすすめします。
そのうえで、詳細は企業HPで調べ、応募は転職サイトやエージェントなど、転職に特化した媒体もあわせて利用した方がいいでしょう。
最後に
いかがでしたか?今回は転職先として便利屋が気になっている方に向けて、便利屋の現状と今後、仕事内容や求人事情などを紹介しました。
業務内容が幅広いため楽な仕事とはいきませんが、やりがいや仕事の面白さがあるのが便利屋です。
いろいろな仕事をやってみたい、地域住民の役に立ちたい、チャレンジングな仕事をしたいといった方にはおすすめの仕事ですので、気になる方はトライしてみてはいかがでしょうか。