夜勤にオンコール、毎日の残業と、不規則で激務な病院の看護師を辞めたいと思っていませんか?
看護師の転職先はクリニック、保育園、企業など多数ありますが、今回は介護施設への転職に着目してお伝えしていきます。
介護施設で看護師が働くには、メリット・デメリットがありますので、人によって適性が変わってきますよ。
介護施設の看護師と病院の看護師は何が違うのか、介護施設の看護師はどんなところが大変なのかをよく把握し、転職成功につなげましょう。
目次
介護施設で働く看護師と病院で働く看護師と違う点
まずは、介護施設で働く看護師と病院で働く看護師は何が違うのかを紹介します。
違いを理解しておかないと、転職後のギャップを感じて不満につながりやすくなるため注意が必要です。
両者はどんな点が異なるのでしょうか。
目的や業務内容が違う
ケガや疾病の治療を目的とする病院の看護師と異なり、介護施設は高齢者たちの生活基盤となる場所です。
看護師が働く目的も、施設の利用者たちが快適に安全に生活するための環境作りです。
健康管理、医師の指導のもとおこなう医療行為、いざというときの対処といった業務をおこないます。
具体的には、痰の吸引、バイタル測定、インシュリン注射、経管栄養、服薬管理など、さまざまな業務があります。
介護施設では病院に比べて急変が起こりにくく、医療行為をおこなう機会が少ないことから、看護師としてのスキル低下を懸念する方も多くいます。
しかし、認知症看護や介護スキル、コミュニケーションスキルなどを伸ばすことができます。
介護施設だから看護師のスキルが低下するというより、将来どの分野で活躍したいかを考えておくことが大切でしょう。
一緒に働く人たちが違う
看護師の勤務先としてもっとも多いのは、病院やクリニックなどの医療機関ですから、仲間たちも看護師が大勢います。
ほかにも、医師はもちろん、薬剤師や放射線技師、栄養士などの医療技術職の人たちと連携を取る機会が多くなります。
介護施設の場合、主には介護士たちと一緒に働くことになります。
病院の看護師から転職する場合は、働く相手が異なることで考え方にギャップを感じないか、業務のスピード感に違いがないかなど想定しておくといいでしょう。
利用者と向き合う時間が違う
病院は治療が終われば患者さんは退院していくため、短期間しか関わらない方も大勢います。
介護施設は一人一人の方一年以上もの間、長くじっくり向き合う形となります。
単に看護師として医学的な知見からケアをするだけでなく、利用者にとって何が一番いいのかを、家族と一緒に考えていくことにもなります。
長く向き合う利用者とは、人間関係が構築され、思い入れも強くなっていきます。
自分一人にかかる責任の重さが違う
医療機関の場合は、医師や他の看護師たちも多数勤務しているため、判断や処置について周囲に相談しやすい環境です。
しかし、介護施設で働く場合、医師や看護師数が少なく、自分一人で判断しなければならないケースも多くなります。
介護士たちは医療の専門的知識やスキルは持ち合わせていませんので、いざというときに看護師をとても頼りにしているでしょう。
利用者が急変したとき、医療的なケアが必要なとき、相談できる人がおらず不安に感じる看護師もいます。
業務の負担が違う
一人にかかる責任の重さがある一方で、業務の負担は病院に比べて軽い傾向に。
介護施設にいるのは、緊急的な医療処置が必要な方ではなく、症状が比較的安定している方がメインになります。
日々の業務は対象者の健康管理や服薬指導、見守りといったものが多いため、病院に比べるとゆったりしていると言えるでしょう。
働く時間帯が違う
病院の看護師は、病棟勤務の場合に夜勤を避けて通ることは難しくなります。
非常に不規則な勤務形態で、体調管理や家庭との両立も大変でしょう。
一方、介護施設の看護師は夜勤やオンコールがないことも多いです。
施設によっても異なりますが、夕方5時くらいで帰宅できるケースもあり、オンコールがあっても月に数回程度という施設も少なくありません。
病院と違って急変が発生しにくかったり、夜間帯は介護士がついていてくれたりといった理由からです。
給与が違う
気になる給与ですが、看護師の月の給与相場は基本給のみだと20~25万円ほど。
介護施設と病院に大きな差はありません。
ただし、看護師は夜勤回数や各種手当によって大きく変わるため、介護施設で夜勤やオンコールがない場合は、病院勤務の看護師に比べると低くなる傾向にあります。
総合病院など忙しい職場に比べると残業も少ないため、年収で比較すると数十万円ほどの差がでる可能性もあるでしょう。
待遇や福利厚生が違う
待遇や福利厚生の違いもあり、病院の方が恵まれているケースが多いです。
介護施設が属する介護業界は、業界全体として待遇や福利厚生の魅力は少なく、看護師であっても同じです。
病院の方が、医療費補助や住宅手当などお金にかかわる福利厚生が多くあり、退職金の水準も高めです。
特に、総合病院や大学病院など規模が大きい病院で看護師として働く場合は顕著です。
介護施設で働く看護師の悩み
ここからは、「本当に介護施設に転職するのがいいのか分からない。」と悩む方に向けて、介護施設で働いた経験のある看護師の悩みをまとめて紹介します。
とにかく看護師を頼ってくる
医療知識やスキルがあり、医療行為ができる国家資格保有者である看護師は、介護施設の職員たちから頼りにされることが多くなります。
看護師の役割としては当然ではあるものの、看護師でなくても判断できることまで聞いてくる職員に困る場合もあります。
看護師は看護師の業務がありますので、なんでもかんでも頼られると不満に感じるようです。
知識がない介護士が勝手な判断をしてしまう
反対に、看護師を通さず勝手な判断をする介護士に悩みを抱える人もいます。
医療的な知見が必要なことは介護士では判断できませんが、これまでの経験から「大丈夫だろう。」と処置してしまうケースもあるのです。
看護師と介護士の業務範囲が曖昧になりやすいのは介護施設の難しいところです。
看護師の人数が少ないため気をつかう
圧倒的に介護士数が多い介護施設では、看護師は少数派になります。
中には「介護士が偉そう」「専門知識がないのに上から目線」など、介護士に対する不満を感じる人もいます。
看護師の人数が少ないことで、多数派である介護士に気をつかうといった声もよく聞かれます。
医学的知見からのアドバイスを介護士に理解してもらえない
看護師として医学的知見からアドバイスしても、専門的な知識を備えていない介護士が理解してくれない悩みもあります。
病院勤務の場合は周囲の看護師たちも同じ知識を持ち合わせているため、理解を得るのは容易ですが、そもそも分野が異なる介護士に理解させるのは難しいと言えます。
ただ、職員同士の信頼関係が成り立っている介護施設では、看護師のアドバイスをきちんと受け入れてくれる介護士がほとんどです。
お互いの業務に理解がないとストレスに感じる
ここまでの介護施設で働く看護師の悩みを見てみると、介護士に対しての不満が大半を占めています。
病院に比べてワークライフバランスが保ちやすい介護施設では、働き方そのものよりも、人間関係にスポットがあたりやすい傾向にあるのでしょう。
看護師が介護士に不満を感じる一方で、介護士が看護師に不満を持つケースも多々見られます。
お互いの立場に立って業務を理解する「思いやりの心」が大切と言えますね。
介護施設で看護師として働いてよかったこと
介護施設で働く看護師には人間関係を中心とした悩みもありますが、「介護施設で働いていて良かった!」と感じる機会も多数あります。
ここでは、看護師が介護施設に転職するメリットを紹介します。
規則的な勤務形態で体が楽
夜勤やオンコール、残業が少なめであることから、規則的な働き方ができます。
病院で働く看護師たちは不規則な勤務形態で睡眠不足、体がボロボロといった方も多いですが、介護施設に転職すれば軽減されます。
せっかく看護師になっても、体を壊して全く別の仕事に就く人もいます。
活かせるスキルがあるなら、まずは環境を変えて看護師として働く方がいいでしょう。
慌ただしい業務や緊張感から解放される
病院は人の出入りが激しく、とにかく慌ただしく毎日を過ごします。
スピーディーかつ正確な業務が求められ、独特の緊張感があり、職場の雰囲気もぴりっとしています。
介護施設は利用者の方の生活の場であることから、朗らかでゆったりした空間を提供することが基本。
利用者の方のペースにあわせて丁寧にサポートしたい看護師に適しています。
育休明けでも復帰しやすい
看護師の大半が女性ですから、出産で職場離脱を余儀なくされる方は多いですよね。
「子供が小学生に入るまでは…。」など、一旦退職して長めのブランクを設けた方は、復帰後についていけるかがネックになります。
医療現場は日々新しいスキルや知識が求められており、体力のある若手看護師も多数入社しています。
介護施設では最先端の医療技術が求められることはなく、基本的な医療的ケアや健康管理を中心とした業務になるため、復帰に不安がある人でも働きやすいと言えるでしょう。
介護経験のある看護師としてキャリアの幅が広がる
高齢化が進み介護スキルがある人材が求められている中、介護経験をしっかり積んだ看護師の将来性は高いものがあります。
介護業界で働き続けたい場合も、医療業界に戻りたい場合も、介護施設で身に着けたスキルやコミュニケーション能力は活かせます。
キャリアの幅が広がり、選べる立場になります。
病院より介護施設で働く方が向いている看護師の特徴は?
病院勤務か介護施設勤務かを迷う方は、自身の希望や適性とあわせて判断してみてください。
以下、病院と介護施設、それぞれにの勤務が向いている方の特徴を紹介します。
(病院より介護施設で働く方が向いている方)
- ベテラン看護師
- ワークライフバランスを保ちたい
- 一人一人の利用者とじっくり向き合いたい
- ブランク明けで復帰に不安がある
- 異なる職種の人でもうまくやっていける
- 一人で判断することができる
- 病院独特の緊張感に疲れた
(介護施設より病院で働く方が向いている方)
- 最先端医療を学びたい
- 仲間は同じ職種の方が安心
- バリバリ稼ぎたい
- 待遇や福利厚生に期待する
- 介護業務が好きではない
- スピード感のある現場で働きたい
介護施設に看護師として転職する際の注意点
介護施設で働くことに適性がありそうだと判断したら、実際の転職活動に移っていきますが、注意点もあります。
看護師はどこも人手不足で比較的採用されやすいですが、実際に働いてみて「こんなはずではなかった!」と後悔しないようにしたいもの。
ここでは、転職活動における注意点や確認事項を紹介します。
夜勤やオンコールの有無
夜勤が当たり前におこなわれる病院より機会は減るものの、介護施設でも夜勤やオンコールが必要とされる場合もあります。
施設ごとに異なるため、転職前にしっかり確認しておきましょう。
特に、病院の看護師を勤務の不規則さがネックとなって辞めた方は、大切なポイントとなります。
看護師の人数
施設全体の職員数だけでなく、稼働している看護師の人数も確認しておきましょう。
看護師は女性が多く、育休中の方もいますから、実際に勤務している看護師を聞いておく方がいいです。
看護師数が少ないほど、自分一人にかかる負担が大きくなったり、休みが取りにくくなったりします。
介護業務も多くなる可能性
看護師と介護士の職域は本来異なるものですが、共通点も多くあります。
介護施設で働く看護師の場合は、その側面が大きくなる可能性があるでしょう。
規模が小さい施設の場合は、看護師と介護士との日常業務はほとんど似ているというケースも少なくありません。
「看護師として転職したのに介護士と同じ業務ばかりおこなうのは納得できない。」
と不満をもつ看護師もいます。
看護師としての業務がどの程度あるのかを、面接などで聞いておきましょう。
介護施設は事前に見学させてもらうといい
介護施設は施設ごとに雰囲気や労働環境が大きく異なります。
病院に比べて閉鎖的な施設もあるため、実際に訪問してみることをおすすめします。
介護施設では利用者に向けて見学をおこなっているため、柔軟に対応してくれることが多いです。
施設見学が可能かどうかは、募集要項に書いてある場合もありますが、そうでなくても応募時に聞いてみるといいでしょう。
給与ダウンはある程度許容すべき
病院から介護施設に転職する場合は、給与が下がることはある程度許容しましょう。
夜勤や残業が少ない分、給与ダウンは仕方がありません。
病院と同程度の給与を確保したいなら、夜勤やオンコールが月に何回もあり、加算手当を受け取れる介護施設を選びましょう。
看護師数は病院だけでなく介護施設でも不足していますから、「看護師がきてくれるなら高い給与もだしたい!」と思っている施設もあります。
そうした施設を選ぶことで、給与ダウンを回避できるでしょう。
転職活動は転職エージェントを利用すべき
看護師の転職は転職エージェントの利用が主流になりつつあります。
プロの力を借りた方が転職活動がスムーズですし、利用料金などはかからないためリスクがないからです。
需要が大きい看護師は、看護師に特化したエージェントも多数ありますし、医療業界や介護業界に詳しいコンサルタントが在籍しています。
業界事情や、病院看護師との違いなど、プロならではの視点でアドバイスしてくれるでしょう。
給与や残業など、「面接で聞きたいけど聞きにくい」点も事前に確認できるため、転職後のギャップを減らし転職失敗を回避できます。
最後に
いかがでしたか?今回は、「看護師が介護施設に転職すること」にフォーカスしてお伝えしました。
看護師の働く場所は病院だけが選択肢ではありません。
自身の価値観や性格と照らし合わせ、介護施設で働くことも可能性の1つとして捉えてみてはいかがでしょうか。