社会に貢献したい、困っている人を助けたい…。
こんな考えをお持ちの方は、福祉に関わる仕事に興味があるのではないでしょうか。
福祉とは狭義では高齢者や障害者を対象としたサービスを指しますが、広義では人々の幸せや豊かさを表す言葉であり、人の役に立つ仕事全般だと捉えることもできます。
福祉とひとくちに言っても、その領域は幅広く、ご自身で思ってもみなかったような仕事に出会えることがあるかもしれません。
そこで今回は福祉に関わる仕事をテーマに、どのような仕事があるのかを紹介します。
目次
福祉業界の現状と今後
高齢化の影響で特に「介護・高齢者福祉」の分野における需要は増大しており、今後もますます増えると見込まれています。
転職を考える方にとっては、働き口が少ない、仕事の選択肢がないといった悩みとは無縁といってよいかもしれません。
それほど求人数は多く、通年求人をかけている施設も多数存在します。
しかし、それは慢性的な人手不足を意味しており、相変わらず激務と低賃金が指摘され続けています。
人員を確保するために、外国人労働者が福祉の現場で活躍するケースも増えてきています。
近年は労働環境改善や賃金アップが進んできてはいるものの、まだまだ充分とは言い難いため、働きやすい環境かどうかはしっかりと確認しておきたいところです。
福祉業界はやっぱりハード?
福祉に興味はあるけれど一歩踏み出す勇気がでないとき、やはり気になるのはハードワークではないでしょうか。
重労働、夜勤がある、拘束時間が長い、サービス残業がある…。
こんなイメージを持たれる方は多いことでしょう。
事実、福祉の仕事は決して楽ではありません。
本来は公共のサービスとしての役割も担うべき福祉業界において、利益重視の経営を続けるような事業所も存在します。
悪意はなかったとしても、人手不足でどうしても労働者の負担が大きくなってしまうことも考えられます。
制度の仕組み上、なかなか賃金を挙げられない実情もあります。
一方で、こうした状況を何とか払拭しようと労働環境を改善し、働きやすい環境づくりに力を注いできた施設や企業もあります。
必ずしもすべての施設や企業でハードワークを強いられるわけではなく、しっかりと労働環境が整備された施設や企業もあると知っておきましょう。
そのためには転職する前にきちんと情報収集をおこない、職場見学や質問なども積極的におこない、よい職場を選ぶことが大切です。
職場に恵まれ、働きやすい環境で納得しながら働いている方は大勢いらっしゃいます。
また、体力的な面や夜勤の有無が気になる方は、事務系など現場職以外の職種にも目を向けてみるとよいでしょう。
福祉の世界に身を置きながら、ご自身の体力や生活スタイルにあう職種もあるということです。
次項からは、福祉に関わる仕事を紹介します。
介護・高齢者福祉に関わる仕事
福祉と聞き多くの方がイメージされるのが「介護・高齢者福祉」に関わる仕事です。
福祉業界の中でも特に需要が高く、求人が多数ある分野となりますので、多くの方にとってチャンスがある仕事といえるでしょう。
夜勤があるなどハードワークな側面はありますが、やりがいは十分にある職種が並びます。
介護福祉士
介護施設や介護サービスの利用者に対し、身体介助や生活援助、メンタルケアなどをおこなう仕事です。
利用者の家族に対して、自宅介護の注意点や介護方針の説明などをすることもあります。
介護現場で働く人をイメージされると分かりやすいでしょう。
介護福祉士は実務経験が必要な国家資格なので、他の現場職と比較すると、給与や待遇について恵まれることも多くなります。
また、介護福祉士の資格保持者は介護施設で重宝されるため、求人は多数あり、仕事がなくて困るといったことは少ないでしょう。
介護職員
基本的に介護福祉士と同じ仕事内容となることが多いですが、実務者研修や介護職員初任者研修を修了し、現場で働く職員を指します。
介護福祉士と同様に求人は多数あり見つけやすい状況です。
無資格でも介護現場に携わることはできますが、できない仕事も多くなってしまうため、少なくとも初任者研修は修了しておく方がよいでしょう。
ケアマネージャー
介護を必要とする高齢の方やその家族に対する適切な介護プランの提案・作成や、サービス事業者との調整などをおこないます。
ケアマネージャーは介護保険のプロです。
介護福祉士や介護職員と異なり、現場で直接介護をおこなうことは少なくなります。
ケアマネージャーになるには、都道府県が実施する介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、研修を全日程修了したうえで、都道府県に登録申請する必要があります。
5年以上の実務経験が求められるため、介護・福祉業界ですでに活躍している方がステップアップとして目指すことになります。
生活相談員
老人ホームやデイサービスなどの介護福祉施設において、サービス利用者やその家族からの相談、調整、手続きなどを担う仕事です。
介護全般の知識が求められ、職務範囲に法的な決まりはありませんので、介護業界の何でも屋のように言われることがあります。
社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士などの資格や一定以上の介護職経験がある人などが就くことが多くなります。
介護事務
介護施設に勤務し、事務手続きや窓口業務などをおこなう事務職です。
通常の事務職との違いとして、介護報酬のルールに従いレセプトの作成と請求をおこなうため、介護保険制度の知識が求められます。
国家資格はありませんが、民間資格がありますので転職時のアピールや知識向上のために取得する方が多くなります。
また、介護の現場職の方がスキルアップのために介護事務関連の資格を取得することも少なくありません。
医療に関わる仕事
医療も福祉と切り離せない分野ですので、医療を通じて社会に貢献していくこともできます。
医師
いわずと知れた医療分野における最難関資格です。
最短でも、6年制の医大や医学部を卒業し、研修医として2年間勤めた後にようやく医師として現場に立つことができます。
大学病院や総合病院で勤務して専門性を磨いていくか、開業医として働いていくかが一般的な道です。
ただし開業するには知名度や技術力が必要ですので、まずは大きな病院で働いて実績を作ることが多くなります。
看護師
医療現場で医師の指示のもと、治療のサポートや患者の心身のケアを担当します。
大学や3年制以上の看護短大、専門学校などを卒業し、看護師国家資格に合格する必要があります。
医療の知識や技術が必要な点はもちろんのこと、患者や家族にとってもっとも身近な存在としてサポートをおこないますので、信頼できる人間性、気づかい、体力や強靭な精神力なども求められます。
医療技術職
医師の指導のもと治療や検査のサポートをおこなう専門職には多数の職種があります。
たとえば、放射線装置を用いて治療や検査をおこなう診療放射線技師、血液や細胞を検査する臨床検査技師、医療機器の保守、点検等をおこなう臨床工学技士などです。
医療の現場では医師や看護師のみならず、こうした医療技術職とも連携し、チーム医療としてさまざまな方面から患者や家族をサポートしていきます。
リハビリ専門職
病院やリハビリ施設において、事故や病気、高齢や障害などによって日常的な動作が困難となった方に対し、専門的な知見から動作の指導をおこなう仕事です。
目指す動作やリハビリが必要な状況に応じて、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などの専門職が活躍します。
いずれも養成学校に該当する学校を卒業するなどし、国家資格に合格しなくてはなりません。
その後、病院や施設等の採用試験を受けて働くことになります。
義肢装具士
病気や事故などにより手足の一部を失った方の動作を補うために、医師の指示のもと、義肢・装具の採型や設計などをおこない、患者の社会復帰を助ける仕事です。
医療分野におけるモノづくりの仕事ともいえますが、単に手先が器用なことだけではなく、患者と接するためコミュニケーション能力や患者への心配り、信頼性のある人柄なども大切です。
大学や専門学校で医学や工学、リハビリ学などについて学んだ後、国家試験に合格する必要があります。
児童福祉に関わる
子供の教育や生活環境を整える児童福祉の分野です。
子供の健やかな成長を支える仕事をしたい方にはさまざまな選択肢があります。
保育士
子供の保育と保護者の保育に関する指導をする仕事です。
保育園や病院、一般企業などで働くほか、乳児院や児童養護施設で働く施設保育士の仕事もあります。
厚生労働大臣が指定する大学や短大、専門学校を卒業するか、保育士国家試験に合格することでなることができます。
主婦や他業種から保育士になる人もいますので、保育士の夢がある方は諦める必要はありません。
保育士が関わる子供は乳幼児期にあり、その後の人間形成に非常に大きな影響を与える時期であることから、責任の大きい仕事だといえるでしょう。
児童指導員
児童養護施設、放課後デイサービス等の現場において、子供たちにしつけや学習指導、生活支援などをおこない、心身ともに健全に成長していくよう促す仕事です。
児童指導員になるには、児童指導員任用資格が必要となります。
養成学校や大学・短大の社会福祉学部などで学ぶ、小・中学校の教員免許、社会福祉士や精神保健福祉士の資格などを取得しておくといった方法があります。
スクールカウンセラー
小中学校にある相談室に勤務し、臨床心理の知見にもとづき児童の相談、面接、教員への助言、危機対応における心理ケア等を実施します。
担任や担当教員と連携し、面接を組み立て、適切なケアを考えていきます。
スクールカウンセラーとして働く条件は各教育委員会の基準にもよりますが、臨床心理士や精神科医、そのほか児童の臨床心理に関して高度の知識や経験を有する人(大学の学長、教授、講師などの経験がある人等)と定めていることが多くなります。
児童福祉司
児童相談所において、虐待を受けた児童の保護や非行児童、その他家庭内における児童の福祉に関して相談を受け、専門的な知識をもとに指導をおこないます。
児童相談所は都道府県に置かれる行政機関となりますので、児童福祉司は地方公務員です。
任用資格を取得したうえで公務員試験に合格する必要があります。
小学校教員
小学校で児童に勉強を教えたり、豊かな人間性を形成するための指導をおこなったりする仕事です。
家庭訪問や遠足、運動会等のイベント、教員会議などさまざまな仕事があり、多忙を極めます。
小学校の教員になるには、まずは教員免許を取得することです。
そのうえで、公立の場合には都道府県の教員採用候補者試験を、私立の場合には各小学校の採用試験に合格する必要があります。
大学で教職課程を修了し一種免許状を取得することが一般的な方法ですが、短大の教育科や一般の大学を卒業して認定試験に合格した後に二種免許状を取得する道もあります。
生活困窮者の相談に関わる仕事
世の中にはさまざまな事情によって生活に困窮している方がいます。
そんな方たちからの相談に乗り、専門的な知識をもとに解決策の提案やその他支援をおこなうことで、健やかな生活を送れるようにする仕事があります。
社会福祉士
身体や精神の障害など、何らかの事情によって社会的な支援を必要としている方からの相談に応じ、必要な助言や指導、他の専門職との調整や援助などをおこなう仕事です。
高齢者や児童、生活困窮者など、幅広い範囲の方を対象とした相談業です。
福祉系の大学を卒業する、福祉現場で4年以上の実務経験があること等を受験資格とし、社会福祉士の国家資格に合格する必要があります。
ただ、一般的に相談業は資格があればすぐに就けるというより、豊富な経験が求められる仕事ですので、資格はあるが経験がないという場合には社会福祉士として採用されることはそれほど容易ではありません。
社会福祉主事
各自治体に設置された福祉事務所や公立の福祉施設、相談所などに勤務し、社会福祉業務に携わる公務員です。
社会福祉主事任用資格と公務員試験に合格し、実際に社会福祉主事の仕事に任命された際に名乗ることができる任用資格です。
多いのは社会福祉事務所で生活保護の担当部署に配属されるケースです。
また老人ホームや障害者施設等で働く場合にも、応募条件にあたり社会福祉主事任用資格があると有利に働くことがあります。
精神保健福祉士
精神障害者が抱える、生活や社会に関する問題解決への支援をおこなう仕事です。
精神保健福祉分野におけるソーシャルワーカーとも言われており、社会福祉士、介護福祉士とともに福祉業界の三大国家資格とも呼ばれます。
受験資格を得るには多くのルートがありますが、福祉系大学を卒業する、一般大学卒業後1年以上の養成学校で学ぶ、相談実務に4年以上従事するといった方法があります。
大学を卒業していれば最短1年で受験資格を得られますので、社会人になり別の職種で活躍していた人が目指すことも珍しくありません。
精神保健福祉士の主な転職、就職先は医療機関や福祉機関、障害者施設などで勤務します。
そのほか福祉に関わる仕事
ほかにも福祉に関わる仕事は実にさまざまな種類があり、活躍の場も幅広く存在します。
福祉関連企業の社員
高齢者施設や障害者施設で働くだけでなく、一般企業に勤務することも、福祉に関わる方法のひとつです。
車いすやベッド、介護用おむつといった介護用品を作っている会社や福祉用具メーカー、バリアフリーの住宅を得意としている建築・建設会社などもあります。
一般企業で勤務する場合、職種にもよりますが、就職や転職福祉関連の知識や技術が直接求められることはありませんので、多くの方にとってチャンスがある仕事です。
なぜ福祉関連企業で働きたいのか、志望動機を明確にしておくことが大切です。
福祉住環境コーディネーター
高齢者や障害者の方たちの視点から、日常に潜む危険を排除して安心して暮らせるための住まい環境を提案する仕事です。
福祉、医療、介護などの知識のほか、住環境に関する高い専門性が求められます。
ケアマネージャーや住宅に関わる仕事に就いている方が顧客の信頼獲得やスキルアップのために取得するケースが多いです。
産業カウンセラー
民間企業の社員など産業の場で働く人に対して、心理学の手法を用い、メンタルヘルスやキャリアの相談、アドバイスをおこなう仕事です。
特に昨今では職場内における人間関係やストレスなどからメンタルヘルスの問題を抱える方が多くいらっしゃいますので、従業員だけでなく、管理監督者に対する研修や相談なども実施します。
また、キャリアアップを目指す人に対して企業外でも通用する職業能力の開発にも努めます。
手話通訳士
聴覚に障害がある方に対し、音声言語に代わる手話の技法を用いて、周囲の人とスムーズなコミュニケーションを図れるように支援する仕事です。
手話の技法を得るための民間資格等は複数ありますが、手話通訳士は厚生労働省が認定する資格としてもっとも難易度が高いものとなります。
手話の技法以外にも聴覚障害に関する幅広い知識や国語力なども求められます。
手話通訳士を直接募集しているケースは稀で、福祉業界で働きながらスキルを発揮する方が多くなります。
点字通訳者
視力に障害のある方が小説や文献などの書物を理解できるよう、目で読む文字(墨字)から点字に直す仕事です。
点字通訳者になるための必須資格はありませんが、福祉系の専門学校や大学の福祉学科等で点字を学ぶ必要があります。
点字のルールや技術があるだけでなく、もともとの文章の内容を理解して分かりやすく伝える読解力、説明力なども必要です。
非常に根気のいる仕事ですが、点字通訳者として専門的に働くケースは稀です。
他の福祉職種で働く方や、ボランティアや家族の介護のために会得する方が多くなっています。
福祉に関わる仕事の探し方
福祉に関わる仕事に就くには、介護や福祉関連施設、医療機関、行政機関を中心として、福祉関連企業へ転職する方法もあります。
福祉業界では同じ施設や企業内に複数の職種の人が働いている形になります。
目標とする職種があるのなら資格を先に取得することも方法ですが、実務経験が問われるものが多くなりますので、まずは転職を果たし、複数の資格を取得していくなどしてスキルアップしていくことも検討してみてください。
福祉業界の求人は求人サイト、転職エージェントを中心として探すとよいでしょう。
福祉や介護業界に特化した求人サイトや転職エージェントもありますので、大手と組み合わせて使うと情報量の底上げにつながります。
地元の福祉施設や企業で働きたい方はハローワークをチェックすることもひとつですが、求人の質があまりよくないこともありますので、企業の情報収集は欠かさずおこないましょう。
その点、転職エージェントであれば独自の情報網を駆使して企業情報を提供してくれますので安心です。
最後に
いかがでしたか?今回は福祉に関わる仕事をテーマにお伝えしました。
福祉は誰か一人の力で成り立つものではなく、多数の人が関わりあい、協力していくことで達成できるものです。
これは働く側からすると、どのような角度から福祉に関わっていくのかについて多数の選択肢があるということです。
これまで持っていた福祉業界へのイメージをさらに膨らませ、自分にあった仕事をぜひ見つけてみましょう。
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