葬儀は、社会的、宗教的、遺族の精神的な面において必要とされる儀式です。

非常に奥が深く、高いプロ意識が求められる仕事ですので、葬儀に関わってみたいと感じる方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、葬儀に関わる仕事とはどのようなものなのか、向き不向きはあるのかなど、さまざまな疑問があるはずです。

そこで今回は葬儀に関わる仕事をテーマに、業界の動向や仕事のやりがい、適性などを紹介します。

葬儀に関わる仕事とは

葬儀に関わる仕事へ転職を検討されている方は、葬儀業界の全体像を把握し、どのような仕事があるのかを知っておきましょう。

葬儀業界の現状と今後

日本では高齢化が進み、葬儀の需要が増えるという声がある一方で、その分葬儀にお金をかけられなくなるという意見もあります。

確かに近年では遺族の負担とならぬように、あるいは近しい間柄のみでゆっくりとお見送りができるようにと、簡略化された葬儀を望む方も多くいらっしゃいます。

家族葬や直葬を希望するケースも増えています。

ただ、最期は大勢の方に見送ってもらいたいと考える遺族もまだまだ多く、地域に古くからある慣習を重視する方もいらっしゃいますので、従来型の葬儀がすぐに消えていくことは考えにくいでしょう。

また、葬儀にかける費用の全国平均は190万円前後と、まだまだ費用をかけておこなわれるケースが多いようです。

昔は自宅葬儀が一般的だったのが、現在では葬儀専用式場の葬儀が主流となっていますので、そうした式場における雇用も増加しています。

さらに昨今では高齢で人の葬儀に参列できない方のために、ドライブスルーを利用してお線香を上げる形や、インターネット葬儀など新しい形も生まれています。

「終活」という言葉が浸透し、生前から自分好みの葬儀を計画する方も増えています。

このように葬儀業界は変革期を迎えていますので、業界内の変化に対応できる人材が求められています。

参照:第37回消費者契約法専門調査会資料より

https://www.cao.go.jp/consumer/history/04/kabusoshiki/other/meeting5/doc/170428_shiryou5_1.pdf#search=’%E8%91%AC%E5%84%80%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6′

家族の一員であるペットの葬儀も

未婚率や平均寿命の高まりにより、ペットを家族の一員として大切にしている方も多くいらっしゃいます。

また、少子化の昨今では子供の数よりもペットの頭数がはるかに上回っているという現実もあります。

そのためペットの葬儀にも一定のニーズがあります。

ペットセレモニーを取り扱う事業所やペット霊園などが全国にありますので、動物が好きで家族の気持ちに寄り添える方は選択肢のひとつとして考えてみてもよいかもしれません。

葬儀に関わる仕事は世間体が悪いのか?

葬儀に関わる仕事は世間体が悪いという考えを持つ人がいます。

人の死を商売にしている、人の死が穢れであるといった考えのようですが、こうした考えを持つのは、悪徳業者に出会ってしまった人か、近しい人の死を経験していない人が多いのではないでしょうか。

近しい人の死と葬儀を経験した人であれば、むしろ葬儀に関わる仕事の大切さや感謝の気持ちを持つケースが多いものです。

今はさまざまな仕事が認知されている世の中ですし、特定の仕事に偏見をもつという人も減ってきています。

どのような仕事であってもそれを批判する人はいますが、ご自身の中にある葬儀に関わる仕事に就きたい理由を明らかにし、胸を張っていればよいのではないでしょうか。

葬儀に関わる仕事のやりがい

葬儀を無事に終え、遺族や弔問者から「よい葬儀だった」「ありがとう」と言われることは何よりのやりがいです。

人の死に関わる場面で感謝をされることなどないと思われがちですが、悲しみに暮れながらも葬儀をおこないたいと感じる遺族にとっては、葬儀の知識や経験がある葬儀会社のスタッフが頼りです。

また、葬儀は大勢のスタッフが協力し合って執りおこないますので、一致団結してひとつの目標に向かっていける点も魅力でしょう。

葬儀全般の知識や作法を身につけることができ、教養が備わる点も葬儀に関わる仕事に転職するメリットだといえます。

葬儀に関わる仕事の内容

葬儀を執り行う際には非常に多くの業務があります。

以下はその一部です。

  • ご遺体の受け取り、納棺
  • 喪主の方と葬儀の規模や内容、宗派などの詳細を打ち合わせ
  • 祭壇業者や花屋などの手配
  • 霊柩車や火葬場への移動を担当するドライバー
  • 住職への挨拶
  • 祭壇の準備
  • 葬儀の司会進行
  • 弔問者の誘導、案内
  • 撤収作業

いずれも神経を使う業務ですし、円滑に葬儀を執り行うためにはスピードも必要です。

葬儀の性質上、時間をかけてゆっくり準備をするということはできませんので、その場で臨機応変に対応していく柔軟性も大切です。

また、資格によって職務範囲が限られることがあります。

一般的によく聞くセレモニースタッフは葬儀の準備全般をおこなう仕事ですが、納棺士のようにご遺体に化粧を施したり清潔に整えたりして棺に納棺する仕事もあります。

司会や祭壇のコーディネートを専門でおこなう人もいます。

葬儀に関わる仕事の年収

葬儀に関わる仕事は年齢や経験、資格の有無のほか、大手企業か中小零細企業かによっても大きく異なります。

そのため年収相場を判断することは難しいのですが、しいてあげるとすれば350万円~500万円と、一般的なサラリーマンと大差ない水準です。

夜勤があると深夜割増がつきますので低い水準とはいえませんが、ハードワークに見合った年収かといえば必ずしもそうはいえないでしょう。

葬祭ディレクターの資格などをもっていると優遇されますので、現場で経験を積みながら資格取得を目指すことも年収アップには必要なこととなります。

葬儀に関わる仕事の向き不向き

葬儀に関わる仕事は誰にでもできるわけではありませんので、向き不向きをよく理解して転職に踏み切ることが大切です。

特に気をつけたいポイントを紹介しますので、ご自身の適性を踏まえて検討してみましょう。

体力が求められる仕事

葬儀に関わる仕事はとにかく体力が必須です。

まず、棺やご遺体、そのほか重たい物を運ぶ機会が多く、重労働です。

葬儀の前には忙しくて睡眠時間がなかなかとれないため、1日を乗り切る体力も必要です。

葬儀の最中には立ちっぱなしですし、夏は暑い中、冬は寒い中で弔問者の案内などをおこないます。

夜勤もあり勤務形態は不規則となります。

どの角度から見ても体力的にはハードになりますので、健康に気を使い、体力をつけるような努力も必要となります。

体力に自信がない方には向かない仕事だといえるでしょう。

プロとしての高い意識が必要

どのような仕事でもプロ意識が必須ですが、葬儀に関わる仕事は顕著です。

たとえば、故人の亡くなり方もさまざまです。

特に不慮の事故や事件で亡くなった方のお顔に傷がついていたり、歪んだ形相になっていたりすることもあります。

また、遺族にまだ小さなお子様がいらっしゃるようなケースや、反対にお子様が亡くなったようなケースなど、胸が張り裂けそうになることもあります。

死にもいろいろな形がありますので慣れることはないですし、辛いと思うことは多々あります。

しかし、それでも最期は安らかな状態にしてお見送りをすることで、故人や遺族の役に立つことができます。

辛い立場の遺族を支え、葬儀をしっかりと執り行うことがプロの仕事だと理解することが大切です。

勉強熱心な人には向いている

一般の方は、どなたかの葬儀に参列するだけでも宗派や作法の違いに戸惑う方は多いのではないでしょうか。

葬儀に関わる仕事に就くと、宗派ごとに進行方法や作法、用意するものが異なり、それらをすべて覚える必要があります。

頭で覚えていてもすぐに実践できるわけではありませんので、知識を得ると同時に現場経験を積み、しっかりと身につける必要があります。

また、葬儀にはいろいろな形がありますので、得た知識を知恵に変え、臨機応変に対応していく力も必要です。

覚えることが苦手な方や仕事上の勉強が嫌いな方には向いていませんが、勉強熱心な方にはやりがいにもつながります。

TPOが重視される仕事

葬儀に関わる仕事は人と関わる仕事でもありますので、接客スキルは重要です。

しかし、一般的な接客業で求められる明るくハキハキと笑顔でおこなう接客とは異なり、遺族や弔問者への配慮と落ち着きが大切です。

この点、TPOをわきまえてその場の空気をよく読める人に向いているといえるでしょう。

TPOを考えた対応は経験も必要です。

そのため、人生経験が豊富で周囲へ配慮できる40代、50代以降の方にも向いています。

変化のある生活スタイルに対応できる人

人がいつ亡くなるのかは分かりませんので、葬儀会社では基本的に24時間365日対応できる体制を整えています。

もちろん一人で対応するわけではありませんが、シフト制の不規則な勤務形態となります。

土日祝日が葬儀にあたることも当然ありますので、家族や友人と休みをあわせることもなかなか難しくなります。

規則的な働き方を求めている人は不満を感じやすくなりますので、変化がある生活スタイルに対応できることは重要なポイントとなります。

葬儀に関わる仕事の探し方

葬儀に関わる仕事に就くには葬儀屋に転職することが王道の方法ですが、葬儀屋といってもその種類はさまざまです。

葬儀のみを扱っている会社だけでなく冠婚葬祭を扱っている会社がありますし、大手や中小など規模も異なります。

また、病院と契約関係にある病院指定葬儀屋や、冠婚葬祭互助会、JAや生協などで葬儀事業をおこなうことがあります。

あるいは、献花を主に扱う花屋や、香典返しの品を作っている会社、仏壇業者、葬儀社紹介会社など、葬儀に直接関わらずとも関連する事業は複数あります。

転職エージェントや求人サイトを利用すると葬儀に関わる全国の求人を探すことができますが、特に現職がある方は時間を効率的に使える転職エージェントの利用を検討してみてください。

最後に

いかがでしたか?今回は葬儀に関わる仕事をテーマにお送りしました。

一般的なイメージから転職を躊躇される方がいらっしゃるかもしれませんが、業界や仕事についてよく調べてみることで考え方が変わることもあります。

大変ですがやりがいは十分にある仕事ですので、ご自身の適性を判断したうえで転職活動を始めてみてはいかがでしょうか。