転職が決まり、入社時に必要な書類を用意する段階になって、「身元保証人書類の提出を求められたけどどうすればいいのか?」と悩むことがあります。
会社が決めた基準に該当する人がいなかったり、身元保証人書類を理由に何かトラブルに巻き込まれたりしないかと、不安になることもあるでしょう。
まず安心してほしいのは、転職時に身元保証人を求められることは、一般的には割とあることです。
悪い会社に引っかかっているわけではありませんので、それほど怯える必要はありませんよ。
とはいえ、身元保証人書類の対応についてはいろいろと疑問が尽きないものです。
そこで今回は、転職時に求められる身元保証人書類について、求められる理由やケース別の対処法を紹介します。
目次
転職時に身元保証人が必要になる理由
そもそも会社は、なぜ労働者を雇う際に身元保証人を求めるのでしょうか。
分かりやすいのは、横領や持ち逃げなど、労働者の悪意によって会社が損害を被った場合です。
万が一こうしたことが起きても、身元保証人に損害賠償することで、経営悪化や破たんなどのリスクを回避することができます。
悪意がなく、労働者の重大な過失によって損害を被った場合にも、身元保証人が必要になることもあるでしょう。
また、身元保証人の存在が、労働者に誠実に勤務してもらい、悪質な行為を防ぐ役割も果たします。
労働者からすると、ごく普通に働いてさえいれば、通常身元保証人がでてくることは稀です。
過失の範囲も限られていますので、些細なミスによって損害賠償を求められるわけではありません。
「仕事でミスをしたらどうしよう。親に迷惑をかけるのかな?」などと不安になり過ぎることはないでしょう。
身元保証人が求められることに法的制限はない
身元保証人と聞くと法律で厳格に決められていると思うかもしれませんが、転職時に会社が求めることに法的制限はありません。
労働基準法や労働契約法で定めがあるわけではないのです。
身元保証人を求める会社もあれば、特に求めない会社もあり、対応は異なります。
身元保証人になったからと言って、労働者や身元保証人が即座に損害賠償を求められることもなく、会社側の状況等も踏まえて裁判所が総合的に判断します。
いわゆる借金の保証人とは別ものになりますので、一般的に「絶対に保証人にはなるな!」と言われる借金の保証人とは意味が違うと思っておきましょう。
身元保証期間については、一部例外を除き3年の上限であることや、変更時には企業からの通知の必要性があることなど、責任範囲は限定的となっています。
参照:東京都産業労働局パンフレット
https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/siryo/hikkei_daigaku.html
身元保証人の印鑑が必要になる理由
身元保証人の設定とともに、身元保証人の印鑑を求められるケースもあります。
これは、保証人が架空の人物ではなく、確かに存在していることを示すためです。
印鑑証明書の添付を求められる場合、特に不要な場合など対応は企業によってさまざまですので、「今までそんな証明を求められたことがない!」と、変に疑い過ぎる必要はありません。
一般的には求める企業もあるという程度に覚えておきましょう。
ただ、社員数が極端に少なく、経営実績が不明など、明らかにリスクがあると判断した場合は確認してみることも必要です。
もちろん、そういった企業へは転職すること自体が高いリスクを伴いますから、周囲の人や専門家に相談するなどして冷静な判断が求められます。
ケース別!身元保証人の困った疑問を解決
身元保証人については、個別に状況が異なるため、「私の場合はどうなの?」と気になるでしょう。
ここからは、ケース別に素朴な疑問を解決していきます。
身元保証人が近くに住んでいない場合は?
地元を離れて働いている場合などは、親族たちが皆遠方に暮らしている場合もあるでしょう。
その場合はすぐに署名捺印をもらうことができないため、できれば他の人にしたいと考えるかもしれませんね。
ただし、単純に親族が遠方に暮らしているだけのケースであれば、郵送のやり取りで済みますから、それを理由に身元保証人書類の提出を拒むことは難しいでしょう。
書類提出の期日も考慮し、できるだけ早めに書類準備に取り掛かることが大切です。
身元保証人側の都合で期日を守れなさそうな場合は、早急に人事課に連絡しておきましょう。
身元保証人の条件に当てはまる人がいない場合は?
会社が決めた身元保証人の条件に該当する人がいない場合も困りますよね。
たとえば、「会社員など安定収入がある人」という条件がついている場合もあります。
これは、そもそも就職時の身元保証人は、労働者が企業に損害を与えた場合のリスク管理であることから、損害を補填できない無収入の人では意味が薄くなるからです。
では、自営業やフリーランスの親族や、定年退職後に年金収入しかない親族は身元保証人にならないのでしょうか。
前述したように、会社の身元保証人は法律で義務づけられているものではなく、基準についても会社ごとに異なります。
そのため、会社に確認してみるしか方法はありません。
自営業やフリーランスでも安定収入があればよしとする場合や、年金生活者でも構わないと言ってくれる場合もあります。
近年は働き方が多様化しており、30代以降の転職者であれば親が年金収入しかない場合はごく普通にありますので、収入形態については比較的許容範囲が広いはずです。
友人でも身元保証人になるの?
友人や知人が身元保証人になるかどうかについても、会社の決めた基準によっても異なります。
一般的には親族を指定されることが多いですが、会社によっては友人知人もOKとしています。
会社に確認するしかありませんが、親族が遠方に住んでいるとか、疎遠になっていて連絡を取っていないからといった理由の場合は、友人知人より親族を優先される可能性もあるでしょう。
どうしても親族と連絡を取りたくない人は、転職時にお世話になった人事担当者などに相談してみるのも1つです。
人事課の上司によっては柔軟に対応してくれるケースもあります。
親族が一人もいない場合には採用拒否される?
身元保証人となる親族が一人もいない場合には採用を拒否されるかもしれないと、不安に感じることもあるでしょう。
まず、厚労省の「公正な採用選考の基本」の観点から、親族がいないことを理由に採用を拒否することは、応募者の基本的人権や適性、能力とは別のところにあり、公正性がないと考えられます。
職業安定法でも、募集の際の差別的取り扱いが禁じられていることから、いきなり採用拒否となる可能性は低いと言えるでしょう。
しかし、就業規則や契約時に身元保証人がいることを前提とした採用基準が明記されていた場合などは、必ずしも採用拒否が違法となるとも限りません。
最終的には裁判所の決定に委ねることになるでしょうが、隠しごとをせず、真摯な姿勢で転職に臨んでいたのであれば、労働者の不利になる可能性は低いと考えられます。
転職後の相談も転職エージェントにしよう
転職時に求められる書類や、転職初日の対応など、転職直後の困ったことについても、転職エージェントに相談するといいでしょう。
転職エージェントは転職を支援するだけでなく、転職後のサポートまでおこなってくれます。
数々のトラブル相談経験や、労働に関する豊富な知識をもとに、適切な対応についてアドバイスしてくれるはずです。
最後に
いかがでしたか?今回は、転職時に求められる「身元保証人書類」について、必要な理由やケース別対処法を紹介しました。
身元保証人書類を求められても慌てず、必要に応じて会社の人事担当者に確認を取るなどし、適切な対応をおこないましょう。