転職する際、誰もがブラック企業だけは避けたいと思うのではないでしょうか。

もしもブラック企業に転職してしまったら、心身ともにボロボロになってい、貴重な職業人生を棒に振ることになります。

とはいえ、ブラック企業は「入ってみないと分からない」側面も大きく、なかば運任せで転職先を選んでしまう人は少なくありません。

ブラック企業を確実に避けることは難しいですが、事前によくリサーチすることで、ブラック企業にあたる確率を大幅に下げることは可能です。

そこで今回は、ブラック企業の特徴と見分け方を紹介します。

転職を考えている方は、是非参考にしてみて下さい。

ブラック企業の特徴とは


ブラック企業に明確な定義はありませんが、見分けるために確実に押さえておいた方がよい点を整理しておきましょう。

法律に違反している

法律に違反した経営をしている企業、違法な労働を強いる企業は間違いなくブラック企業です。

残業代が未払い、法定労働時間を守らない、正当な理由なく有休を取らせないなどです。

もっとも、労働法以外の法律に抵触し営業を続けている企業も、いずれ悪事が明るみに出て企業経営が立ち行かなくなりますので、同様にブラック企業と言えるでしょう。

ハラスメントが横行している

パワハラ、セクハラ、マタハラなど、さまざまなハラスメントが問題視されています。

ハラスメントをする側の意識に問題があるのと同時に、それを見てみぬフリをする企業体質も大問題です。

企業全体としてコンプライアンスの意識が著しく低いのです。

こうした企業はハラスメントの問題にとどまらず、法律に反した労働を強いている可能性も十分考えられます。

離職率が高い

離職率が異常に高いと、何かしらの不満を持つ人が多数いるということです。

「仕事自体がきつい」だけで健全な企業経営をしている可能性もありますが、実際それほどきつい仕事なら、企業は対策を講じる必要があるはずです。

離職率を下げるための対策ができない理由があるのか、人材を使い捨てすればよいと考えているか、いずれにせよブラック企業の可能性は大いに考えられます。

求人情報からブラック企業を見分ける方法


ブラック企業か否かは、求人情報の中からヒントを得ることが可能です。

該当する求人が必ずしもブラック求人とは限りませんが、少し注意した方がよい求人になります。

求人情報を隅々まで読み込み、ブラック企業の要素がないか検証しましょう。

具体性のない文言が並ぶ

求人情報は具体的で細かい情報が書かれているほど、企業の透明性が高く、求職者に誤解を与えないように努力しているということです。

反対に、具体性のない文言が並ぶ求人情報は要注意です。

たとえば、「やりがいがあります」「やる気のある人求む!」「アットホームな雰囲気です」などは、人の価値観によって大きく左右される曖昧な要素です。

精神論を押し付けてハードな仕事を強要される可能性も考えられます。

こうした曖昧な文言しか求人情報に載せられないということは、他に企業としてアピールできる点がないと言うこともできます。

少なくとも、あまり魅力ある企業とは考えにくいでしょう。

通年募集している

ハローワークの求人や求人誌を見ていて「あれ?この求人、何ヶ月も前にも見かけたな」と思うことはないでしょうか。

頻繁に求人をだしている、通年募集している企業は、常に人材が不足している証拠です。

職場環境や条件がよくないから人の入れ替わりが激しく、常に求人をだすことになるわけです。

ホワイト企業は人が辞めませんので滅多に求人がでません。

でたとしても欠員募集で募集人員が少なくすぐに埋まってしまうため、求人が出続けることはありません。

業績好調にともない増員したいケースであれば募集人員は多くなりますが、それでも応募者は殺到しますので通年求人がでることはないでしょう。

年間休日は100日以下

休みが少ないとハードワークになりがちです。

年間休日が少ない企業は、できるだけ稼働日を増やし、労働力を酷使したいと考えている可能性があるため、注意が必要です。

また、年間休日が少ないということは、その分多く働いていますので見た目の賃金よりもコスパが悪い働き方になります。

たとえば、

      A社:月給20万円 月間労働日数20日
        B社:月給22万円 月間労働日数24日

      の求人を見たとき、月給だけに着目すればB社の方が条件のよい会社です。

      しかし、労働日数が多いので、日給換算すればA社の方が給与面でよい条件になります。

      とてもシンプルな理論ですが、意外と見落としてしまう人が多いため、気をつけるようにしましょう。

      年間休日の一般的な傾向は、110~125日です。

      カレンダー通りに土日や祝日が休みだとすると、年間休日は大体120日前後になりますので、120日あれば休みについては悪くない企業ということになります。

      反対に105日を切ると不満が生じやすくなります。

      105日未満になると、毎週土日休みでも祝日や年末年始、夏季休暇などの取得が難しくなるからです。

      100日を切ると週2日の休みが確保できなくなることが増えます。

      100日未満は、休みがかなり少ない企業だと思っておきましょう。

      大抵はそうした企業では有休取得も難しいため、体力的にきつくなると考えられます。

      給与が曖昧

      給与の額が曖昧に記載されている企業は要注意です。

      給与は求職者の多くにとって、非常に重要な条件です。

      それにもかかわらず明確にしないということは、裏がある可能性が高いです。

      たとえば、「月収20~50万円」と書かれていたらどうでしょうか。

      月収20万円と50万円は全く違います。

      これでは給与はほとんど明記されていないのと同じようなことです。

      給与額は年齢や成績によって幅がでることはありますが、自社の給与テーブルに基づいて算出すれば、それほど大きな幅がでることは少ないものです。

      また、「月収〇〇万円可能!」のように、夢を持たせるような文言にも注意が必要です。

      実際、求人媒体が掲載企業に勤める社員の給与を全員分調査するようなことはしませんので、企業の「言い値」とも言えます。

      月収〇〇万円稼いだ社員はすでに辞めているかもしれませんし、「頑張ってくれればそれくらい出すよ」という企業の希望的なものかもしれません。

      固定残業制、裁量労働制度

      固定残業制や裁量労働制のように、一般的に見るとやや特殊な制度を採用している求人は少し注意が必要です。

      一部には正しく活用している企業もあるのですが、制度上の留意点が多いことから「悪用」「誤用」が多く、従業員が泣き寝入りすることが珍しくない制度だからです。

      固定残業制は、固定残業代を超えて働かせた分は追加で残業代の支払いが必要です。

      しかし実際には「固定」をいいことに追加分は支払われておらず、未払いが発生することがよくあります。

      裁量労働制度は「労働者の裁量」と聞けば自由度が高いように思えますが、実労働時間ではなく、企業が「みなした時間」を元に賃金が計算されます。

      実際には「みなした時間」よりも長く働かせられる、帰るに帰れない状況が続くなど、ブラック企業の温床になっています。

      ごく一般的な給与支給方法や働き方を採用しても、通常、企業経営は成り立ちます。

      それをあえて特殊な制度を採用するということは、「何とかして経費を削減したい」「労働者を安く使いたい」という考え方が根底にあるということです。

      企業HPに力が入っていない

      今や、田舎の農家でさえHPでアピールする時代ですから、一般企業がHPで自社を紹介することは当たり前です。

      にもかかわらず、企業HPに力が入っていない企業が存在します。

      一応形だけ作ってあるものの、情報量が少なく、肝心な情報は非公開になっているのです。

      インターネットが浸透したこの時代、企業HPにお金をかけていないということは、ほとんど多くの場面で投資ができない企業です。

      現場社員が「もっとこの設備に投資してほしい」と言っても、目先の利益しか見えない経営陣なので無視します。

      また、優良企業は、企業情報をできるだけ公開し、透明性を心がけるものです。

      それこそが顧客や一般社会からの信頼につながり、結局は企業利益につながります。

      しかし、情報量の少ない企業HPを何年も放置している企業は、できるだけ詳しい情報を公開したくありません。

      何か隠したいことがあったり、アピールできる素晴らしい部分がなかったりするからです。

      ここは、求人情報にもつながる部分です。

      求人情報が詳細に書かれている企業ほど、「求職者とのギャップを埋める努力」をしています。

      反対に、求人情報がざっくりしており情報量が少ない企業は、「できるだけごまかして人を雇いたい」という思惑が見え隠れしています。

      面接からブラック企業を見分ける方法


      続いて、実際に受ける面接の中でブラック企業かどうかを見分ける方法を紹介します。

      仕事とは関係のない話ばかりしてくる

      面接は仕事内容や条件面を確認する場面です。

      しかし、なぜか仕事とは関係のない話ばかりしてくる面接官がいます。

      「一次面接は具体的な仕事内容が中心の面接だが二次面接は雑談が多い」といったケースでは、面接官の役割が分かれていますのであまり問題ありません。

      しかし、どの面接も仕事の話をしないというのは違和感があります。

      もちろん、求職者の「素」を見たいという理由で他愛のない話題をふってくる面接官はいます。

      しかし通常、雑談は面接の一部であり、全てではありません。

      面接のほとんどが仕事とは関係のない話ばかりをしてくる面接官は「相性」「精神的な部分」など曖昧なものを見ており、それらは面接官の感覚でしかありません。

      また、仕事の話に及べば、企業が隠したい「悪い部分」が明らかになる恐れがあり、隠している可能性もあります。

      思っていた仕事内容と違うなどギャップを感じることが多くなります。

      こちらから具体的な質問をしても、明確に答えないケースも危険です。

      離職率や有休消化率を聞いてもごまかすようなケースです。

      何か隠したいところがあると思っておきたいところです。

      面接官の態度が悪い

      面接で気に入られようと、自分のことで頭がいっぱいになることがありますが、面接官の態度がどうなのかもしっかり見極めましょう。

      面接官の態度が悪い企業はブラック企業の可能性があります。

      面接で厳しい質問をするから悪いわけではありません。

      面接では応募者を慎重に見極めるために、どうしても厳しい質問に及ぶことはあります。

      面接官の態度が悪いとは、そもそも外部の人に対応する姿勢として誠意がないということです。

      挨拶しても返さない、面接中はふんぞり返った姿勢をしている、人を見下すような態度を取り続けるなどです。

      態度が悪い面接官は、応募者に対する誠意がないだけでなく、そのような言動が外部の人に知られ、企業利益に悪影響を及ぼす可能性も理解していません。

      ビジネス人という観点からも優れているとは言い難いため、転職するメリットは少ないといえるでしょう。

      面接官の名字が経営者と同じ

      経営者の名字と面接官の名字が同じ場合や、複数いる面接官の名字が同じ場合、同族経営かどうかを確認しておいた方が無難です。

      確認方法としては、会社のHPを見ると役員名が記載されていることがあります。

      面接で聞いてみてもよいですし、転職エージェントを通じて確認することもできます。

      特に中小零細企業の同族経営には注意が必要です。

      大企業の中でも同族経営は多数ありますが、それでも企業規模が大きいため、同族以外の役員も多数います。

      外部の株主もいますので横暴経営の抑止力になります。

      役員クラスになれば別ですが、同族経営であることで一般社員が嫌な思いをすることは少ないのです。

      しかし、中小零細の同族経営は、一般社員への影響が甚大です。

      会社が完全に同族の中で私物化され、コンプライアンスを無視、ということも珍しくありません。

      典型例としては、社会人経験のない二世がいきなり次期社長になり、わがままし放題といったケースです。

      中小零細企業を同族経営で健全におこなっている企業もありますが、同族経営はとかくブラック企業になりやすい要素があると思っておきましょう。

      ブラック企業が多い業界とは


      もし転職先の業界選びで迷われているのであれば、ブラック企業が多い業界も知っておくとよいでしょう。

      もちろん、業界とひとくくりにすることは必ずしも良策ではありません。

      業界の中でも差があり、ブラック企業が多い業界においてもホワイト企業は存在するからです。

      ですが、転職を決める前の慎重さを高め、企業研究を念入りにおこなうことにつながります。

      次の業界は、人手不足、低賃金、サービス残業などが問題視されており、人材の使い捨て状態にあるケースも散見します。

      • 飲食、小売、サービス
      • 住宅、建設
      • 引越し
      • 宅配
      • IT
      • 介護、保育

      希望される場合は個々の企業をよくリサーチされるとよいでしょう。

      ブラック企業を事前に見分ける手段とは?

      最後に、ブラック企業を事前に見分ける方法を整理してお伝えします。

      求人情報をしっかり読み込む

      求人情報から見るブラック企業の見分け方は前述したとおりです。

      求人情報を熟読せず、給与や勤務地などだけ確認して勢いで転職してしまう人がいますが、研究不足が否めません。

      求人情報だけで全てを判断することはできませんが、ヒントをもとにしっかり企業研究するようにしましょう。

      面接では具体的な質問をする

      面接対策も重要ですが、面接の最後には質問タイムがあることがほとんどですから、気になることはしっかり質問しておきましょう。

      特に、面接の中で仕事にまつわる具体的な話がでてこなかった場合、こちら側から確認しておく必要があります。

      質問しても曖昧な回答しか得られなければ、前述のとおり危険信号です。

      登録制のクチコミサイトを確認する

      転職クチコミサイトを確認しておくことも方法です。

      退職した人から企業に対する誹謗中傷や嫌がらせなどもあるため、鵜呑みにすることはできませんが、実際に働いた人の生の声を知ることのできるツールです。

      ポイントとしては、登録制のサイトを確認するとよいでしょう。

      登録しなければクチコミを投稿できないため、むやみに陰口を叩きたいだけの人が少なく、信ぴょう性の高い情報を得やすくなります。

      就職四季報をチェックする

      東洋経済新報社が発行する「就職四季報」には、従業員数や売上などのほか、社員の年齢層や離職率、有休消化率などブラック企業を見分けるためのヒントが多数掲載されています。

      たとえば、会社設立年の割に社員の平均年齢が若すぎる企業は、年齢が上がって続けることが難しいと予想されます。

      反対に平均年齢が高すぎる企業は、若い人が活躍する場や魅力がなく、年功序列的、保守的である可能性があります。

      離職率や離職者数はブラック企業の分かりやすい指標になります。

      2%以内が理想、5%を超えると危険信号です。

      有給消化率はやはり高いほど休みが取りやすく、人員にも余裕があると予測できます。

      転職の場合は大手以外を視野に入れる方も多いでしょうから、「優良中小企業版」も役に立ちます。

      転職エージェントを利用する

      残業時間、有休取得状況、職場の雰囲気など、「面接で聞きたいけど聞きにくい」質問は多々あります。

      ブラック企業を避けるために知りたいと思っても、なかなか情報を得られないこともあるでしょう。

      転職エージェントを利用すると、本当に知りたい情報を教えてもらうことができます。

      エージェントが掲載企業に実際に足を運んだり、採用担当者とのやり取りの中で聞きだしたりしてくれるからです。

      これまでの転職者支援の中で蓄積されたデータもありますので、情報量と信ぴょう性において非常に有利です。

      転職支援のプロであるエージェントは転職を成功させるための心強い味方となりますので上手に活用しましょう。

      最後に

      いかがでしたか?今回は、転職成功を目指す方に向けて、ブラック企業の特徴と見分け方を紹介しました。

      ブラック企業を避け、本当に働きやすい企業で働くためには、事前の企業研究が不可欠です。

      求人情報や面接、書籍や転職エージェントなどのさまざまな手段を用い、とにかく情報収集を念入りにおこないましょう。

      事前の準備を怠らないことで、ブラック企業を回避できる可能性が高まるほか、結果的に面接でアピールできる点も増え、採用に至りやすくもなります。

      社会全体として、ブラック企業撲滅の流れはありますが、まだまだ自助努力が欠かせません。

      自分の身は自分で守るつもりで、転職前に調べておくようにしましょう。