「長時間働きたくない。」
「職場の人間関係から解放されたい。」
こんな悩みを持つことがあるかもしれません。
近年は仕事において、給与よりも時間的な余裕や精神的なストレスがないことを重視する人が増えており、その中において注目されているのがマンション管理人です。
残業がない、一人で気楽に仕事ができるなどのメリットがあり、働き盛りの人が転職するケースも見られます。
今回は、そんなマンション管理人について、仕事内容や転職するメリット、デメリットなどを紹介します。
目次
マンション管理人とはどんな仕事なのか
マンション管理人と聞き、何となくイメージできる姿があるかもしれませんが、具体的な業務内容までは分からない方も多いでしょう。
まずは、マンション管理人の業務内容を紹介します。
マンションの清掃や設備管理
マンション管理人の大きな仕事のひとつは、マンションの清掃や設備を管理することです。
共有部分やゴミ置き場などを清掃することで、居住者が快適な生活を送ることができます。
出入り口やエレベーター、階段、貯水タンクといった設備の安全性も重要ですので、不具合がないかどうかを巡回、点検をおこないます。
管球の交換作業など、業者でなくてもできるようなことはマンション管理人が担当することも多いです。
清掃や点検で1日が終わってしまうなど、マンション管理人の仕事では大きな割合を占めることがあります。
ただし、マンションによっては清掃業者を入れたり、大きな設備点検は一括で外注したりすることもあり、マンション管理人が必ずおこなうケースばかりではありません。
居住者への対応
マンション管理人は居住者からすれば、困りごとを気軽に相談できる頼れる存在ですので、居住者対応も重要な仕事となります。
居住者への連絡があるときは掲示板や回覧板を作成して知らせたり、居住者からの依頼や相談があるときは随時対応したりします。
マナーが悪い居住者がいれば、指導することもあります。
居住者への対応が多ければその分忙しくなり、対応が少なければ暇だと感じることもあります。
一般的には、築年数の長いマンションの方が、トラブルは起こりやすく、居住者からの要望も増えやすくなります。
新築マンションでは居住者対応がほとんどないケースもあるようです。
訪問者への対応
マンションには、居住者との関係者だけでなく、宅配、工事、点検業者なども訪れます。
荷物を預かる、工事や点検の案内、立ち会いをおこなうなどの業者対応も、マンション管理人の仕事のひとつです。
不審者がいた場合には居住者の安全を守ることも役目です。
ただし、マンション管理人は警察官ではありませんので、不審者を直接問いただしたり制止したりするのではなく、危険や違和感をもったときに警察に通報することになります。
警備の専門研修を受けた警備員でもありませんので、大きな声で挨拶をする、巡回を頻繁におこなうなどして、不審者が入ってきにくい環境を作ります。
その他
他にも、植木の管理、電話対応、日報の作成、管理会社への報告、管理費の督促など、ケースによって業務内容が多岐にわたることもあります。
居住者の年齢層によっては、業務の合間に話し相手になることもあります。
業務範囲は契約書で定められていても、何でも屋として居住者からの依頼を断りにくいケースも考えられます。
実際の業務内容はマンションごとに異なる点に留意
マンション管理人の業務内容は、どのマンション管理会社に所属するのか、マンションの規模はどれくらいなのかによっても大きく異なります。
「マンション管理人は楽だよ。」と知人から聞いていたとしても、自分が働くマンションで同じように楽だとは限らないのです。
実際の業務内容はマンションごとに異なる点を理解し、転職前に実態をよく確認しておくようにしましょう。
マンション管理人の働き方
マンション管理人への転職を考えている人にとって、雇用形態や勤務時間、給与など、気になる点も多いでしょう。
マンション管理人の働き方を紹介します。
雇用主や雇用形態について
マンション管理人は、主にはマンション管理会社や、不動産会社の子会社、グループ会社などに雇われますが、稀に管理組合に直接雇われることもあります。
管理組合に雇われる場合、管理組合がしっかりしていないと、雇われなのか、請負なのかが不明確で、社会保険なども受けられない可能性があります。
言うまでもありませんが、契約内容などはよく確認したうえで実際に働くようにしましょう。
派遣の場合の雇用主は派遣会社になりますので、給与や社会保険、福利厚生などは派遣会社が管理します。
雇用形態は求人によってさまざまですが、正社員のほか、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどがあります。
住み込みの場合は夫婦同時雇用などの条件がつくこともあります。
このケースでは、住居費や光熱費などが無料になることもあり、一定のメリットがあります。
一方で、夫婦2人あわせた給与を提示されることもあるため、1人あたりの給与として適切かどうかを判断する必要もでてきます。
勤務時間、勤務日
マンション管理人の勤務時間は通勤型なのか、住み込みなのかによっても変わります。
通勤型の場合、朝8時くらいから夕方の5時くらいまでが目安で、勤務時間そのものは一般企業と大差はありません。
時間がきたら帰宅できるため、一般的な会社員と同じようにメリハリをつけた働き方ができます。
住み込みの場合も時間無制限というわけではありませんが、実際問題としては、帰宅した居住者から連絡や相談を受けることもあるため、勤務時間と時間外との境界線があいまいになることがあります。
なお、複数のマンションを巡回するタイプのマンション管理人もいますが、パート・アルバイトでの勤務が多いです。
同じマンションでの滞在時間も短いため、居住者から見て「管理人さん」といったイメージを持たれにくいです。
勤務日は、土日祝日休みで、年末年始なども休みになることがある一方で、土曜日や祝日出勤の管理会社も存在します。
マンション管理人の給与相場
マンション管理人の給与は、正社員で18~25万円、契約社員で18~20万円、パート・アルバイトだと時給900~1,000円ほどがひとつの目安です。
年収で考えると、正社員であっても200~300万円前後になることも多く、あまり恵まれていないのが現状です。
給与にこだわりがある人は、マンション管理人以外の仕事を探す方が近道です。
マンション管理人の魅力
マンション管理人は一定の人気がある仕事です。
マンション管理人の仕事にはどんな魅力があるのかを見ていきましょう。
適度に体を動かし、適度に事務作業もある
常に重たい物を運んだり、バタバタを動き回ったりする仕事では、体力的にきついという問題が起こります。
一方、ひたすらパソコンを向き合ったり、書類作業が多かったりする仕事では、肩こりや目の疲れ、事務所内にこもる閉塞感をもつなどのデメリットがあります。
マンション管理人の仕事は、清掃や巡回で適度に体を動かしつつ、事務的な仕事もあるため、作業内容に偏りがなく、バランスよくこなすことができます。
残業が少ない
マンション内で特にトラブルなどが起こらなければ、通常は定時で終われることが多いです。
定時後に自分の好きなことに時間を使えるため、趣味や家族との時間を長く取りたい方にも向いています。
よく言う「ワークライフバランスの取りやすい仕事」のひとつです。
長時間残業や深夜残業になることはほとんどありませんので、その意味での体力的負担も感じにくいと言えるでしょう。
精神的に楽
契約件数を増やす、売上高をアップさせるなどの明確なノルマはありません。
営業や販売でノルマとプレッシャーに追われていた人にとっては、精神的に非常に楽だと感じることもあります。
職場の人間関係で悩みやすい人にとっても、自分のペースでできるマンション管理人の仕事は気楽だと感じやすいです。
最初のうちは覚えることもたくさんあって大変ですが、慣れるほどに精神面の負担は減っていくでしょう。
マンション管理人の大変なところ
では、マンション管理人の仕事はどんなところが大変なのでしょうか。
事前に知っておくことで、転職後のギャップを回避し、長く続けやすくなります。
清掃が大変
古いマンションや、居住者のマナーが悪いマンションを担当すると、清掃が大変になる場合があります。
マンション敷地内にあるゴミ置き場が極端に汚いことがあるほか、本来は業務外であるマンション敷地外(目の前の道路や側溝など)であっても、居住者から依頼があれば清掃しないわけにはいかないこともあります。
清掃では、暑さ寒さに耐えながら、比較的体力も使いますので、体力がない方は特に辛いと感じることがあります。
清掃を避けたい場合は、清掃業者を入れているマンションを選ぶと、他の業務に集中しやすい環境となります。
評価対象となりにくい
頑張っても目に見える成果が発生するわけではなく、マンションの維持管理が目的である性質上、人から評価を受けることが少ないです。
維持管理ができて当たり前、できていなければマイナス評価というわけです。
一般企業のように毎年定期昇給があったり、賞与が増えたりといったことも少なく、報酬面で評価を受けることにはそう期待できません。
評価と言えるケースでは、マンション管理人が定年を迎えた際、居住者から「もっと続けてほしい」との声があがり、契約を延長することもあります。
また、居住者から感謝の言葉をかけられるときも、評価されていると捉えることができ、マンション管理人にとっては嬉しい瞬間となります。
一人業務が辛く感じることも
マンション管理人は、夫婦で勤務しない限りは、基本的に一人で業務をおこないます。
黙々と仕事ができる、人間関係で悩む必要がない点はメリットですが、ときに孤独感をもつことがあります。
困ったとき、すぐに周りに質問できる先輩や同僚もいませんので、自分で判断する、管理会社に問い合わせるなどして対応します。
理不尽さがある
マンション管理人は楽で暇な仕事と言われることもありますが、必ずしもそうとは言い切れません。
居住者から明らかにマンション管理人の仕事ではないことを頼まれ、断ると嫌な顔をされたり、居住者同士のトラブルに対して仲介に入ったりすることもあります。
これら契約外の仕事であっても、手当や評価の対象となることはなく、ボランティアのような立場になってしまうことがあります。
こうした理不尽さから、一般企業で、周囲に人がいる状況の中で仕事をしたいと考える人もいます。
マンション管理人に求められる資質
マンション管理人に転職するために何が必要なのか、求められる資質を紹介します。
社会人経験
居住者の年齢層が幅広いこと、さまざまな業務があり、一人での対応が求められることなどから、一定の社会人経験が必要とされます。
社会人経験が不足していると、居住者からの信頼を得にくくなる、臨機応変に対応できない、といったことが起こるからです。
コミュニケーションスキル
居住者対応や交渉、受付などの業務がありますので、コミュニケーションスキルが求められます。
一人での仕事がメインだからと言って、人とコミュニケーションを取るのが苦手な人では難しいです。
むしろ、一人であっても、誰とでも適切なコミュニケーションを取れる、高いレベルのスキルが必要です。
おもてなしの心、奉仕精神
マンション管理人にとって、居住者はある意味お客様です。
おもてなしの心がないと、精神的にストレスを感じることも多くなります。
また、業務外の頼まれごとをする機会も多いため、奉仕精神がなければ長く続けることが大変になります。
もちろん、契約上は、契約に書かれていることだけ対応し、あとは一律に断ることもできるわけですが、実際問題としてはそう簡単ではないことも事実です。
清掃がしっかりできる
清掃はマンション管理人の大切な仕事のひとつであるため、丁寧にしっかり清掃できなくてはなりません。
清掃業者が入る場合でも、巡回中や日々の業務の中で見つけた汚れやごみは適宜対応する必要がありますので、きれい好きな人の方が向いています。
一人でもモチベーションを保つことができる
誰にも見られていない状況で作業することが多いため、サボろうと思えばサボることもできるのかもしれません。
しかしそれでは居住者からのクレームが増えたり、不審者を見逃してしまったりと、マンション管理人として仕事ができているとは言えなくなります。
一人でもモチベーションを保ち、真面目にコツコツと作業に取り組める人がいいでしょう。
パソコンスキル
高いレベルまでは求められませんが、最近は何でもパソコンで管理することが多いので、基本的なパソコン操作ができないと困ることがあります。
一定の社会人経験がある人であれば、問題ないことも多いです。
マンション管理士を取得する必要性について
マンション管理人とよく似た言葉に、マンション管理士があります。
マンション管理人に転職するために、マンション管理士の国家資格が必要ではないか疑問に感じることもあるでしょう。
結論としては、マンション管理人への転職では、マンション管理士の資格は不要です。
両者とも、居住者を支える仕事である点は共通していますが、具体的な業務内容や勤務場所、必要な知識、資格などが異なるからです。
マンション管理人はマンションに勤務し、マンションの管理業務をおこないます。業務内容は前述した通りです。
一方、マンション管理士は、マンション管理組合の運営や助言、管理委託契約や管理規定の見直しなどをおこないます。
マンション管理人の人件費を含めたマンション運営コストを分析、調整することもマンション管理士の仕事です。
勤務先もマンションではなく、マンション管理会社やマンション管理コンサルティング会社などになります。
マンション管理人に転職したいのか、マンション管理士として管理会社などへ転職したいのか、2つは全く別の道になる点を押さえておきましょう。
マンション管理人への転職で良い点
マンション管理人への転職で良い点を挙げます。
特別な資格がいらない
マンション管理人に転職するために特別な資格は不要です。
前述したとおり、マンション管理士の国家資格も求められませんし、マンション管理に関する検定試験などに合格している必要もありません。
もちろん、知識や経験の観点からすれば、機械や設備に強い人は有利に働くこともありますが、そうでないからと言って採用されない、仕事ができないことにもなりません。
多くの人にとって可能性がある仕事です。
年齢制限が緩い
一般的な転職では年齢が若いほど有利に働くことも多く、40歳以上の転職では苦労するケースが珍しくありません。
しかし、マンション管理人に関しては年齢制限が緩く、年齢が高い人でもチャンスが広がります。
臨機応変さや居住人からの信頼が求められることもあり、むしろ一定の社会人経験がある年配の人の方が好まれやすくもあります。
一方で、「マンション管理人は定年退職後の高齢者が就く仕事」といったイメージにあるように、若い人には向いていないかと言えばそうでもありません。
近年は30代、40代くらいでマンション管理人に転職する人も増えており、フットワークの軽さや交渉力、提案力などが評価されています。
女性でも転職しやすい
近年では若い女性の管理人も増えてきました。
特別な体力が必要とされず、定時帰りがしやすいことなども人気の理由です。
女性に人気なのは、「コンシェルジュ」と呼ばれるような高級マンションの受付を担当するタイプの管理人や、トラブルが少ない新築マンションの管理人などです。
マンション管理人への転職で悪い点
マンション管理人への転職で悪い点、すなわち、覚悟しておいた方がいい点を紹介します。
給与が下がることも多い
マンション管理人の給与相場は低めなので、満足のいく収入が確保できず、転職してから生活に困ることもあり得ます。
前職が何かにもよりますが、給与ダウンはある程度覚悟する必要があります。
副業や年金収入があり生活に困らないだけの基盤があるのか、資格取得などの目的があるのか(一時的にマンション管理人として働くことで勉強時間を確保したい)、といった点を整理することも重要です。
正社員求人が少ない
人口減にもかかわらず、新築マンションの建設は増えている状況ですので、マンション管理人の求人も比較的容易に見つけることができます。
マンション管理人の求人は、ハローワーク、転職サイト、転職エージェントなど、さまざまな媒体で見つけることができます。
ただ、正社員求人はやや少なく、契約社員やパート求人が多い傾向にあります。
正社員として転職するには、今の仕事をしながら気長に転職活動することをおすすめします。
転職エージェントを使えば求人がでたタイミングで知らせてもらうことも可能なので、効率良く転職活動ができるでしょう。
正社員以外の働き方を希望する場合は、短期間でも求人が見つかる可能性は高いです。
最後に
いかがでしたか?今回は、マンション管理人への転職について、仕事内容や魅力、大変なところを含めて紹介しました。
マンション管理人は決して高収入とまでは言えない仕事ではあるものの、時間的な余裕をもちやすく、精神的なストレスが少ないなどのメリットが多数あります。
大変な面も知っておく必要はありますが、ご自身がどんな働き方をしたいのかを踏まえ、選択肢のひとつとして検討されてみてはいかがでしょうか。