「管理職にならないか?」と言われたらどうしますか?

喜んで引き受けるつもりの方はいいのですが、現時点で答えられない方は、どうするかを早めに考えておくべきです。

「自分が管理職の打診を受けるはずがない。」と思う方もいるかもしれませんが、意外なところから声がかかることもあるというものです。

管理職打診を手放しで喜べない方は、その理由を整理し、管理職以外の選択肢も考えておきましょう。

管理職には誤解も大きいため、よくよく考えてみたら挑戦してみたいと思い直すこともありますよ。

そこで今回は、管理職になりたくない理由と管理職への誤解、管理職を断った場合のキャリアを紹介します。

管理職になるか迷う方は判断材料としてみてください。

管理職になりたくない理由とは?

正社員として就職すれば、現場での経験を積み、20代後半~30代なかばくらいで係長になり、課長、次長、部長へとステップアップしていくのが王道のルートです。

当たり前の未来として想像している人がいる一方で、近年は管理職になりたくない人も増えています。

管理職になればやりがいや年収増などに期待できそうですが、一体なぜなのでしょうか。

ここでは、管理職になりたくない理由を紹介します。

他人の責任をとるストレス

管理職の大きな役割の1つに、部下たちの監督をし、ミスをした場合には責任をとるということがあります。

「他人が犯した過ちに責任なんてとりたくない。」「自分の仕事で精一杯。」と考える方も多く、他人のミスへの責任を負うことは大きなストレスとなります。

特に、女性は元来ある保守性、慎重性から、極端にミスを恐れる傾向にあります。

自分の仕事でさえミスを許容できないのに、部下のミスの責任を負うのは無理だと考える女性は多いです。

日本は他の先進諸国に比べて女性管理職割合が低く、女性の管理職登用推進が叫ばれていますが、女性自身が「責任を負いたくない。」と考えているため、女性の管理職割合がどこまで伸びるかは疑問が残ります。

自分の時間が持てなくなること

管理職になれば、突発的なトラブルに対応するため残業や休日出勤する、上層部との付き合いや取引先とのゴルフに参加するといった機会も増えるでしょう。

「新入社員は企業に、給料が増えることよりも残業がない・休日が増えることを求めている」との結果がでた調査が話題になりましたが、ここからも、今の人たちは自分の時間を大切にしていることが分かります。

管理職になれば、給与以上に大切な自分の時間が持てなくなる恐れがあるため、管理職になることを敬遠する人は多いです。

参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「新入社員意識調査アンケート」
http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_170509

残業代がつかなくなるから

「管理職になると残業代がつかないから損する。」との考えを持つ方は大勢います。

これには誤解もあり後術しますが、管理職になったことで年収が逆に下がってしまうケースが実際にあるため、管理職になんてならない方がいいとの考えにつながっています。

確かに、責任だけが重くなり年収が下がれば「割に合わない仕事」となるでしょう。

自分の仕事に見合った給与を受け取りたいと考えるのはごく自然なことです。

好きな現場の仕事ができなくなる

現場で活躍していた方にとっては、管理職になって現場仕事から離れることに寂しさを感じることになります。

管理職になれば社員の管理や教育といった業務が主になり、デスクワークも増えてきます。

生き生きと働いている部下を見て羨ましくなることもあるでしょう。

特に、技術職の方はその仕事が好きでやりがいを持っているため、今のままの仕事を続けたいと考える傾向にあります。

嫌われ役になるのが苦痛

管理職になれば部下たちと管理監督する立場として、ときには厳しい言葉を投げかけたり、部下が希望しないと分かっている仕事を任せる場面もでてきます。

書籍「嫌われる勇気」がベストセラーで話題になりましたが、正直なところ、「できれば人には嫌われたくない。」と多くの方が考えているでしょう。

何かと嫌われ役にまわりやすい管理職は、嫌われたくない人にとってはストレスになるのかもしれませんね。

自信がない

管理職自体に憧れや、やってみたい気持ちはあっても、「管理職としてやっていける自信がない。」「自分はリーダーの器ではない。」などの気持ちから敬遠する人もいます。

特に女性は、男性に比べて自身を過小評価する傾向にあると言われており、自信のなさから管理職の道を選ばないケースもよく見られます。

優秀な女性も多く、女性管理職登用の環境が整っているにもかかわらず、本人が踏み込めないのは勿体ないことですね。

尊敬できる上司がいない

身近に尊敬できる上司がいれば「あの人のようになりたい!」と管理職への意欲も沸きやすいでしょう。

モデルケースがいればキャリアプランも立てやすく、立ち止まったときに相談することもできます。

身近な上司が尊敬どころか軽蔑の感情すら覚えるような人材だった場合、「あんな人になるくらいなら管理職になりたくない。」と思ってしまうこともあります。

管理職への誤解を整理。管理職にはメリットも大きい!

若手人材や女性を中心に、どちらかと言えばネガティブなイメージを持つ人が多い管理職登用ですが、管理職には誤解も大きくあります。

ここからは、管理職への誤解を整理して紹介し、管理職になるメリットを考えていきます。

ワークライフバランスを保てる人もいる

管理職になって自分の時間がなくなることを懸念する人は多いですが、管理職になったことで、むしろワークライフバランスが保ちやすくなるケースもあります。

自分の裁量で職場の働き方改革ができるため、作業効率改善によって職場全体の生産性がアップします。

上司に気を使って残業することもなく、率先して定時帰りもできるでしょう。

部下に仕事を押し付けるということではなく、職場全体を変えることで、自分にとっての働きやすい環境に変えられる力を持つということ。

工夫や努力が他者への影響力を持ちにくい一般社員と比べ、大きなメリットと言えるでしょう。

体が楽になることもある

現場仕事が減り、仕事へのやりがいが感じられなくなる不安を持つかもしれませんが、長い目で見れば、その仕事に細く関わり続けることができるメリットはあります。

現場の仕事は、体力的にきつい、長時間労働になりやすいといったリスクがあり、年齢を重ねるごとに働くことが大変になります。

管理職登用の選択を迫られるときは、まだ自分も若いため現場仕事をやり続けたいと感じるでしょうが、後になって「管理職になって良かった。」と思うことも多いです。

デスクワークが増える分体力的に楽になりますし、疲れたときには休みを取ることも可能です。

残業代がつかないことへの誤解

一般的に言われる「管理職は残業代がつかない。」という点についてですが、これは労働基準法41条によって定められた「管理監督者」が労働時間、休憩及び休日に関する規定から適用除外とされているからです。

ここには割増賃金も含まれているため、「管理職=残業代がつかない」との認識につながっています。

しかし、労働基準法上の管理監督者の定義は単に会社組織内の役職名だけで判断することはできず、職務内容や権限、責任、勤務の実態や待遇など複数の要素が材料とされます。

管理職だから残業代がつかないとは必ずしも言えないため、誤解を持たないことも必要です。

管理職にはさまざまなタイプがいていい

自分はリーダーになる自信がないと感じる方は、固定化されたリーダー像があるのではないでしょうか。

堂々として上層部にも意見が言え、部下たちからは慕われている、そんな人物でなければ管理職になれないと思い込んでいるのかもしれません。

一般社員にも個性があるように、管理職にもさまざまなタイプがいていいはず。

最近は「内向的リーダー」などと呼ばれるように、思慮深く他人の話をよく聞く、洞察力や共感性に優れたリーダーの方が、外向的リーダーより良い結果を出すと言われることもあります。

自分の中にあるリーダー像になれなくても、自分らしいリーダー像を作りあげていくことが可能なのです。

身近に尊敬できる上司がいなくてもモデルケースはある

身近に尊敬できる上司がいない場合、参考になる人がおらず不安になることでしょう。

モデルケースは何も身近で探す必要はなく、別部署の上司や取引先の人、あるいは好きな書籍の著者でも構わないのです。

こんなふうになってみたいと思う魅力的な人物がいれば、その人をモデルケースとして管理職を目指してみるのも1つです。

管理職への打診を断るとどうなる?

管理職への打診があり迷う場合、「もし断ったらどうなるだろう。」との疑問が沸きますよね。

ここからは、会社組織内において管理職を断ったその後について触れます。

チャンスはもう来ない

管理職の枠は少なく、望んでも簡単に得られる立場ではありません。

上司も「きっと引き受けてくれるだろう。」と期待を込めて打診していますから、ある意味で期待を裏切ることになります。

今後大きな期待を寄せられることもなくなりますし、管理職へのチャンスはもう来ないと思っておきましょう。

長い目で見て本当に管理職にならなくてもいいのか、じっくりと考えてみるべきです。

同じ会社内での年収アップの機会を失う

会社組織内で年収を上げていくには、昇進して立場を上げていくことが、もっとも上げ幅が高い方法です。

定期昇給でも確かに年収は上がりますが、管理職になることに比べれば低いものです。

努力して仕事で役立つ資格を取得したとしても、よくて月々数千円の資格手当がつく程度。

手当の額が段階的に上がるとも考えにくいので、一度手当がついたことを喜んだらそこで終わりです。

管理職を断った瞬間から、同じ会社内でもっとも年収アップできる機会を失うと思っておきましょう。

成長や挑戦を放棄したと思われる

管理職になるのは誰だって不安があります。

これまでとは異なるステージに行き、業務内容や求められる能力も変わってくるからです。

しかし、そこに挑戦してこそ成長機会が得られるというもの。

いつも同じ環境に身を置き、同じことを繰り返している場合に大きな成長は望めないのです。

管理職を断ると、挑戦せず、成長機会を放棄したと思われます。

だから解雇とまではなりませんが、社内に居づらくなり、人材としての高い評価を得ることは難しくなるでしょう。

管理職以外の道はないの?断った先のキャリア

管理職を断った場合のキャリアはどうなるのでしょうか。

ここからは、管理職以外の選択肢と必要な要素について紹介します。

現状維持は難しいと心得よう

管理職への打診は、勘のいい上司が大ごとにする前にこっそり聞いてくれたならいいのですが、上層部からの内示の場合は厄介です。

会社員でありながら会社の内示を断るのは、よほどの理由がなければできないこと。

本人は「ずっとこのままでいたい。」と現状維持を望んでいたかもしれませんが、現状維持したまま、定期昇給で給与だけが上がっていくことがどんな意味を持つのか考えてみましょう。

会社にとっては、同じ仕事をやり続ける人への給与を高くしていくのは、「余計なコストが増えていくこと」になります。

年齢が上がれば上がるほど居心地も悪くなっていく覚悟は必要になりますよ。

会社に雇われる以上、現状維持は簡単ではないことなのです。

専門職になるなら圧倒的な専門性を身につけるべき

同じ会社組織内で管理職を選ばない場合、専門職になって自分を高めていく方法もあります。

技術系専門職のほか、経理や法務などの事務系専門職も、専門知識が必要で重要度が高く、やりがいも感じられる仕事と言えるでしょう。

専門職になるなら、少しその分野をかじった程度ではなく、どこに行っても通用するくらいの圧倒的な専門性を身につけるべきです。

管理職を断ったとしても、それくらいの専門性がある人材になれば、その道で評価されるときが来るでしょう。

転職すれば好きな仕事を続けられる

現場の仕事が好きでずっとその仕事をやり続けたい方は、転職も選択肢の1つです。

現場経験を活かして即戦力として転職できる可能性も高いでしょう。

たとえば、現場仕事が好きな人が多いITエンジニアなども管理職になりたがらず、とにかく技術を磨いていきたいと考える傾向にあります。

エンジニアはニーズが高く転職が比較的容易なので、転職を重ねながら技術を磨いていく方も多いです。

エンジニアに限らず、転職を考えるなら転職エージェントなどのプロに相談し、在籍しながら転職先を探していくことになるでしょう。

リスクは高いが年収が青天井になるのが独立

エンジニアのような手に職がない方の場合、30代半ばくらいからは転職においてもマネジメント経験が求められる機会が増えてきます。

会社組織内だけでなく、転職市場全体を見ても、現場仕事だけをやり続けることの難しさを実感するでしょう。

この場合は、会社員を辞めて独立やフリーランスを目指す方法もあります。

本当に好きな仕事だけをやり続けたいのなら、雇われの身ではなく、自分でやっていくことも視野に入れましょう。

独立やフリーランスには当然リスクがありますが、成功すれば会社員以上の年収を得ることも可能です。

リスクを取るのが嫌なら会社員でいるべきですが、好きな仕事をやり続けたいという気持ちはある程度抑えて会社の意向に従う必要もでてきます。

最後に

いかがでしたか?

今回は管理職になりたくない理由と誤解、管理職を断った場合のキャリアを紹介しました。

管理職になるかどうかは、打診を受けてから考えるのではなく、自身のキャリアをあらかじめイメージしておくことが必要です。

ずっと一般社員で同じ仕事だけをし続けることは難しいと認識し、自身をどう高めていくのかをぜひ考えてみましょう。