自然に関わる仕事に就職、転職を考えている方は多くいらっしゃいます。

屋外で体を動かす仕事をしたい、花や草木、動物が好き、環境に興味があるなど、さまざまな理由があるでしょう。

自然に関わる仕事といってもあまりに漠然としていますが、分類してみると、身近な仕事から聞き慣れない職種まで実に多くの仕事が存在しています。

今回は、自然に関わる仕事に就きたい方に向けて、仕事の種類や、適性について紹介します。

自然に関わる仕事のメリット

自然と触れ合うことが好きな人であれば、日々自然のすばらしさを感じられる点に魅力を感じるでしょう。

虫や動物の鳴き声、植物の香りなど、事務所の中にこもっていては感じられない生物の実感がそこにあります。

作業場が屋外や田舎になることも多いため、都会の喧騒から離れられる点もメリットです。

都会のビジネス街で働くことに疲れ、自然に関わる仕事についてよかったと感じるような人もいます。

人とのコミュニケーションは必要ですが、わずらわしい人間関係が少ない点をよいと考える人も多いようです。

また、自然に関わる仕事は人々の生活を支えることに直結するものが多く、社会貢献も感じられやすいといえます。

便利な時代になりましたが、自然を無視することはできませんので、自然に関わる人の活躍が必ず求められます。

その意味では、社会において重要な役割を担っている実感を得やすく、継続のモチベーションになります。

そのほか、職種にもよりますが、高収入につながる仕事もあり、多く稼ぎたい方にとって魅力的な一面もあります。

自然に関わる仕事のデメリット

自然に関わる仕事のデメリットは、危険が多いことです。

大雨、台風、土砂災害など、自然はいつ何どき猛威をふるうか分かりませんので、注意深く慎重に行動する必要があります。

虫に刺される、擦り傷をつくるなんてことは日常茶飯事です。

大丈夫だろうと安易に判断することはあってはならず、先輩や経験者の話に耳を傾ける素直さも大切です。

自分の思い通りにいかないことも多いため、すべてを計画通りに進めたい方にも向いていません。

自然に関わる仕事の種類

仕事として考えるには、自然にどのように関わっていくのかが大切になります。

職種によって必要な技術や知識、適性が異なりますので、ご自身の希望を整理してみましょう。

自然の恵みを売る仕事

私たちは自然の恵みによって生活を支えられ、豊かな日常を送ることができます。

それを多くの消費者へ届けるさまざまな仕事があります。

これらの仕事は流通や販売、接客につながるため一般的に知られた仕事といえます。

求人も比較的見つけやすい点が特徴です。

以下、代表的な仕事を紹介します。

  • 農業、酪農、畜産、水産業…消費者の食を支える生産の仕事です。

主には自営業や、自営業者に雇われて働く形です。

独立系が多いですが、農業は農業生産法人なども増えており、企業の一員として技術を学ぶこともできます。

  • 林業…樹木の伐採、植栽、枝打ちなどをおこない、建築や家具、紙製品などに欠かせない木材を流通させる仕事です。

単に木材を売るだけではなく、森林環境の維持、保護の役目も担います。

森林組合や木材会社などに所属して働く以外に自身の山を保有して独立して働く人もいます。

  • 花屋…花市場で花を仕入れ、花の世話や販売、接客、フラワーアレンジメントなどをおこなう仕事です。

花屋や市場で働くことが一般的ですが、朝は早く、重たい荷物の積み入れ、水替えなどの作業があるため、かなりのハードワークです。

  • 造園業…個人宅や公園、道路などの樹木を植栽、手入れする仕事です。近年は都市部の建築物の屋上で緑化工事を担うこともあります。

造園会社や建設会社に就職するか、独立して仕事を請け負うかに分かれます。

  • レストラン、旅館…生産者から購入した農産物や畜産物を使って調理し提供するレストランや旅館なども自然の恵みによって生計が成り立つ仕事です。

生産物以外にも、豊かな自然を展望できる立地、外観が売りのレストランや旅館もあります。

自然を守る仕事

豊かな自然を守る仕事にも、下記のようにさまざまな職種が存在します。

  • パークレンジャー…国立公園内のパトロールや清掃、傷んだ樹木の再生作業などを施すなどして管理し、公園が本来の目的に沿った利用がなされるように管理する公務員です。

地方環境事務所や自然保護官事務所に所属します。

  • ビオトープ管理士…ビオトープとは野生の生物が生息する空間のことを指し、それを保護しながら都市環境整備、都市計画などに関わるのがビオトープ管理士です。

専門で仕事をするというより、建設会社や材料メーカー、環境省の職員などが資格の知識を活かしつつ働くといった形が多くなります。

  • 樹木医…病や害虫に侵された樹木の診断や治療をおこなう木の医師です。

人間の医師のような国家資格ではありませんが、日本緑化センターが実施する研修を受け審査に合格する必要があります。

自然そのものを助けるだけでなく、落枝や倒木などによって人や物への影響がでないようにする仕事でもあります。

  • 森林官…国有林の植林や伐採、林道などを管理、検査、調査することにより、土砂災害や山火事、不法投棄などを防ぎます。

林業や林学の専門的知識をもつ技術系の公務員として採用された後に経験を積み、責任的立場としての森林官になります。

  • 環境保全エンジニア…公害防止、環境保全に役立つ技術や機器を開発するエンジニアです。

水質や土壌、大気の汚染を防ぎながら産業の発展にも寄与する方法を考えます。

環境保全に対する深い知識と、設計や施工、管理などの知識と技術が両方求められるため、理工学部などの出身者が多くなります。

自治体や環境機器メーカーなどが就職先です。

自然の中で人を守る仕事

人の命はときに自然の脅威にさらされることがあります。

特殊な訓練を積んだレスキューによってこれまで多くの人々が救われました。

たとえば次のような仕事があります。

  • 山岳救助隊…山岳地帯で遭難した人を捜索、救助する仕事です。

警察の山岳警備隊、消防の山岳救助隊、自衛隊の航空救難団救難隊などがあります。

警察や消防、自衛隊の採用試験を突破し、自薦や辞令によって配属され任務にあたります。

  • 海上保安官…海上で遭難した人の救助、海上犯罪の防止をおこなう「海の警察官」と呼ばれる仕事です。

海上保安学校や海上保安大学をでて、海上保安庁に所属する公務員です。

基本的には陸上勤務と巡視船勤務を交互に繰り返しますが、航空基地に所属して空から海難救助をおこなうこともあります。

  • ライフセーバー…海やプールで救助活動をおこなうほか、安全に楽しむための環境づくりをする人のことを指します。

ほとんどがアルバイトやボランティアなので仕事としては成り立ちにくいですが、人の命を救う重大な役割を担います。

なお、プロのライフセーバーは競技者のことをいいますので、実力次第では高収入にも期待できます。

自然の魅力を伝える仕事

自分が感じた自然の魅力をより多くの人に伝えたい、自然を大切にするきっかけにしてほしいと願う人もいるでしょう。

自然の魅力を伝えること仕事も多数あります。

たとえば次のような仕事です。

  • 生け花講師、フラワーデザイナー…生け花やフラワーデザインは、そのままでも美しい花や草木に技法やデザインを加え、その魅力をさらに引きだすことです。

デザイナーとして施設や結婚式場の装飾、ブーケを担当したり、講師として技術を伝えたりする仕事があります。

  • 登山インストラクター、登山ガイド…安全に登山を楽しむため、登山の技術指導や道案内などをおこなう仕事です。

登山には危険がつきものですから、いざというときの判断能力や安全確保能力が求められます。

  • アウトドアインストラクター…自然の中でおこなうレジャーやスポーツの技術や安全な楽しみ方を指導する仕事です。

スキーやスカイダイビング、キャンプなどさまざまなレジャー、スポーツがありますので、それぞれの専門知識や技術が必要です。

  • 登山家、アルピニスト…山に登る仕事です。高難度の山を登る人をアルピニストといいます。

一流の登山家は企業がスポンサーにつきますが、執筆や講演、写真撮影、登山ガイドなど複数の仕事をこなしながら生計を立てる人も多くいます。

  • フォトグラファー…自然の写真を撮影し、雑誌などの出版物を通じて魅力を伝える仕事です。

素人の技術では到底表現できないような写真は人々を惹きつけ、「そこに行ってみたい」と思わせるきっかけになります。

近年ではSNS人気もあり、インターネットで美しい写真を投稿する人も多くみられます。

自然を研究する仕事

自然を研究、分析し、さまざまな分野に役立てていく仕事もあります。

  • バイオテクノロジー技術者…生命現象を解明するバイオテクノロジーを用いて、医療や保健衛生、食品産業や環境保全などの分野における製品や技術を開発する仕事です。

公的な研究機関や製薬会社、食品メーカーなどに勤務することが一般的です。

  • 農業技術者…農業の技術や肥料、農薬の開発、検査などをおこなうほか、農業者へ教育、指導をする仕事です。

地方公共団体、農協、農業機器メーカー、肥料メーカーなどに勤務します。

  • 環境計量士…環境汚染物質や騒音などを法律の定めた方法によって計量し、計量証明を発行する仕事です。

環境計量証明事業所や環境コンサルティング会社に勤務します。

環境計量士の資格には受験資格はありませんが国家資格となり、難易度も高めです。

  • 野生生物調査員…公共事業の工事をおこなう際に、工事が与える野生生物の生態系への影響を調査する仕事です。

生態系や自然環境に影響がある場合には工事の見直しもおこないます。

調査会社やコンサルティング会社、地方公共団体、NPO法人などに所属します。

  • そのほか…自然や環境を研究し、自然保護と産業発展のために活躍する職種はほかにも多数あります。

環境アセスメント調査員、環境コンサルタントなどのほか、海洋学者、地震学者、火山学者などの学者もいます。

馴染みが深い気象予報士も天気を予報し事故や災害の防止などに貢献しています。

自然に関わる仕事に就くためには何が必要?

自然に関わる仕事に就職、転職するためには何が必要なのでしょうか。

職種ごとの資格はもちろんのこと、大前提として次の要素がなければ仕事としてやっていくことが難しくなります。

自然に対する深い知識

農業ひとつとっても、土壌や気候、農産物の種類や特徴などのさまざまな知識が問われます。

単に趣味の範囲で知っているのではなく、農業高校、農業大学などで専門的に学んでいる人がほとんどです。

研究者や技術者の場合は理系の大学、大学院で学び、研究施設や企業、自治体などで経験を積んでいきます。

公務員として環境省の関連施設で働くには、学校で林業や環境科学、都市計画など専門的な知識を学んだ方が多いようです。

体力

自然に関わる仕事はデスクワークで済むことはほぼなく、自分の足と目を使って調査や作業をおこないます。

山名を歩き回る、重たい物を運ぶ、暑さ寒さや雨風に耐えるといったことは日常茶飯事ですので、数ある業界の中でも特に体力が求められる仕事といえるでしょう。

日常的に大変な仕事であることはもちろんですが、病気やケガをすると収入減に直結してしまいますので、体調管理も非常に重要です。

コツコツと忍耐強く取り組むこと

自然に関わる仕事は地道な作業の連続です。

細かい作業も多く、時間がかかることも多いです。

たとえば農業ですが、肥料や害虫駆除をおこない、成長するまでに何ヶ月とかかります。

それでもうまくいかないことも多々ありますし、天候の影響などで計画通りに進まないことは頻繁に起こります。

何が起きても途中で投げ出さず、やるべきことを地道に進めていける忍耐強さが必要です。

コンピューターの知識や技術

相反する存在のように思えますが、自然に関わる仕事の中にはコンピューターを駆使した業務も多くなります。

研究者や技術者は当然のことながら、農業や酪農などの生産者でも近年はコンピューターを用いて管理、流通させる人が増えています。

基本操作ができるだけでなく、高度な技術や知識が求められることもありますので、希望の職種に応じて身につけていく必要があります。

最後に

いかがでしたか?今回は自然に関わる仕事をテーマにお伝えしました。

ご紹介した仕事は、自然に関わる仕事の中でもごく一部です。

これ以外にも多くの方が自然の恩恵を受け、ときに自然と対峙しながら働いています。

まずは、ご自身がどのような形で自然と関わっていきたいのか希望を整理し、仕事内容を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。