美味しい食事を提供し、人々を笑顔にする夢のある職業が調理師です。
自身の腕一つで高収入を稼ぐことも可能ですから、転職して調理師になりたいと感じる人もいるでしょう。
しかし、すでに社会人になった今から調理師に転職することは可能なのでしょうか。
学生時代の進路選択を間違えたことを後悔するしかないのでしょうか。
そこで今回は、社会人から調理師に転職したい人に向けて、転職可能性や転職方法、費用などについて紹介します。
社会人から調理師に転職することは可能なの?
調理師を名乗るには調理師免許が必要ですが、調理師免許は社会人になってからでも取得できるものなのでしょうか。
一般的には、学生の頃から料理人になる夢を持ち、調理師学校に進学して免許取得、就職へという流れがあるイメージを持たれますよね。
実は、社会人になってからでも調理師免許を取得することが可能で、全く別の職種から調理師へ転職する人もいます。
現在仕事をしている場合でも、調理師専門学校には社会人向けコースもあり、しっかり学ぶことができます。
欲しいのは調理師免許?それとも調理に関わる仕事?
特定の食材調理をするケースを除き、調理の仕事自体には調理師免許がなくても携わることができます。
資格がどうより、腕がものを言う世界ですから、免許取得がゴールではないことは確かです。
ただし、転職に際しては、調理師免許が応募条件となっている求人も多く見られます。
転職先の選択肢を広げるという意味では免許があった方がいいでしょう。
今の職場で納得できる仕事をさせてもらっており、特に免許が必要ではない場合は、取得のための費用や時間がかかることも考慮してよく考える必要もあります。
何のために調理師免許を取得するのか、目的意識を持って取り組むようにしましょう。
転職希望者が気になる免許取得費用や捻出方法
調理師への転職希望者が気になるのは、調理師免許の取得費用や捻出方法でしょう。
ここからは、調理師学校の学費や生活費など、転職に際して必要になる費用面について解説していきます。
調理師免許の学費はいくらかかる?
年数や学費、カリキュラムなどは、調理師学校によってさまざまです。
資料請求や説明会の参加などを通じてよく比較して、最適な学校を見つけるようにしましょう。
全体的に見ると、夜間コースの1年~1年半で、学費は120~180万円が相場です。
学費だけでなく、学校に通っている間の生活費もかかります。
仕事をしながら通うかによっても大きく変わってきますので、金銭面はよく計画を立てておきましょう。
転職活動費用で数十万円かかることも
転職活動には交通費やスーツ代のほか、遠方への転職であれば宿泊費や食費もかかります。
調理師の場合は競争が激しい都会で経験を積みたい方も多いため、意外と活動費用がかかることがあります。
場合によっては転職活動費用だけで数十万かかることも考えておきましょう。
調理師への転職は、免許取得にかかる費用だけでなく、その後の転職まで見据えて資金を用意しておくことが大切です。
仕事と学校を両立させる
調理師学校の中には、社会人や大学生向けコースとして、夜間のカリキュラムを組んでいる場合があります。
授業開始時間は18時前後ですので、昼間の仕事をしている方でも通える時間帯です。
仕事で疲れた後に学校に通うのは大変ですが、夢のためなら頑張れる方も多いでしょう。
仕事をすることで生活費を稼ぐことができますし、遊びに行く時間もないため稼いだお金の残りを学費に充てることもできます。
生活面での不安もなく、自分で稼いだお金で学校に通うことができるため、家族からの納得も得やすい方法と言えるでしょう。
独学ではなく学校に通うことのいい点は、じっくり学べるということの他に、卒業と同時に調理師免許を取得できることです。
真面目に通って専門課程を履修すれば、調理師試験を受けることなく免許取得となるため、通学を選ぶ方も多くいます。
集中的に働き学費と生活費を貯めてから
勤務時間帯が不規則な仕事をしている場合など、仕事と学校との両立が難しい場合もあります。
その場合は、集中的に働いて、学費と学校に通っている間の生活費を貯めて、一旦仕事を辞めてから学校に通い始める方法もあります。
調理師学校卒業と同時に必ず就職できる保障がないためリスクの高い方法ですから、年齢が若くてやり直しがききやすい、実家や配偶者を頼れる状況である方などに限定されます。
とはいえ、学校時間以外は飲食店のアルバイトで経験を積むことも可能になりますので、本気で調理師を目指す方なら選択肢の1つとして考えてみてもいいでしょう。
専門実践教育訓練給付金を利用する
独学ではなく、しっかりと学校に通って学びたい方は、社会人になってから調理師を目指す人だからこそ利用できる制度として、雇用保険加入者を対象とした「専門実践教育訓練給付金」があります。
厚生労働省が指定した講座を受講した場合に、年間上限40万円として、学費の50%の援助を受けられる制度です。
高額な講座費用支払いの大きな助けになりますし、返還義務もありませんので、条件に該当する場合は利用を検討しましょう。
受給にあたって要件や事前手続きが必要になりますので、学校に通い始める前に必ずハローワークに詳細を確認、相談しましょう。
参照:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077164.html
独学で調理師免許を取得する
学校に通わず調理師免許を取得する方法もあります。
学費がかかりませんので、もっとも低予算で免許を取得できる方法だと言えます。
受験料6,300円(東京都の場合)と、勉強に必要なテキスト代、受験会場までの交通費などで済みます。
調理師試験の受験資格は、中学校以上の卒業と、実務経験2年以上が必要です。
2年以上となるとハードルが高そうですが、実はフルタイム勤務や正社員である必要はありません。
時間が決まっているパートやアルバイトでも、一定の勤務日数と時間を満たすことで受験資格となります。
飲食店のアルバイト経験などがあれば、いつのまにか受験要件に達しているケースも多いものです。
実務経験証明書の提出を求められますので、実務経験とみなされる経験があるかを確認すれば、独学取得の道も見えてきます。
参照:調理師資格指導協会
http://chorishi.jp/hint/column/27/
調理師免許があると転職できる場所
調理師免許を取得すると、どんな場所への転職可能性が広がるのでしょうか。
ここからは、調理師の転職先を紹介します。
必ずしも免許が求められる場所ばかりではありませんが、免許保持者の方が有利に働きやすい転職先となります。
レストランや料理屋
調理師といえば真っ先に考えられるのが、レストランや料理屋で調理に携わることです。
先輩調理師も在籍しており、技を盗み腕を磨く場所としては最適と言えるでしょう。
ホテルや結婚式場、旅館内の調理場で働くこともあります。
ただし、味のいい料理を提供することが大前提のこの場所では、調理師免許があったからと言ってすぐにメイン調理をさせてはもらえません。
調理場の雑用などをおこないながら、何年もの修行を経てようやく一人前となる厳しい世界です。
調理師への転職希望者が夢を見やすい転職先ではありますが、挫折する人も多いという点は覚悟しておきましょう。
学校
学校給食も調理師の転職先として人気が高い場所です。
人気の理由は、子どもたちの活動時間に合わせ、土日休みや定時帰りが叶うなど、規則的な働き方ができるからです。
長期休暇もあるため、家庭を持っている方からの指名率も高い場所です。
食育を通じて子どもたちの成長に関わることができるのも魅力ですね。
学校給食と言うと、公務員試験を受けなければならないイメージですが、最近は学校給食を民間委託するケースが増えています。
民間委託している学校の場合は、給食会社に転職することになり、公務員である必要はありません。
地域や希望の学校によっても異なりますので、公務員でないとだめかどうかは事前に確認しておきましょう。
病院、介護施設
病院や介護施設にも調理師の活躍場所があります。
栄養士などの専門職と連携し、利用者の年齢や体調にあった食事を提供する仕事で、社会貢献性を感じやすい場所の1つです。
味だけでなく、咀嚼のしやすさや健康面に配慮した調理を求められますので、レストランなどとはまた違った難しさがあります。
病院や介護施設の場合、朝昼晩と食事の提供機会があるため、勤務もシフト制で比較的不規則になりやすいと言えます。
弁当宅配サービス事業者
高齢者などを対象として弁当宅配サービスも、近年ニーズが増えている分野です。
必ずしも調理師免許が求められるわけではありませんが、転職においては免許取得者の方が有利に働きます。
高齢者がバランスの取れた食事を自宅にいながら口にすることができ、地域への貢献度も高い仕事と言えるでしょう。
大企業の社員食堂
大企業内にある社員食堂も、調理師の転職先として密かに人気が高い場所となっています。
きれいなオフィスビル内で働くことができ、福利厚生などにも比較的恵まれています。
修行という名のサービス残業もありませんので、家庭との両立がしやすく、女性調理師からの人気もあります。
調理師は楽じゃない!大変なことは何?
調理師が所属する飲食サービス業界では、特に若年者層の離職率が高い傾向にある大変な仕事です。
たとえば、以下の理由で辞めてしまう人が多くいます。
- 賃金が安い
- 肉体労働できつい
- 朝が早い
- 拘束時間が長い
- 忙しい時間に波がある
- 衛生管理が大変
一方で、腕を磨いて認められればオリジナルの料理を提供することもでき、お客様の笑顔を見られる喜びもあります。
将来は独立し、自身のお店を持つことも可能です。
社会人になってから調理師へ転職を考えるということは、どうしても捨てられない夢があったり、他の仕事を経験することで調理師の魅力を再認識したりといった理由があるのでしょう。
夢と現実とをどう捉えるかによって転職成功を左右します。
調理師の魅力だけでなく、現実問題として何が大変になりそうなのかをよくイメージしておくようにしましょう。
調理師の転職先を探す方法
調理師として転職するにはどんな方法を利用すればいいのでしょうか。
ここからは、調理師の転職活動方法を紹介します。
調理師学校の就職支援制度を利用する
調理師学校に通う場合は、学校の就職支援を受けられる場合があります。
学校の提携先などに卒業と同時に就職できればスムーズです。
しかし、社会人の場合は必ずしも転職先を紹介されるとも限りません。
転職先紹介制度があるのかをよく調べておくことと、自分自身で転職活動する可能性も視野に入れておくことが大切です。
ハローワークを利用する
ハローワークにも、調理師免許を活かせる飲食店やサービス業の求人が多数掲載されています。
ハローワークを利用すると、地元の求人を探しやすいため、自宅から通いやすい場所にある企業や店舗などへの転職を目指す方には向いています。
ただし、大手より中小企業の求人が中心になるため、規模が大きい企業や飲食店への転職を考えている方は、他の方法と併用されるといいでしょう。
希望のお店に弟子入りする
どうしても働きたい飲食店があるなら、そこで弟子入りを希望することも1つです。
弟子入りを受けつけてくれるか、いつ一人立ちできるかは全く分からない先の見えない方法ではありますが、覚悟を持って選ぶ方もいます。
調理師仲間のツテを頼る
調理師学校に通うと、仲間や講師のツテで就職先を紹介してもらえるケースもあります。
誰でにも当てはまる方法ではありませんが、縁があれば利用するのもいいでしょう。
口利きがあれば内定をもらいやすく、事前に内情を聞いておくこともできます。
ただし、知り合いのツテは、不満があっても辞めにくいというデメリットがあるため慎重になる必要はあります。
よくリサーチしてから転職を決めましょう。
転職エージェントを利用する
転職エージェントを利用すると、プロの目線で適切な求人を探し出し、紹介してくれます。
応募書類の書き方や面接対策などもおこなってくれるため、内定確率がぐっと高まる方法になります。
独自の情報網を利用して企業内情を調べてくれるため、転職後のギャップも感じにくいでしょう。
最後に
いかがでしたか?今回は、社会人から調理師への転職について紹介しました。
社会人からでも調理師に転職できる可能性は十分あります。
ただし、大変な点も多い調理師の仕事ですから、転職した後のことまでよく考え、後悔のない転職を目指しましょう。