専門性と需要の高さから一生仕事に困ることはないと言われる職業が医師。

「医師になれば安泰。」「医師は仕事を探す必要はない。」とのイメージも持たれますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

確かに医師は特殊な職業ですが、携わっているのは1人の人間です。

「医師を辞めたい。」「転職したい。」と感じることは一般のサラリーマンと同じようにあります。

高年収で社会的地位が高いことから、憧れ職業でもある医師が転職したいと感じる瞬間はいつなのでしょうか。

今回は、医師の転職理由と、医師の転職活動方法におけるメリット・デメリットを紹介します。

医師が転職したい7つの理由

医師と言えば揺るぎない心と高い志をもって「辞めたい」などと感じないイメージを持たれるかもしれませんね。

しかし、医師も職業を変えたいと思ったり、転職して別の医療機関で働きたいと思ったりすることはあります。

医師はどんなときに転職しようと感じるのでしょうか。

ここでは、医師が辞めたい理由を紹介します。

1.仕事の割に年収が低いと感じる瞬間

医師は高年収職種の筆頭に挙げられますが、医師の転職理由には年収による不満も多くあります。

飲食業界や介護業界のように生活が厳しいほど低いということではなく、「仕事の大変さの割にあわない年収」という意味で不満を感じる傾向に。

診療や手術で人の命を預かる責任を負い、ほとんど休みがない状態で働いていると考えると、決して割がいい仕事ではないでしょう。

一般の人が「医師は高年収でいいよね。」などと言うのは、その仕事の大変さを理解していないからです。

医師の年収相場はいくら?

参考までに、中央社会保険医療協議会が実施した調査結果で医師の年収を確認します。

  • 勤務医の年収 1,479万円
  • 開業医の年収 2,530万円(法人等)
  • 開業医の年収 2,458万円(個人)

参照元:厚労省

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/iryouhoushu.html

医師の年収は、経験年数はもちろん、診療科によっても大きく異なるため、単純に勤務医の年収が1,500万円近くあるわけではありません。

研修医時代は一般的なサラリーマンより低い水準ですし、20代、30代前半の若手医師では1,000万円に満たないことも普通にあります。

全国的に知名度がある大病院の医師でも、2,000万円以上の年収がある医師はベテランの役職つき医師がメインで、全体医師数の割合から言えば1割程度です。

開業医は年収が高く、当直等もないことから満足度も高い傾向にあります。

ただし、開業医だから「割がいい」とは一概には言えません。

雇われでない分、いざというときの所得補償や退職金がありませんし、収入の中から経営に必要な諸費用を捻出する必要もあるでしょう。

2.当直やオンコールで体がボロボロ

医師はとにかくハードワークです。

通常勤務と変わらない業務をこなした当直明けでそのまま日勤に入り、休日も呼び出しで体を休める時間も精神的な安らぎもありません。

医師は慢性的な人手不足ですし、専門性の高さから代わりになる人がいません。

業務の特性上、一般の仕事と単純に比較することはできませんが、一般企業が「ブラック」と呼ばれる要素をはるかに超えていることも多々あるのです。

無理な労働がたたって体を壊し、休職を取得したり、やむを得ず辞める医師もいます。

医師と労働基準法の関係は?

病院で働く専門職にも当然労働基準法は適用されますが、実際の医療の現場では、医師に労働基準法はあってないようなもの。

規模が大きく法整備がされていると思われがちな大病院でさえ、「医師は仕方がないよね。」との認識が広がっています。

もちろん、医師の労働環境は患者に直接的な影響を与える可能性がありますから、病院側でも意識改革は進んではいるでしょう。

しかし、全体像を見れば、医師は決して労働者として守られているとは言えないのです。

3.精神的な落ち込みから

医師も精神的に落ち込み辞めたいと感じることがあります。

いつ「医療ミスだ!」と訴えられるかわからない危険と隣り合わせですし、疲れた体にムチを打ち、厳しい医療の現場で精神力を発揮するのは想像以上にストレスがあります。

疲れが溜まるとイライラしてくるのが通常なので、看護師や他の職員に当たってしまい自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。

実は多いメンタルの不調

医師というとメンタルが非常に強いイメージがあるかもしれませんが、実は医師でもメンタルの不調を理由に休職する人は多くいます。

過酷な労働環境の中働いているのですから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。

医師は病院の中でもトップの職種にあたるため、誰かが手を差し伸べることがしにくい状況。

医療機関では、医師のメンタル面でのフォロー体制が整っていないことも事実です。

4.上司や病院との意見相違

医師の中でもまだ若いうちは、とにかく一人前の医師になるために必死ですが、35歳を過ぎそれなりに経験を積んでくると自身が理想とする医療の形ができてきます。

同じような考えの上司の元、病院の方針にも納得できて働く場合はいいのですが、方向性が異なった場合は辞めたいと感じます。

医師としての強い想いがあればあるほど、割り切った考え方ができない側面があるのです。

5.人間関係が嫌になった

医師は人との接点を決して避けては通れない職業です。

仕事関係だけでも、患者、医師、医局、看護師やその他の専門職、学会関係者や取材などなど、毎日さまざまな人と接することがあり、中には相性の悪い相手もいるでしょう。

大学病院など一部の病院では、ドラマにでてくるような派閥争いだってありますから、本当に疲れてしまうのです。

特に患者や他職種の人から「いい先生」と思われるような優しい人ほど、人間関係に悩んでしまうことが多いようです。

6.医局人事による異動に疲れた

医局に所属している医師の場合、医局人事によって頻繁に派遣される病院が変わるということが起こります。

地方の病院を2~3年で異動になり、また遠方の地域に勤務することも普通にあり、はっきり言って落ち着きません。

独身で身軽な医師ならまだいいのかもしれませんが、結婚していようが子供が生まれたばかりだろうが、医局人事異動はかなりの頻度でやってきます。

もちろん、病院を転々とすることで若い医師たちは経験を積むことになるわけですが、短いスパンで転居が伴うのは大変なこと。

特に家族ができた医師はそのタイミングで医局を辞めて自分で転職活動し、1つの病院で落ち着きたいと考えるようになります。

7.結婚、出産、育児

主に女性の医師に見られる辞めたい理由ですが、結婚や出産を機に、転職または非常勤医師になるなどして仕事量を減らしたいと考えることはよくあります。

前述したように医師はハードワークで、他職種に比べても仕事と家庭との両立は簡単ではないでしょう。

女性の医師というと、「キャリアウーマン」としてバリバリ働くイメージが強いですが、他職種の女性と同様に、結婚や出産、育児などでキャリアの中断を余儀なくされます。

医師の転職活動方法別メリット・デメリット

一般的にはあまり聞かれない「医師が転職する」という言葉ですが、医師も転職活動をします。

ただし、医療機関で医師の募集をおこなう際、他職種のようにハローワークに求人をだすことはあまりなく、一般的な転職活動方法とは少々異なっています。

ここからは、医師の転職活動方法の選択肢とメリット・デメリットを紹介します。

医療機関のHPで採用情報を確認し直接応募する

各医療機関のHPには採用情報が掲載されており、医師については診療科ごとに随時募集されていることも多くなっています。

転職したい医療機関に直接応募できるため、自身の意向が反映されるのが大きなメリットですが、すべて自分でやらなくてはなりません。

問い合わせから始まり、応募書類作成、面接の日程調整、医療機関について調べる、条件交渉など。

育児から復帰予定の医師などゆっくり転職活動する時間があるならいいのですが、今の職場で医師業を続けながらすべてをこなすことは大変でしょう。

ドクターバンクを利用する

ドクターバンクに登録し、自治体職員の協力の元転職する方法もあります。

ドクターバンクは都道府県の医師会が運営しているため、地元や希望の勤務地で働きたい医師に適しています。

医局人事で見ず知らずの地方に転勤になる不安から解放され、生まれ育った地域に社会貢献し恩返しすることもできるでしょう。

ただし、特に勤務地が決まっていない場合や、医療機関にこだわりがある場合は納得できる求人が見つかりにくいことがあります。

知人のツテを頼って紹介してもらう

お世話になった先輩や元同僚、大学時代の友人など、知人のツテを頼って紹介してもらうことは、医師の世界では一般的におこなわれています。

紹介者が働いている病院に転職するなら、職場の内情をよく把握しているため事前に気になる点を詳細まで確認しておくことができるでしょう。

転職後にギャップを感じにくいため、1つの有効な方法と言えます。

ただし、紹介の場合は紹介者の手前、不満があっても辞めにくい、紹介者を頼り過ぎて自分で転職先について調べず失敗するいったデメリットもあります。

医師専用の転職エージェントを利用する

サラリーマンたちが転職エージェントを使って転職活動するのと同じように、医師も転職エージェントを利用する人が増えてきています。

医師は特殊な職業柄、医師に特化したエージェントを使うことが一般的。

ハードワークの医師にとって転職活動の負担は少ない方がいいため、転職エージェントが併走してくれるのは非常に助かります。

あらかじめ希望を伝えておくと求人紹介が受けられ、年収交渉も代わっておこなってくれるのは大きなメリットでしょう。

ただし、転職エージェントとの相性の問題や、利用した転職エージェントに医療業界の知識がどの程度あるかによって利用価値が変わってきます。

複数の転職エージェントに登録してみて、相性のいいエージェントを見極める必要性もあるでしょう。

最後に

いかがでしたか?今回は、医師の転職理由と転職活動方法別のメリット・デメリットを紹介しました。

医師は強靭な肉体や精神力を持つ人も多いですが、キャリアについての悩みはごく普通にあるものです。

転職したいと思ったら、その理由を整理し、自身のキャリアにとって最適な方法で転職に向けて動きだしましょう。