不動産業界で住宅販売営業の仕事をしているけれど、とにかくきつくて辞めたい…。
飲食、介護など「きつい」と言われる仕事は多数ありますが、不動産業界の住宅販売営業も、きつい仕事の代表格と言っていいでしょう。
これから不動産業界に転職して住宅販売営業の仕事をしてみたい人、すでに大変な思いをして辞めたいと感じている人は、何がきついのかを整理して押さえておきましょう。
今回は、不動産住宅販売営業のきついところを、仕事のメリットなども含めて紹介します。
目次
不動産住宅販売営業はここがきつい!
不動産住宅販売の営業は一体どんなところがきついのでしょうか。
ノルマが厳しい
多くの場合で歩合制を導入している不動産住宅販売の営業では、ノルマが厳しいことでも知られています。
朝礼で目標契約件数を発表させられ、個人ごとのノルマはグラフ化されて張り出しされることも珍しいことではありません。
契約件数が増えれば社内で持ちあげられますが、1件も売れないと本当に肩身の狭い思いをします。
いわゆる体育会系の上司から大きな声で怒鳴られることもあるでしょう。
精神論を振りかざし、今どき「気合いが足りない」などと言われることすらあります。
もちろん、「それほどたいしたことではない」「ノルマがあることでモチベーションになると感じる」人もいます。
しかし、実際に不動産住宅販売営業の仕事を辞めた人の話を聞くと、ノルマの厳しさを理由に挙げる人が大勢います。
厳しいノルマをモチベーションにし、乗り切れる人の方が少ないと思っておくべきなのかもしれません。
高額商品なので売れない
住宅は、多くの人にとって一生で一番高額な買い物ではないでしょうか。
通常は自身の人生プランにもとづき長期間のローンを組み購入するような代物なので、他業界の営業と比較して「売るためのハードル」が高くなります。
顧客は、少しでも安く、よい物件を購入したいと感じますので、下調べをしっかりおこない、購入決定までは非常に慎重になります。
今はインターネットでさまざまな情報を得られる時代ですから、価格相場や住宅についての知識などを多く兼ね備えています。
そんな見る目をもった顧客を相手にするわけですから、一筋縄ではいきません。
圧倒的な営業力と知識が求められることになるため、実力がない人では生き残ることが難しくなります。
給与が安定しない
住宅販売は数件の契約で数ヶ月生活できると言われるほど、非常に高額の歩合がつくことがあります。
しかし、全く契約が取得できなければ、歩合はなく、ごくわずかな基本給がつくだけです。
給与が非常に不安定になりますので、自身が住宅ローンを抱えている、子どもがいて養育費がかかるなどのご家庭では常にお金の心配をすることになるでしょう。
たとえ爆発的な収入にはならなくても、毎月一定の給与をもらえることのありがたさを実感する人は多くいます。
長残業労働になりがち
不動産住宅販売営業の求人には「残業なし」と書かれているケースが散見されますが、実際は残業のオンパレードです。
企業側からしてみれば「残業はしなくても結果さえ残してくれればよい」と言い分があるかもしれません。
しかし、残業なしで住宅を売ることができる高レベルの人はごくわずかです。
通常は働かなければ成果につながりませんので、自ら残業をすることになり、企業側に文句を言うこともできず苦しむことになります。
休日出勤が発生する
住宅販売の顧客は働いている人になりますので、平日の昼間に営業をかけたり、打ち合わせをしたりすることができません。
平日の夜や土日に呼び出されることがしばしばです。
にもかかわらず、勤務条件に「土日休み」と明記されています。
実際はそう簡単にはいきません。
会社員などを相手にする営業で「当社は土日休みなので…」と言っていては、いつ営業をかければよいのかという話になってしまいます。
住宅販売営業の場合、求人票に書かれている条件と実態は大きく異なると思っておきましょう。
プライベートが削られる
残業や休日出勤が多いため、プライベートの時間が少ないです。
顧客からは営業時間お構いなしに連絡が入りますので、デートや家族と旅行中に仕事をするハメになることもしばしば。
きつい不動産住宅販売の仕事をする中で唯一支えや癒しとなるはずの恋人や家族からも愛想を尽かされ、一番大事なものを失ってしまった人もいます。
きつい仕事を乗り切るためにはがむしゃらさが必要ですが、自分にとって何がもっとも大切にするべきことなのかは、見失わないようにしたいものです。
代わりが誰でもいる
不動産業界は入れ替わりが激しいうえ、そもそも営業という職種自体にその性質があります。
つまり、代わりは誰でもいるということです。
少し成績が下がればすぐ誰かにポジションを奪われ、周囲からは「辞めた方がよいのでは?」といった雰囲気が漂うことになります。
この業界で確固たる地位を得ることは相当に難しいことです。
とはいえ、代わりが誰でもいるということは、退職する段階になればメリットも。
無理やり引き留められたり、自分が辞めることで職場の人に迷惑をかけたりといったことは少ないため、割り切って働ける人にはよいのかもしれません。
職場の雰囲気がピリピリしている
住宅販売の営業部は「個人事業主の集まりのようなもの」と言われることがあります。
営業同士がライバルなので、チームが協力しあって和気あいあいと仕事をするようなことはありません。
常に職場の雰囲気はピリピリしており、悩みを誰かに相談できる環境でもありません。
もちろん、職場の雰囲気は企業や支店ごとに異なるでしょう。
しかし、自分たちの生活が一番大事ですから、どうしても自分が売上をたてることが優先になってしまうことが多く、雰囲気が悪くなりやすいといえます。
教育環境が整っていない
不動産住宅販売営業の求人は「未経験歓迎」と書かれていることが多くあります。
求人を見ると「入社後に学べます」「未経験からスタートして〇〇万円稼ぐ人がいます」など、求職者を安心させる文言が並んでいます。
しかし、大手のホワイト企業を除き、教育環境には期待できません。
「先輩の後姿を見て覚えるのが当たり前」という、昔ならではの考え方を貫く企業もまだまだあります。
「先輩の後姿を見て」といっても、先輩が営業に何度も同行してくれることは少なく、一人でよく分からないまま放り出されることもよくあることです。
営業をしながら2~3年くらいで何となく全体像が見えてきますが、それまでの間にもノルマはありますので、現実的にはそこまでもちません。
1年に満たないうちに離職してしまう人も多数います。
誰かに教えてもらえることは少なく、営業を通じて自分で学びを得ることが基本になるでしょう。
未経験歓迎求人だからといって、未経験者にやさしい業界ではないと心得ておくべきです。
クレームが多い
単純なミスであれば自分の努力や工夫で改善できます。
しかし、不動産業界は性質的にクレームが多いため、営業のストレスは甚大です。
住宅は顧客が毎日過ごす場所ですし、高いお金を払って購入する以上、顧客のこだわりが強くなります。
施工部門の問題であっても、窓口は営業になりますので何かトラブルがあれば営業に連絡がきます。
ただでさえ契約ノルマによるストレスがあるのに、クレーム対応にも追われることになるため、この時点でメンタルのダメージを受けて辞めてしまう人が少なくありません。
不動産住宅営業で多いクレームは?
ここで、不動産住宅営業の中でありがちなクレームについて触れます。
以下のクレームが普通にあり得ることを自覚し、万全の準備や対策をできる人でなければ住宅営業はやめておくべきかもしれません。
- ローン関係
- 工事の遅れや設備不備に関すること
- 顧客のイメージとの相違
- 登記手続きの不備
- 物件の周辺環境に対するクレーム
こうしたクレームは、主には顧客への説明不足だけでなく、営業自身の力ではどうすることもできない要素からトラブルに発展することがあります。
住宅には説明項目が非常に多数あり、営業も細心の注意を払って説明しますが、顧客によっては「聞いていない!」と怒り出す人もいます。
理不尽に感じることが多いかもしれませんが、住宅営業でクレームをゼロにすることは相当に難しいものがあります。
地味な仕事も多数ある
不動産住宅販売の仕事と聞くと、展示会などに訪れた人たちに家のすばらしさを説明し、気に入れば契約してもらうといったイメージを持たれる方がいるかもしれません。
人によっては、華やかでかっこいい仕事だと感じるようです。
展示会営業は業務のごく一部ですが、当然それだけではありません。
賃貸マンションに住む人の自宅を1軒ずつ飛び込みでまわる仕事や、1日何百件も電話営業をする、ひたすらチラシを投函するような仕事もあります。
売って終わりではありませんので、契約や引き渡しの手続きや書類作成、引き渡し後のクレーム対応まで、顧客との付き合いは長く続きます。
想像以上にさまざまな仕事があり、地味な仕事も多数あります。
華やかな世界を想像しているとギャップを感じやすくなります。
地域ごとの差や競合が激しい
住宅は地域によって売りやすさが大きく変わります。
転職前に住宅業界のことを調べておいて勝算があったとしても、実際に働き始めると地域独特の要素が絡みなかなか売れないことがあります。
顧客は少しでも安く良い家を作ってくれる業者を比較しながら探しているため、営業によっては他者に顧客が流れてしまうこともあるでしょう。
1件が貴重な商品となるため、競合も激しくなります。
不動産住宅販売営業の仕事に転職する人が多い理由
不動産住宅販売営業のきつさを分かっている人は多いのではないでしょうか。
転職前の時点で周囲に相談して「きついからやめておくべき」と言われることもあるはずです。
にもかかわらず、不動産住宅販売営業の仕事に転職する人は少なくありません。
住宅営業のきつさに気づいていながら転職してしまう理由は何でしょうか。
稼げる
きつい代わりに、成功すれば圧倒的に稼げるのが不動産住宅販売の営業です。
成果を挙げている人の中では1000万円以上稼ぐ人もいます。
同世代と比較したとき、一番稼げる仕事のひとつと言っても過言ではありません。
現役の住宅営業に話を聞くと、「同級生で自分より稼いでいる会社員は少ない」と言うことがあるほどです。
基本的には学歴を問わない企業が多いこの業界においてここまで稼げるのは「営業だからこそ」といえるでしょう。
「学歴はないけれど一発逆転を狙いたい」「安定は求めないからとにかくチャレンジしたい」という方にはおすすめできる仕事です。
実力を試せる
他業界で営業をやっており結果を残してきた人は、自分の実力がどこまで通用するのか試したくなることがあります。
営業の実力を知るにはやはり高額商品を売ることです。
その意味では、超高額商品である住宅販売は営業職の目指すべきものかもしれません。
真の実力があれば稼ぎに直結しますので、自信がある人には向いているでしょう。
営業力を磨くことができる
ここまでお伝えしたとおり、住宅販売営業の仕事はきついです。
しかし、そこを踏ん張り通すことで営業力がアップすることはあります。
今後も営業職で頑張りたい方は、きつい環境下で力をつけ、他業界の営業に転職する方法もあります。
住宅販売の営業を経験しておくと、他業界で頑張りがききやすくなりますし、起業して自分の力だけで稼ぎたい方にもよいでしょう。
通年募集しており採用されやすい
年齢や学歴などは問わず、常に求人があるのが住宅販売営業です。
求人媒体で住宅販売営業の仕事を見つけることは決して難しくありません。
中には「意欲があればフリーターでも」と書かれた求人もありますので、職歴がないけれど正社員を目指したい方が経験を積むにもよいでしょう。
しかし、多くの人に門戸を開くということは、人手が足りていないこと、人材の使い捨てが発生しやすい状況であるわけです。
労働環境が過酷になりやすい点は理解しておくべきです。
人生の一大イベントに立ち会うことができる
住宅購入は人生の一大イベントです。
顧客の人生プランを聞き、寄り添って一緒に作り上げていく喜びは大きいです。
住宅販売営業はやりがいがある仕事なのです。
しかし、その一瞬の喜びと仕事のきつさを比較したとき、どうしても乖離が生まれてしまうのも特徴です。
やりがいはきれいごとではなく、本当に自分にとって長く仕事を続けていけるほどの大きな要素になるのかは確認しておくべきでしょう。
不動産業界はなくならないので転職に有利?
不動産がなくなることはありませんので、たとえ仕事がきつかったとしても、経験を積めば転職で生きてくる…。
このように言う人は少なくありません。
20代の頃にきつい仕事をしておけば、後々楽になると言う人もいます。
確かに、いったん不動産業界に入ると、職歴として評価され、同じ業界で転職しやすくなります。
しかし、逆の視点からいえば、他の業界では評価されにくいということです。
他業界から不動産業界へ転職して住宅営業の仕事に就くことは十分可能ですが、住宅営業の仕事が他に有利に働くということはあまりありません。
つまり、「将来のために今敢えてきつい仕事を経験しておこう」「いつかの転職のために住宅営業で力をつけておこう」と思っても、役に立たないことが多々あるのです。
もし住宅営業の仕事がきつい、自分には合わないと思ったら、できるだけ早く他業界を含めて転職先を探す方がよいでしょう。
不動産業界での転職を探すのであれば、この業界でやっていく覚悟が必要です。
ノルマに追われて転職活動の時間が持てない方は、転職エージェントなどを利用して効率よく活動するようにしましょう。
不動産住宅販売の営業に転職するべき?
住宅販売の営業職には、きつい部分とやりがいの高い部分とがあります。
どちらも極端なので「ハイリスクハイリターン」の仕事といえるでしょう。
本来であれば、会社員は起業やフリーランスと比較してリスクが少なく安定的な仕事ですが、その中でも住宅販売営業は特殊な部類に入ります。
住宅販売営業の仕事に転職するべきか迷ったとき、きつい部分とやりがいを天秤にかけることになります。
稼ぎやすさなど、どうしてもメリットに目が行きがちですが、きつい部分が大半であることは覚悟しておきましょう。
それでもやってみたいと感じるのであれば、成功できる可能性がゼロではありませんので、誰にとっても必ず悪い仕事とはなりません。
最後に
いかがでしたか?今回は不動産業界の住宅販売営業の仕事について、仕事のきつさを中心に紹介しました。
ノルマや対顧ストレスなど、営業職に仕事のきつさはつきものです。
そのうえ、不動産業界で住宅という高額商品を売る特性上、他業界の営業とは異なる点も多々あります。
「きついと聞くけれど、どの程度なのかよく分からない」と疑問に思う人がいますが、実際に働いた人の話を聞くと、仕事のきつさは高い確率で存在します。
その分成功すればリターンが大きいですが、自身の適性や耐性と比較し、本当に向いている仕事なのかは慎重に考える方がよいでしょう。