近年じわじわと人気が高まっている仕事に、「お墓参り代行」があります。

お墓参り代行とは、その名の通り他人のお墓参りを代行する仕事ですが、時代的な背景から需要が増えつつあり、仕事としての注目度も上がっているのです。

そこで今回は、お墓参り代行の仕事に着目し、仕事内容や求人事情、大変なところや魅力などをまとめてお伝えします。

「お墓参り代行の仕事をやってみたい」「正社員として転職する道はあるの?」など、お墓参り代行の仕事が気になっている方は参考にしてみてください。

お墓参り代行とは?

お墓参り代行とはそもそもどんな仕事なのか、仕事として成立しているのか、いろいろと気になる方も多いはずです。

お墓参り代行の仕事内容や給与相場、背景や将来性などについて解説します。

お墓参り代行の仕事内容

お墓参り代行の仕事を簡単に言えば「依頼主のお墓をきれいに整えてお参りする仕事」です。

具体的な仕事内容は以下の通りです。

  • 墓石やその周辺の掃除
  • 墓所やその周辺の草むしり
  • 彫刻部分のほこりやカビとり
  • 献花、お供え物の設置、線香をあげる
  • ご先祖様への合掌、礼拝
  • 清掃前後の写真撮影

写真撮影以外の作業については、自分たちがお墓参りをするときと同じことをおこなうわけですので、社会人であれば経験したことがある作業が多いのではないでしょうか。

また、基本的な清掃のほか、専用洗剤を使った清掃や墓石のコーティングといった、より高度な技術が求められる作業もあります。

利用者の希望やオプションプランによって作業内容は変動します。

お墓参り代行の給与相場は?

お墓参り代行でもらえる給与は、企業や地域による違いが大きいものの、1件あたり、5,000~8,000円ほどが相場となっています。

これは作業者が実際に受け取る金額であり、利用者が払う金額はプランによって8,000~16,000円ほどが相場です。

5,000~8,000円はかなり高額なようにも感じますが、カラクリもあります。

作業自体は1~2時間程度で終わりますが、移動時間がかかること、交通費が含まれていることなどを踏まえると時給は千円台になることもあるのです。

とはいえ、同じ墓地で複数件の依頼があったり、墓地近くに住んでいたりすると効率がアップするため、時給単価も上がることになります。

うまくいけば時給2,000円、3,000円も夢ではないため、最近では「実は稼げる仕事」としても注目されています。

お墓参り代行の繁忙期

お墓参り代行には繁忙期があり、お彼岸とお盆の時期です。

自分たちはもちろん、親戚たちがお墓参りにくることもあり、その少し前までにお墓を整えておきたいと思う人が多いようです。

もし単発のアルバイトで稼ぎたいと考えているのであれば、この時期を狙うことで求人を見つけやすく、効率よく働くことができます。

正社員であれば、この時期はアルバイトの募集や指導、管理業務で多忙になるでしょう。

ただ、故人の命日や月命日にお墓参りをしてほしいと考える人もいるため、お彼岸とお盆以外に需要がないということはありません。

特にリピーターを獲得している企業であれば通年、比較的安定的に需要が見込めます。

お墓参り代行サービスが増えた背景

お墓参り代行サービスをおこなう企業や個人は増えつつあります。

その背景には、高齢で十分な清掃、管理ができない、遠方に暮らしているためお墓参りに行けない、といった事情を抱える人が増えたことにあります。

親族が高齢となっており、女性の社会進出が進み、夫婦共働きで皆が忙しく、子や孫世代がお墓を十分に管理することも難しくなってきているのです。

また、お墓参り自体に行くことはできるけれど、自分が行く前にきれいな状態になっていることを希望する人が多いと言います。

お墓参り代行は不敬なの?

他人にお墓参りをしてもらうなんて…と思われるかもしれません。

しかし、お墓参り代行サービスを頼む人は何も、お墓参りが面倒だから他人任せにしたい、ご先祖様を大事にしていない、というわけではありません。

お墓参りに行きたくても行けない、でもお墓をきれいにしてあげたい、そんな故人への想いをもって利用する方が多くいます。

実際のところ、お墓参り代行を依頼する人のお墓はそこまで荒れていないことがほとんどです。

ご先祖様を大事にしていない人は、そもそもお金をかけてまでお墓参り代行を頼まず、お墓は荒れ放題というケースが多いものです。

お墓参り代行サービスの将来性

お墓参り代行サービスは以前では考えられないような仕事でした。

親族はまだまだ元気だったし、女性が家庭を守ることも当たり前だったので、平日に時間をかけてお墓参りに行くことが可能だったからです。

しかし、高齢化や女性活躍が進む現在では状況が変わりました。

メディアでもたびたび取り上げられるようにもなり、その結果、お墓参り代行サービスが浸透し、需要も増えてきています。

最近では、ネットでのお墓参りやバーチャル霊園といった形態もでてきており、将来的にお墓そのものがなくなる可能性はゼロではありません。

とはいえ、これらの形態に抵抗感を持つ人はまだまだ多く、10年、20年先にお墓が完全になくなるとは考えにくいものです。

特に高齢の方の抵抗感は強く、これからさらなる高齢化社会となる日本では、それなりに将来性の高い仕事と言えるでしょう。

お墓参り代行の雇用形態、求人事情

お墓参り代行の仕事に興味がある方は、雇用形態や求人事情についても気になるところでしょう。

ここからは、お墓参り代行の雇用形態や求人の探し方などを紹介します。

アルバイトや副業が多い

お墓参り代行サービスは、単発や継続のアルバイトのほか、クラウドソーシングなどを利用して個人が副業として請け負っていることも多くあります。

起業して個人事業主として活動する道もあります。

求人状況としては、お墓参り代行のみをおこなうケースでは、アルバイト求人が多くなっています。

お墓参り代行以外の仕事があっても構わないということであれば、正社員求人もあります。

お墓参り代行サービス会社に転職すれば正社員の道も

正社員の場合は単にお墓参り代行サービスを自らおこなうだけでなく、アルバイトの管理、指導、営業、宣伝活動、事務作業などお墓参り代行以外の業務を担うことになります。

また、企業としてお墓参り代行サービスを請け負っているケースでは、家事代行やベビーシッターの派遣を同時に柱としていることも多く、お墓参り代行1本で成立しているわけではありません。

ほかにも墓石工事や仏具を扱う企業で担っているケース、遺品整理や何でも屋の一環としてお墓参りをおこなう企業もあります。

その意味でも、正社員の場合はさまざまな業務に携わる覚悟が求められます。

求人の探し方

お墓参り代行の求人は転職サイト、転職エージェント、求人情報誌などで探すことができますが、「お墓参り 求人」と検索すると思うような求人が見つからないことも多いです。

理由は、前述したようにお墓参り代行のみを扱っている企業ばかりではなく、家事代行や遺品整理、墓石工事など、複数の業務を担っている企業が多いからです。

墓石や葬儀関連企業も含めて、幅広く探した方がいいでしょう。

お墓参り代行サービスを展開している企業を検索する場合は「お墓参り代行 比較」などと検索し、利用者目線で探してみてから、企業の詳細を確認するのがひとつです。

また、転職エージェントを利用すれば、あらかじめエージェントに希望を伝えておくことで、条件に合致した求人があれば紹介を受けやすいため、効率よく求人探しができます。

面接で心がけておきたい点

お墓参り代行は単発でのアルバイトを希望する方が多いことからも、面接をラフな私服姿で受けにくるケースも珍しくありません。

応募者が少ない地域や、とにかく人手が欲しい企業などでは、採用されることもあるでしょう。

ただし、正社員として転職したい、スムーズに採用されたいと考えるのであれば、面接はスーツで訪問し、社会人としてのマナーレベルやコミュニケーションスキルをアピールするべきです。

お墓参り代行は作法やマナーを守っておこなう仕事ですし、正社員の場合はアルバイトの管理なども求められることから、社会人としての質が問われます。

お墓参り代行の大変なところ

お墓参り代行の仕事をしてみたい方は、楽に稼げそうという観点はいったん置いておき、大変なところは何かを知っておくことも大切です。

暑さ寒さに耐える

お墓参り代行は屋外での作業となりますので、暑さ寒さに耐えなくてはなりません。

夏の厳しい暑さ、冬の寒さや雪、凍結などが大変なときもあります。

お墓参り代行はお盆や秋のお彼岸の時期など猛暑時期に依頼が増えるため、特に暑さが厳しいと感じることが多くなります。

体力仕事

お墓参り代行の作業で大きな割合を占めるのは、墓石や墓所の清掃、クリーニング、草むしりなどですが、これはかなり体力を使う作業です。

墓地によっては到着までかなり歩く、山の斜面にあるなどで移動時のきつさもあります。

高齢の親族では難しいといった理由もあり広がったサービスなので、体力仕事である点は受け入れざるを得ません。

少し怖い?

一人きりで墓地に行く、しかも他人のお墓参りであることから、霊的な怖さや緊張を感じることがありますが、場所によっても異なります。

人気が全くない墓地に行くことがある一方で、お墓参りに来ている他の人たちが周りにいたり、周辺でランニングをしている人がいたりと、思っているほど怖くないというケースもあります。

時給が変動する

墓地がどこにあるのか、オプションがどのくらいついているのかなどによって、実質的な時給が変動することになります。

いつも同じ場所に行き、決まった時給をもらえる仕事と比べると、収入の目安がつきにくいのが難点です。

ただ、これはアルバイトや個人で請け負うケースであり、正社員の場合は安定した月収となります。

社長との相性の問題

お墓参り代行サービスを展開している企業は、地元密着の中小零細企業が多い傾向にあります。

正社員の場合は特に社長との距離感が近くなりますので、相性が悪いとストレスを感じやすくなります。

反対に、相性が良ければ大手よりも融通が利き、裁量権も与えられるため、やりがいを持ちやすいとも言えます。

面接で話をよく聞き、社長の考え方や今後の見通しなどを確認しておきたいところです。

お墓参り代行の魅力

お墓参り代行の仕事を絶対にやりたくないと考える人もいる一方で、実は人気が高い仕事でもあります。

この仕事の魅力はどんな点にあるのでしょうか。

利用者から感謝の言葉をもらえる

お墓参り代行は必要とされているからこそ存在する仕事ですので、利用者から感謝されやすいです。

利用者の役に立ったと感じることができ、やりがいにもつながります。

最初はお金を稼ぐために始めたけれど、続けるうちに素晴らしい仕事だと感じるようになる人も多いのです。

作法や掃除の仕方などが身につく

お墓参り代行は利用者からお金をもらい、満足してもらう状態に仕上げる、れっきとした仕事です。

適当に掃除すればいいというものではありません。

そのため、作業開始時には先輩や社員が見本を見せてくれ、正しい手順や作法でおこなうように指導してくれます。

何回かやっていくうちに作法や掃除の仕方が身につき、自分のご先祖様にお墓参りをする際にも役立ちます。

人間関係のストレスに悩むことがない

作業に慣れてくると基本的に一人でおこなうことになるため、人間関係に悩まされることがありません。

むしろ、心をこめて清掃や供養をすることで、心が洗われるような気持ちになり、精神的なストレスは軽減されるという方も多いです。

自分の好きな時間に作業できて効率よく稼げる

アルバイトや個人で請け負う場合は、自分の自由時間を利用して好きなタイミングで作業できます。

空いた時間を有効活用できるうえに、高時給の仕事なので効率よく稼ぐことができます。

リピーターを獲得しやすい仕事

お墓とは一度お参りしたら終わりではなく、半永久的に守り続ける必要があるものです。

そのため、丁寧な仕事ぶりで利用者に満足してもらえたら、リピーター獲得につながりやすいです。

利用者からすると、お墓参り代行を飲食店のようにいろいろなお店を試すということは考えにくく、問題なければ同じところに依頼する人が多いものです。

他社との競争もそこまで激しくなりにくいです。

お墓参り代行はどんな人に向いている仕事?

お墓参り代行は、覚えるのにそれほど大変な仕事というわけではありませんが、誰にでもできる仕事とまではいきません。

この仕事をやってみたい方は、適性も踏まえて検討する必要があるでしょう。

ここでは、お墓参り代行に向いている人の特徴を紹介します。

丁寧に心を込めて作業できる人

お墓参りをおこなうという神聖な仕事ですから、丁寧に心を込めて作業できることが何より大切です。

一人だから手を抜いてもいいということにはならず、適当に作業をするとクレームにもつながりかねません。

誰も見ていない状況でも隅々までしっかり作業することが求められますので、意識の高い人、真面目な人に向いている仕事です。

清掃技術をもっている人

清掃業者として働いていた、高度な家事代行サービスをおこなっていたといったケースのように、優れた清掃技術があれば重宝されます。

利用者の高い要望に応えることができ、オプション作業にも対応できるからです。

採用されやすく、高時給にもつながりやすいでしょう。

葬儀や終活ビジネスなどに興味がある人

将来性を見据え、葬儀関連、終活ビジネスなどに興味がある方も、その一環としてお墓参り代行の仕事を経験することには意味があります。

お墓参り代行の仕事は、これらのビジネスと関連性が深く、組み合わせて事業を発展させることが可能だからです。

転職した企業が成長する、将来自分が起業するときに役立つなどで、今後大きく稼げる可能性もあります。

人間関係に疲れた人

上司や先輩に常に監視されるのが嫌だ、職場の同僚との人間関係が煩わしいなど、人間関係に疲れてしまった人にもおすすめできる仕事です。

最初こそ先輩や社員の指導がありますが、基本的には一人での作業が多くなるため、自分のペースで黙々と作業に終始することができます。

個人情報を守れる人

最近は「〇〇をやってみた」と、You TubeやSNSで発信する人が大勢いますが、お墓参り代行の仕事を、依頼主の許可なく発信することはできません。

どの墓地にどの家のお墓があるのか、どの家でお墓参り代行を頼むのかといったことは、個人情報に該当する恐れがあるからです。

また、不特定多数の人を相手に発信することで、それこそ「不敬だ」とバッシングを受ける可能性があり、自分自身はもちろん、雇用主や依頼主に迷惑をかけるリスクがあります。

密かに、しっかりとルールを守って作業することが求められます。

フットワーク軽く動ける人

正社員として働く場合は、アルバイト人員が不足しているときには自ら出向いたり、繁忙期には多数のアルバイトに指導をおこなったりして、何かと動き回ることが多くなりますので、フットワーク軽く動ける人に向いています。

企業としてお墓参り代行サービス以外をおこなっているケースも多いので、臨機応変に対応する力や、何にでもトライして吸収していける好奇心、向上心があると楽しく仕事ができるでしょう。

最後に

いかがでしたか?今回は、お墓参り代行サービスという新しい仕事にスポットライトをあて、仕事や求人事情などを紹介しました。

特に正社員としての転職を目指す方にとっては、高齢化の日本における将来性に期待ができ、さまざまなビジネスとの組み合わせも可能なサービスとして、おすすめできる仕事です。

気になる方は探してみてはいかがでしょうか。