大企業が合わないから辞めたいとお悩みではないでしょうか。
一般的に大企業は辞めない方がよいと言われるため、本当に辞めてもよいのか不安もあるはずです。
友人や家族に相談しても「辞めない方がよい」と言われることの方が多いかもしれません。
大企業で働いたことがない人からすれば次のように思うことがあるからです。
- せっかく入った大企業なのに辞めるなんてもったいない!
- 「大企業=ホワイト企業」なのになぜ辞めるの?
- 給与も待遇も下がって後悔するだけでは?
- 大企業にいれば一生安泰なのに…。
しかし、大企業がどうしても合わず、辞めたいと感じる人は一定数います。
大企業が必ずしもよい会社とは限りませんし、大企業特有の企業体質への相性もあるからです。
そこで今回は、大企業を辞めたいとお考えの方に向けて、大企業が合わない理由や辞めるときの注意点、辞める判断基準をお伝えします。
目次
大企業がなぜ合わない?大企業のここが辛い!
大企業が合わない人はどんな点に不満を感じているのでしょうか。
大企業ならではの辛い点を紹介します。
転勤が多い
大企業の宿命ともいえるのが転勤です。
全国に支社がありますので、いつ今の住居地から離れることになるのかと常にビクビクします。
頑張って持ち家を購入しても、その家に住めない日々が何年も続くなんてことはよくあります。
単身赴任になれば、家族と離れ離れになってしまい、家庭内がうまくいかなくなるケースもあるでしょう。
ずっと同じ仕事をしていられない
つまりは異動が多いということなのですが、ずっと同じ仕事を続けることができません。
やっと自分に合った好きな部署に巡り合えたと思ったら、1年後に異動になってしまい、ショックを受けるなんてことも珍しくありません。
特に総合職の場合はスペシャリストではなくゼネラリストを育成することが目的なので、いろいろな部署を経験します。
もっとも、これ自体が良い、悪いという話とは別です。
「多くの経験をして成長したいから異動万歳!」と思う人もいれば「自分に合った仕事だけを定年までやっていたい」と思う人もいるでしょう。
後者の人は異動の多さに疲れてしまい、大企業が合わないと感じるはずです。
決裁までに時間がかかる
大企業は規模が大きいだけに、何かの決裁をもらうだけでも非常に時間がかかります。
そもそも提出する書類が多いですし、稟議書には、役職者の決裁印欄がいくつもあります。
役職者は多数の稟議書を抱えており忙しい立場なので、1つの印が押されるまでに時間がかかります。
それを役職者ごとに繰り返すため、稟議書を提出してから決裁がおりるまで数ヶ月かかってしまうなんてこともあります。
忘れた頃に決裁がおり「そういえばこの稟議書だしてあったな」と苦笑いすることも少なくありません。
部署同士の調整が大変
大企業には多数の部署がありますので、何かの企画を1本通そうと思っても、各部署への調整が大変です。
部署ごとに職場長の考え方や派閥などが反映された個性がありますので、衝突することもあります。
「なぜ〇〇部より△△部の方が有利になっているんだ?」といったように、どの部署をたてるべきかも難しい問題です。
社内調整だけで多くの時間を費やすことになり、もっとも手をかけたい企画がなかなか進みません。
この点、中小零細企業であれば関係者を数人つかまえて「よろしく」と言ってしまえば済むので非常に楽です。
ルールが多くて面倒
企業内でルールを設定することはとても大切ですが、大企業ではルールに縛られやすくなることも確かです。
社員数が多い分例外を認めると収拾がつかなくなるため、どうしてもルールから外れたことは許されない傾向にあります。
常識的に考えて当たり前のルールであれば納得ができるのですが、仕事上「もっとこうすれば効率良くなるのに」というようなことでも、「ルールから逸脱するからできない」と言われます。
柔軟な発想をする人ほど面倒に感じることがあるでしょう。
隠ぺい体質があることも
大企業が必ずしも隠ぺい体質というわけではありませんが、ネームバリューがあるだけに、不祥事を隠したがることがあります。
小さな会社の不祥事であれば、新聞に小さく載る程度で済むことがあるかもしれません。
これがひとたび大企業の不祥事となればマスコミの恰好のネタになり、さまざまな媒体で報道されるでしょう。
世間の信用、株価にも影響を与えます。
社内事情を知っている社員は、そんな企業体質にうんざりし、自分には合わないと感じることがあるのです。
大企業が合わなくて辞めたい人が覚悟しておきたい点
ここからは、大企業が合わないという理由で辞めたい人が、転職や退職にあたって覚悟しておくべき点を紹介します。
少し厳しいことも述べますが、実際にあることなので押さえておいた方がよいでしょう。
後悔だけはしないようにしてください。
給与、福利厚生の水準が下がる可能性が高い
一部の優良中小企業へ転職できるなら別ですが、大企業からそれ以外への転職は、給与や福利厚生の水準が下がることの方が多いです。
大企業の給与や福利水準は恵まれている。
この事実を知っている人が大半のはずですが、それでも実際に転職し「給与が下がってしまった」「福利厚生がよくない」と嘆く人がいます。
特に新卒で大企業へ就職し、そのまま一度も転職せずに過ごしてきた人は、中小企業を含めた世間一般的な相場を知りません。
大企業で与えられてきた給与や待遇が当たり前だと思ってしまうのです。
ここは、給与や待遇にどの程度重きを置いているのかを分析する必要があります。
まずは大企業にいる時点で、給与や福利厚生の水準が世間一般的に見て高いところにあると認識してください。
世間の相場が知りたければ、ハローワークを利用して求人検索してみるだけでもすぐに分かります。
ハローワークは多数の地元中小企業が掲載されていますので、その地域で、中小企業に転職した場合にどの程度の水準になるのか相場を知ることができます。
社会的な信頼が薄れる
大企業を辞めることで、社会的な信頼が低くなることを実感することがあります。
社会的な信頼とは、具体的には次のようなものです。
- ローン、分割払い
- 賃貸物件入居
- クレジットカードの審査
- 配偶者や恋人の家族からの信用
社会的「信用」といっても、誰も性格や考え方を見てはくれません。
いくら誠実で真面目であっても、大企業勤めか、そうでないかによって表面上の信用度合いは大きく変わります。
もっと日常的な場面で考えてみれば、飲み会で異性からモテるのも大企業です。
特に女性は男性の経済力を重視することが多いため、大企業という肩書が外れると反応が悪いかもしれません。
もっとも、中小企業でも一般的な会社員であれば、それほど大きな影響がない項目もあります。
もっとも注意するべきは、大企業を辞めて起業したり、フリーランスになったりする予定がある人です。
社会的な信用という点では多くの場面で痛感することがありますので覚悟しておきましょう。
中小零細企業には変わった人もいる
もちろん、中小企業にもまともで素晴らしい人が大勢いらっしゃいますし、大企業でもおかしな人はいます。
これを前提に、一般常識がある人の割合という点では、やはり大企業の方が多いといわれます。
大企業で働く人たちは、そもそも入社の時点で厳しい試験を勝ち上がってきているからです。
学校生活で成し遂げてきたこと、考え方を他の学生と比較され採用されています。
高学歴者が多いため、教育も受けてきています。
大企業は研修制度もしっかりしていますので、社会常識的なことが身につきやすい環境です。
一方の中小企業では、毎日遅刻しても悪びれない人や、仕事中に煙草を吸いにいって当分戻ってこないような人はよく見かけます。
必要以上に声が大きくどしどし歩く人や、ドアを壊れるほど強く閉める人もいます。
大企業出身者が中小企業に転職すると、このあたりのギャップに悩む人が少なくありません。
これまでルールとして当たり前に守ってきたようなことを、平気で破る非常識な人がいて驚くわけです。
上司に対しても、大企業の優秀な上司が平均値だと思ってはいけません。
自分よりできない社長の二世などが上司になってがっかりしてしまうことなど日常茶飯事です。
ここは人間関係に直結する部分ですので注意が必要です。
人の細かいところが気になってしまう神経質な人は、中小企業に行くとストレスに感じることがあります。
上司像に理想がある人も、その理想はなかなか叶えられないことの方が多いでしょう。
反対に、世の中にいろいろな人がいることを面白がれるような柔軟性のある人は、大企業を出ても楽しくやっていけるでしょう。
大企業の人ほどスキルが低いといわれてしまう
一部の中小企業の人事担当者の中では「大企業出身者ほど要注意」という考え方が見られます。
想像以上にスキルが低いと思われることがあるということです。
この理由は主に2つあります。
理由の1つは、大企業が分業制であることです。
中小企業だと、そもそも人員数が少ないため、一人の担当が最初から最後まで一連の業務を担当することが多々あります。
よく中小企業では「何でも屋になりやすい」と言われますよね。
大企業の場合は各部門で担当者が決まっていますので、全体像を把握しにくい状況です。
他の担当業務についてはよく分からないので、スキルが低いと見られるのです。
もう1つの理由は、大企業には異動が頻繁にあることです。
先ほど、大企業は異動が多いとお伝えしましたが、これがかなりのスピードで行われます。
その部署の業務に精通する前に次の部署に行くなんてこともよくあります。
すると、「いろいろな部署の経験をしているけれど、どれも中途半端」な状態になるのです。
これが嫌で大企業を辞める人も多いのですが、人事担当者も慎重になります。
大企業出身だからといって手放しに採用してくれるわけではないと思っておきましょう。
大企業の看板が外れて仕事で苦労することがある
大企業の看板が外れることで、これまでと同じように仕事ができなくなることがあります。
特に営業職のように外部への提案機会がある人は感じやすいかもしれません。
大企業にいた頃はスムーズに仕事が取れていたのに、中小企業に転職した途端、話すら聞いてもらえなくなるということです。
営業職でなくても、電話一本かけるだけでその違いを認識できます。
大企業にいたときは感じよく対応してくれる相手が多かったことが、怪訝な感じの対応を取られるというケースもあります。
理不尽に感じるかもしれませんが、世間とはそういうものです。
大企業というフィルターを通してしかあなたを見ませんので、そこは信頼を積み重ねていく努力が必要になります。
もっとも、優秀で、その人個人に魅力があるような人であれば、大企業の看板が外れたとしても十分に活躍できるでしょう。
大企業だからこそできる「辞めない」という選択肢
ここまでお伝えしたように、大企業を辞めるにあたっては覚悟が必要です。
不満の種類にもよりますが、大企業での仕事が辛いと感じているのであれば、大企業だからこそ選択肢があると知ってください。
異動できる可能性がある
大企業は異動が普通にありますので、職場の人間関係などが苦痛であれば異動で問題が解消されることがあります。
コンプライアンス部門や人事がしっかりしていますので、職場内のトラブルには敏感です。
人間関係が苦痛であれば申し出ることで配慮してもらえる可能性は十分にあるでしょう。
自分が異動しなくても、嫌な相手が異動するというケースも考えられます。
たとえばパワハラ上司について上に相談したら、その上司が転勤になるといったケースです。
通常、異動は時期がありますので、すぐにでも辞めたい場合は使えない方法ですが、多少の辛さなら少し様子を見ることもよいでしょう。
相談先の選択肢がある
中小企業では、人員数が少ない、労働組合がない、相談窓口もないといった具合に、そもそも辛いことを相談できる先が限られてしまいます。
職場に信頼できる人がいればよいですが、そうでなければ友人や家族に相談するか、労基署などに労働トラブルを相談することになります。
大企業は人が多く、社内相談窓口なども充実していますので、相談先の選択肢があります。
自分の上司には相談できなくても、優れた上司というのは他にもいます。
すぐに決断しなくても、打つ手がいくつかあるのです。
まずは悩みを一人で抱え込まないで誰かに相談するようにしましょう。
大企業を辞めると後悔しそうな人の特徴
大企業が合わないからと辞めても、成功する人と失敗する人がいます。
大企業を辞めると後悔しそうな人には次のような特徴がありますので、当てはまる人は少し冷静になることをおすすめします。
- 世間体を重視する人
- 勤務先を聞かれることが嬉しい人
- 安定を求める人
- マニュアル通りの仕事をすることが楽な人
- 給与や福利厚生は譲れない人
- 大企業の看板の大きさに気づいていない人
大企業を辞めることにはメリットもある
大企業を辞めないという選択肢があるとお伝えしましたが、もちろん、大企業を辞めることにはメリットもあります。
実際、大企業を辞めて本当に良かったと感じている人も多数います。
人生設計を立てやすい
転勤が少ない地元の中小企業で働けば人生設計が立てやすくなります。
いつ持ち家を購入してもよく、子どもの転校もなく、親の介護が必要になってもすぐに対処できます。
生涯年収は大企業と比較にならないほど下がるかもしれませんが、今は給与をもらうだけが稼ぐ方法ではありません。
特にベンチャー企業などは副業を推奨していることが多いので、副業で稼ぐことも可能です。
心穏やかに生活できる
大企業の社員たちは出世を目指し、常に周りと競争しています。
大企業は高学歴者が多いので、プライドも高い人も大勢います。
「大企業=ホワイト企業」と言われがちですが、パワハラやサービス残業が横行するブラック大企業もかなりあると言われています。
競争社会に生きることは常にストレスと隣り合わせです。
派閥争いや社内政治も大企業にはつきものです。
もちろん中小企業でも同じようなことはあるわけですが、全体的に見ればのんびりと働いていることの方が多いです。
不要な派閥争いに巻き込まれることなく、自分の考えにそったポジションを確立することができます。
他社との競争という点では、中小企業の方が厳しい現状がありますが、実際のところ、社員たちにはそれほど実感がありません。
中小企業が倒産すれば、別の中小企業へ転職する道はいくらでもあるからです。
社員が感じる会社が倒産したときのリスクは大企業ほどあるのです。
ストレスが少ない生き方というのは、長い目で見て大きな価値があります。
ストレスに耐え抜いて大企業を定年まで勤めあげたとしても、残るのはそこそこの退職金くらいしかありません。
そのせいで家族や親しい人たちとの時間を失っていれば、そもそも何のために働いてきたのかと思うこともあります。
ここは価値観の問題ですから一律に言えることではありません。
ご自身が何を大切に人生を送りたいのかをじっくりと分析してください。
個人的な能力を上げられる
自分を鍛える環境という意味では、大企業より中小企業の方が優れていることがあります。
悪くいえば大変なことが多いのですが、よくいえば努力が身になりやすい環境です。
中小企業では、やりたい企画が通ったり、若いうちから重要な仕事を任せられたりといったこともよくあります。
上層部に直談判も可能で、ルールや制度が柔軟に変えられることもあります。
結果を残せば大出世も可能でしょう。
この点大企業は、よくも悪くも固定化されたレールに乗り続けることになりますので難しいものがあります。
入社時点で「超」がつく一流エリートクラスでなければ思うような仕事ができません。
安定といえば聞こえはよいですが、一度乗ったレールから外れることはできず、成果も頭打ちなのです。
自身の無限の可能性を試したい方ほど、大企業以外で働く方がよいでしょう。
大企業を辞めるかどうかの判断基準
大企業と中小企業を比べたとき、条件面では圧倒的に大企業が優れています。
給与や福利厚生だけでなく、企業の看板なども含めてすべてが有利です。
しかし、もっと挑戦したい、自分のやりたい仕事があるといった前向きな理由があるのなら転職するべきです。
そのような意欲がある人には企業も好意的ですし、何より挑戦したことで人生における後悔が減ることになるでしょう。
こうした人は転職しても成功しやすいので、積極的に転職を目指すべきです。
ただし、辞めてからの転職活動はリスクが伴いますので、可能な限り在籍中の転職を成功させてください。
転職エージェントを使えば求人探しや情報収集、スケジュール調整などの面倒なことを代わりにおこなってくれます。
転職活動が効率よくおこなえますのでぜひ活用しましょう。
一方、前向きな理由がなく、合わないから、辛いからといった理由で大企業を辞めたい人は慎重になるべきです。
心身の不調がでているのなら、いったん休職することをおすすめします。
大企業の場合は社内の休職制度が整っていることも多く、給与水準が高いため傷病手当金の額も高くなります。
先に述べたように異動という手もありますので、ゆっくり考えてからでも遅くはありません。
最後に
いかがでしたか?今回は大企業が合わないから辞めたいと感じている方に向けて、合わない理由や注意点、判断基準などを紹介しました。
大企業には、中小企業にはない多数のメリットがあり、それは逆もまたしかりです。
どちらが絶対によいということはありませんので、ご自身なりの優先順位をつけることが大切です。
もっとも大切にしたいものは何かを分析することで、辞めるべきか、そうでないかが見えてくるでしょう。