とある大手工場の近くを夕方5時過ぎくらいに通ると、工場の作業員たちが一斉に帰宅する姿を目にします。

これからオフィスに帰り、何時間もの残業が決まっているホワイトカラーの営業マンを尻目に、仕事終わりの晴れやかな顔をしています。

転職して工場で働くと言うと、「大学まで出たのに」「もっと良い仕事をしなさい」などと周囲から言われることがありますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

長時間残業とノルマで精神をすり減らし、自分らしさを失うことが、「大学を出てまでやる良い仕事」かどうか、疑問を持たれる方がいるはずです。

工場勤務は、ストレスが少なく効率良く稼ぐことができるメリットがあり、決して悪い仕事ではありません。

向き不向きは激しい仕事ですが、向いている人にとっては非常に良い仕事と言うこともできますよ。

今回は、工場勤務にスポットライトをあて、工場勤務の誤解や、工場勤務をおすすめできる人、できない人の特徴を中心に紹介します。

工場勤務の3つの誤解

工場勤務と聞くとそれだけで敬遠する人がいますが、大きな誤解をしている人も多いため、実態を知っておく必要があります。

まずは、工場勤務にまつわる主な誤解を3つ紹介します。

賃金が低い

工場勤務は賃金が低いとのイメージを持たれることがありますが、実はそうでもありません。

高卒者の初任給などを見れば、月収20万円未満、年収300万円未満といったケースもありますが、その条件下であれば、他職種においても同じことです。

工場勤務の正社員は定期昇給もありますので、年齢が上がるごとに年収もアップします。

夜勤手当などの加算がつきますので、むしろ他職種より上がっていくこともあります。

目安としては、30代~40代で年収400~500万円ほど、大手工場であればさらに高いこともあります。

20代の初任給で月収30万円を超す人も珍しくありません。

派遣や期間工であっても、日給が高めに設定されています。

賞与はありませんが、特別手当として10万円程度支給されることもありますし、期間満了にともなう慰労金などが設けられている求人もあります。

工場は計画的に稼働させますので、ほとんど残業がなく、あったとしても残業代がしっかり支払われます。

サービス残業が当たり前になっている他の職種と比べると、時給換算で考えたときの収入は、かなり良いと言えるでしょう。

このように、工場勤務は格段に稼げる仕事とまではいきませんが、世間が想像している「低賃金の仕事」とは異なる実態があります。

作業環境が悪い

冬は寒いし、夏は暑いし、工場の中は汚いし…。

このように、工場勤務は作業環境が悪いと思っている人が多いようです。

もちろん、零細企業の工場では、いまだにこうした劣悪な環境の工場は存在しますが、工場全体で見ると、そのような工場ばかりではありません。

まず、工場の中は冷暖房完備のことが多いです。

今どき冷暖房がない状況で働かせようとしても、そもそも人が集まりませんし、体調不良で倒れてしまう人がでますので、企業としてリスクを負うだけです。

また、工場は基本的に、時間内で決められた生産量を保つという目的がありますので、他の職種と比べても効率重視の側面が大きく、工場内はきちんと整理整頓されています。

食品や化粧品などの工場では衛生面が重要ですから、清掃が行き届かないことは工場として致命傷となります。

特に大手工場や、業績の良い工場では、整理整頓、清掃を徹底していますので、工場内や従業員のトイレなどはきれいなことも多いのです。

ここは、工場によって差が大きいところではありますが、「工場=作業環境が悪い」のではなく、質の低い工場を選ぶとそうなってしまうというだけです。

体がきつい

工場勤務は、確かに体力を使う仕事です。

重たい物を何度も運ぶ業務があれば、1日中立ちっぱなしで足腰が辛いと感じることもしばしばです。

夜勤もありますので、体力がない人には向いていないと言えるでしょう。

しかし、前職との比較においては、むしろ体が楽になったと感じる人もおり、一概に体がきつい仕事とは言えない面があります。

たとえば、スーツに身を包んだ営業マンと比べて、工場勤務が必ずしもきついとは言えません。

営業マンの場合、1日中、暑さ寒さに耐えながら外を歩き回ることも多々ありますし、契約を取るためにサービス残業や休日出勤をすることも珍しくありません。

ノルマが設けられており、ストレスやプレッシャーを感じやすくもあります。

一方の工場勤務は、冷暖房完備の工場内から出ることがなく、残業や休日出勤もほぼありませんので、ゆっくり体を休めることができます。

作業内容が決まっていますので、余計なストレスがかかることも少ないです。

単純なイメージだけで「体がきつい」とは、一概には言えないのです。

工場勤務をおすすめできる人

冒頭で「工場勤務は向き不向きが激しい」とお伝えした通り、工場勤務はおすすめできる人と、そうでない人が分かれる仕事です。

誰にでも向いている仕事ではありませんので、転職の際は適性についてよく考えておく必要があります。

ここからは、工場勤務をおすすめできる人の特徴を挙げていきます。

人と接しない仕事をしたい人

人と接することが苦手であれば、それを避けて仕事をすることは、何も悪いことではありません。

人と接することが苦手なのに接客業につき、ストレスを感じたり、客に不快な思いをさせたりするより、多くの人が幸せでいられます。

どんな仕事に転職するためにもコミュニケーションスキルが必要と言われますが、今は働くことの価値観や働き方の多様化が進んでいる時代です。

嫌なものを嫌々やる必要はないのです。

工場勤務は、電話を受けたり、接客をしたりといった対人業務がありません。

時間内に決められた作業量をこなす必要があり、周りの人と私語をしている暇もありませんので、面倒な人間関係を気にする必要がないのです。

モノづくりが好きな人

工場は何かを作る場所ですから、モノづくりが好きな人には楽しい仕事です。

たとえば子供の頃、徹夜してプラモデルを作成していたような人がいますよね。

同じような作業を何時間していても、飽きないし、むしろ楽しいのです。

工場勤務をしている人の中では、手を動かす作業が苦にならず、手先が器用な人も多いものです。

目の前の作業に没頭でき、あっという間に1日が終わります。

学歴や職歴でなかなか就職できない人

工場では多くの場合、学歴を求められることがありません。

特別な技術が求められる工場を除けば、職務経験も不要ですから、これから工場の仕事を始めたい人でも十分転職できます。

学歴要件を満たさず応募できる企業が少なかった人、職務経験がないことが不利に働き不採用が続いていた人などは、工場で社会人経験を積むこともひとつです。

大企業へ転職したい人

通常、大企業に転職するには、ある程度の学歴と職歴が求められます。

しかし、工場の場合は大量採用が基本ですし、オフィス勤務と別の採用基準を設けていることも多くあります。

一般的なオフィスワークと比べると、大企業で働くチャンスが高いと言えるでしょう。

工場勤務であっても、福利厚生や年間休日などはオフィス勤務と同じですので、それなりに恵まれた働き方をすることができます。

大企業で働いているという社会的な信用を得られますし、次に転職するとしても一定のアピールになります。

社会復帰を目指す人

親の介護があった、メンタルの不調で仕事をお休みしていたなど、事情があって長らく社会に出ていなかった人もいるでしょう。

そのような人たちでも、いずれは社会復帰を目指す必要がありますが、ブランク期間が長いほど復帰への勇気が湧かず、尻込みしてしまうものです。

工場勤務は、社会復帰する場所としても向いています。

複雑な仕事がなく、朝から夕方まで働くという規則正しい生活ができますので、「働く」ということに体と心が慣れやすいのです。

久々の社会復帰で、できれば人間関係のストレスを避けたいと感じている人でも、黙々と作業に取り組むことができますので、余計なことを考えずに済みます。

夜勤を選べば、さらに人と接する機会が減りますので、精神的なストレスが軽減されます。

また、ブランク期間が長いと再就職において不利に働きやすいため、その点を考慮しても、採用ハードルが低めの工場であれば、再就職しやすいと言えるでしょう。

ワークライフバランスを保ちたい人

工場は基本的に残業がありません。

良い工場ほど、無駄を省いて生産性を高めるようにしますので、決められた時間しか作業員を働かせないのです。

1日中稼働している工場でも、シフトがありますので、時間が来れば次のシフトの人に引き継ぎます。

個人が勝手に機械を稼働させて残業をすれば光熱費がかかってしまいますので、必要のない残業は厳しく管理します。

突発的な残業がなく、プライベートの予定が立てやすいことで、ワークライフバランスを保ちやすくなります。

また、大手工場になるとゴールデンウイークや夏季、年末年始休暇は工場の稼働を停止し、大型連休になります。

のんびりと旅行に行くこともできますので、リフレッシュする機会も多いと言えます。

工場勤務をおすすめできない人

続いては、工場勤務をおすすめできない人の特徴を紹介します。

極端に体力がない人

工場で働くには一定の体力が必要ですので、極端に体力がない人はやめておいた方が良いでしょう。

工場は機械にあわせて手を動かしますので、途中で休みたいと思っても自由に休憩することができません。

我慢していては余計に体調を崩してしまうことになります。

腰痛やヘルニアなどがある人も、工場勤務は非常に大変です。

単に運動不足で体力がないだけなら、運動を習慣化するなどして体力を取り戻すことは可能です。

しかし、持病や年齢などの事情によっては難しいことがありますので、他の選択肢も考えてみましょう。

世の中には、デスクワークや受付、在宅など、体力が極端になくても働ける仕事が多数あります。

飽きっぽい人

工場では同じ作業を繰り返しおこないますので、飽きっぽい人には向いていません。

すぐに嫌になり、別の仕事に転職したいと思うでしょう。

単純作業は仕事に慣れやすい分、簡単すぎて人によっては苦痛に感じることがあります。

飽きっぽいかどうかはご自身の性格に関わる点ですので、自己分析によって判断することができるはずです。

人と接することが好きな人

人と接することが好きな人は、接客や営業など、人と関わる仕事の方がやりがいを感じやすいです。

工場では同僚と休憩中に話すくらいしか人と接することがありませんので、宝の持ち腐れに終わってしまいます。

一時的に工場で働き、お金を貯めたいなどの目的があれば別ですが、そうでない人は別の仕事を探しましょう。

人と接することが好きという点は、大きな武器になりますので、さまざまな選択肢の中から探せることでしょう。

頭を使った仕事をしたい人

工場の仕事は複雑な仕事を覚えたり、心理戦の交渉ごとなどをおこなったりはしません。

これを楽だと感じる人もいれば、反対に辛いと感じる人もいます。

頭をフル回転させることで仕事のやりがいを感じるタイプの人は、工場勤務がストレスになりますのでやめておきましょう。

クリエイティブな仕事という面でも、すでに形が決まっているものを作りますので、自分の思いが反映されにくいと言えます。

あくまでも、単純作業が多いという点を理解し、それが向いているかどうかを分析しておくべきです。

正社員or派遣・期間工、どちらを選ぶ?

工場勤務には、正社員として転職する道と、派遣や期間工として転職する道とがあります。

今後のキャリアプランによって、どちらを選ぶべきかが変わってきます。

定年まで働きたいなら正社員

定年まで働くことを考えると、工場の中でのキャリアアップを目指す必要があります。

体力が求められる工場勤務で、何十年も一般社員のまま、というのはかなり厳しいものがあるからです。

役職がつけば、現場作業だけでなく、部下たちをまとめる、他部署との調整をおこなうといった業務を担うことになります。

責任が増える分、体力的な負担が減りますので、年齢が上がっても長く続けやすくなります。

役職なんて自分には無理だろうとお考えの方でも、実は工場勤務だからこそ役職につきやすい面があるとご存じでしょうか。

ある大手工場に勤めている人の話によると、工場の作業員は役職になりたがらない人が多いため、その中でやる気さえあれば、比較的ライバルが少ない状態でキャリアアップできるとのこと。

もちろん、登用試験などがありますので勉強は必要ですが、ライバルが多い他職種と比較すると、役職につくことが難しくないそうですよ。

自由きままに働きたいなら派遣や期間工

人と接することが苦手だから、役職者にならず、自由きままに働きたい。

そう考える人は派遣や期間工が良いでしょう。

大前提として雇用の安定性はありませんが、同じ場所で定年まで働き続ける息苦しさからは解放されます。

責任の重さも低いため、精神的に気楽な日々を送ることができるでしょう。

派遣や期間工の場合、ずっと同じ立場で、同じ環境下で働くということは叶いませんので、同時進行で副業や資格取得を目指すなど、何かしらの計画も必要となってきます。

少なくとも、無計画に派遣や期間工になり、いざ仕事がなくなったときに途方に暮れることがないようにしましょう。

工場勤務はこんな働き方も可能

工場勤務は、本業にするほか、一時的に働く、副業として働くなど、さまざまな働き方ができることも利点です。

工夫次第では、自分の夢を叶えることにつながりますよ。

期間を決めてお金を貯める

開業したい、留学したい、結婚したいなど、目的があってお金を貯めたいのに、今の仕事ではなかなか貯まらないのであれば、期間を決めて工場勤務することも一つの方法です。

工場は日給が高く、夜勤手当もつきますので、短期間で効率良く稼ぐことには向いています。

体力があまりない方でも、期間限定であれば乗り切ることも可能です。

最近では、副業解禁の一般企業が増えましたので、昼間は通常の仕事をおこない、夜に工場でアルバイトをするという人もいるようです。

この場合、休む時間がなく、体力的にかなりハードなので、無理をせずに期間を区切ることが大切です。

全国を旅しながら働く

工場は全国にありますが、オフィスビルが立ち並ぶ都会よりは、敷地面積が広い地方の方が、求人を見つけやすい傾向にあります。

そのため、全国いろいろな場所に行ってみたい人は、旅をしながら工場勤務をするという方法があります。

工場求人は寮つきのものがありますので、引っ越しや住居探しの手間をかけずに済みます。

平日は工場で働き、休日には近隣を散策する、そんな生活も悪くありません。

安定性は全くありませんが、同じ地域で暮らすことに飽きやすい人、好奇心旺盛な人には向いています。

工場勤務とネットビジネスで高収入

とにかく稼ぎたい、将来に向けて自動収益となるものを得ておきたい。

そんな人は、工場勤務とネットビジネスのダブルワークも良いでしょう。

ネットビジネスをやってみたいと思っても、現実問題として、毎日の残業で疲れ果て、週末はずっと寝ていたいといった理由から、なかなか始められないことがあるものです。

工場は残業や休日出勤がほとんどありませんので、空いた時間を副業に充てやすい環境です。

工場勤務で安定収入を得ながらネットビジネスをおこなえば、リスクがほぼありません。

ネットビジネスで収入を得られるようになった時点で、工場を辞める、開業するなどキャリアチェンジも可能です。

工場求人の探し方

工場勤務に興味がある人に向けて、工場求人の探し方やポイントを解説します。

転職サイトや転職エージェントを活用

工場求人は多数の媒体で扱っていますが、特に求人数の多い大手転職サイトや転職エージェントで探すことで、比較対象が多く、希望の条件にあった求人を見つけやすくなります。

求人掲載にあたって審査がしっかりおこなわれていますので、ブラック工場に当たってしまうリスクが軽減されます。

転職エージェントであれば、あらかじめ希望を伝えておくことで求人を探して紹介してくれますので、今の仕事を続けながらでも効率良く転職活動ができます。

お住まいの地域や希望勤務地が工業が盛んな地域であれば、ハローワークでも多数の工場求人がありますので、あわせて探してみても良いでしょう。

ただし、ハローワークの場合、掲載審査が緩く、掲載が無料であることから、質の悪い求人も混在していますので、求人を見極める力が必要になります。

知名度の高い大手工場を中心に探すことをおすすめします。

正社員登用制度がある求人がチャンス

正社員として転職したい方は、正社員求人に応募できれば一番ですが、なかなか見つからないことがあるでしょう。

派遣や期間工、契約社員と比べ、正社員求人は多くありません。

しかし、正社員登用制度がある求人なら、そこから入ってチャンスをうかがうことも方法です。

工場は採用ハードルが低めで、正社員以外の人が多いため、中には、勤務態度が不真面目な人もいます。

契約社員やアルバイトとして入社しても、真面目に働いていると際立つものなので、正社員になれるチャンスが生まれてきます。

本人の努力次第ではありますが、本気で正社員になりたければ道があるということです。

女性や体力に自信がない人は軽作業が狙い目

工場勤務は基本的に立ち仕事で、体力が必要です。

女性や体力に自信がない人は、どうしても事務職などを目指すことになりがちですよね。

しかし、事務職は超がつく人気職種ですから、よほどの経験がなければそう簡単に転職できるものではありません。

この場合、工場の軽作業が狙い目です。

工場求人の中には座りながら部品を組み立てるような軽作業もありますので、女性や体力がない人でも負担なく続けることができます。

ただし、一般の工場作業と比べると給与がやや低めです。

作業服を着て黙々と作業しますので、女性が好むお洒落さや華やかさはありません。

そのあたりが許容できるのであれば、残業もありませんし、事務職より稼げますので、良いのではないでしょうか。

最後に

いかがでしたか?今回は、工場勤務の誤解や、工場勤務をおすすめできる人、できない人の特徴を紹介しました。

工場勤務は一昔前までは、社会的な地位が低いと言われることもある仕事でした。

しかし、現在はワークライフバランスが重視される時代となり、残業が少ない工場勤務の良さが見直されてきています。

従来の型にはまらない働き方を望む方にも、副業との組み合わせで高収入を得ることも可能です。

工場勤務は期間工などの短期もありますので、気になる方は試してみてもいいかもしれません。