「辞めた会社に戻りたい。」
こんな願望が、ふと頭をよぎることはないでしょうか。
辞めた理由や戻りたい事情はそれぞれですが、近年は辞めた会社に再就職する人も多いようです。
「出戻り転職」などと呼ばれ、話題にのぼる機会が増えていますので、聞いたことがある人もいるかもしれませんね。
では、転職者の立場から見て、出戻り転職は正しい選択なのでしょうか。
本当に戻りたい場合にどうすればいいのかも気になることでしょう。
そこで今回は、出戻り転職にフォーカスしてお話します。
出戻り転職をするメリット・デメリットを含め、本当に出戻り転職すべきかどうかを慎重に考えてみましょう。
目次
一度は辞めた会社に再就職する理由
そもそも、なぜ一度辞めた会社に戻ってくることがあるのでしょうか。
まずは、出戻り転職の理由を探っていきます。
新しい職場が合わなかったから
転職したものの、新しい職場が合わなかった場合に、出戻り転職するのは多いケースです。
他の会社を経験することで、元の職場がいかに恵まれた環境だったのか気づくこともあるでしょう。
転職先では思うように結果を出すことができず、前の生活に戻りたい、もしくは家族から強く希望される場合もあります。
また、元の職場がいいというよりも、転職した先があまりにひどかったケースも当てはまります。
どうしても戻りたいのではなく、転職した先よりはマシということです。
元の職場からすれば失礼な話ですが、口にさえ出さなければ分からないことなのかもしれません。
元同僚に打診されたから
出戻り転職など考えていなかったけれど、元同僚や元上司に打診されて考えるようになった。
このケースも出戻り転職の理由です。
能力の高さを買われ、どうしても戻ってきてほしいと懇願され、「それも悪くないかな。」と思った場合に成立します。
転職先で何とかやっていたけれど、思っていたほど打ち込める仕事ではなかった、小さな不満が積み重なってきたいた場合などに、ちょうどいい話が来たということです。
他社での経験を活かしたいと感じて
転職先で十分に経験を積み、その経験を前の会社で活かしたいと感じることがあります。
成長した自分を見てもらい、お世話になった会社への恩返しの意味も込めて、前の会社に貢献したいという気持ちです。
前の会社への思い入れが強く、以前の辞め方もスマートだった場合に成立することがありますが、かなり稀なケースだと言えます。
なんとなく
一度辞めた会社に再就職することは、周囲の目が気になったり、仕事内容や待遇に変化がないかどうかが不安になったりするものです。
一般的にはハードルが高い出戻り転職ですが、中にはあまり深く考えずに戻ろうと考える人もいます。
辞めたはいいけど特にやりたい仕事がなかった、転職先であまりうまくいかなかった場合などに、「前の会社に戻ればいいだろう。」と、気軽に考えてしまう人は意外と多いものです。
出戻り転職をするメリットは?
一度辞めた会社に戻ることは一般的にリスクが高いことだとされていますが、メリットもあります。
近年は大手を中心に、辞めた優秀な社員を受け入れようとする動きも多くなっています。
会社側からすれば、教育の手間やコストがかからず、即戦力として活躍してくれる期待感があり、簡単に優秀な人材を確保できるからです。
では、転職者にとって出戻り転職にはどんなメリットがあるのでしょうか。
企業内情を理解しているためギャップを感じにくい
何年も在籍していた前の会社は、転職者にとっては勝手知ったる場所です。
どこに何があるのか、どんな事業展開をしておりやり方はどうなのか、給与や労働環境はどうなっているのかなど、多くのことを把握しています。
通常の転職では、募集要項に書かれている内容以外を把握することが難しく、転職後に想定外のことが起きてギャップとなります。
許容できる範囲のギャップであればいいのですが、許容できない場合は不満となり、再転職という結末になってしまうでしょう。
出戻り転職であれば、企業内情を理解しているためギャップを感じにくく、スムーズです。
新しく人間関係を構築する必要がない
出戻り転職では、一から人間関係を構築する必要はありません。
昔一緒に仕事をした仲間の多くがまだ残っているため、「お久しぶりです。」の一言で通じ合うことができます。
通常の転職では、新しい仕事を覚えるだけでなく、人間関係を築き上げることも大変です。
職場の人間関係をストレスに感じやすい人も多いため、知っている人たちと仕事ができるのは大きなメリットでしょう。
能力や人柄を分かってもらっているため採用されやすい
企業が新しく人を雇うときは、経歴や面接で話してみた印象を元に、総合的に判断します。
しかし、たった数回の面接で決まってしまうため、面接本番に強い人が有利に働きがちです。
せっかく優れた能力や素晴らしい人柄であっても、一発勝負の本番で力を発揮できなければ内定獲得は難しくなります。
出戻り転職の場合、すでに能力や人柄を分かってもらっています。
面接一発勝負ではなく、何年もの間積み重ねてきた信頼性を元に判断してもらえるため、採用ハードルはぐっと下がります。
元同僚や元上司の口利きがあれば、ほとんど選考されることなく決まる場合もあります。
出戻り転職をするデメリットは?
メリットも大きい出戻り転職ですが、やはりリスクは高い転職方法です。
メリット以上に多数のデメリットがありますので、冷静に判断しなくてはなりません。
ここからは、出戻り転職のデメリットを紹介します。
「昔と変わった!」と感じることがある
出戻り転職をする時期にもよりますが、辞めてから何年も経っている場合には、社内の様子は大きく変化しています。
人や物の配置だけでなく、事業内容や経営方針に違いが起きている場合もあるでしょう。
出戻り転職は、企業内情をよく知っていることがメリットのはずなのに、「こんなはずではなかった。」と感じることもあります。
出戻る前に、職場の人からよく話を聞き、以前と変わった点を確認しておく必要があるでしょう。
自分がいない間に他の人が活躍していて焦る
誰かが辞めるときは、代わりの人がその業務を担当したり、ポジションに配属されたりします。
辞めるときには当たり前のことだと思っていたその事実が、戻ってきたときには焦りとして自身を苦しめることになるでしょう。
後任者が優秀な人で周囲からの信頼を勝ち取っている、自分より下の立場だった後輩が今は自分がいたポジションで活躍している。
そんな状況を目の当たりにしたとき、辞めたことへの後悔が沸きあがってくるかもしれません。
一度辞めたことをよく思わない人もいる
一度辞めた人間を受け入れる職場の人の心境はどうでしょうか。
よく戻ってきてくれたと心から歓迎する人もいれば、いまさら戻ってきたことをよく思わない人もいます。
一人が辞めたことで職場の業務量が増え、大変になってしまった場合にはなおさらです。
在籍中には親しくしていた人でも、自分が辞めた後どうなったのかは分からないもの。
必ずしも歓迎されるわけではないと思っておくべきです。
同じ理由で辞めたいと思っても辞めにくい
以前に辞めたのはどんな理由だったのでしょうか。
その理由が何らかの不満だった場合、また同じ不満がでてくる可能性が高いです。
しかし、再度同じ理由で辞めることは、出戻り転職が失敗だったことを意味します。
不満になると分かっていて戻ることは、あまりに考えが浅いことです。
周囲からも呆れられてしまうかもしれません。
そうなると、辞めたいけど辞められない状況になります。
身動きが取れない状況で働き続けることは想像以上に大変で、精神的にも辛いことです。
以前より成長していて当たり前と思われる
前の会社を辞めて月日が経っているわけですから、その分成長していて当然だと思われます。
以前と同じようなことしかできない、似たようなミスばかりするようでは、一度辞めた人を雇ったことが失敗だったと思われるでしょう。
周囲は、口には出さずとも、辞めた後の成長をもって貢献してくれることを期待しています。
自分自身も、少しでも成長した姿を見せたいと感じるでしょう。
常にプレッシャーを背負うことになり、人によっては苦痛に感じることになります。
前にいたときより待遇が悪くなる可能性もある
出戻り社員の待遇は、会社によって対応がまちまちです。
全く同じ待遇で受け入れてくれることもあれば、転職先での経験を考慮して、レベルアップした待遇を提示してくれることもあります。
しかし、前にいたときより給与や待遇が悪くなるケースも、ごく普通にあります。
理由としては、当時と会社の経営状態が悪化している場合、辞めて迷惑をかけられたと感じている場合などが考えられます。
ポジションに関しても同様です。
後任者がいますし、管理職についていた場合には平社員からのスタートになる可能性もあるでしょう。
一度は辞めた社員を受け入れてくれる、それだけでも有り難いことです。
待遇が悪化することは、ある意味仕方がないと覚悟することも必要でしょう。
辞めた会社に戻りたいと思ったらどうすべき?
出戻り転職のメリット・デメリットを整理し、そのうえで前の会社に戻りたいと感じることもあるでしょう。
感情だけで動くのはリスクが伴いますので、よく考え冷静に判断したいところ。
ここからは、出戻り転職をしたい人がおこなうべき具体的ステップを見ていきます。
1.前の会社を辞めた理由を再確認
まずは、前の会社を辞めた理由を紙に書きだします。
当時の状況をしっかり思い出すために、家族や友人に話を聞いてみることも1つです。
会社への不満や辛さを、親しい人には漏らしている可能性もあるからです。
「当時は本当に大変そうだったし、こんなことを言っていたよ。」と、第三者だからこそ冷静に思い出せることがあるはずです。
何の不満がなく、家庭の事情などでやむを得ず辞めた場合は、その理由や、辞めたくなかった心境などを書いておきましょう。
辞めた理由によっては、出戻り転職はやめた方がいいことがあります。
特に、不満が大きくなって辞めた場合、その不満は現在はすでに解消されているものなのかをしっかり確認しましょう。
戻っても再度不満を感じる可能性がある退職理由であれば、この段階で出戻り転職は避けた方がいいです。
2.辞めたことで迷惑をかけた人がいるだろうと受け止める
誰かが辞めても会社組織はまわりますが、一時的に誰かの業務量が増え、職場の人たちが大変な思いをすることはあります。
代わりの人を雇う手間やコストもかかったことでしょう。
自分が辞めたときに職場では何が起こったのかをしっかりと想像し、その迷惑に対して頭を下げて戻る覚悟はあるのかを、自身に問いかけてみましょう。
辞めて誰にも迷惑をかけていない、辞めた理由を他人のせいにするといった気持ちがあるのなら、恐らく戻ってもうまくいきません。
辞めた自分を責めるということではなく、辞めた会社に対して謙虚な姿勢を持って戻れるかということが大切です。
3.今度は辞めにくいということをイメージしてみる
出戻った先で、定年まで勤めあげることができるでしょうか。
再度の退職は、以前に辞めたとき以上に、環境的にも精神的にも難しくなります。
今度は辞めにくくなるということを、しっかりイメージしてみましょう。
それでも戻りたいなら、きちんと覚悟ができている証拠です。
もう絶対に辞めないという強い気持ちがないのなら、リスクのある出戻り転職はすべきではありません。
4.会社の現状を把握する
出戻る覚悟ができたら、会社の現状を把握します。
それによっては出戻りできる可能性が下がってしまうからです。
いくら戻りたいと思っても、会社に人が十分に足りている状況では難しくなります。
業績が悪化しており、会社が人員削減を考えている状況下では、出戻り転職など無理でしょう。
元同僚や元上司と付き合いがあるのなら、それとなく現状を聞くようにし、情報収集に努めます。
人手不足や自身の活躍場所がありそうなら、具体的に話をしてみるようにしましょう。
5.マイナスイメージを抱かれないように応募すること
受け入れてもらえる可能性があると判断したら、いよいよ会社側への打診や応募に移ります。
この際、マイナスイメージを抱かれないように注意することが大切です。
企業は、よほど優秀な人でない限り、出戻り転職を希望する人に対し、どこかに「転職に失敗したから逃げてきたのでは?」とのイメージを持ちます。
今の会社の不満を伝えてしまうと、「現状が辛いから慣れた場所に戻りたいだけだろう。」と思うでしょう。
「一度会社を離れてみたことで客観的に見つめることができ、会社の魅力を再認識した。」など、前向きな理由を述べましょう。
さらに、今度こそ辞めない強い意志があるということを伝えると好印象です。
6.会社側が少しでも渋ったら潔く諦めよう
出戻り転職を快く受け入れてくれるケースもありますが、中には会社側が渋ることもあるでしょう。
辞めた理由やそのときの状況などによっては、「何をいまさら?」と思われる可能性もあります。
会社側があまりよく思っていない状況で、何とか戻ることができても、いばらの道です。
想像以上に歓迎されていない事実に落ち込み、以前のような不満もでてくるかもしれません。
二度目の退職時には何を言われるか分かりません。
ここは潔く諦め、気持ちを切り替えて別の転職先を探す方がいいでしょう。
出戻り転職が諦めきれない場合、恐らくは転職に対しての不安感が強いのでしょう。
特に、転職先で失敗した結果、前の職場に戻りたいと思っていた人は、「また転職で失敗するかもしれない。」と思うものです。
転職に対して強い不安や悩みがある人は、転職エージェントを頼りましょう。
プロの視線でアドバイスをくれ、今何をすべきかが明確になります。
出戻り転職してもいい人だめな人
出戻り転職には、成功するケースと失敗するケースと分かれます。
成功するケースの大半は、そもそも出戻り転職をしても良かった人です。
失敗するケースは、元々出戻り転職をすべきではなかったという人が多いですよ。
過去と現在の状況から、自身が出戻り転職をしてもいいかどうかを判断してみましょう。
出戻り転職しても成功しやすい人は下記のタイプです。
- 円満退職した人
- 会社に不満はなかったが配偶者の転勤などでやむを得ず辞めた人
- 退職後も職場の人と良好な人間関係があった人
- 前の会社で実績があり求められている人
- 初心に戻って謙虚な姿勢を保てる人
反対に、出戻り転職が失敗しやすい人はこんなタイプです。
- 不満があって辞めた人
- 必ず歓迎されると思っている人
- 待遇やポジションは以前と同じで当たり前だと思っている人
- 他の会社が合わないという理由で戻ってくる人
- あまり深く考えず戻ろうと思っている人
出戻り転職したら心がけたいこと
出戻り転職をすることになった場合、必ず心がけておきたいことがあります。
それは、謙虚な姿勢でいることです。
いくら過去に勤めていたことがあっても、一度離れた会社に戻るときは新人です。
待遇やポジションに不満を持ったり、当時の同僚や後輩に偉そうにしたりすることは避けるべきです。
当時は引き留めを振り払って辞めたとしても、頭を下げたことで出戻りを受け入れてくれたのなら、また信頼を取り戻すことはできます。
謙虚さは、出戻り転職において何より大切な点だと覚えておきましょう。
出戻り転職にリミットはあるの?
会社を辞めてから何年以内なら、出戻り転職が許されるのでしょうか。
基本的には、会社が人材を募集している限りはリミットはありません。
ただし、会社によっては退職後何年以内など制限を設けている場合もあります。
そのときの年齢によっては受け入れにくいこともあるでしょう。
また、そもそも会社を辞めて何年も経っていれば、社内事情は大きく変化して当たり前ですから、出戻ることのメリットが薄れてしまいます。
そのあたりも踏まえ、出戻り転職は早い方がいいと思っておいた方が賢明です。
最後に
いかがでしたか?今回は、出戻り転職について、メリット・デメリットや具体的ステップを紹介しました。
前の会社にどうしても戻りたいと感じるなら、出戻り転職も大アリです。
新たな気持ちで仕事に取組み、結果をだし、愛社精神がより深くなる可能性もあるでしょう。
大切なのは、覚悟を決めることです。
通常の転職以上に強い気持ちが必要になることを踏まえ、慎重に判断してください。