誰もがうらやむ大企業での仕事は楽しいことばかりではありません。

組織の一兵として働くことに疲れ、裁量度合が広く責任ある仕事を任せてもらえる中小企業への転職を考えているという人も多くいるでしょう。

ただ、大企業から中小企業への転職は思っているより簡単にはいかないものです。

応募書類の段階で不採用になってしまうこともありますから、しっかりと練った応募書類を作成したいものです。

今回は、大企業から中小企業への転職で失敗しやすい点を意識しつつ、魅力的な応募書類にするために盛り込みたい内容をお伝えしていきます。

実績は大企業の知名度だけで得たものではないことをアピール

大企業では仕事をする上で知名度を活かした取引や営業ができます。

例えば大企業の営業マンが「〇〇会社の営業です」と言えば、同じような商品を売る中小企業の営業マンよりも簡単に信頼を得て契約を取ることができるのです。

この知名度を後ろ盾に仕事をしてきた大企業出身者は自分ではそれに気づいておらず、自分個人の能力の高さで売り上げを挙げてきたと思ってしまうことがあります。

大企業出身者が中小企業に転職してつまづいてしまうポイントの一つがここにあります。

こういった大企業出身者の状況を知っている中小企業の人事担当者は、大企業出身者を「本当に大丈夫か?」と不安に思うことが少なくないのです。

これを払拭するには、大企業の看板を一度外して考えたときに、個人としてどんなスキルや能力があるのかという視点で経歴を整理していかなくてはなりません。

いくら「契約件数が〇〇件ありました。」と実績だけ書いても、大企業だから当たり前だよねと思われてしまいます。

この場合は、自分なりの苦労や努力が見えるエピソードを盛り込んで実績をアピールしていくようにします。

そうすることで「大企業の看板に依存することなく自分なりの工夫を行っていける人物」という風に思ってもらうことができます。

<例>「何度も店舗に足を運ぶ中でお客様のお話を聞くことを意識し、ニーズに沿った提案を心がけていました。

その結果『君だからお願いするよ。』とお客様に言ってもらえ契約につながることが多くなり、契約件数〇〇件という社内順位トップになることができました。」

中小企業にもなじむ人柄が感じられるように

大企業の看板に頼らない個人的な能力の有無とともに、中小企業の人事担当者が気にするのは周りの職員とうまくやれるのかという点です。

大企業出身者でたまにいるのが、自分を過大評価していてどこか上から目線で周囲と接する、大企業と中小企業では勝手が違うにもかかわらず「前の会社ではこうだった」と大企業だからできたことなどを言ったりする人です。

こういう人は周囲から孤立しがちになり、人間関係が原因で辞めてしまったりします。

ですから応募書類では「謙虚な姿勢があって周囲ともうまくやっていける人物である」ということが分かるようなエピソードや意欲を盛り込むと良いです。

<例>「前職ではチームのムードメーカーになるよう常に笑顔で仕事をすることを心がけていました。」

「年齢関係なく色々なことを吸収したいという想いがあったので、周囲と積極的にコミュニケーションを取って学ばせてもらうことが多くありました。」

20代の若手であれば社員研修などの内容も盛り込もう

大企業はやはり教育体制が整っていて社員研修などにも力を入れています。

若手、中堅、管理職クラスとそれぞれに研修がありますが、やはり入社して数年以内の若手向け社員研修にはかなり力を入れています。

これは新卒で中小企業に就職した人にはない強みで、経歴が短い若手であっても社員研修で何を学んだのかという点を盛り込むとアピールになるでしょう。

大企業に就職したけれど早めに中小企業への転職を考えているという若手の方は、職務経歴書に書くことがあまりなくて困るという人も多いですから、担当業務だけでなく研修についても一つのスキルとして書いてみましょう。

専門性よりも職務領域の広さをアピール

業務担当が明確にされやすい大企業とは違い、中小企業では一から十まで一人で任されることも多く、担当というよりは「その人ありき」の仕事の進め方になります。

つまり、専門性よりも幅広い仕事ができるということが評価される傾向にあるのです。

大企業出身者で「自分の強みが明確に分からない」という人がいれば、異動や担当替えなどで様々な業務を経験してきたということかもしれません。

特にこれ!と言えるものがなくても、幅広い業務を担当してきたことは中小企業では活きてきます。

応募書類の中にもやれる仕事の幅広さが分かるよう、応募先で活かせそうなことなら小さなことであっても盛り込むようにしましょう。

退職理由は特に注意が必要

大企業から中小企業への転職では、退職理由は重要なポイントになります。

なぜなら多くの中小企業では「大企業の方がいろいろ良い面が大きいのになぜわざわざ転職するの?」と考え、人間関係や仕事のきつさに耐えられなかったのではないか等、マイナスな退職理由を予想するからです。

中小企業の人事担当者の不安を払拭するにはいわゆる「前向きな退職理由」が必要になりますが、例えば前向きな退職理由としてよく言われる「キャリアアップのため」というのは、大企業から中小企業への転職ではなかなか通用しません。

教育面や携われる仕事のスケールの大きさなどを考えても、大企業から中小企業へ転職してキャリアアップというのは違和感を覚える人事担当者も少なくないのです。

ここでは志望動機にも通ずる、中小企業の魅力について考えてみましょう。

退職理由と志望動機は別ものですが、2つにはつながりと一貫性がある必要があります。

中小企業の魅力としては、例えば規模が小さい中小企業であれば裁量度合も大きく自分の仕事が会社経営に与える影響が多くなります。

また、大企業であれば経験を積んで昇級試験があってやっと係長クラスということが一般的ですが、中小企業であれば努力次第でいきなり責任あるポジションを任される可能性もあります。

他には前述したように、幅広い業務に携われるという点も魅力です。

これら一般的な中小企業の魅力と、応募先の強みをリンクさせていくと「なぜ応募先を志望するのか」ということが見えてきて、それが志望動機です。

そして志望動機となった点を「前職の大企業では叶えることができないから退職をした」という風に退職理由として言いかえて述べることができます。

前向きな退職理由を述べるには、志望動機を裏返しにして考えてみると、志望動機と退職理由に一貫性がある前向きな退職理由とすることができます。

応募書類は添削サービスを受けるべき

大企業出身者の応募書類は以前は履歴書の経歴欄だけで通ることも多くありました。

しかし最近では大企業出身者が中小企業で活躍できないケースが目立つようになり、大企業の経歴だけで書類通過というわけにはいかなくなっています。

応募書類を作成したら、転職エージェントの添削サービスを受けて、プロの視点からのアドバイスをもらうようにしましょう。