公務員は安定職業として非常に人気が高く、離職率も低いことで知られています。
しかし、想像以上に辛い公務員生活に嫌気がさしてしまう人も少なくありません。
あなたは今、公務員を辞めたいと感じていませんか?
公務員は安定していて、残業もなくライフワークバランスもとりやすい、こういったイメージを持っている人は多いでしょう。
それでは、イメージが良く人気の公務員を辞めたいと感じるのは一体なぜなのでしょうか。
今回は、公務員を辞めたい理由に着目し、公務員を辞める時の注意点や、選択肢についても述べていきます。
目次
公務員は憧れの職業
リスクモンスターが2018年8月に発表した「第4回 大学1、2年生が就職したいと思う企業・業種ランキング」によると、
- 1位 地方公務員
- 2位 Apple
- 3位 国家公務員
となっています。
公務員は今や若者にとって憧れの職業です。
なお、過去の同アンケートではTOP2がいずれも公務員となっています。
今回初めて民間企業が2位にランクインする結果となっていますが、相変わらずの公務員人気に変わりはありません。
公務員が人気の理由として
- 安定収入が見込める正規雇用
- サービス残業が発生しない
- 福利厚生が充実している
- 休みが取りやすい
- 特に評価を受けなくても給与が毎年上がる
といった点が挙げられるようです。
公務員は、まさに「仕事時間はかけずにそこそこのお金を稼ぎ、プライベートを充実させたい」という若者の希望が反映された職業なのです。
参照
http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/
http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/pdf/20180824.pdf
公務員を辞めたい理由
学生たちから圧倒的な人気を誇る公務員ですが、実際に公務員として働く人からは切実な現実が見えてきます。
公務員には、メンタルの不調に陥ってしまう人も多いといわれています。
これほどまで人気の公務員を辞めてしまうのは、どのような理由からなのでしょうか。
ここでは、公務員を辞めたい理由を紹介します。
年功序列的な評価制度
外資系やベンチャー企業を中心に、日本でも成果主義的な働き方ができるようになっています。
若い方がどんどん力を発揮し、社内で評価され、メディアなどでも取り上げられる姿を見かけますよね。
公務員になる人たちもこうした現状を見聞きしているはずですが、公務員の世界は真逆です。
絵に描いたような年功序列的な評価制度となっており、若い人ほど働きにくく、活躍の機会もなかなか与えられません。
自身が思い描いていたイメージとのギャップ、民間企業で活躍する同世代の友人たちへの羨望などが募り、勤続年数が少ない若者を中心に不満が膨らんでいるようです。
残業がある
公務員と聞くと定時に帰れるイメージを持っている人は少なくないでしょう。
学生が公務員を希望する理由の大きな要素となっているのも「労働時間の少なさ」です。
しかし実際は公務員でも、残業のある部署は普通に残業があります。
中には月100時間を超える長時間労働が慢性化している部署もあります。
学生たちは「サービス残業が少ない」と感じている公務員ですが、そんなこともありません。
公立学校の教員が典型的な例ですが、土日返上で部活動の顧問をおこなう先生たちのサービス残業が問題となっていることはご存じでしょう。
暇なイメージを持たれやすい役所の部署でも「ブラック部署」と呼ばれる多忙な部署が存在します。
予算を超えて残業した分はサービス残業になりますので、「サービス残業がない」というのも全てに当てはまるわけではありません。
ほとんど定時で帰れると期待していた人は、想像以上に残業があることに不満を感じることになります。
安定的に400~700万円ほど稼げる収入も、定時帰りだからこその「割のいい仕事」です。
残業が増えれば「仕事量に合わない」と感じるようにもなっていきます。
仕事がつまらない
公務員は厳しい採用試験を突破した優秀な人材が多数集まっているはずです。
能力をいかんなく発揮し、「国のために精一杯働こう!」と意欲の高い方も多いでしょう。
しかし、部署によっては毎日同じ仕事の繰り返しで、「現状維持」が基本です。
民間企業のように効率や業務改善を目指すことはなく、「これまでやってきたからこうしよう」と非効率的な事を押し付けられます。
最初のうちは仕事に慣れるまでで精一杯ですから、こうした考え方が気にならないかもしれません。
しかし、次第に仕事に慣れてくると仕事がつまらないと感じてしまうのです。
また、残業がない部署にいたっては、仕事らしい仕事がないため、暇を持て余し定時まで時間が過ぎるのを待つだけです。
楽といえば楽ですが、人間には向上心があります。
なかなかその環境に甘んじることも難しいものなのです。
やることがなくて朝から定時までネットサーフィンをする毎日に、耐えられる人ばかりではないということです。
国のために働く責任が重い
当然ながら公務員は国のために働く使命がありますので、災害などの緊急時には自分や自分の家族ではなく、仕事を優先させる必要があります。
単に「労働時間が少なめ、収入が多めの安定職業」という理由で公務員になってしまう人は、いざというときの責任の重さを考慮していないのかもしれません。
民間の人たちが自分や家族の心配を第一にできるときに、公務員はもっとも身近で大切な人の安否すら気にかける余裕がもてません。
自宅が崩壊していようと、家族の身に危険が及んでいようと、まっさきに職場にかけつける必要があります。
災害などをきっかけに、公務員としての自分の立場に疑問を感じる人もいるようです。
公務員バッシング
公務員はとかく「税金泥棒」と呼ばれやすい立場にあります。
一生懸命仕事をしていても「楽に仕事をしやがって」と言う人はいますし、それほど給与が高くなくても「公務員だけいい思いをして許せない」と言う人はいます。
無抵抗の役所職員に対して暴力をふるい、公務執行妨害罪で逮捕される人がいるのも、公務員への批判からくるものでしょう。
この点、国のために働く責任と通じるものがありますが、一般市民からのバッシングに耐えられず、民間で気楽に働きたいと感じる人もいるのです。
将来が不安
公務員は安定が魅力の職業のはずですが、時代的に「公務員=一生安泰」とはいかないと、多くの人が気づき始めています。
そのため、将来のキャリアプランが描けないことを理由に辞める人も多いようです。
たとえば、公務員の仕事の中でもっとも身近にイメージしやすいのは、役所の窓口で手続き業務を担当してくれる人ではないでしょうか。
そして、こうした手続きや入力などの単純作業はAI(人工知能)に取って代わられる時代はすでに到来しています。
- 「自分たちが毎日取り組んでいる業務をAIが代わりにおこなうようになればどうなってしまうのだろう」
- 「このままルーティン作業をしていても将来のキャリアが見えてこない」
- 「むしろ民間に行き、革新的な仕事に就いた方が将来有利に働くのではないか」
こうした懸念が積み重なり、安定の公務員を辞めたいと思う人がいます。
また、安定とは別の視点からは「停滞」と捉えることができます。
向上心の高い人ほど、「このまま公務員を続けていても成長できない」と考え、成長可能性が無限にある民間へ移っていくのです。
人間関係が辛い
公務員に限らず、どの職業でもあるのが人間関係の辛さです。
上司と折り合いが悪い、同僚や先輩が困っていても助けてくれないなど、仕事を辞めたい大きな要因となるでしょう。
公務員は転勤もありますので、転勤のタイミングまで待つことで、時間が解決してくれることも考えられます。
しかし、異動希望がなかなか通らず、何年も人間関係に悩みを抱えてしまうこともあります。
公務員の場合は年齢が高い人ほど離職率が低いので、年配の上司が先に辞める期待もできないでしょう。
我慢するほどにメンタルの不調が生じるリスクが上がりますし、いつまで我慢すればよいのか先が見える話でもありません。
実際、人間関係の辛さから休職に入り、辞めてしまう公務員は少なくありません。
公務員を辞めたいと言うと反対されるのはなぜ?
公務員を辞めたいと思って周囲に相談し、「絶対に辞めない方がいい」と引き留められることがあります。
公務員を辞めたいと言う人に対して反対する人は多いですが、なぜなのでしょうか。
楽な仕事というイメージが強いから
誰でも、自分の家族や友人など、身近な人に苦労はしてもらいたくないものです。
公務員でいてくれれば苦労はしないだろうと考える人が多いため、反対します。
特に、配偶者や子どもが辞めたいと言えば必死で止めに入ります。
楽な仕事というイメージが強い公務員を続けてほしいのは、身近な人のことが心配だからです。
もちろん、公務員は楽な仕事ではありません。
暇な部署もありますが、民間企業をはるかに上回る大変な仕事をしている人たちも多数います。
しかし、一般的なイメージでは楽な仕事とされることが多いわけです。
苦労して公務員になったから
公務員試験のための勉強を頑張っていた姿を見ていると、「あんなに頑張ったのに…」と思うものです。
努力をして手に入れたものほど、手放すことは惜しいからです。
頑張ったのは本人なのですが、周りは「もったいない」と思います。
安定して高収入を得られるから
公務員は民間企業と比べると雇用の安定性があります。
リストラがありませんし、景気の影響を受けるにしても、給与は税金が原資ですから民間企業ほど大幅に下がることもありません。
生計を共にする配偶者にとって、安定収入は家庭のため、自身の精神的な安定のためにも必須です。
特に専業主婦やパート主婦など、自分の稼ぎが少ない配偶者からは反対にあう可能性が高いでしょう。
世間体がよいから
ママ友から「うちの夫は公務員なのよ」と聞けば、羨ましいと感じる奥様は多いのではないでしょうか。
国のために働くという大義名分があり、高収入のイメージもある公務員は、世間体抜群の職業です。
ローンや契約などの場面において公務員ほど信用が高い職業もないかもしれません。
この「ブランド力」を捨てられない家族は多いものです。
本人の希望は置いておき、自分が「公務員の家族」という立場を保ち続けたいのです。
反対する人は公務員の仕事を知っているのか?
公務員を辞めることを反対するその人が、
- 公務員の仕事のすばらしさ(給与などではなく仕事そのもの)を体験した人
- 公務員を辞めた結果ひどく後悔した経験がある人
であれば、反対することにはれっきとした理由があります。
実体験に基づく反対であれば、最終的な決断は別にして耳を傾ける必要があるでしょう。
しかし、それでも個人の価値観や希望、置かれている状況が異なる以上、まったく同じ結果がよいとは限らないものです。
一方、自身が公務員として働いたことすらないのに、一般的なイメージから反対しているのであれば、それは思い込みによるものや自分自身のための反対である可能性があります。
身近な人のアドバイスを無視しろとはいいませんが、「根拠のある理由をもって反対しているのか?」は考えてみてもよいでしょう。
公務員を辞めたいなら覚悟が必要
公務員を辞めたい理由が自分自身にあるのなら、民間企業へ転職することも選択肢のひとつとして考えられます。
- 「公務員を辞めて本当によかった」
- 「もっと早く辞めればよかった」
こうした意見は少なからず聞かれます。
ただし、公務員を辞めるには覚悟が必要です。
ここでは、公務員から民間企業への転職に待ち受ける厳しい現実を紹介します。
公務員経験はさほど評価されない
民間企業が中途採用者を雇う際には、即戦力を期待します。
具体的に何をしてきた人なのか、企業でどのような貢献ができる人なのかを、職歴をもとに判断します。
「公務員だったから」という理由で評価されることはありませんので、甘く見ないことが大切です。
公務員時代にやってきた仕事を掘り下げて整理し、民間企業で活かすという視点を忘れないようにしましょう。
公務員を辞めたい理由をしっかり説明する必要がある
民間企業の厳しさを知っている面接官たちからすれば「なぜ安定した公務員を辞めるの?」との疑問があります。
転職面接では高い確率で聞かれる内容になりますので、確実に説明できるようにしておきましょう。
安定した公務員の立場を捨ててまでやりたい仕事があるのか、前向きな退職理由なのか、といった点を確認されます。
単に「民間の厳しさを知らない公務員あがり」と思われないように、具体的かつ前向きに述べるようにしましょう。
公務員の働き方に慣れていると辛いと感じることがある
公務員の年功序列的な評価制度や、「現状維持」の風潮に慣れてしまっていると、民間企業で働くことが辛いと感じる人がいます。
常に成果を求められ、利益を追求していかなくてはなりません。
職種によってはノルマもサービス残業もあるでしょう。
こうした厳しさは想定しておかないと後悔します。
厳しいことを経験しても向上したい、やりたいことがあるという強い気持ちがなければ転職はおすすめしません。
民間企業を辞めても民間企業に転職できますが、公務員を辞めて公務員に戻ることはできませんので、ぜひ慎重に判断しましょう。
公務員からの転職は転職エージェントを利用する
公務員を辞めたい方は、転職エージェントを利用した転職活動をおこないましょう。
公務員という安定職業を手放す以上、慎重かつ冷静に転職先を決める必要があるからです。
やみくもに転職活動をおこなうのではなく、転職支援のプロのアドバイスを受けながら、適職を探すことが大切です。
民間企業の実情をよく聞き、本当に転職するべきかを相談してみるとよいでしょう。
家族からの反対に対して説得するためにも、家族の安心材料となるような優良企業から内定をもらってから辞めるべきです。
この点、大手転職エージェントであれば、企業審査がしっかりおこなわれ、情報量も豊富にもっていますので、安心して紹介してもらうことができるでしょう。
最後に
いかがでしたか?今回は公務員を辞めたい理由を紹介しました。
公務員は抜群の安定性と、ある程度の収入にも期待できる憧れの職業です。
ただし、やりがいを感じられない人、責任の重さが辛い人などが珍しくなく、公務員の特殊性に苦しめられることがあります。
心身ともに不調をきたしてしまう前に、公務員の仕事が本当にやりたい仕事なのか、将来どのような自分になっていないのかを考えてみてはいかがでしょうか。
自分自身が納得できる転職であれば、安定職業を手放したとしても後悔はしないはずです。