女性は結婚を皮切りにキャリアの選択を迫られる機会が増えてきます。
長い目で見てキャリアを築いていくにはどうすればいいのか悩む方も多いでしょう。
結婚した女性のキャリアとしては、働き方ごとにわけて考えることができます。
主に考えられる働き方は、「正社員」「派遣」「パート」「専業主婦」の4パターン。
それぞれのメリットデメリットを把握し、比較していくことで、今後のキャリアをどうすべきかが見えてくるでしょう。
そこで今回は、結婚した女性のキャリア選択として、4つのパターンごとのメリットデメリットを解説します。
目次
結婚した女性が正社員として働き続けることのメリット
結婚した女性のキャリアとしてまず考えられるのが、正社員として働き続けることでしょう。
結婚した女性が正社員として働き続けるメリットはどんな点にあるのでしょうか。
夫に何かあったとき家計を支えることができる
夫婦で正社員として働く家庭のいいところは、どちらかに何か不測の事態が起きたとき、もう片方の収入でも生活を保ちやすいことです。
夫の病気や失業、独立などで一時的に収入が途絶えても、最低限生活できるだけの収入はあるでしょう。
転職するときに有利
正社員として働き続けていれば自身の転職もスムーズ。
これまでの経験を活かしてキャリアアップすることも可能です。
家庭の事情で転職の必要性がでてきても、正社員以外のキャリアを築いてきた人に比べて不利にならないため、希望の職場に転職できる可能性が高いです。
今後1人になったときでも稼ぎ続けることができる
離婚が珍しくないこの時代、結婚した女性でも将来的には離婚して1人で生活していく可能性もあります。
正社員で働いていれば、離婚してもお金がなくて困ることはなく、単に独身時代に戻っただけという見方も。
子供がいる女性でも、正社員として会社に貢献してきた実績があれば、職場の人から理解が得られやすい、多少の時間的融通がききやすいといったメリットもあります。
老後に受け取れるお金が増える
正社員として働き続けていれば、将来もらえる厚生年金があります。
老後のために貯蓄をできる余裕もあるし、国からもらえるお金も正社員以外に比べると多くなるでしょう。
将来における金銭的メリットは正社員がもっとも高いです。
結婚した女性が正社員として働き続けることのデメリット
続いてはデメリットについて。
結婚した女性が正社員として働き続けるとどんなデメリットがあるのでしょうか。
残業や休日出勤がある>
正社員は仕事への責任が重たく、任される仕事の範囲も広いため、必然的に労働時間が多くなります。
残業はある程度当たり前、場合によっては休日出勤も。
自分の時間が取れないばかりか、夫や子供との時間も減ってしまうでしょう。
仕事と家庭との両立が大変になる
「イクメン」と呼ばれる育児に積極的な男性が増えたとはいえ、ごくごく一部の人の話。
家庭における育児や家事負担は、今でも圧倒的に女性の方が大きいのが現実です。
正社員として働くと家事がおろそかになったり、慌ただしい毎日の中で育児をすることになり正直大変だと感じることもあるでしょう。
子供が生まれたときに職場の理解が得られないことがある
正社員女性が育休を取得し、正社員として職場復帰することへの理解がなされないことがあります。
パートなら「育児を優先させるためにパートを選んだのだろう。」と理解されますが、正社員の場合は「正社員を選んだのは自分なのだから、子供を理由に早退や休みを取るのはいかがなものか。」と言われてしまうことも。
もちろん企業によって考え方が異なりますが、正社員を続けたくても周りの環境が許してくれないことはあります。
総合職だと全国転勤がある
正社員女性の中でも、総合職と一般職における違いもあります。
総合職の場合は全国転勤も当たり前。
結婚した後に県外転勤が決まると、家族と離れることになる、転職を余儀なくされるといった可能性もでてきます。
管理職になれば出産を諦める人もでてくる
女性が正社員として管理職になると何かを犠牲にせざるを得ないのが、今の日本企業の現状。
責任の重さや部下育成、重要決定へのストレスなどもあり、仕事以外に時間や注意を向けることが難しくなります。
女性管理職の場合、仕事を優先させて出産を諦める人もいます。
結婚した女性が派遣や契約社員として働くメリット
結婚した女性が次に考えられるキャリアは、派遣社員や契約社員などの、期間に縛りがある社員として働くこと。
男性や独身の方だと派遣や契約社員を敬遠する人は多いですが、結婚した女性に関してはそれなりのメリットがあります。
期間が決まっているため計画的に働ける
結婚した女性は、妊娠出産や夫の転勤、夫や自分の家族の介護などで、キャリアを中断せざるを得ないことが多くなります。
正社員の場合は仕事の引き継ぎなどで自分の意志だけで退職日を決めることが難しいですが、元々期間が決まっている派遣や契約ならスムーズ。
契約満了時期に合わせて家庭での立ち回り方を考えればいいため、計画的に物事を進めることができます。
仕事と家庭との両立が比較的しやすい
派遣や契約社員は労働契約が重視されるため、残業がない契約であれば毎日定時帰りも可能です。
正社員の場合は業務量が多く残業をやらざるを得ない、周囲が残業していて帰れないといったことが起こりがち。
暗黙のサービス残業をやっている人も多いでしょう。
派遣や契約社員の場合は契約厳守ですし、残業した分だけ残業代を払う必要があるため、勤務先も定時帰りを徹底してくれます。
時間内だけきちっと働けば文句を言われることが少ないため、定時で帰って家事や育児を両立させることができます。
パートに比べて稼げる
派遣社員や契約社員は正社員ほど稼げませんが、パートに比べると断然有利。
同じ時間働いたとしても、時給が高い、場合によっては賞与がでる、福利厚生を利用できるなど、パートより恵まれた環境です。
結婚した女性が派遣や契約社員として働くデメリット
結婚した女性が派遣や契約社員として働くにはデメリットもあります。
どんな点に気をつければいいのか見ていきましょう。
契約満了後に仕事がなくなるリスク
派遣や契約社員は契約満了後の仕事が保証されていません。
近年は派遣法や有期雇用契約についての法改正などがおこなわれてはいるものの、派遣や契約社員の雇用を保証するとまでは言えないのが現実。
長く働きたい、同じ職場で居続けたいと思っても難しいのです。
結婚した女性に限ったことではありませんが、契約満了後のその先を見据えて派遣や契約社員を選ばないと、いざというときに途方に暮れることになるでしょう。
正社員への転職でやや不利になる
結婚して一旦派遣や契約社員になると、子育てが落ち着いて正社員になろうと思ってもハードルが上がっています。
派遣や契約社員も経歴としてアピールはできますが、正社員に比べて仕事の責任や業務範囲が狭い派遣や契約社員は、正社員経験が豊富な人に比べて見劣りしてしまうのです。
派遣や契約社員が正社員への転職を目指すなら、転職エージェントなどのプロの手を借りながら活動するのがおすすめです。
求人紹介から書類作成、面接対策までサポートしてくれるため、派遣や契約社員でも正社員への転職がスムーズになります。
賞与や退職金がないから生涯収入が下がる
派遣や契約社員は、賞与や退職金がないのが基本。
あっても正社員ほどではなく、一律いくらと決まっており、業績によってプラスされないことがほとんどです。
派遣や契約社員はそれなりに責任ある仕事を任されることも多く、正社員以上に能力が高い人材も大勢います。
ただ、契約期間が決まっていて長い目で見た企業貢献がしにくいため、賞与や退職金がありません。
生涯年収が少なくなるのは大きなデメリットでしょう。
結婚した女性がパートになることのメリット
結婚をきっかけにパートになる女性は多くいます。
女性はなぜ結婚するとパートになるのでしょうか。
考えられるメリットを見ていきます。
お金を稼ぎながらも家庭を優先させることが可能
一般的には正社員に比べて時間的融通がききやすく、責任の軽い仕事を任されることが多いのがパートという立場。
家庭の事情や子供の用事で早退する、仕事を休むなどが比較的許容されやすいのがメリットです。
また、働いた時間だけ給与をもらうことができるので家計の助けとしては十分。
時給1,000円で1日4時間、月20日勤務だとしても、家計全体の収入が80,000円も増えるわけですから、パートとして働くメリットは大きいはずです。
ちなみに、この働き方だと、現行法においては税金も社会保険もギリギリ対象外になる可能性がありますので、給与から引かれるお金が少ないのもメリットです。
参照:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1800.htm
参照:政府広報オンライン
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html
社会とのつながりを保ち続けることができる
結婚した女性が完全に家庭に入らず、パートとして外に働きにでることは、精神的な安定にもつながります。
家庭に入った女性に多く見られる「社会との断絶感」は、パートでもなんでも、会社を通じて社会とつながり、貢献している実感を持つことで回避することができます。
夫の収入が多いなどで金銭的には働く必要がなかったとしても、パートになることは大きなメリットがあるのです。
残業や責任の重たい仕事を回避できる
一般的には、残業や責任の重たい仕事はパートではなく正社員に任せる企業が多いです。
時間的にも精神的にも余裕が生まれやすいのはメリット。
「やっぱりパートは気楽でいいよね。」との意見は結婚した女性からよく聞かれます。
結婚した女性がパートになることのデメリット
女性が結婚した後のキャリアとしてパートを選ぶことにはデメリットもあります。
一時的にはメリットがあるけれど、将来的には大きな負担となってのしかかる可能性も。
パートになるかを迷ったら、ぜひデメリットも考えておきましょう。
フルタイムでも正社員や派遣、契約社員ほど稼げない
パートでもフルタイムで働く人がいますよね。
フルタイムパートの最大のデメリットは、正社員などほかの立場の人に比べて稼げないことです。
せっかく朝から夕方まで働くのに時給は低く、賞与も退職金もありません。
フルタイムだと税金や社会保険も引かれるため、手取り収入は寂しいものに。
子供の保育園料でパート収入のほとんどが消えてしまうという方も少なくありません。
仕事を頑張っても正当な評価を受けられない
パートでも仕事ができる人は大勢いますが、仕事を頑張っても目に見えた評価を受けにくいのがパートのデメリット。
正社員のように昇級昇格制度を採用している企業は少なく、社内で表彰される機会も稀です。
パートの場合は1年契約更新が多いですが、更新時に時給が大幅にアップするケースは多くありません。
パートへの人件費は抑え、正社員や役員に還元する企業も多いため、パートは優秀でも評価されにくいのでしょう。
評価されなければ仕事へのモチベーションを保ちにくくなります。
パートから正社員を目指すのは大変
女性が結婚して一旦パートになると、そこから正社員を目指すのが非常に難しくなります。
よほど優秀かつフルタイムで働けるパートなら、パート先で正社員登用を打診されることがありますが、そうはない機会。
転職して正社員になるにしても、パートだったことによって「正社員として責任を持って働いてくれるか。」「残業や休日出勤にも対応できるのか。」といった不安を持たれます。
夫の収入がなくなると生活が厳しくなる
結婚してパートになると、夫の収入が途絶えた際に生活維持が厳しくなります。
パート収入があっても、夫婦が生活し子供を養うには不足するでしょう。
前述したように一旦パートになった女性が正社員に戻るのは簡単ではないため、転職活動で苦労する可能性も高いです。
結婚して専業主婦になることのメリット
女性の社会進出が活発化し、昔に比べて減ってはきたものの、結婚して専業主婦になる女性もいるでしょう。
ここからは、女性が結婚して専業主婦になることのメリットを解説します。
家事育児を丁寧にできる
専業主婦の最大のメリットは、仕事をしない分、家庭に力を注げること。
家中を毎日ピカピカに掃除したり、家族の健康を考えてバランスが良く手の込んだ料理を出すことも可能です。
夫の仕事がスムーズにいくよう、全面的にバックアップできるでしょう。
子供を保育園に預ける必要がないため、子供と多くの時間を過ごすことができ、ママ友たちから育児に有益な情報を得ることもできます。
仕事上のストレスを感じないで済む
専業主婦には仕事以外のストレスは多くありますが、仕事上のストレスを感じないで済むのもまた事実。
会社の理不尽さに腹を立てたり、職場の人間関係に頭を抱える必要はありません。
特にこれまで正社員として働いてきた人の中には、一旦専業主婦になることで、精神的なストレスが激減したといったメリットを挙げる人は多いです。
税金や社会保険上のメリットを受けられる
専業主婦は税法上も社会保険法上も、夫の扶養に入ることが基本。
特に夫がサラリーマンの場合、社会保険上のメリットは大きいものがあります。
サラリーマンの妻で自身が社会保険に入っていない場合は「第3号被保険者」として、社会保険料を払わず、健康保険利用や将来の国民年金を受け取ることができます。
自分で社会保険料を払っている女性や自営業の妻たちとの不公平感が「第3号問題」とされているため、将来的にどうなるか分かりませんが、現時点ではメリットと言えるでしょう。
結婚して専業主婦になることのデメリット
環境が許されるなら専業主婦になりたいと考える女性はまだまだおり、専業主婦はある意味女性たちの「憧れ」でもあります。
しかし、女性が結婚して専業主婦になることは、将来的なデメリットも多いため、むやみに専業主婦になるのは慎重になるべきです。
ここからは、女性が結婚して専業主婦になることのデメリットを解説します。
社会から断絶された気になる
専業主婦でも、学校関係者や近所付き合いなどで外部の人と接する機会は多くあります。
しかし、働いていないことで社会から取り残された気持ちになりやすいもので、人によっては断絶感が大きなストレスになることもあります。
悩みがあっても相談できる人が限られたり、家にいる時間が多くて内向的になったりと、精神的なデメリットがあるのです。
子供の学校行事で係を任されることが多くなる
子供の学校行事に参加しやすいのが専業主婦のいいところですが、まとめ役や重要な係を任されることが多くなります。
共働きで学校行事に参加できない、育児に時間をかけられない夫婦が多い中で、「専業主婦なら時間がありますよね?」と思われてしまうのです。
行事ごとが好きな人ならいいのですが、人前に出たりまとめ役をするのが苦手な人は苦痛に感じるでしょう。
離婚した場合に生活できない
専業主婦にも、将来的に離婚や死別で1人になる可能性もありますが、そうなったときに収入がありません。
パートにでる、就職活動をすることになりますが、専業主婦歴が長かった人に対して人事担当者は厳しい目を持っています。
活かせる経験やスキルがないうえに、「本当に会社員として働けるのか。」と適性を不安視することも。
結局は知り合いのツテを頼るか、希望とは異なる仕事や低賃金の仕事に就く可能性もあります。
結婚した女性のキャリア選びのポイントは?
結婚した女性にはキャリアの選択肢が豊富にある分、何が正解かが分からず悩みにつながりやすいですよね。
ここからは、結婚した女性のキャリア選びのポイントを紹介します。
夫と二人で話し合うこと
まずは自分だけで悩まず、必ず夫と二人で話し合うことが大切です。
男性は女性のキャリアについて、口で言っていることと本音が違うことが多々あるため、腹を割ってじっくり話しましょう。
女性が働くのに賛成だと口では言いつつ、本音は家事育児をしっかりやってほしいと思われていると、家事育児の分担や帰宅時間などで、今後もめることになります。
夫婦の考え方は変化していくものですし、生活しながらの軌道修正も必要ですが、最初から曖昧にしておくことだけは避けましょう。
結婚した女性のキャリアと家庭とは切り離すことはできません。
お互いの価値観を共有し、多少の違いも歩み寄りながらやっていきましょう。
可能な限り正社員で働き続けることを目指す
女性は結婚すると、どこか肩の荷が降りた気になり、「とりあえず退職してゆっくり家庭のことをしよう。」と思うことがあります。
しかし、今後のキャリアを考えるとむやみに戦線離脱するのはおすすめできません。
特段の事情がない限りは、できるところまででも正社員で働き続けることを目指しましょう。
今は大変でも、長い目で見れば正社員でいることのメリットは大きいです。
正社員以外の働き方をするなら次に活かせる経験や資格取得を
本人は正社員として働きたくても、会社の理解がない、家族に反対されるなど、正社員以外の働き方をする場合があります。
そのときは、いつか正社員に戻ることを想定し、派遣やパートとしてでも、次に活かせる経験を積むことを意識しておきましょう。
時間的な余裕があるなら、今のうちに仕事で評価される資格を取得しておくこともいいですね。
専業主婦になるなら独立開業を見据えてスキルを磨いておく
専業主婦になる場合は、家のことに時間を割けられる強みがありますが、完全にサポート側に回るのではなく、自身の将来にも目を向けておきましょう。
専業主婦は会社員に戻るときのハードルは高いですが、独立開業やフリーランスとして働くという方法もあります。
いくら家事育児に忙しいとは言っても、1日のうち1~2時間くらいの時間は取れる人も多いはず。
独立開業に役立つ資格を取得し、開業ノウハウを勉強しておく、セミナー参加や人脈を広げる努力をしておくなど、今からやっておけることはいくらでもあります。
独立開業に不安があるなら、クラウドソーシングなどを利用して収入を得るクセをつけておくだけでも、いざとなったときに生きていける自信がつくでしょう。
結婚した女性はキャリア選びを慎重におこなうべき
女性は結婚から始まって、出産や夫の転勤などさまざまなライフイベントが待ち受けています。
人生の中で初めて経験するイベントも多く、目の前のことで頭がいっぱいになり、将来のキャリアを考える余裕などないでしょう。
その場を乗り切ることに夢中になり、気づいたときには就職も転職もしにくい状況になっている可能性があります。
少なくとも、結婚が決まったその瞬間から自身のキャリアについて真剣に考えておくことが大切ですよ。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、女性のキャリア選択として、「正社員」「派遣や契約社員」「パート」「専業主婦」それぞれのメリット、デメリットを紹介しました。
結婚した女性がキャリアを選ぶことは男性以上の難しさがありますが、大切なのは曖昧にしたり、その場しのぎ的な考えを持ったりするのではなく、今の状況と照らし合わせてよく考えること。
じっくり考えてだした決断なら、将来後悔することも少ないはずですよ。
女性のキャリア選択について、ぜひ参考にしてみてください。