近年導入する企業が増えている年俸制ですが、よくわからないまま導入企業を選んで後悔したというケースも見受けられます。

今回は、年俸制の誤解されやすい仕組みと、年俸制を導入する企業を転職先に選ぶときの注意点をご紹介していきます。

知っておきたい年俸制の仕組み

年俸制を導入している企業を転職先に選ぶときは、まずは自分自身が年俸制について知っておく必要があります。

誤解されやすい点をまとめましたのでご紹介します。

年俸制だからと言って1年に1回の支払いではない

年俸制と聞くと、1年に1回まとめて給与の振り込みがあると勘違いしてしまいがちですが、支払い自体は年俸を12で割った金額が毎月振り込まれる、または給与と賞与に分散して毎月給与プラス年2回の賞与という形などもあります。

1年に1回しか支払われないわけではありませんから安心しましょう。

労働基準法では毎月払いの原則が定められていますから、年俸制とは言っても、一般的な給与形態とさほど大きな違いは感じないでしょう。

年俸に割増賃金が含まれていてもそれ以上の残業は支払われる

年俸制の場合、年俸が毎月の残業を見越して決定されている場合があります。

固定残業代やみなし残業と呼ばれる制度と同じ考え方になりますので、当然内訳を明示することが必要になります。

「年俸〇〇万円のうち、〇〇時間分、○○万円の残業手当を含む」といった示し方です。

また、あらかじめ想定していた残業時間を超えた場合には、その分の手当は当然つきます。

逆に、残業する必要がなかったとしても、あらかじめ明示された金額をカットすることはできません。

どれだけ残業しても決められて手当しかつけなくては良いわけではないのですが、勘違いしている企業もありますから覚えておきましょう。

仕組みはわかっても覚悟が必要な年俸制。転職先として選ぶときの注意とは?

年俸制を導入している企業を転職先として選ぶ場合には、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?

期間中はどれだけ頑張っても給与が上がらない

年俸制は1年に1回会社と労働者の話し合いの元、1年の収入を決定する仕組みですから、1年の間に会社の業績が急に上がった、大手取引先と契約が決まって会社に貢献した、という場合でも、給与が上がらないことが予想されます。

当然次の年俸には反映されるのでしょうが、1年もの間結果が給与に反映されないということは覚悟しておく必要があります。

1年の年収があらかじめ決まっているということは、ローンの支払いなど家計の計画が立てやすいというメリットはありますが、モチベーションのアップにはつながりにくいという側面もあるのです。

他にも、仕事が大変であと1年だけ頑張ったらもう辞めようと思っても、今の頑張りを享受できるのは次回の年俸更新時のため、なかなか辞めることができないといったことも起こり得ます。

世間がボーナスに浮かれているときに寂しい思いをすることも

年俸制では、前述したように年収を各月の給与のみの支払に分散させる場合と、給与と賞与に分散させる場合がありますが、給与のみの支払というケースが多いです。

年俸制には賞与が出ないと言われるのはそれが理由です。

年収ベースで見れば多くても、賞与というご褒美的なものがないというのはときに寂しい思いをすることがあります。

世間でボーナスの話題が出るたびに、自分には関係のないことだと割り切る必要があるというわけです。

年俸制を導入している企業によっても違いがありますので、転職前にそのあたりも確認しておくと、入社してからのギャップを感じずに済むでしょう。

年俸制って成果主義ということ

年俸制は正しい方法で導入されてさえいれば、労働者にとって大きなデメリットはありません。

しかし、基本的には年俸制を導入する企業は成果主義だということです。

しっかりと仕事で成果を挙げることができなければ、次回の年俸が低くなってしまうこともあるのです。

真面目に働いていさえすれば毎年少しずつ昇給していくという安心感はありません。

その代わりに貢献度が高ければ、昇給で得られる金額以上の収入を得る可能性もあります。

成果主義の外資系などに多い年俸制ですが、自分の適性に合っているかどうかは考える必要があります。

やる気と向上心がない人では、会社に寄生することができない年俸制はデメリットになるかもしれません。

評価の基準が曖昧にされることもある

会社の給与規則に基づいて、勤続年数などで毎年昇給していく仕組みであれば分かりやすいですが、年俸制は評価の基準が分かりにくいという場合があります。

もっとも、会社も何となく年俸を決めるわけではなく、基となる評価基準はあるはずです。

しかし、勤続年数などのわかりやすいものが基準にはならないため、受け取り方によっては不公平に感じるケースもでてきてしまいます。

自分では成果を挙げたと思っていても、会社側に評価の裁量権がありますから、次回の年俸に反映されないこともあります。

その場合、不満が残ってもよほど明らかな不正でもなければ訴えることも難しいです。

年俸を決定する際に合意に至らず退社するケースもありますから、それなりの覚悟は必要と言えます。

実は理解していない企業もないから注意

年俸制自体はもちろん違法ではなく、近年は導入する企業も増えてきていると言われています。

しかし、企業の人事が年俸制についてしっかりと理解していないケースもあり、知らないうちに法違反を犯してしまう企業もあります。

その場合は、違反が発覚するまでは労働者にとって不利益なことが起きますから、事前にしっかりと確認することが大切です。

年俸制を導入している企業に転職する場合には、求人票の記載から実際の運用状況まで不可解なことがないか調べておきましょう。

面倒なようですが、給与に関しては入社してからトラブルになることも多く、不可解な運用をしている企業は絶対に避けるべきです。

事前確認の方法としては、転職エージェントを介して聞いてもらうのがおすすめです。

内定前に給与のことを聞くのは気が引けるという人が多く、曖昧にしてしまって後悔するケースもあるからです。

そもそも転職エージェントは、給与交渉なども行ってくれる転職支援のプロですから、当然年俸制についても理解しており、うまく相手企業に確認するスキルも持っています。

無料で利用できますから転職エージェントをぜひ活用してみてください。

最後に

いかがでしたか?今回は、年俸制の仕組みと、転職先に年俸制企業を選ぶときの注意点をご紹介しました。

年俸制で納得のいく賃金を得るには、自分自身が年俸制について知っておくことと、正しい運用がされている企業を選ぶことが大切です。

ぜひ参考にしてください。